ハリポタ世界に双子転生したった 作:島国の魔法使い
腕:神経質
足:気まぐれで嘘つき
尻:理屈屋でマイペース
丸のみ:短気で大雑把
口の中でゆっくりと溶かす:個人主義のカリスマ性あり
もちろん適当ですが、この占いだと闇の帝王はお口の中でお楽しみタイプになるのかな。
「アダム、昨日はごめんなさい」
翌朝、寮に戻った俺に真っ先に駆けてきたのは、ネビルではなくアンジェリーナ先輩だった。
「スネイプがあなたを連れて行くとき、もっとちゃんと止めればよかったわ」
不安そうな顔のアンジェリーナ先輩。隣にはアリシア先輩、ケイティ先輩、リーアン先輩もいる。頭を下げる彼女たちに、俺は気にしないで欲しいと笑った。
「先輩たちが笑うのはまあ、想定内でしたし、そもそも俺の飛行の練習をしてくれるためだったわけですから」
むしろ、アンジェリーナ先輩たちより双子とかキャプテンのウッドとかに謝ってもらいたい。野郎に笑われるのは想定外だったぞ。
「もしそうだったとしても、あんな風に笑うべきじゃなかったわ。本当にごめんなさい」
「本当、大丈夫ですよ。ただ、まあ、次はあんまり笑わないでくれると嬉しいですけど。恥ずかしいですし」
へら、と笑って見せる俺に、先輩たちの表情も少し緩む。良かった。女の子にあんな顔させたままじゃ男が廃るところだった。
「言い訳に聞こえるかもしれないけど、アダムの飛行訓練を見てあげるつもりだったのは本当なのよ。だから、昨日見た限りで分かった事を言っておくわ」
ホッとした様に肩の力を抜いたアンジェリーナ先輩は、そう言って昨日の事に話を戻した。この切り替えの早さ、サバサバしてて俺は嫌いじゃない。……グリフィンドールはデリカシーなさすぎるよ。
「貴方の話じゃ、箒の柄に滑ってぐるりと逆さ吊りになるって話だったけれど……実際、アダムはしっかりと柄を握って固定していたわ。回っていたのはアダムじゃなく、箒の方よ」
「はい?」
首を傾げた俺に、先輩たちは分かりやすく説明してくれた。つまり、鉄棒で回転するように逆さになっていると思い込んでいたが、まさかの回っているのは鉄棒の方だった。そりゃ、いくら頑張って箒にしがみついても、いつの間にか逆さになるわけだ。
「きちんと飛び方を覚えるなら、私たち力になるから。相談してちょうだいね」
「ええ、頼りにしますよ、先輩」
にっこり笑うと、アンジェリーナ先輩も笑顔を向けてくれた。でも正直な話、しばらく箒には乗りたくないかな。……意識して飛んでみて、回転しないか早速試してみればいいのに。……その内な。
「アダム、大丈夫だった?」
先輩たちがいなくなった後、心底心配そうな顔でネビルがやって来た。また俺が年上美人に囲まれてたんで遠慮していたらしい。全くこの遠慮しいめ。そこが美徳でもあるんだけど。
「ハリーに聞いたのか?この通り、五体満足だよ」
俺はおどけて両手を広げたが、ネビルはそれでも心配なようだった。スネイプ先生は生徒を頭から食べるとでも思われてんのかね。ま、俺も連行された時はこのまま朝まで罰則かもとか考えたくちだが。……その場合、スネイプ先生完全なサービス残業だね。……そう考えると仕事熱心なのか?……グリフィンドールに嫌がらせするためと思えば半ば趣味の域かもよ。
「アダムは優しすぎるよ」
「ネビルがそれを言うのかよ」
「僕はただ、ハッキリ言えないだけだよ……。でもアダム、君は違う」
「そんなことないさ、俺は結構な小心者だよ」
嫌われたくないという気持ちが強いという自覚がある。だから八方美人をしてしまうし、だから他人に優しくもする。誰からも好かれるというのが不可能だと知っていながら、そうあるように動いてしまう。誰かに対して何かを否定するのは怖い。よっぽど『そうしよう』と思わない限り、俺はいつも肯定して流されてしまう傾向にある。
「そうね。いくら女好きでも、あの人達にはっきりノーと言うべきだったと思うわ。簡単に許し過ぎよ。確かにあなたの飛び方はちょっと見ないくらい個性的だけど、それを大勢で囲んで笑いものにするなんてどうかしてる!」
「ハーマイオニー、いたのか」
「ええ、いたわよ。気を付けてねアダム。私、今、友人が笑いものにされたって聞いて、すっごく機嫌が悪いの」
「それはおっかないな」
腕を組み、目に見えて不機嫌なハーマイオニー。チラッと視線をやれば、ハリーたちがこっちを窺っている。なるほど。……お兄、三人の仲を悪くしないでよ。……俺のせいなの?いや、俺のせいか。
