魔法科高校の劣等生-黄龍の異端児-   作:愚者ぺら

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第八話 動き出す者たち

新入部員勧誘週間が終わった日の放課後。

俺はある人物と待ち合わせをしていた。

待ち合わせと言っても相手は男だし、内容も仕事の報告みたいなもので面白みがないわけだが。

 

 

とある喫茶店。

奥の方の席でテーブルを指で叩きながら、コーヒーを飲んでいる青髪の少年を見つけた。

「悪い、待たせたみたいだな、奏司」

 

「ああ、待った。三十分は待った。だからお前の奢りだ」

なぜか不機嫌にそう返された。

 

「はいはい。それで、話ってのはブランシュの件だろ?

どうなった?」

奏司......東神奏司は東神家の跡取り息子だが、俺に対していつもイラついている。

何かをした覚えは全くないのに。

 

「さっぱりだ。尻尾を出しやがらねえ。

だが、一高の生徒が下部組織のエガリテに参加してるらしい。その中でも怪しいのは......こいつだ」

そう言って奏司は一枚の写真を見せる。

その人物には見覚えがあった。

 

「名前は司 甲(つかさ きのえ)。こいつの義理の兄の司一がブランシュ日本支部のリーダーだとさ。

司一は表だけじゃない、裏の仕事も仕切る本物だ」

 

「......あ、思い出した。この人剣道部の人か」

俺は奏司の話を聞きながら写真の人物、司甲をどこで見たか思い出そうとしていた。

そして、思い出した。

新入部員勧誘週間の初日、剣道部と剣術部の騒動の時に達也を興味深く見ていた人だ。

 

「あ、悪い。続けて」

 

「アンタの当面の仕事はこの司甲の動きを監視しろ。

おそらく一高で何かする気だ」

 

「何かって何さ」

 

「知らん。俺は今回の件を任されたとはいえ、これでも中三だ。

そこまで好きには動けん」

 

「それを言ったら俺もだよ。一高入学したばっかりで忙しいんだ。

監視は無理」

 

「はあ~、分かった。アイツらに動いてもらう。その代わり時が来たらしっかり働いて貰うからな」

そう言って奏司は席を立ち、店を出た。

 

「マジで俺の奢りか。まあいいや。情報はちゃんとくれたし」

 

 

 

 

 

 

奏司から報告を受けてから数日後。

司甲の監視は他に任せて、いくつか情報を仕入れていた。

情報の他に、彼自身に怪しい動きも確認できたが、こちらが動けるだけの確証はなかった。

結局、向こうが動くまでこちらは動けない状態にどうしたものかと頭を悩ませていると

『全校生徒の皆さん!』

と突如学校のスピーカーからハウリングした声が聞こえてくる。

 

『失礼しました。僕たちは学内の差別撤廃を目指す有志同盟です。僕たちは生徒会と部活連に対し対等な立場における交渉を要求します』

 

 

「ねえ......神威くん。行かなくていいの?」

教室にいた雫が俺に声をかける。

 

「ごめん、もしかしたら長くなるかもしれないから先に帰っていいぞ」

 

「ううん、待ってる」

 

「そっか......じゃあ行ってくる」

クラスメイトに変な視線を送られていたが、気にせず放送室へ向かう。

 

 

 

「......ねえ、雫?神威さんと付き合ってるわけじゃないんだよね?」

 

「......うん。まだ、片思いだと思う」

 

「そ、そっか。片思いじゃないと思うんだけど......」

ほのかと雫がそんな会話をしているなんて知らずに。

 

 

 

 

 

 

「遅いぞ、中神」

どうやら俺が一番最後だったらしく、渡辺先輩に小声で怒られる。

小声な理由は達也が誰かと通話中だったから。

 

「すみません、それで状況は?」

 

「今、達也くんが中の人物と交渉中だ」

渡辺先輩に説明を受けると達也の交渉は終わったらしい。

 

 

「今のは壬生紗耶香か?」

 

「はい。待ち合わせのためにプライベートナンバーを教えられていたのが、思わぬところで役立ちました」

 

「へえ~、達也あの人と仲良くなってたんだ。手が早いね」

数日前、闘技場での一件の時は面識もなかったはずなのにプライベートナンバーを聞き出すまでの仲になっていたなんて。

 

「誤解だ。それよりも態勢を整えるべきだと思います」

 

「態勢?君はさっき自由を保障するという趣旨の話をしていたはずだが?」

 

「俺が自由を保障したのは壬生先輩だけです」

 

「達也って人が悪いよな。いや悪い人なのか?」

 

「さあな」

 

 

 

放送室から出てきた壬生先輩を含め五人。

そのうち四人は拘束され、壬生先輩は達也に詰め寄った。

「あたしたちを騙したわね!」

 

「司波は騙してなどいない」

壬生先輩にそう言ったのは十文字先輩だった。

 

「お前たちの言い分を聞こう。交渉にも応じる。

だが、お前たちの要求を聞き入れる事と、お前たちの執った手段を認めることは別問題だ」

 

「それはそうなんだけど、彼を放してあげてもらえないかしら?

壬生さん一人では交渉の段取りも打ち合わせできないしょう?

当校の生徒である以上、逃げられるということも無いのだし」

七草先輩の言葉に

「あたしたちは逃げたりしません!」

と壬生先輩は反射的に噛みつく。

しかし、七草先輩はそれに直接の反応はしなかった。

 

「生活主任の先生と話し合った結果、鍵の盗用、放送施設の無断使用に対する措置は生徒会に任せるそうです。

壬生さん、これから貴方たちと生徒会の交渉に関する打ち合わせをしたいのだけど、ついて来てくれるかしら?」

 

「.....ええ、構いません」

 

「十文字くん、お先に失礼するわね。達也くんたちも今日は帰っていいわよ」

俺たちにそう言うと七草先輩は話し合いに向かった。

 

 

 

 

 

 

「......さん、神威さんっ!」

 

「ああ、悪い、ほのか。少し考え事をしてて」

と帰り道、雫の隣を歩くほのかに謝る。

 

「神威くん......最近、ずっと難しい顔してる......」

 

「ごめんな、雫」

 

「謝らなくていいよ。でも......無茶しないでね」

この時、俺はブランシュがどこで仕掛けてくるかということばかりを考えていた。

雫は俺が覚悟を決めていたことに気づいていて、そんなことを言ったんだろう。

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