ハリポタ世界に双子転生したった 作:島国の魔法使い
「なあ、宿題が多すぎると思わないか?」
寮の談話室で宿題を片付けていると、ロンがそう言って羽ペンを乱暴に机に置いた。ロンが今やっているのは薬草学のレポートだ。とはいっても、そんなに小難しいものじゃない。薬草学の授業は黄色くてはちみつが大好きな『例のあのキャラ』を思い浮かばせる体型の、マスコットみたいなスプラウト先生が担当する授業だ。温室で育てられている色々な魔法の植物を学ぶ。俺たちに出された宿題は、初日に温室で見て説明された植物の中からひとつ選び、それがどんな植物で、それに関してどう思ったかを書けというものだ。前半は教科書を書き写して、後半は感想書くだけの簡単なお仕事だと思うが、ロンには辛いらしい。俺は昨日の夜にあった天文学の、星の名前を書き写す宿題の手を止めてロンに助言をしようと口を開く。
「あら、まだ薬草学の宿題をやっているの?」
それより早く、ロンの背後から声が聞こえる。ふわふわと栗毛を揺らしながら、ハーマイオニーがロンを見下ろす。ロンは椅子に座っているから必然そうなるのだが、なんというか気のせいかもしれないんだけど見下されてる感が凄い。ロンもそう感じたのか不機嫌丸出しに「あっち行けよ」ときつく言った。ハーマイオニーはツンとしながら去って行く。他の女子に混ざらず、独りで本を読んでいる。宿題はもう済ませたのか、早いな。今日の変身術で出された宿題は結構な量だったが。
「本当、嫌な奴だよ。まだやってるの?だってさ!」
ハーマイオニーの声を真似してロンが言う。正直似てないが、嫌な奴だというのは伝わった。俺はちょっと考えて、もしかしたらハーマイオニーは宿題を手伝ってくれようとしたんじゃないかと思う。まあ、第一声はあまり良くなかったが。それをロンに伝えると、ロンは嫌そうな顔をしておえぇっと吐く真似をした。
「冗談じゃないよ、あんな奴に頼むくらいならトロールに勉強を教わった方がまだマシさ」
「それこそ冗談だろ、トロールにそんな知能があるわけない」
「でも、少なくともトロールは僕に知ったかぶってはこない」
ロンがそう言って、再び羽ペンを手に持つ。俺はそれに肩をすくめ、ハリーが「トロールって?」と聞くので、それに答えた。俺の説明に、何故かハリーではなく隣のネビルが小さく悲鳴を上げたのはなんでだ?
「アダムの説明、なんでそんなグロテスクなんだ?」
会話に混ざっていなかったシェーマスが眉をしかめて言った。俺はただ、もし手ぶらでトロールに会ったらとても悲惨な事になると伝えただけだったんだが。……棍棒で頭蓋骨ぐしゃああとか、首を捻り千切られてぶしゃああとか言ったら引くに決まってるじゃない。……ええー、臨場感出しただけだったのに。
「ちょっと失礼?あなた方、今日の変身術の宿題に手を付けてもいない様ですから、無駄なおしゃべりは止めて、早く終わらせた方がいいんじゃないかしら」
「うるさいな!入って来るなよ!」
ロンが怒鳴る。ハーマイオニーは再びツンとしてさっきの場所に戻っていく。ロンはイライラして羊皮紙の端をくしゃりと握った。
「ハーマイオニーってお節介だよな」
ディーンがぽつりと言った言葉を皮切りに、ロンを中心にハーマイオニーの悪口合戦が始まった。俺はあんまりいい気分じゃなかったし、ネビルもそうらしかったが、他の男子は言いたい放題だ。ロンは目立つのか、よくハーマイオニーに今の様に絡まれるため、言いたい事は山ほどあるみたいだった。
「いい加減、その辺にしておけよ。相手は女の子だぞ?」
「はあ?女の子?ハーマイオニーが?」
小馬鹿にしたようなその言い方に、俺はカチンとくる。いやいや、相手はまだ子供だ。俺は大人だ。ムキになって怒ってどうする。俺とロンの間の不穏な空気に、ハリーが「やめよう」と声を上げる。
「ハーマイオニーの事で僕たちがケンカするのはおかしいよ。そうだろ?」
