ハリポタ世界に双子転生したった 作:島国の魔法使い
朝起きて、俺は部屋に鏡がない事に気付いた。これじゃ身だしなみが整えられないじゃないかと言うと、同室の男の子らはみんな変な顔をした。全く、いくら十一歳だからって油断し過ぎだ。モテ戦争はすでに始まっているというのに。清潔感を基本とする身だしなみチェックはモテへの基本だと説いたら、一歩引かれた。なんでだ。……お兄、トランクに折り畳みの鏡入れといたから使えば?……え、マジかサンキュ。用意良いじゃん、といそいそ取り出すと、閉じた状態の鏡は超デコられていた。星とか月とか黒猫とか薔薇とかキラッキラだ。皆の「うわぁ」という声が聞こえる。……美少女戦士っぽく仕上げておいたよ!……ドヤ顔が浮かぶが全然嬉しくねぇよ。使うけど。
朝ごはんは昨日の大広間で食べられるらしい。俺たちは寮の皆で食べに行くことにした。昨日はほとんど会話もないまま爆睡だったしな。とはいえ、自己紹介は歓迎会で済ませてある。俺の同室は説明不要のハリーとロン、純粋なネビルと特技がイオナズンのシェーマス、そして都会っ子のディーンだ。せっかく俺が注意してやったのに、ロンはよだれの跡がそのままだし、ハリーは豪快な寝癖をつけたままだ。ロンの顔の洗い方は正直水で湿らせただけで意味がないんだよ汚ねぇな。そんなだから昨日も鼻の頭に泥くっつけてんだよ。……でも、高学年になったらロンって彼女出来るよ?覚えてない?……マジかよ爆発しろ。いや爆発はシェーマスの役か。シェーマスの爆発に巻き込まれろ!……とんだとばっちりじゃんシェーマス君。
シェーマスとディーンも身だしなみには気を使わなくていいと思っているらしく、ボタンを掛け違えていたり、シャツがだらしなくズボンから出ている。ネクタイも発火寸前のタコ足配線の電気コードくらい酷い。唯一、ネビルだけは俺の助言を受け入れ、綺麗に髪を整えて服もきちんと着ていた。
昨日通って来た道をそのまま逆に進むだけでいいはずなのに、俺たちはなかなか大広間に辿り着けなかった。遊園地やアトラクションに遊びに来ているならともかく、普段生活する場所で階段が動いたり扉が消えたりするのは勘弁願いたい。下っているはずなのにいつの間にか上っているとかエッシャーかよ!……あ、ありのまま今起こった事を話すぜ!……分かった分かった、いいからお前は黙っててくれ。今本当にそれどころじゃないから。ようやく大広間に辿り着くと俺たちはへとへとだった。
「これを毎日通うなんて無理だよ」
すでに泣きそうになっているネビルに反論する奴はいない。泣きはしないが、皆思っている事だ。すぐそばにいた上級生の女性たちが、そんな俺たちにくすくすと笑いを漏らした。その中の一人、活発そうな雰囲気の黒人女性が大丈夫だと笑う。
「あたしたちも最初の頃はそう思ったけど、案外すぐ慣れるわよ。とくに大広間は毎日通うしね」
ドレッドヘアを揺らして、白い歯をにっこりと見せる。健康そうな雰囲気がいい。その後ろで頷いている明るい茶の髪をポニーテールにした女性も明るくて元気な雰囲気だ。グリフィンドール女性はこのタイプが多いのか。
「秘訣は自力で解決しようとしない事よ。城のいたるところに絵があるでしょ?困った時は中の人に聞くといいわ、みんな親切だから」
「礼儀正しくね」
