この世界線では響と奏が出会った頃にあったクリスとフィーネのお話
「ふむ。こんなもので良いかしら」
味見を済ませた女性は作っていたスープをカップ注ぎ、既に朝食の用意がほとんど完了している机に置き、朝食を完成させた。
そして、先に洗い物をしていると扉の向こうから聞きなれた足音が聞こえてくると静かに微笑みながら最後の洗い物を片付けた。
「くぁ~。おはよう、フィーネ」
「おはよう、クリス。さ、食べましょうか」
「ん。ふぁーい」
朝の他愛ないやり取りを交わしながら二人は何時もの様に朝食をとる。
ー…あれから7年か。早いものだ。そして、私が彼女に絆されるとはなー
フィーネはクリスと共に食事をしながら物思いに耽る。
『雪音 クリス』、世界的ヴァイオリニストの父、雪音雅律と声楽家の母ソネット・M・ユキネの間に生まれた少女。
既に二課に技術者として潜伏していた時から装者候補に名前が上がっていた折にバルベルデ共和国以降連絡が途絶えた。
正規の手段での救出を予定した二課とは別に『手駒』として手中に納めるために単独で動き、1年後に雪音クリスを手中に納める事に成功する。
ー始めは警戒を解くためにしていた事だが…こういうのも悪くはないなー
当初、自分に依存させる為に優しく面倒を見ていた。
時には、共に出掛けて外の世界を見せ。
勉学を教え、同じ湯に浸かり、同じベッドで寝ていた。
それは今も続いている事だが
ー『大好きなフィーネへ』……か。全く、素直ではないなー
クリスが10歳になり、そろそろ利用を考えていた矢先にクリスから貰った1通の手紙
差出人も書かれておらず他人からの手紙として渡したかったのだろうが顔を赤くしながら渡すからバレバレだった手紙。
中身は今までの感謝とこれからもよろしくと言った内容だったが最後の『大好きなフィーネが困ってたら絶対に助けるから』と書かれていた言葉にフィーネは今まで抱いた事の感情を抱いた。
ー今思えばあれが『母性』というモノなのだなー
それ以降、フィーネはクリスを利用する事をあまり考えなくなった。
ネフシュタンの回収には自ら赴き、イチイバルも強制では無く、クリスが求めたから与えたに過ぎない。
「なぁ、フィーネ……聞いてるか?」
「…すまない。何だ、クリス?」
「だから、今日も仕事なのかって聞いてるんだよ」
「ふむ……」
懐かしき記憶の海からクリスの声で今に戻すとフィーネは手帳を開いて予定を確認した。
ーこんな用事、クリスとの時間に比べたら些細な事ねー
「いいえ。今日はオフよ。どうかしたかしら?」
「本当か! だったら、久々に出かけないか!」
「えぇ。良いわよ」
「よっしゃ! はむっ…よしっ! 着替えてくる!」
「待ちなさいクリス……全く、せっかちなんだから」
朝食をかきこんでリスの様に頬を膨らませながら着替えに向かったクリスを微笑ましく思いながらフィーネは連絡を取り始めた。
「あ、弦十郎くん? ちょっと悪いんだけど……」
「ふぃー。今日は楽しかった。ありがとな、フィーネ」
「いいのよクリス。私もクリスと出掛けられて楽しかったから。ほら、流すわよ」
「ん。ありがと」
久々のお出掛けを楽しんだクリスにねだられて、フィーネは一緒にお風呂に入ってクリスの髪をを洗っていた。
「クリス。夕飯は何がいいかしら?」
「んー…なぁ、フィーネ。私に料理を教えてくれないか?」
「構わないけど、どうかしたのかしら?」
「たまにはフィーネに…飯を作ってあげたいなーって」
風呂から上がってクリスの髪を乾かしながら今日の夕飯の話をしている時に言われた言葉にフィーネは胸がいっぱいになった。
ー新鮮ね。こんなに誰かに好かれるなんてー
「…フィーネ?」
「そうね。それなら今日の夕食から一緒に作りましょうか?」
「あぁ!」
髪を乾かし終え、二人は共に台所に向かった。
一人は可愛い娘とも呼べる存在に料理を教える為に。
一人はもう一人の母とも呼べる存在から料理を教わる為に。
二人で作る夕食は二人の幸せに満ちている
・雪音 クリス
原典とは少し異なりイチイバルを纏う点は同じだがフィーネとの仲は良好。
引き取って優しくしてくれたフィーネを母の様に慕い、フィーネも母の様に接している。
・フィーネ
この世界で一番変わった人その1
クリスを引き取り育てていたある日に貰った『フィーネへ』と書かれた手紙を読み号泣
以降、原典に似た行動は取るもののカディンギルによる月の落下の被害を抑えるために月を穿つのではなく月を蒸発させる事を目標に計画を進行中
この世界では世界の分解を止める為にネフシュタンを纏いクリスと共に戦う。