ハリポタ世界に双子転生したった 作:島国の魔法使い
BLってカップリングの順番で戦争起きるんだって前世の友人が言ってた。正直BLさほど興味ないし雑食だから戦争したことないし友情も壊れなかったよやったね!
「おい、急げよ!」
「そう思うなら手伝ってよ!」
発車直前の合図を聞きながら、俺はもたもたとトランクを持ち上げているイヴに声をかけ、イヴは俺を睨んだ。仕方ない、とトランクを上から引っ張ってやると、イヴは手伝ってくれるのが遅いと愚痴った。手を貸してやったのに何て奴だ。
「大体、こんなにギリギリになったのはお兄がうんこしてたせいでしょ!私は前日から準備万端だったのに!」
「しょうがないだろ、緊張すると人はもよおすんだよ」
「お兄だけでしょそれ」
昔からテストの前だとか、会議の前だとか、出張で新幹線に乗る前だとか、そういう時には急にしたくなる性質だったが、それは今世でも変わらないようだ。「アダム君はうんこマンでやんす!」とか不名誉且つ女の子の言葉とは思えないセリフを吐きつつ、イヴはずるずるとトランクを引きずって歩く。列車が動き出したせいで、床が揺れるのがまた歩き辛い。本当は手伝ってやりたいところだが、正直今の俺は自分のトランクを持つので精一杯だった。なんせ今の俺は十一歳の少年なのだから。……非力な男はモテないんだからね!……頭の中に割り込むなって!言葉を喋るようになってからは、さすがに四六時中思考を共にする訳じゃない。それは前の時もそうだった。会話ができるので、頭で喋らなくてもよくなるからだ。ただこうやって時々、入り込んでくる……それはお兄もでしょ……から困る。って、俺は必要な時以外は喋りかけないだろ!なんか前世の時より割り込み度合いが酷い気がする。まあでも、どこで誰が聞いているか分からない以上、頭の中の会話というのはこれ以上ないほど安全な内緒話だ。未来のハリーの話を堂々とするわけにもいかない。
真っ赤な蒸気機関車の内部は、各個室に仕切られている。コンパートメントってやつだ。通路を歩きながら扉の窓を覗き込んでみるが、どこもいっぱいの様だ。……もー、だから早く来たかったのに。ホグワーツ特急もじっくり見たかったし、九と四分の三番線をくぐり抜ける時も、もっとゆっくり感慨にふけりたかったのにぃー!……うっせぇ、過ぎた事言ってもしょうがないだろ。……だってだって、せっかくのハリポタだよ?ドッキドキの原作開始だよ?……俺にはその感覚は全く分からん。つーか、ユニバでホグワーツ特急乗ったことあるじゃんお前。……本物と偽物の区別くらいつけよう、お兄?……急に真面目な声で言うなよ、ついてっから区別。ため息を吐かれながら、車両を次々に渡っていく。っと、ここのコンパートメント空いてるっぽいぞ?