アドバイスを聞きながら、俺たちは顔を見合わせる。絵に聞く、という発想はなかった。だが考えてみればグリフィンドール寮の入り口のレディは会話が出来る。ならば他の絵画も会話が可能という事だ。
それから俺たちは朝ごはんに取りかかった。昨日お腹がはち切れそうだと言っていたハリーは、朝ごはんもモリモリ食べた。若いな。俺はネビルとトーストのジャムを何にするか相談しながら、ゆっくりと食べる。シェーマスたちもハリーやロンと同じく勢いよくベーコンに齧りついてほぼ丸のみにしている。よく噛まないと消化に悪いんだぞ少年たちよ。……何、お兄もう老化が始まってるの?……始まってないから。っていうかイヴ、あんまり頭に割り込んでこないな。……まあね、こっちの寮はかなり気を使うから、正直それどころじゃない。でも時々探りは入れて、生ハリポタ実況中継は楽しんでるからそのままよろしく!……よろしくって言われても。別に実況とか関係なく普通に行動しているだけだから。
まあ、イヴがちょいちょいこっちの考えを盗み聞いてるのは知っているし、必要もないとこでちゃちゃ入れて来るのは今さらだしそれはいいんだけど。いやよくないのか?昔は抵抗があったはずだが、この世界に生まれてこっち、頭の中に割り込まれることが多いので抵抗がなくなっている。多分、思春期をとうの昔に終えてしまっているせいもあるだろう。慣れって怖い。
お腹が満ちてきたころ、急に頭上が騒がしくなった。何事かと上を見ると、目を疑う様な数の鳥が一斉に窓からなだれ込んでいた。……あれは何だ?!鳥か?!飛行機か?!いやふくろうだ!……べたなボケが聞こえたが無視だ。驚いた顔のディーンに、ふくろう便だよとシェーマスが教えていた。母親から手紙が来る予定なのだそうだ。へえ、と呑気に相槌を打っていたら、俺のところにもふくろうが来た。ネビルとロンにもだ。俺は額のあたりに目立つ傷のあるふくろうに礼を言って、足の手紙を取ってやる。ふくろうはそのへんの食べ物を適当に咥えると、代金はもらっていくぜと言わんばかりに俺を一瞬振り向いてから飛んで行った。何あのふくろう男前。
手紙は父親からだ。俺とイヴ、二人に宛てられている。……読んで、聞いてるから。……俺は手紙を取り出して、心の中で読んだ。父らしい硬い文章だったが、要約すれば「入学おめでとう。どの寮に入っても、君たちが君たちらしくある事を祈っているよ。愛してる」だろう。子供に愛してるとサラリと言えちゃう辺りがさすが外国。……その点、お兄すでに染まってんじゃん。……俺、お前に口が裂けても愛してるとか言わないから。ネビルは祖母からの手紙だったみたいだ。ちらと見えたが長々と書き綴られている。ネビルは複雑そうな顔で、しかしそれをちゃんと読んでいた。
「俺もふくろう買ってもらおうかな」
ディーンが羨ましそうに呟く。ロンはそれに「学校のふくろうを使えばいい」とアドバイスした。さすが、兄が何人も通っているだけあって詳しい。……私たちもパパに手紙返さなきゃね。……そうだな。寮が別々になったと知ったら、驚くだろうか。だが、多分そう気にしないだろう、そういう人だ。……いいパパだよね。……ああ、尊敬してるよ。この学校に来てからは特に。グリフィンドール寮の出身なのにスリザリン寮の母を愛した人。これが讃えずにいられようか。そう、美人ならどこ寮かとか関係ない!……パパのこと馬鹿にしてる?……してないよ、なんで?