ロンはその言葉に「そうかも」と言って口を閉ざした。とりあえずもう悪口は言わないようだ。気になってハーマイオニーを見るが、さっきまでいた場所に姿は見えない。さっき無駄なおしゃべりを止めに来たくらいだ、多分聞こえてただろうな。……ロンとハーマイオニーって確かにこういう雰囲気だったけど、ちょっと険悪になるの早すぎないかな?ハロウィンまでは決定的なケンカはなかったんじゃなかった?……いや、俺に聞くなよ。……こっちもなんか、私の知ってるハリポタとなんか違う気がして。ちょっと不安。……不安?……原作通りに事が運ばないかもって事。ハーマイオニーがハリー達と友達にならないとか、『例のあの人』が1年生の時点で復活しちゃうとか。そんな事になったら大参事スーパーロボット大戦始まっちゃうよー。ゴング鳴らしちゃうよー。……ロボット大戦は始まらないよ?大丈夫イヴさん?何、そっちの寮で何があったの?!
心配で覗きに行ったら、ブロックされた。妹曰く、これは『ATフィールド』だそうだ。因みに俺もやろうと思えば出来る。前世では大体ブロックしっぱなしだったが、こっちに生まれてからブロックされたのは初めてだったのでちょっと驚いた。が、直後に「今お風呂入ってるから覗くな変態!」と言われたので納得した。別に視界は共有しないが、今どこを洗っているとか次はどこを洗うとか考えているのを聞くのはちょっと気まずいからな。……ところで、私のおっぱい全然大きくならないんだけどなんで?……別にお前のおっぱいに興味なんて欠片もないよ!言わなくていいよ!
自分の宿題を終えた後、まだ唸っているロンの宿題を手伝ってやって、俺たちは部屋に戻った。ネビルにはあらかじめ助言していたので、時間はかかったが一人でちゃんとやり遂げていた。それにそもそも、ネビルは薬草学が得意の様だし。
勉強で疲れたのか、あまりだらだら喋らずに手際よく寝る準備を整えて皆ベッドに潜り込む。俺もそうして、目を閉じた。……そういえば明日はお兄と合同の授業だね。……ああ、魔法薬学か。……私、今寮の皆と仲良くしようと関係を築いてるとこだから、出来れば話しかけないでね。特にダフネに変な事言ったら怒るよ。……え、ダメなの?ダフネさんとはお友達になろうと……無理だから。言ったでしょ、彼女は純血主義なの。適当に話合わせたりできないでしょ、お兄は。……お前は出来るのか?……出来るよ。というか、してる。そうじゃなきゃ、この寮でやっていけない。……俺は動揺してごくりと喉を鳴らした。……別に本気じゃないよ。率先して何かをすることもない。ただ、何かそういう事があった時、止めに入ったりせず、見ているのが今の私の正解なの。……それを感じたのだろう、イヴが少し優しい声で囁く。けどそれは、今イヴが言った事は、いじめに直接加担せず傍観している、といういじめに他ならない。……組み分け帽子ってすごいね。お兄はグリフィンドール、私はスリザリン。ピッタリだったって事だよね。……なんて答えていいか分からないうちに、イヴはおやすみと言って俺の頭から去って行った。
昨夜の妹との会話のショックから立ち直らないまま、スリザリンとの合同授業が始まった。噂ではすでに色々聞いているし、さすがの俺でもセブルス・スネイプの事ははっきり記憶にある。
薄暗く冷たい地下牢の教室。普段城の上の方で暖色と明かりに包まれているグリフィンドールとしては、教室の雰囲気がすでにアウェイ感半端ない。壁の棚にわけの分からないホルマリン漬けの瓶が並ぶ様は、学校の理科室を思い出す。……探せば人体模型もあったりして。夜な夜な学校を歩き回る恐怖の人体模型!……魔法学校的には特に不思議でも何でもないし、見た目はともかくそんなに恐怖は感じないな。……そうだね。ひとりでにピアノが鳴ろうと、モーツアルトの肖像画がこっち見ようと、なんら不思議じゃないね。……肖像画に関してはデフォルトだしな。
いつも通りの脳内会話をする。昨日の事はなかったように。とりあえず、俺はこの事は保留にすることにした。寮内のイヴの立場を悪化させたいわけじゃない。だから、と、俺はイヴの隣で金の髪をハーフアップにしたダフネさんを見る。声をかけるのは我慢だ。いいんだ、遠くから眺めて君の笑顔を見られるだけで!……いや、あまり見て欲しくもないんだけど。……そんな殺生な?!