「馬鹿お兄」
入ろうとした俺のローブを引っ張るイヴ。なんだよ、と目を向けると、頭の中でまたため息を吐かれた。……なんでサラッと原作介入しようとするのかなぁ?……原作介入?何のことか思ってあっと気付く。二人しかいないコンパートメントの中には、黒髪と赤毛の男の子。よく見ればなんか見た事がある気が、しないでもない。……しないよ初対面だもの。お兄しっかりして。初対面だけど想像はつくでしょ、あれ十中八九ハリー・ポッターとロン・ウィーズリーだよ。……あのな、俺はハリー・ポッターは金曜日に映画で観たなくらいにしか覚えてないんだよ原作未読だしさ。再放送多かったから何度も見たとはいえ。……いやいや、これくらいは分かるでしょ馬鹿お兄。ともかくそっと逃げよう。原作に介入しても良い事なんて一つもないし正直高学年になるにつれて危険が危なくなる。……分かったから落ち着け。イヴに従って、俺はコンパートメントを離れようとする。しかし遅かった。
「そこにいるのは誰?」
長くここにいすぎたせいだろう。中からコンパートメントのドアが開かれ、少年二人が俺たちを見る。イヴが呻く声が背後で聞こえた。……こうなったら逃げるのは不自然だと思うよ。……だな。
「俺たち、空いてるとこがないか探してたんだ」
「じゃあここに入りなよ。まだ空いてるから2人くらい大丈夫だよ」
眼鏡の奥で明るい緑の目を細め、黒髪の少年が笑顔で部屋の中を指す。仕方ない。俺はありがとうと言って中に入った。イヴもそれに続く。……やっばい、一年時のハリー・ポッターだ!握手してサインを求めたい!……原作介入危ないとか言ってたの誰だよ。……それはそれ、これはこれなの。分かんないかなあ、お兄には。……さいですか。
「へー、じゃあ君たち双子なんだ?」
ハリーが興味深そうに俺とイヴを見比べる。ロンはさっきハリーが大量に買い込んだ駄菓子をくちゃくちゃさせながら、うちの兄貴たちと一緒だと呟く。ロンは俺やイヴと同い年だが、頭一つ分くらい背が高い。ただ、肉付きの方はそれほどでもないので、感じとしてはひょろりと長い少年だ。因みにハリーはひょろりとした小柄な少年だ。ロンと並ぶと差がすごい。
「でも、ジョージとフレッドは見分けがつかないけど、アダムとイヴは見分けつくよ」
ロンがドヤ顔るのに、ハリーがうーんと唸る。
「でも、本当にそっくりだよ」
「そうかな」
二人の会話を聞きながら、イヴがニヤニヤしているのが妙に気持ち悪い。……お兄、後で覚えてろ!目の前で生ハリポタ見せられたらついニヤつくのは普通でしょ?それに私は今美少女だから問題ない!……いやでも気持ち悪いぞお前。
ハリーとロンの意見が食い違っている理由は分かる。俺とイヴは顔のパーツは一緒だ。髪型もお揃いのお洒落なショートボブ。そっくりの双子。間違いない。だが、髪の色と目の色がそれぞれ違う。前の時はどっちも黒髪黒目でもう誰がどう見ても双子だったけど、今回は明らかに差異があるのでパッと見は双子とバレにくい。因みに俺が銀の髪に青の瞳、イヴが真紅の髪とこげ茶の瞳だ。……要はお兄がママ似で私がパパ似でしょ。思ったんだけど、今回私たち一卵性じゃないのかもね?……さあ、どうだろうな。顔はそっくりだけど、まあどっちでもいいさ。
「それはそうと、二人はどの寮に行きたいの?」
無邪気な様子でハリーが尋ねてきた。俺はそうだなーと言いながら。イヴ、俺、グリフィンドールしか知らねぇ。……せめてスリザリンも覚えててよ。っていうかママは確かスリザリンでしょ?……知らん、興味ないから聞いてなかった。でもそうか、なら……あ、お兄ちょっと!
「スリザリンかな」
俺の髪や目は母譲りなので、寮もそうかと思って発言すればこの空気である。ハリーはえっ?みたいな顔をして固まり、ロンはおもくそ顔をしかめて嫌悪を表している。あれ?……お兄、お願いだから興味持ってよ。スリザリンって言ったら、例のあの人の出身寮で悪人ばっかってイメージの寮だから。……えっ、母上そんな酷い寮出身なの?!