「まさかハリーと喧嘩してないよな、ハーマイオニー。やめてくれよ、俺のせいで二人が喧嘩するなんて嫌だぞ」
「別に喧嘩なんかしていないわ。ただ、どうしてその場にいたのに笑うのを止めさせなかったのかって言っただけ」
「で、ハリーは何て?」
「アダムの飛び方が変なのはハリーのせいじゃないだろってロンが。それで頭にきちゃって」
またお前か、ロン。全くロンは子供だな。言葉を選ぶとか空気読むとかしろよ。頭を抱えたくなるのを我慢して、俺はハーマイオニーを宥めた。
「俺は良く知らないけど、なんかハリー、最近様子がおかしかったろ。ボーっとしてるっていうかさ」
俺の言葉に、プリプリしていたハーマイオニーはちょっとバツの悪そうな顔をした。ふむ、自覚はあるのか。なら話は早い。
「ロンはそんなハリーが心配だったんだろ。そこにハーマイオニーが責める様な事を言ったから、ついハリーを庇っちゃったんだよ。あとは、まあ、ロンは子供っぽいからな。売り言葉に買い言葉さ」
「……そうね」
ハーマイオニーはぶすっとしながらも組んでいた腕を解く。
「ハリーの事は分かってるわ。でも……」
「俺のためにハーマイオニーが怒ってくれたのは嬉しいよ。けど、それで喧嘩するのは嬉しくない。それに多分、ハリーは俺を見捨てたりしてないさ」
あの時、たくさんの笑い声を聞いたが、その中にハリーの笑い声はなかった。
「きっとスネイプ先生が来なかったら、ハリーが止めてくれてたよ。先生の方が早かったってだけさ」
「……分かった、アダムの言う通りね。ハリーはそんな酷い人じゃない。責める様な言い方をした私が悪かったわ。でも……」
ハーマイオニーは頬を膨らませたままフンと鼻息を荒くした。
「ロンが私に頭でっかちのブスって言ったのは許せない」
「ああ、それは怒っていてもいいと俺も思う」
俺は頷いた。ロンは一回舌を引っこ抜かれるべきだ。……完全に好きな子にブス連呼しちゃうガキだねー。ハーマイオニーが何でロンを選んだんだろうっていうのは、ハリポタ七不思議の一つだよ。……あとの六つは?……今ちょっと思いつかないから考えとく。……創作かよ!
ハーマイオニーはハリー達の方へ行った。ハリーに謝って、ロンとは口論している。俺はそれを眺めながら、なんだかんだでいいコンビだと思ってしまう。あの口は縫い付けた方がいいと思いつつも、ハーマイオニーが全力で感情をぶつけられる相手って今のところロンだけじゃないだろうか。俺やネビルといる時は、比較的落ち着いているし。
ロンとしばらく言い合った後、ハリーの仲裁で二人は仲直りしたようだった。ホッとした俺に、今まで黙って事の成り行きを見ていたネビルがため息を吐く。
「ほら、やっぱり優しいじゃないか」
「女の子相手にだからだよ」
「僕は男だけど、アダムは優しいじゃないか」
肩をすくめた俺に、ネビルは何とも言えない顔をして呟いた。俺は無言でその頭を撫でて、そして怒られた。
「アダム、これあげる!」
練習用のユニフォームを着たケイティ先輩が、談話室で寛いでいた俺に蛙チョコを放った。いきなりの事に慌ててキャッチすれば、お見事、とウインクをいただく。あれ以来、俺は先輩たちに貢がれていた。罪滅ぼしだと彼女たちは言うが、正直遊ばれている。今日は普通の蛙チョコだが、気になる色を集めた百味ビーンズをその場で食べさせられたり、甘くいい匂いのする女子用シャンプーの小瓶を使わされたり、正直反省の色はあまり見えない。まあ、落ち込まれるよりはいいけどさぁ。
「ありがとうございます。……まさか今から練習ですか?」
お礼を言って、俺は首を傾げた。外は雪だ。
「ええ、ウッドがやるってきかないの。もっとも、実際の試合も天候はあまり関係ないから、色々な天気のプレーになれるのも練習の一つだわ」
天候次第で中止は考えるべきだろうに。本当にクィディッチはルールが雑だ。
「じゃあ行ってくるわね」
ひらひらと手を振って出て行くケイティ先輩。ハリーも向こうでロンとハーマイオニーに手を振って、談話室から出て行くのが見えた。大変だな、と他人事の様に思いながら、俺は蛙チョコに目を落とす。寝るまでまだ時間はある。夕食の後だが、チョコ一つくらいならたまにはいいか。
「ネビル、一緒にチョコ食おうぜ」
ネビルは珍しいねと言いながら一緒にソファに座った。