開始時間丁度になると、スネイプ先生が教室に入って来た。バサリとマントを払って教壇へと向かう。……育ち過ぎた黒い蝙蝠。……バカやめろ笑わすな!……いやいや、これはハリーがそう表現してたんだよ?……だとしても笑わすな!この授業で吹き出したらどうなるか分からないほど俺は間抜けじゃねぇよ。まあ、でもその表現は的確だと思う。
黒い髪と目。服もマントも黒一色で、なんとも闇の中が似合いそうな風貌をしている。映画のスネイプ先生はえらく格好良かったが、実物はなかなか、色んな意味でモテなさそうだ。もっと清潔感出したらいいのに。たとえ髪をサラサラにして普段から小綺麗にして明るい服を着てにこにこしたとしてもあまりモテそうにはないが、今の状態じゃまず恋愛対象になるとかならないとかいう以前の問題だ。……人気だったけどね、あっちだと。……全てを知った上で彼の身の上やら心情を考えるとまあ同情やらなんやら沸いては来るが、正直こうやって目の前にして好意が欠片も浮かばないのはすごい。だってめっちゃ睨んでくるし。……なんでお兄睨まれてんの?睨まれるのはハリーだけなんじゃないの?いつ原作介入したの?……知らん!介入した覚えはこれっぽっちもない!
「出席を取る……」
ゆっくりと、スネイプ先生がそう言って出席簿を広げた。映画ほどではないがまあまあ低音の良い声ではある。耳に妙に残る粘っこささえなければ。……太陽の下で聞くと笑いそうな声だよね。……やめろって!スネイプ先生だって太陽の下で運動くらいするだろ。元気よくラジオ体操とか。
ぶふぉっという変な音が地下の教室に響いた。あ、イヴの奴吹き出したな。スネイプ先生がじろりとイヴを睨むが、自寮の生徒なのでいきなり叱る事はないようだった。イヴは「すみません……緊張して、気管に……」とか弱々しい声を出して誤魔化している。スネイプ先生は気を付ける様にと一言、出席を続けた。……覚えてろよ、お兄ぃいいい!
「ああ、そうだったな。ハリー・ポッター……我々の新たなスターだ」
俺何も悪い事してないじゃん。なんで怒ってんの?と、俺がイヴに首をかしげていると、スネイプ先生が一段と粘ついた、しかし優しい声でハリーを見つめた。俺がチラリとハリーを見ると、ハリーは眉をしかめている。スリザリン生はくすくすと笑い、先程のスネイプ先生の言葉をさらに嫌なものに変えていた。ダフネさんはちょっと口元に笑みを作り、イヴは微笑んでいる。俺は目をそらした。
出席の後、スネイプ先生は演説を始める。見た目にカリスマ性は全くと言っていいほどないが、いっそ詩的ですらあるこの演説に、俺はちょっと感心した。名声を瓶詰にして栄光を醸造し、死にさえ蓋をする。めっちゃ格好良くない?……中二心くすぐるフレーズだよね!……中二って、俺もう中身四十なんですけど?!……大丈夫だよ、お兄。スネイプ先生もいい歳して未だ中二病拗らせてるタイプだから。なっかーま!……嫌だ、スネイプ先生と仲間になるのは嫌だ。……でもって多分だけど、初恋拗らせてるから童貞仲間でもあるんじゃない?……あれ、どうしてだろうな。なんか涙出てきた。
「ポッター!」
泣きそうになっていた俺は、その鋭い声にビクリとした。隣のネビルなんて数センチ椅子から跳び上がっていた。呼ばれた本人はもっと驚いただろう。
「アスフォデルの球根の粉末にニガヨモギを煎じたものを加えると何になるか答えろ」
ハリーは困惑しながらチラリと隣のロンを見た。ロンに正解を聞くなんて、ハリーはバカかな?ロンはこういうことは全然だって、この一週間で十分に分かっているだろうに。ハーマイオニーはハリーへの質問だというのに、高々と手を挙げていた。……正解は眠り薬です。……えっ、イヴ分かるのか?……だってここ、有名なシーンだもん。……俺も見覚えあるけど、普通暗記するものなの?……何言ってるの、国民の一般常識でしょ?