その後、寮監のマクゴナガル先生から配られた時間割に従って、俺たちは授業のある教室へ向かった。先輩からのアドバイス通り絵に道を聞くとすんなり教えてもらえる。ただ、親切心から分かりにくい近道を教えてくれる絵の人もいて、城の中に慣れていない俺たちは二次遭難しかける事も度々だった。
授業は楽しかった。魔法界で十一年生きてきた俺は、ある程度魔法に慣れている。だけど未成年である以上、自分で杖を振って何かをするという事はなかったため、理論や仕組みを知るのは面白かった。転生した時に魔法が実際あると知って驚いたこともあるので、多分俺はマグル育ちと魔法界育ちのどちらの気持ちも分かる。だからどうっていう事もないけど。……ねえねえ、私マッチを針に変えろって言われて爪楊枝になっちゃったんだけど。……知らんがな。その授業まだ受けてないから。俺は呪文学のフリットウィック先生の説明をノートに書き写しながら、頭の中で突っ込みを返した。ゴブリンの血でも入っているのか、この先生はとても小柄で、山の様に積んだ本の上に立って授業をする。ぐらぐらしないんだろうか。もっと適切な踏み台がなかったのだろうか。気にはなるが今までもずっとこれでやって来たんだろうなという手慣れた感はある。今さら俺がどうこう言う事じゃないとは思うが。でも気になるなあ。
その次の授業は変身術だった。寮監のマクゴナガル先生が担当している。綺麗にまとめ上げた黒髪を天辺付近でくるりと輪にして留め、四角い眼鏡をかけている。もうそれだけできっちりとした性格だと分かるが、何よりぎゅっと引き結ばれたような口元が、余計にそれを表している。でも、ああいうタイプの人ほど恋人の前では甘えん坊だったりすると聞いたことがある。髪をほどいて恋人に甘えるマクゴナガル先生を想像して、俺は頬を緩めた。
「最初に言っておきますが……」
俺を眉をしかめて訝し気に見ながら、マクゴナガル先生。
「私の授業で学ぶ変身術は、ホグワーツで学ぶ魔法の中でも複雑で危険なものに当たります。ふざけたり、いい加減な態度の生徒は即刻教室から追い出し、二度と授業は受けさせません。よろしいですね?この説明は一度しかしません。それがどういう事か分かりますね?」
じろりと教室を見渡すマクゴナガル先生に、隣の席のネビルがビクンと跳ねた。俺はその背を撫でてやりながら、ツカツカと教卓に近づき杖を取り出す先生を見つめる。マクゴナガル先生は「よく見る様に」と言うと、机を軽く杖で叩いた。ぐにゃ、と机が歪んだと思った次の瞬間教卓のあった場所には豚がいた。ブヒブヒ、と鳴いて豚は生徒に顔を向ける。くるんと巻いた尻尾にだらしのないピンクの体、上に向けた大きな鼻からフゴッと音が漏れる。豚だ。……飛べない豚は、ただの豚だ。……その一言のためにずっとタイミング計ってたの?暇なの?……いや、今授業中。でも魔法史の授業、くっそ面白くないからつい。……妹の暇人加減に驚く俺と、純粋に驚く生徒たちの前で先生は杖で豚を叩き、机に戻す。ネビルも感激したようにふぁーっとかいう謎の感嘆が漏れていた。気持ちは分かる。なんか台無しにされたが、俺もそんな気分だ。
マクゴナガル先生はその後、俺たちにノートを取らせる。変身術の基礎的な事。なるほど、これは危険な学科だ。というかむしろ危険すぎるんだが大丈夫なのか?箒をチョコスティックに変えて食べさせた後、運悪く体内にある時にその変身が解けてしまったら、とか。考えるだけで胃が痛いし、それ新種の殺人トリックかな?お腹に箒がぶっ刺されてる死体を見て、まさか被害者にチョコスティックを食べさせたのが手口だったとは思うまい。……じっちゃんの名にかけても、真実はいつも一つだったとしても、頭がおかしいか魔法使いでもない限り絶対解けない迷宮入り事件だよね。……前世で名探偵が現場を見て捜査した後、推理パートで「事件の鍵はチョコスティックにあったのです」とか言い出したら嫌だわ。苦情殺到するわ。……消えた凶器の正体は氷とか言われた方がまだマシなレベルだね。……正体不明の粉を舐めて「毒だ」とか言うくらい可愛く思えるわ。
その後も教科書の中の悲惨な事件を延々読み聞かせられた後(前世の未解決事件は全部魔法使いが犯人だったとかいうオチな気がしてきた)、俺たちはマッチを一本手渡された。針に変えてみろ、というお題だ。何この無茶ぶり。
