魔法科高校の劣等生-黄龍の異端児-   作:愚者ぺら

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第六話 部活勧誘週間

一高の部活勧誘は一週間という期限の中で行われる。

しかし、この期間はお祭り騒ぎどころの話ではないほどに大騒ぎになるらしい。

中には魔法の撃ち合いになることも珍しく無いため風紀委員が取り締まりを行うとか......。

そして、俺は生徒会からの応援として、風紀委員と共に取り締まりをすることになっていた。

 

「俺たちも行こうか」

風紀委員室で説明を受け、レコーダーを渡された俺は

備品である二機のCADを手に取った達也に声をかけた。

 

「単独で巡回するって話じゃなかったか?」

 

「大丈夫だよ、渡辺先輩には許可を取っておいたから」

そう答えると達也はため息をついて

「お前は俺の許可を取らないんだな」

とぼやいた。

 

「達也にいちいち許可取ってたら手間かかりそうだからね。外堀から埋めると早いって気づいたし」

 

「そこまでして俺に何をさせたいんだ?」

 

「別に何をさせたいとかはないよ。ただ、達也は観察する価値があると思って」

 

 

「無駄話してないで、お前たちもさっさと行け」

唐突に渡辺先輩がそう言われ、俺たちは巡回に向かった。

 

 

 

◇

 

 

 

外に出ると達也が一人の女生徒に声をかける。

「エリカ、ここにいたのか」

 

「達也くん、遅いわよ......って神威くんも一緒?」

エリカにそう言われた俺は

「ごめん、もしかして邪魔だったか?」

と返す。

 

「ううん、そんなことはないわ」

 

「そうか、待ち合わせしてるからてっきりデートかと思ったよ」

 

「神威、深雪の前ではくれぐれもそういうことは言うなよ」

困り顔で言う達也を見て、面白そうだからいつか言ってやろうと考えていた。

 

 

 

 

見回りが始まると直ぐに帰りたいと思ってしまった。

先輩たちから話は聞いていたが、所詮高校の部活勧誘だろと思っていた俺の見通しは甘かった。

 

 

今まさにそれを実感している。

人垣の中に埋もれるエリカを見ながら。

 

「あれって止めるべきじゃない?」

人垣に埋もれる前に逃げ出した俺は同じように逃れた達也に尋ねる。

 

「そう思うならお前が行けばいいだろ」

そう言ってため息をつくと、達也は人混みの中のエリカの手を掴み、見事に逃げ去った。

 

 

 

 

それからしばらくして、俺は第二体育館、通称闘技場で二人と合流する。

そこでは剣道部の演武が行われていた。

「ふーん、魔法科高校なのに剣道部があるんだ......」

演武を見ながらエリカが呟く。

 

「どこの学校にも剣道部はあるだろ」

達也が何気なしにそう言ったものだから俺は意外だった。

 

「......なんだよ」

 

「......意外」

エリカも同じことを思ったらしくそう漏らす。

 

「何が?」

 

「達也くんでも知らないことがあったなんて......。

それも武道経験者なら普通知ってるようなことなのに」

 

「知らないこともあるだろ。俺も二人と同じ高校一年なんだから。それより剣道部があることの何が珍しいんだ?」

 

「同じって......その言葉違和感しかないんだけど」

 

「お前にだけは言われたくないな......」

 

「サラッと酷いこと言われた!まあ、いいや。

話を戻すと、魔法師を目指す人は高校レベルで剣道を習うことはないんだよ。

魔法師が使うのは『剣道』じゃなくて魔法を併用する『剣術』。

小学生くらいまでなら剣技の基本を身につけるために剣道やる子は多いけど、中学生になって魔法師になろうって思えば殆どは剣術に流れるんだよ」

 

「そうなのか。剣道も剣術も同じものだと思ってたよ」

 

「神威くんは流石に物知りだね」

 

「いや、知ってるのは俺も剣を習ってたからだよ。それより、静かに見学したほうがいいかもね」

周りの視線が気になった俺は、話を打ちきりフロアに視線を戻した。

 

 

しばらく黙って演武を見ていた俺たちだが、エリカのお気に召さなかったらしく、闘技場を出ようしていた。

しかし、突如剣道部の女生徒と大柄ではない男子生徒が言い争いを始める。

話を聞いている限り、男子生徒は剣術部らしい。

 

 

「さっきの茶番より面白そうな対戦じゃない」

わくわくしている様子がエリカの声から窺える。

 

「知ってるの?あの二人」

 

「直接の面識はないけどね。

女子の方は壬生紗耶香。一昨年の中等部剣道大会女子部の全国二位よ」

 

「男の方は?」

達也の問いかけに

「そっちは桐原武明。一昨年の関東剣術大会中等部のチャンピオン」

 

「へえ~」

エリカの説明に素直に感心していると試合が始まる。

 

少しの間、互角の打ち合いが行われるが突如、桐原先輩が雄叫びを上げ突進する。

両者、真っ向からの打ち下ろし。

 

相討ちにも見えたが、桐原先輩の竹刀は壬生先輩の左上腕捉え、壬生先輩の竹刀は桐原先輩の右肩に食い込んでいる。

 

 

 

 

「私の勝ちね、真剣なら致命傷よ」

壬生先輩の言葉に桐原先輩は笑い声を上げ、

「真剣なら?壬生、お前真剣勝負が望みか?

なら......お望み通り、真剣で勝負してやるよ!」

と言うと、竹刀から離れた右手で左手首を押さえた。

 

「これが真剣だあ!」

桐原先輩はそう叫びながら、『高周波ブレード』を降り下ろす。

壬生先輩は後方に飛んで、斬撃を避ける。

 

だが再び、壬生先輩目掛けて高周波ブレードが降り下ろされる。

 

 

しかし、降り下ろされるより前に達也が間に入る。

桐原先輩を止める達也を見て、

「ねえ、神威くんも風紀委員の手伝いでしょ?行かなくていいの?」

とエリカが聞いてくる。

 

「あれくらいなら達也一人で大丈夫でしょ。それに面白そうだし」

 

「面白そうって......」

エリカとそんな会話をしているうちに、達也は桐原先輩を止め、担架を要請していた。

それを見ていた剣術部員の一人が達也の胸ぐらに手を伸ばす。

 

 

「ほら、面白そうなことが始まった」

乱闘騒ぎに発展したその光景を見て、俺は呟く。

 

「本当に止めなくていいの?」

 

「大丈夫、大丈夫。どうせ達也は無傷で終わるから」

俺の予想通り、達也は無傷でその場を切り抜けた。

 

 

その様子を興味深そうに眺める剣道部の主将の視線が俺の第六感を刺激していた。

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