「分かりません」
妹の常識に頭を痛めている間にも、スネイプの質問は続き、イヴの回答は続き、ハリーの分かりませんは続いた。ハーマイオニーの挙手は徐々に高くなり、ついに立って挙手している。ハリーは訳の分からない質問を名指しでされ、泣くか怒るかするかと思ったが、最後の「分かりません」の後、案外落ち着いた声で「ハーマイオニーに聞いてみてはいかがですか?」と返した。シェーマスは口元に笑みを浮かべ、ハリーにウィンクをしている。こらこら、そういうのは教師から見えない様にやりなさい。
案の定、スネイプ先生は不愉快そうにそれを見て、ハーマイオニーには座るように指示し、今の質問の答えを言った。映画を見た時も思ったが、今から魔法を学ぶ子供にする質問じゃないよな。……どう考えても、スネイプ先生はハリーへの初期対応を間違えたよね。君のお父さんとは犬猿の仲だったが君のお母さんとは幼馴染だったんだ、とかいう出だしならきっとハリポタは全然違うお話になっていたに違いないよ。……それはそれで、どんな話になるか気になるな。ハリーの態度が無礼だったとグリフィンドールを減点するスネイプ先生。それを見るハリーの目に怒りの色が徐々に滲むのを見て、俺は首を振った。
その後、二人一組に分かれて『おできを治す薬』を調合する事になった。ハリーはロンと、俺はネビルと、シェーマスはディーンと組むことにした。ネビルは緊張でガチガチだったので、俺はまず調合の手順を一緒に確認するところから始めることにした。この薬は一年生のまだ基礎を知らない俺たちでも、レシピを守れば作れる簡単なものだ。というかそのはずだ。そうじゃなかったら、俺はスネイプ先生の教師としての適性を疑う。他の組が鍋を火にかけたり、材料を砕いたりし始めるのを見てネビルは慌てたが、俺は気にしないでやろうとネビルを引っ張って教科書を広げた。
「要はお菓子作りみたいなもんだ。ネビル、お菓子作ったことあるか?」
「な、ない……けど。お菓子と薬は違うんじゃ……」
「今回に限れば似たようなもんだろ?チョコレートは溶かす前に刻む。溶かすときは直火にかけない。もし直接鍋で溶かすと……」
「ど、どうなるの……?」
「暗黒物体みたいな凄い塊になる。今度やって見せてやるよ。すっごい不味いぞ」
ネビルは想像して震えた。そんなに怖いもんじゃないから。俺は手順を読んで、分量を指さす。
「プリンは好きか?」
「好きだよ」
「プリンは卵と牛乳と砂糖で作るんだが……この分量の比率はきっちりと決まっている。もし間違うと……」
「ど、どうなるの……?」
「カッチカチの甘い蒸し卵になるか、逆にでろっでろの固まってない卵液が出来る。蒸し卵はともかく、でろでろ卵液は不味い。今度作ってやるよ」
「ひい……」
ネビルは首を振った。
「はは、嘘だよ。ともかく、手順と分量は間違えないようにしようって事。手順は俺が読み込むから、ネビルは材料を全部量ってくれるか?きっちりこのレシピ通りにさ。さもないと……」
「す、すごく不味い物が出来るんだね?」
「そういう事。じゃ、始めようか」
ネビルは頷いて、はかりを慎重にセットした。干イラクサを始めとする材料を量る様子を時々見つつ、手順を読む。ざっと見ただけでもかなり簡単に作れる。材料を入れる順番と火加減がコツかな。ネビルが「出来たよ」と言ったので、俺はネビルにヌルヌルと力仕事、どっちがしたい?と尋ねた。