「無理だよ……」
弱気なネビルの声が聞こえた。俺は教科書の実践のコツを読み上げてやりながら、ネビルを励ましつつ自分でもやってみる。ピンと細長く硬い一本の針。それを思い浮かべながら杖を軽く持って、マッチに触れる。よし、何も起きない。何がダメなんだよ言ってみろよこのマッチめ。正確なイメージを持ち、杖を対象に触れさせてそのイメージを伝えるように魔力を注ぐ。呪文学のように決まった呪文もなく、杖を振る動きもない。この変身術というのは驚くほどの集中力と想像力が必要の様だ。授業が終わるギリギリで、俺はなんとかマッチをマッチ以外のものに変える事に成功した。銀には光らないが形はそれっぽい。うん、これはあれだ、間違いなく
「皆さん、そこまで。……どうやら針に変身させることが出来たのは、ハーマイオニー・グレンジャーだけのようですね」
マクゴナガル先生が、ハーマイオニーの針をクラス中に見えるよう持ち上げる。銀の針は刺されたら痛そうに先が尖り、照明の光を受けて見事なまでに輝いていた。初めての授業でここまで完璧なものを見られる事はそうないと、マクゴナガル先生は微笑みを浮かべてグリフィンドール寮に点をくれた。そして俺に向かっても笑みを向ける。
「あなた達は本当に双子なのですね」
言われた事は全く嬉しくないが、マクゴナガル先生の笑顔が可愛かったから良しとしよう。
夕食の席で、俺は周りを見渡してみる。一番端のスリザリンのテーブルにイヴの姿を見つけて、その妹がとんでもなく可愛い女の子と話をしているのを見てびっくりする。え、え?何あの子めっちゃ可愛い!ちょちょちょ、ちょっとイヴさん何、誰その子!……ダフネ・グリーングラス。私もよく知らない。けど、喋ってみた感じ結構好きな感じがする。……うん、俺も好き。趣味は?好きな食べ物は?俺の事好きになりそう?……お兄うっぜえ。あー、確かにお兄の好きそうなタイプの顔かなぁ。でも初対面でそのテンションで迫られたら、私なら今後一切恋愛対象にはならないからね。……ええー、そんな酷かった?……うん。マジ引くから気を付けてね。ダフネは聖二十八族のお貴族様の子だけど、そこまで鼻にかけてこない子だよ。今日一日一緒にいたけど、純血主義ではあるけど、率先してマグル出身をいじめに行くタイプじゃないね。別に庇いもしないけど。……純血主義なのか。……スリザリン寮の九割は純血主義だよ多分。……何その寮怖い。
ダフネさんは優雅に微笑み、イヴと何かを話している。口元に手をやる仕草や、少し首を傾げて長い金の髪をさらりと流す辺りなど気品がある。貴族出かぁ、敷居は高いが可愛いなあ。
「何を見てるの?」
前の席に座った黒髪の少女、グリフィンドールの同級生、パーバティ・パチルが俺に尋ねた。昨日欠伸を目撃された東洋系美人だ。口元を笑みの形に上げ、ん?と俺の返事を待っているのがめっちゃ可愛い。可愛い子多いとかホグワーツ最高かよ。
「妹を見てたんだ。上手くやってけてるか心配でさ」
本当は妹の隣を見ていたのだが、俺はそう答えた。パーバティはそれに眉を寄せてそれは心配ねと答える。
「私も双子なの。妹はパドマっていうんだけど、彼女はレイブンクローだったわ。双子だし、てっきり同じところになると思っていたから、ちょっとびっくりしちゃった」
「はは、俺もだよ」
「しかも、あなたの妹さんはスリザリンでしょう?良い噂聞かないし、心配よね」
何この子めっちゃ優しい。俺パーバティと結婚する。思わずプロポーズしかけそうになる俺の隣でネビルがでもと声を上げる。
「彼女、スリザリンだけど僕のヒキガエルを探すのを手伝ってくれたんだ。その……悪い子じゃないんだよ」
何この子めっちゃ良い子。俺は思わずネビルの頭をいい子いい子したが、本人には嫌がられた。なんだ、グリフィンドール寮も捨てたもんじゃないな。こんなに優しくて良い子が多いんなら大丈夫だ。いつかスリザリンとも和解できるといいよな。……無理でしょ。……無理って言うなよ。
ちょっと気分が軽くなって、俺は夕飯を終えて寮に戻る。ネビルはまだ全然道を覚えていないみたいで、ちょっと油断するとすぐわき道に逸れる。俺はある程度覚えたので目印にするものをネビルに教えてやった。