「因みにうちは、ママはスリザリンで、パパはグリフィンドールだったの。私はまだ決めかねてるかなぁ」
イヴがフォローを入れてきた。ハリーとロンはまたえっ?みたいな顔をした。
「両親がグリフィンドールとスリザリンなんて、君ん家、変だよ」
ロンがうーわーと首を振る。初対面の人の家を変呼ばわりとは。子供とは恐ろしい。ハリーも驚いてはいるが、さすがにロンは言い過ぎだと思ったのか頷いたりはせずにそういう事もあるんだと呟いていた。
スリザリンに行きたいと言った事で妙な雰囲気にはなったが、それでいきなり仲間外れになったりはしなかった。実際にはまだスリザリンじゃないというのが大きいのかもしれない。しばらくの間、俺たちはわいわいと会話を楽しんだ。ハリーは百味ビーンズを食べるのは初めてだったみたいで、食べる度に良いリアクションを取ってくれた。
「おっどろいた!イヴって本当に外れを引かないんだな」
ロンが目を丸くする。イヴはまあねと言って袋からビーンズを摘まみ出す。濁った緑のそれに「ヘドロ味かも」とロンが忠告したが、イヴは気にせず口に入れた。抹茶味だったらしい。
「イヴは昔からこういうのに強いんだ。くじで外れを引いたことがない」
「すっげえ!」
心底尊敬した目を向けられて、イヴは苦笑いしていた。こんな事で尊敬されるとは。子供は純粋だな。と、ノックの音。しもぶくれ気味の男の子が目に涙をためた今にも泣きそうな顔でドアを開ける。
「僕のヒキガエルを見ませんでしたか?」
「あら、逃げたの?一緒に探してあげる」
イヴが立ち上がる。男の子はつぅーっと一筋頬に涙の筋を作って、嬉しそうに顔を明るくした。本当に?と尋ねるその子に、イヴは微笑む。うん、中身を知っているからアレだが、顔だけなら天使か女神に見えるかもな。……お兄?……っと、なんだい可愛い妹よ。イヴは前世から幼い子供に対して優しい。保育士になりたかった、と言うくらいだしな。ま、ならなかったんだが。大丈夫、大丈夫と優しく背中をさすってあげながら、イヴはその子とコンパートメントを出て行った。
「ヒキガエルなんて何で探すんだろ?僕なら逆に逃がすよ。って言っても、人のペットの事をとやかく言えた義理じゃないけどさ」
ロンがポケットからねずみを取り出す。ぽとり、と膝に落とされても、ねずみはぐーすか眠り続けた。っていうかポケットにねずみを入れるとか、何かの拍子に潰しそうで俺なら怖くて入れない。完全に野生を忘れたその姿に、何かを思い出しかけた。なんだったか、このねずみに関係する事だったと思うんだが。イヴに聞けば分かるだろうが、わざわざテレパシーで問いかける事でもない。向こうも蛙探しに忙しいだろうし。
ロンはスキャバーズという名のそのねずみを黄色に変えると杖を取り出した。かなり年季の入ったその杖は、芯材が少しはみ出している。ユニコーンのたてがみだとロンが指で白い糸をつついた。ハリーは目の前で魔法が見られるかもと期待している様子だ。俺も興味を持ってそれを眺める。
「誰かネビルのヒキガエルを見なかった?いなくなったの」
杖を振り上げたロンが、急に入って来た女の子に驚いて固まった。梅雨時期でもないのに、ぼふっと膨らんだ栗毛のふわふわパーマ女子は、杖を上げたロンに興味を引かれた様だ。見なかったと答えるロンを無視し、魔法を見せてくれるの?とイヴが座ってた場所にストンと座る。うーん、ちょっと前歯が出てるが、なかなか目鼻立ちは整っているし可愛い顔だ。髪を纏めればこれは化けそうだな。でもちょっと高圧的と言うか挑戦的と言うか、生意気な委員長タイプのオーラが滲み出てるのがなぁ。
「えへん、えへん」
ロンがわざとらしい咳払いをして、呪文を唱えた。完全に誰かに嘘を教えられたな、と分かる呪文だった。もしもこの女の子がいなければ、何だよその呪文~と笑い話になっていただろうが、女の子のせいでそういう雰囲気じゃなかった。「その呪文、間違ってるんじゃない?」と小馬鹿にしたように(本人にその気がなかったとしても)言い、自分はいくつかの呪文に成功し、教科書も全て暗記していると誇らしげに語る。ヤバイこれは敵を作るタイプの子だわ。現にロンの顔が凄い。
「私、ハーマイオニー・グレンジャー。あなた達は?」
