...短いですが。
「____以上が剣道部の新歓演武に剣術部が乱入した事件の顛末です」
達也と俺は目撃した事件の一部始終を報告した。
「それにしても十人以上を相手に無事どころか、無傷なんて......」
と七草先輩は素直に感心していた。
「流石は九重先生のお弟子さんというところか」
「神威が全く手を貸してくれないので大変でした」
嫌味ったらしくこちらに視線を向けて達也は言う。
「客観的に見ている人がいた方がいいと思ったので。
それに実際達也だけでどうにかなりましたし」
「そうは言うけど......」
どうやら俺の対応に不満があるらしい七草先輩は食い下がる。
確かに手助けしなかったのは問題だったと自分でも思う。
けれど、実のところ思ったより早く終わって出番がなかったのだ。
「七草、その辺にしておけ。中神の言ってることは間違ってはいない。
それで、当初の経緯は見ていないんだな?」
そう言ったのは十文字克人先輩。
苗字で分かる通り、十師族の一つ、十文字家の人間。
多分、七草先輩経由で俺の情報も既に伝わってるだろう。
「はい。見てないです。ちょうど出ようとしていた所だったので」
「最初に手を出さなかったのはそのせいかしら?」
「まあそれもありますけど、当事者同士で解決するなら手を出す必要もないだろうという判断です」
「......そうか。確かにいがみ合い全部に人員を割くのは不可能だしな。
二人ともご苦労だった。帰っていいぞ」
渡辺先輩の言葉を聞いて退室しようとした俺たちを
「あ、少し待て。もう一度確認するが、魔法を使用したのは桐原だけか?」
渡辺先輩が引き留める。
「はい。そうです」
「そうか。ご苦労だった」
深雪さんを迎えに生徒会室に向かった達也と別れて、帰路につこうとする俺は、誰かを待っている様子の雫と出会う。
「あれ、雫?誰か待ってるのか?ほのかか?」
「ううん。ほのかは先に帰った。待ってたのは......神威君だよ」
「そっか。ごめんな、待たせたみたいで」
「いいよ。それより一緒に帰ろう?」
雫の言葉に頷くと、俺たちは並んで帰り道を歩き出す。
「そう言えば、ゆっくり話せてなかったよな。せっかく再会出来たのに」
「うん、神威君......忙しかったもんね。生徒会とかいろいろ」
「でも凄い偶然だよな、こうして再会出来るなんて」
「......偶然じゃないよ、多分。
私ね、あの後見つけたんだ......夕陽の場所。
そこでお願いしたの。神威君にもう一度会えますようにって。
神威君のお母さんのことも願ったんだけど、一人一つだったみたい。
......ごめんね」
雫は申し訳無さそうに言うが
「いや、いいんだ。多分、間に合わなかったから。それよりも、また雫と会えたことが嬉しいよ。
ちゃんとお別れ、言えなかったし」
「でも......もう言う必要ないよね」
「そうだな。これからもよろしくな、雫」
そんな会話をしながら俺たちは帰り道を歩いた。
◇
家につくと、父から電話が入っていたことに気づく。
折り返しの電話を入れると直ぐに父は出た。
「やあ、神威。帰って来たばかりのところ悪いね」
「いえ、大丈夫です。それにしても父さん自ら電話なんて珍しいですね」
「少しばかり面倒なことが起きてな。
どうやらそちらで『ブランシュ』が動き始めたらしいんだ。
東神には既に動いてもらってるが、もしかしたらお前にも動いてもらうことになるかもしれない。
準備はしておけ」
「はい」
ブランシュ......反魔法活動を行う政治結社。市民運動を自称するテロリスト。
守護者である五神家にとっては見逃せない存在だ。
しかし、実力行使となってもうちが動くほどの勢力ではない。
となれば、『少しばかり面倒なこと』が実はかなり面倒なことなのかもしれない。
そう思った。
けれど、この時は一高を巻き込む大事件になるとは思っていなかった。