「絵の内容や甲冑を目印にするのは止めとけよ。何があっても変わらなさそうな、動かないものがいい。って言っても、ここじゃ何がどうなるか予想付かないけどな」
「本当だね。僕、朝はここで綺麗な取っ手の扉を見たんだけどな」
「え、マジ?扉まで動くの?ちょっと勘弁してほしいよなぁ」
だはーっと息を吐き脱力して肩を落とす仕草をすると、ネビルは何が面白かったのか大声で笑った。祖母からかなりのプレッシャーをかけられているネビルは、授業もここでの生活も、絶対に失敗しない様にしなければとずっと肩に力が入りまくっている。そのネビルが年相応に笑い転げるのが嬉しくて、俺は無意味にその脱力の仕草を三回も続けた。
「も、もう、止めてよアダム、お腹が痛いよ!」
「笑わなきゃいいだけだろ、だはああああああっ」
「くくくっ、あははは!もう止めてってば!」
結局ネビルは談話室に到着するまで笑い転げ、いや本当何がそんなに面白かったのか分かんないんだけど、明日は筋肉痛になっちゃうと最終的にはぷりぷりしていた。……よっぽどお兄の顔が変だったんでしょ?……同じ仕草したらお前も同じ顔になるんだからな。……私は美少女だからそんな顔しませぇーん!……言いながら変顔してるのが目に浮かぶのは何でだろうな。多分本当にしてはいないんだろうけど。
寝る準備を終えてベッドに潜ると、まだ起きている他のルームメイトたちの話し声が聞こえる。ハリーとロンは今日、教室移動の時にあの四階の立ち入り禁止の廊下の入り口をこじ開けようとしたらしい。クィレル先生のおかげで何もなかったが、もし助けが入らなければ、管理人のアーガス・フィルチにどんな罰則を受けさせられたか分からなかったと愚痴っている。用務員のおじさんも大変だな。正直、この分かりにくい城の中で迷子になり、扉をこじ開けてでも早く次の教室に行こうと急いだハリー達の気持ちも分かるし、死ぬと脅されてる廊下に入ろうとしている生徒を怒って止めるフィルチさんの気持ちも分かる。多分。……いや、フィルチさんはデフォルトで結構根性悪いよ?……そうなの?でも普通止めるし怒るよね?しかも猫飼ってるっていうじゃん。……ミセス・ノリスっていう猫だよ。……動物好きだぞ、きっと良い人なんだよ根は。……動物好きは良い人って、不良が捨て猫拾ったら惚れる委員長かよチョロ兄って呼ぶぞ。ん?チョロ兄だと私以外にあと四人兄弟が必要だね。……よく分からないがチョロ兄は止めろ。
ところでお前、寮の方はどうだ?……気になるならこっち覗きにくれば?……頭覗いたら嫌がるから、出来るだけ覗かない様にしてやってんだろうが。……それはどうも。まあ、ぼちぼちってとこかな?一部の貴族出が威張り散らしてるのが鬱陶しいけど、話合わせておけばいいし。中にはそんなに悪い子じゃないのもいるしね。親の思想をめっちゃ受けてるけど、言ってもまだ十一の子供だし。ま、可愛いよね、まだ。先輩はキッツイけど。……九割が純血主義、か。……実際は純血主義だと言ってるけどそんなに気にしてない人とか、本当は違うよって人もいるだろうけど。間違っても寮内で「自分、マグル大好きっす」とか言えないよね。次の日からいじめられるわ。狡猾に大人からバレない様に。……何その寮怖い。……なんせ狡猾なのが取り柄の寮らしいからね!……嫌な寮だな。……ハリポタでも悪者扱いだったからね、スリザリンは。まあ、実際嫌な奴も多いんだけどさ。あ、でも寮は思ってたより過ごしやすそうだよ。スリザリンって地下牢にあるんだけど……待って、地下牢って言った?牢屋なの、スリザリンの寮?……牢屋らしいよ?でも中は結構豪華と言うか、落ち着いた雰囲気でいい感じだよ。静かで暗くて、そう、明かりを消すと一面淡い光が瞬く飛行石の欠片の洞窟の様な。ビカビカに光ってないから、お年寄りの目にも優しい雰囲気。……その例えじゃ分からんわ。……そう?ピッタリな表現だと思ったのに。
俺は息を吐いた。妹の頭のおかしいのは相変わらずのようで、なんだか逆に安心した。寝るの?と尋ねてきた声に、寝ると答えてお休みを言い合う。気付くと周りも静かになっていた。俺も目を閉じて、明日の授業は何だったか思い出すより早く夢に落ちた。