ハーマイオニー?聞いた事があるな。って事はあれかな、この子原作の重要ポジションの子かな?……ハリーの友達って言えばロンとハーマイオニーでしょ!お兄、本当にハリポタ映画観たことあるの?……おう、いきなり喋んなビビるから。あと今ちゃんと思い出したから。映画のハーマイオニーがべっぴんさん過ぎてちょっと一致しなかっただけだから。っていうかお前、ヒキガエル見つからないなら誰かに頼んでみれば?さすがに大人の1人くらい乗ってるんじゃないか?……そだね、そういや先頭の方に監督生がいるって言ってたな。そこに行ってみる。ありがとお兄。……ああ、気を付けてな。
ハリーの名前に興奮するハーマイオニーを眺めつつ、妹との脳内会話を終える。ハーマイオニーは親切にも「もうすぐ到着するから着替えた方が良い」とアドバイスを残して「ヒキガエルを探さなくちゃ」と去って行った。いい子なんだけどなー。ちょっとお友達にはなり辛いわあれは。ロンとハリーも同意見らしく、特にロンは絶対同じ寮にはなりたくないと言っていた。その後、ロンの家族の話から銀行強盗の話、クィディッチと言う魔法界のスポーツの話題で車内は盛り上がった。
「ただいま」
イヴが帰って来て、無事にヒキガエルが見つかったと報告した。ハリーは良かったねと言った後、どうしてハーマイオニーもこのコンパートメントに探しに来たのかと聞いた。
「一緒に探してくれるって言うから頼んだの」
イヴがにっこりと必要以上に輝く笑顔で言った。おい、何を誤魔化してるんだ?……人聞きの悪い事言わないで。っていうか考えたら分かるでしょ、原作変えないために決まってるじゃない。ハーマイオニーは列車でハリー達と会うって事になってるんだから。……ふぅん、そこまでして原作通りにしなきゃいけないもんかね?……分かんないけど、さすがにこの三人には友達になってもらわないと。最悪、原作から大きくズレた挙句、例のあの人にハリーが殺されて暗黒時代再びになる可能性だってあるんだよ?……そりゃ困るな。……でしょう?
「それで、ヒキガエルはどこにいたの?」
「分からない」
ハリーに肩をすくめ、イヴは指を空中でひょいと振った。
「先輩に相談したら、杖をひょい、でヒキガエルがすっ飛んで来たの」
魔法ってほんと便利。目を丸くしたハリーにイヴがどんな風だったか詳しく説明しようとした瞬間、ガラリとドアが開いた。金髪をオールバックにした少年が、ごつい二人組を従えて入って来た。子供のオールバックってなんか粋がってる感すごくて可愛いよな。将来の頭皮がちょっと心配だけど。肌が白いせいか唇が男の子にしては赤く見える。良いとこの坊ちゃん臭も相まって、変にオールバックにしなきゃただの美少年になりそうだ。
「ここにハリー・ポッターがいるって聞いて来たんだが……まさか君なのか?」
坊ちゃんが驚いた、という顔をした。会話からして、ハリーは一度この子と会ってるようだ。……ようだ、じゃないよ会ってるんだよ。ダイアゴン横丁の洋装店でハリーとドラコは会ってるんだよ!……知らんがな。ドラコって名前に聞き覚えもないわ。
「彼らはクラッブとゴイル。そして僕はマルフォイだ。ドラコ・マルフォイ」
いや、知ってた。マルフォイは聞き覚えがある。何かの動画でフォイフォイ言い続けるの見た事ある。思い出して一瞬吹き出しそうになったが俺は堪えた。前世でだてに社会を渡って来た訳じゃない。笑ってはいけないのに笑いたい場面と言うのは往々にしてあるものだ。そういや前世、年末に家族で笑ってはいけない番組を誰が最後まで笑わずに観られるかを良く競ったのをふと思い出す。たしか俺と親父がいつも優勝争ってたな、懐かしい。だが、ロンはまだお子様、堪えきれず笑い声が漏れている。っていうかなんでロンは笑ってるんだ?フォイフォイ動画見た事ないだろうに。
「僕の名前がおかしいか?ウィーズリー、お前の名前は聞くまでもない。赤毛でそばかす。育てきれないほどの子供を作る家だって父上が言っていたよ」
頭からつま先まで軽蔑の眼差しを向けられ、ロンは笑うのを止めてドラコを睨んだ。ハリーもドラコを警戒した目で見ている。……生ドラハリ(゚∀゚)キタコレ!!……おい、人の脳内で顔文字はさすがに怒るぞ。……ごめんごめん、つい興奮して。ところでお兄はドラハリ(ドラコ×ハリー)だと思う?それともハリドラ(ハリー×ドラコ)だと思う?……どっちも興味ねえし何言ってるかちょっと分からん。ていうか今それ考える事か?