「いつもは美容に悪いって言うのに」
「たまにはな」
箱の封を切ると、チョコの甘い匂いがした。……お兄、蛙チョコのカード何が出た?……カード?ええっと、キルケってお姉さんのカードだ。
「うわ、えげつないな……」
『迷った船乗りを豚に変える専門家』というカードの説明に俺は眉をしかめる。ネビルは横からそれを見て、わあと声を上げた。
「キルケはレアなカードだよ」
レアって言っても、俺はカードを集めていない。確かネビルもだ。……お兄、そのカード、後でハリーに言ってダンブルドアと交換して。……え、いいけど。お前カード集めてたの?……集めてるけど、そうじゃないよ。大体ダンブルドアとか究極のクソカードじゃない。蛙チョコパック買いしたら必ずダブるし。遊戯王カードなら重量換算で売れるかどうかのレベルの。……おま、仮にも自分とこの校長をクソカード呼ばわりとは。
まあ、イヴがこういう事言ってくるって事は、十中八九原作絡みだろう。カード交換にどんな意味があるのか分からないが、それくらいならいいかと胸ポケットに入れる。
「そうだアダム、チョコ食べ終わったら図書館についてきてくれない?」
言いながら、二つに引き裂いた蛙のまだひょこひょこと動く足を摘まんで口に入れるネビル。チョコレートと分かっていてもグロテスクだな。と思いつつ、俺もその腕を齧っているのだが。
「図書館って、何か本を借りるのか?」
「ううん。宿題でちょっと調べたい事があって」
別にいいぞと返事をしようとした俺に、待ったをかけたのは妹だった。……ダメ、お兄今日は行かないで。多分今日はまずい。……何がまずいんだ?……もし今日が今日であるなら、ネビルは図書館に近づかない方がいい。……今日は今日だろ?いやなんだ、これも原作絡みか?またネビルが骨折するとかじゃないだろうな。……そうならないための忠告だよ。
前科持ちの妹の言葉だが、俺は信じることにした。
「図書館には明日行こうぜ。また階段を上ったり下りたりしたくないし。今日は別の事をしよう」
「そう?じゃあそれでもいいよ」
ネビルはあっさり頷いた。別の事をしようと誘った手前、何か案を出さないとな。他の宿題でもいいが、たまには勉強から離れるかと談話室を見渡す。寮の皆はお喋りに花を咲かせていたり、魔法のゲームをしていたりと賑やかだ。
「またなの?ロンってばいっつもそう!」
「なんだよ、自分がいつも正しいって思い込みはやめろよな」
聞きなれた声に目を向けると、ロンとハーマイオニーがまた言い合っていた。なんだなんだと近づくと、テーブルには本や羊皮紙が広がっていて、二人は宿題をしていたようだった。
「そりゃ、ハーマイオニーは頭がいいよ。でも、何でもかんでも自分が正しいって思うなよ!」
「あら、頭がいいって認めたなら、私の言った事に従うべきだわ。ロンの言う事はお門違いなことばっかりじゃない」
「ほらそれだ!僕の方が下だって、君はいっつも見下してる!」
「見下してなんかいないわ」
「いいや、見下してるね。僕が君に勝てるわけないって、そう思ってるんだろ」
「思ってない」
「思ってる」
「思ってい・な・い」
「いいや、思ってる」
最後の言い合いは一瞬バカップルの会話と間違えそうになったが、このまま放置してるとまた喧嘩しそうだ。
「なあ、ロン。ハーマイオニーに何でなら勝てる?」
「はあ?なんだよアダム、お前もどうせハーマイオニーの肩を持つつもりなんだろ。この女たらしめ!」
「なんだとロン、訂正しろ。俺は女の子は大好きだが、たらし込んだりはしていないぞ。ただの女好きだ!」
「いばるなよ!」
急に毒っ気の抜けた顔をして、ロンはため息を吐いた。
「そうだな、チェスならハーマイオニーにだって負けない自信はあるよ」
「あら?知らないの、ロン。チェスってとっても頭を使うゲームなのよ」
クスっとハーマイオニーが笑った。まったくハーマイオニーは、そういう態度がロンを怒らせるのに。実はわざとなのかな?……そういうとこだぞ、ハーマイオニー!……どした?……いや、言いたかっただけ。……そうか。気は済んだか?……うん。
ハーマイオニーの挑発じみた態度にロンは顔を赤くしたが、なら証明してやるとチェスボードを取りに行った。
「で、実際のとこロンはチェス強いのか?」
残ったハーマイオニーに尋ねると、彼女は肩をすくめた。