「僕……あんまり力が強くないから……」
「じゃあ、ネビルがヌルヌルだ」
ネビルは「ヌルヌルもあんまり嬉しくないけどね」と少し笑った。うん、この調子だ。ネビルと角ナメクジのゆがき方を一緒に確認してから、俺は蛇の牙を砕き始めた。その間にネビルは角ナメクジをゆでる準備をする。スネイプ先生がドラコ・マルフォイのゆがいた角ナメクジがお手本になると、皆に見る様にと伝えた。ネビルはそれに、ひょいと首を伸ばして見ようとする。そのせいで、手に持っていた鍋が傾き中の水が零れ、ネビルは自分の足元をびしょびしょに濡らしてしまった。
「バカ者!魔法薬を扱う教室で、注意力が足りていない証拠だ!グリフィンドール一点減点!」
スネイプ先生はそう怒鳴って杖を振った。ネビルのズボンは濡れたままだが、床は綺麗になる。怒鳴られて首をすくめたネビルに、お湯じゃなくてラッキーだったなと笑ってやり、俺は次は気を付けてゆがけよと鍋を火にかけてやった。ネビルは落ち込んではいたが、角ナメクジをゆでる作業に入る。牙を粉々にすり潰した後、俺はネビルがゆがいた角ナメクジを刻む作業に入る。ネビルには鍋を洗い、新たに材料を煎じる準備をしてもらう。……ネビルにやらせなくていいの?この先もずっとお兄がそうやって手を出してたら、テストの時に困る事になるよ。……分かってるけど、今はネビルに自信をつけさせてやりたいんだよ。……まあ、いいけど。あんまり過保護もどうかと思うよ?……イヴの助言を受け取って、俺は鍋をかき混ぜる作業をネビルに任せた。まずは少量の水と俺がさっき砕いた粉を入れて、ネビルがよくかき混ぜながら温める。
「いいぞ、ネビル。優しく、一定の速度で時計回りにだ」
「うん、分かってる」
「ふつふつしてきたら……干イラクサを加える。ネビル、さっきより少し早めにな」
「これくらいかな?」
「うーん、多分。そうしたら、刻んだナメクジを投入……っと。ちょっとヌルヌルするはずだけど、どうだ?とろみは出たか?」
「えーっと、うん、さっきよりそんな感じだよ」
俺も鍋を覗いたが、混ぜた跡がスッと残るのが見えるので、十分とろみはついていそうだ。
「じゃあ、仕上げだな」
「山嵐の針を入れるんだね」
ネビルが手を伸ばそうとするのを俺は慌てて止める。もうすぐ完成だと思ったら、気が緩んだらしい。俺は火を止めてからだとネビルに言って、鍋をそっと机に移動させた。まだぐつぐつと音を立てている中に、ネビルに針を入れさせる。硬そうな針はじゅわ、と溶けていく。それを下からすくう様にしてよく混ぜた。
「……どう?」
「いいんじゃないか?……多分だけど」
見た限り失敗はしていないと思うが、なにせ完成品を見た事がないのでなんとも言えない。が、少なくとも変な色や臭いや煙は出ていないし、教科書に書いてある薬の特徴にも合致している。火を消した後、俺はネビルに薬瓶を二つ渡して提出用に二人分詰めてもらう。
「さ、持っていこうぜ」
促す俺に頷いて、ネビルは自分の持っている瓶を見た。その顔は嬉しそうで、俺は思わずその頭を撫でた。そして、嫌がられた。