「ポッター、魔法界にも家柄ってものがある。間違った付き合いは君のためにならない。何が正しいか、僕が教えてあげよう」
スッと差し出された手を、ハリーは冷たい目で見た。そしてキッパリとドラコに言った。
「何が正しいのか、間違っているのかは自分で決められるよ。どうもご親切に」
完全な拒否。ドラコの頬にサッと赤みが差してピンクに染まる。……やっばい、ドラ→→→ハリだこれ。片思い切な過ぎる。……お願いもう静かにしててくれよ。俺そういうの本当興味ないからさ。……知ってる。そして私もBLよりNLのが好きかな。そういや友人にトムジニ(トム×ジニー)を推された事があるけど、さすがにあれは同意できなかったな。……用語は良く知らんが黙ってて、お願い。懇願する俺をよそに、ドラコはハリーをじろりと見た。
「言葉に気を付けた方が良い。さもなければ君も、君の両親と同じ道をたどることになるだろう。ウィーズリーやハグリッドなんていう底辺の奴らとつるめば、君も同類になるぞ」
なんてテンプレで嫌な子だ。……しょうがないよ、ドラコはツンデレ貴族だから。父親が死喰い人だしね。
「死喰い人?」
ドラコがバッとこちらを向いた。まずい、声に出てた。……お兄、何やってんのもー。そんな事してもお兄はリバイバルできないからね?お兄サトルって名前じゃなかったでしょ?……なんだリバイバルって。そしてサトルって誰だ。ていうか、しょうがないじゃん、びっくりしたんだよ。
「君の名は?」
ドラコが振り向いた体勢のまま尋ねた。……やべえ、これお兄とドラコが入れ替わっちゃうフラグかな?……止めろ入れ替わらないから。かつて散々テレビのCMで聞いた前世前世言ってるフレーズが頭に流れるのを聞きながら、俺は答える。
「アダム・キャロル」
「ふうん、キャロルね……聞いた事がないが、今君が口にした言葉、どういう意味かな?」
「どうもこうも、ただの独り言だよ。あるだろ、時々意図せずに考えが口に出ちゃうことって」
ドラコは目を細めて俺を見た。何かを探るように。
「別に驚く事じゃないだろ!お前の父親が死喰い人だって、魔法族ならみんな知ってる事だ!」
会話に割り込んだロンが吐き捨て、ドラコはロンをきつく睨みつけた。
「ウィーズリー、僕の父上は死喰い人じゃない。それ以上言ったら名誉棄損で訴えてやるぞ。もっとも、お前の家に賠償金が支払えるとは思えないがね」
「なんだと!」
立ち上がったロンに、ドラコの後ろに控えていたごつい男の子の一人が飛び出す。えーと、多分ゴイルって紹介されていた方の子だ。あまりの体格差に、ロンが負けるのは目に見えていた。しょうがねぇなと俺はその間に身を挺して割り込もうとして。
「ぎゃあ!」
俺が何もしないうちにゴイルが悲鳴を上げた。ブンブンぐるぐると腕を振り回すゴイル。よく見ればその手の指にはねずみが噛みついている。振り回されまくって、ねずみはついに窓に叩きつけられてポトリと落ちた。ドラコ、クラッブ、そして指を押さえたゴイルは悪態を吐きながら足早に去って行った。入れ替わるようにやって来たのはハーマイオニーだった。
「一体何をしていたの?」