「さあ、分からないけど……前にハリーが強いって言ってたわ。家族で一番だって言っていたし、実際に自信はあるんじゃないかしら」
そう言いって、ハーマイオニーは口元に笑みを浮かべた。
「でも、ロンの負けよ。チェスって本当に頭脳戦なの。私、マグルの学校でチェス大会に出た事があるわ」
「……なるほど。それで結果は?」
予想はついたが、一応聞いておいた。
「優勝よ」
フン、とドヤ顔のハーマイオニー。前はちょっと鼻につくと思う事もあったが、最近、この顔が可愛いと思えるようになった。彼女にはドヤ顔が凄く似合う。
「凄い、ハーマイオニー!僕にも今度教えてよ」
ネビルが褒めるので、ハーマイオニーはさらにドヤる。と、そこへチェスボードを抱えたロンが戻って来た。
「勝負だ!」
「望むところよ!」
――かくて、戦いの火ぶたは切って落とされた。
そして意外な事に、ロンは本当に強かった。序盤、余裕の笑みのハーマイオニーと、絶対に負けるかという顔のロンの姿は、見ていてハーマイオニー優位に見えた。だが、中盤になると盤上はロン優位だった。定跡通りのハーマイオニーの打ち筋に対し、ロンはその一歩先をいった。傍から見ているだけだし、そんなに強くないので何とも言えないが、多分ロンの方が数手先を読めているんだろう。ハーマイオニーはさっきから後手に回っている印象だ。そしてそのまま逆転することなく、ハーマイオニーはロンに負かされてしまった。
「どうだ、僕の勝ちだ!」
チェックメイトの後、ロンがそう言って勝ち誇った。ハーマイオニーは心底悔しそうにしながらも、「今のはまぐれかもしれないわ。もう一勝負よ!」と譲らない。
ロンは「この負けず嫌いめ、素直に負けを認めろ!」と言いながらもう一戦に応じた。今度は初っ端からハーマイオニーも色々手を変えてきたが、ロンはそれに応じて手を打って来た。ううん、これは本当にロンの方が強いな。
「あれ、珍しい……」
練習から戻ったハリーが、チェスをしている二人を見て驚いた顔をした。俺がここまでの経緯を話すと、ハリーはため息を吐く。
「いっつもなんだよ。ロンはつっかかるし、ハーマイオニーは一言多いんだ」
「ハリーはクッション役って事か」
「僕を挟んで喧嘩するのは止めてって言うんだけど……」
「もう、隣でごちゃごちゃ言うなよ!今集中しなくちゃいけないんだ!」
ロンがたまらず声を上げた。俺とハリーは謝って、一歩下がる。ネビルは二人の戦いを凄く熱心に見ていた。
「あ、そうだハリー頼みがあるんだ……」
小声で、俺はポケットからカードを取り出した。
「俺のキルケと、ハリーのダンブルドア、交換してくれないか?」
「魔法使いのカード?いいよ。僕、ダンブルドアなら十枚くらい持ってる。ちょっと待ってて」
言うなり部屋に取りに行くハリー。確かハリーがカードを集め始めたのって入学からだよな。それでもう十枚って。……ね、クソみたいなノーマルカードでしょ?
妹の言葉に何と返すべきか迷っていると、ハリーが慌てて階段を下りてきた。どうした、と思っていると、ハリーはロンとハーマイオニーに向かって「見つけた!」と叫んだ。
「もう、ハリー邪魔しないで!」
「そうだよ、集中したいんだ」
ハーマイオニーとロンが眉をしかめるが、ハリーは興奮してまくしたてた。
「魔法使いのカードだ!ダンブルドアだよ!ここ見て、『パートナーであるニコラス・フラメルとの共同研究……』って書いてある!」
俺とネビルは何のことか分からず首を傾げたが、ハーマイオニーはパッと立ち上がった。そして女子寮に入ると、すぐに古めかしい分厚い本を手に戻って来た。
「どうしてこの本を探してみようと思わなかったのかしら!」
ハーマイオニーはドン!と机に本を乗せる。衝撃でチェスの駒がいくつかひっくり返った。ネビルはアッと声を上げ、チェスの駒はハーマイオニーに向かって怒ったが、全て無視して凄い勢いで本を捲っていく。
「……あー、悪いけど、ちょっとだけ向こうに行ってて」
ハリーが申し訳なさそうに俺達に言った。俺はネビルに行こうと声をかけてその場を離れる。
「チェス、いいところだったのにどうしたんだろう……?」
ネビルが不思議そうに三人を見る。何やら顔を突き合わせて興奮しているのを眺めながら、俺は首を振った。
「よく分からないけど……ネビル、俺とチェスする?」
「いいね」
その後、俺とネビルはチェスをした。俺とネビルのチェスの強さは同じくらいで、案外盛り上がった。