どうも騒ぎを聞いて駆けつけてきたらしい。うーん、さすが委員長。ロンはハーマイオニーではなくぐったりしたねずみを掴み上げていた。叩きつけられた衝撃でさぞ弱っているだろうと思ったら、なんと寝ていた。……ねぇ、このねずみ今のうちに縊り殺さない?……何いきなり物騒な事言い出したの?ロンのペットに何か恨みでもあるわけ?……個人的には何もないけど。お兄映画観たんでしょ、このねずみさえいなきゃ例のあの人は復活しない。かもしれない。……かもかよ。ああ、でも思い出した。このねずみ見てなんか思い出しそうだったのそれだ。でも正直な、人のペットを勝手に殺すのはどうかと思うし、そもそもいくらねずみの姿でもこれ殺人じゃないか?……言われてみれば殺人かも。……じゃあダメだ。俺たちは殺人を平気で行える『死喰い人』とは違う。そうだろ?
「マルフォイは『例のあの人』が消えた時、魔法で操られていたって言い訳をして罪を逃れた1人なんだ。でも、パパは信じていない。さっきアダムが言ったように、あいつの父親は間違いなく『死喰い人』さ」
ロンがハリーに説明する声。死喰い人、という言葉には嫌でもあの日の事を思い出させられる。……ママが殺されて、パパが泣き崩れていたあの日ね。……ああ、今世で初めて幸せが欠けたあの日だよ。
「さっきも言いましたけど、あなた達、急いで用意した方がいいわ。運転手に聞いたんだけど、もう到着するそうよ」
「ああどうも、ご親切に!」
「それと、到着もまだのうちから問題を起こすのはどうかと思うわ!」
「僕たちはケンカなんかしていない!」
相変わらずツンツンした態度のハーマイオニーと、それに噛みついているロン。受け流すという事が出来ない辺り、やっぱり子供なんだよな。ハリーもハーマイオニーへの心証は悪いようで、着替えるから出て行ってくれとつっけんどんな言い方をする。
「あなた、着替えるなら私のコンパートメントに来るといいわ。女の子ばかりだから」
個室から出る瞬間、ハーマイオニーはイヴにそう声をかけた。イヴはふわりと笑顔を浮かべ、ありがとうと立ち上がる。
「じゃあ、お兄様、私少し着替えてくるわね」
「ああ」
ハーマイオニーとイヴが出ていくのを見送ると、俺は悪態を吐きながら着替え始めた2人に混じりながら、自分も着替えるために服に手をかけた。制服と黒のローブに着替えると、魔法使いという雰囲気が増す。やはり何事も形からだな。ロンはローブもお下がりなのか、少し丈が足りていなかった。子だくさんの家は大変だな。うちはうちで、双子だからなんでも二つ必要で、親には苦労をかけていると思う。あ、ロンのとこ双子もいるんだったな、そりゃ大変だわ。
列車は徐々に速度が落ちてきているみたいだし、空ももう夕方から夜に変わりつつあった。到着のアナウンスに、先程の無邪気にはしゃいでいた顔から一転、ハリーもロンも緊張した面持ちになる。このまだ幼い彼ら2人とあの女の子は、魔法界の未来のために、ハリーが生き延びるために、この先戦っていかなきゃいけないのか。……ねーねー、外国の女の人って乳でかいイメージだったんだけど、やっぱピンキリなんだね。ちっぱいのも私好きだけどさ。もっとみんなボインボインだと思ってた。いや、これから成長するのかな?……しんみりした雰囲気が台無しだよこの馬鹿!