ハリポタ世界に双子転生したった 作:島国の魔法使い
実は前々から思っていた。なんで魔法使いって箒で飛ぶんだろうな。だってどう考えてもお尻を乗せるのに適さない。鉄棒を跨いで一回転する技を小学生の時にやったことがあるが、正直ナニがアレで超痛かった。……いや、それはお兄のやり方が間違ってたんじゃ……ともかく俺は箒なんて不安定なものに乗るのはおかしいと思う。よって新しい魔法使いの乗り物を提案したい!……例えば?……えっと、ソファとか?……持ち歩き不便過ぎるよ。それに見た目が死神ディストとか嫌すぎる。……死神?何のことか分かんねぇけど、じゃあ軽量化して座椅子ならどう?……前のめりになったらすぐ落ちそう。……安全ベルトつけたらいいじゃん。……っていうかさ、アラビアとかの魔法使いは絨毯で空飛んでるんだけど知ってた?……何それ!なんでイギリスの魔法使いもそうしないの?!
「アダムは箒で飛んだことある?」
俺がどうやって魔法のじゅうたんをイギリス魔法界に定着させるかを悩んでいると、ハリーがそう言って尋ねた。魔法界育ちのロンやシェーマスが箒に乗った時の話をひっきりなしにするので、ハリーは不安らしい。ネビルも祖母から箒に乗ることを禁じられていたらしく、今はハーマイオニーが本で読んだ飛行のコツを説明しているのを、必死に聞いて不安を紛らわせているようだった。
「ないこともない。ただ、俺にはその才能がなくてね。正直、今日の飛行訓練は憂鬱でしかないよ」
「アダムは魔法使いの家で育ったんだよね?」
「ああ。でも、飛べない奴もいれば、飛べてもへたくそな奴もいる。結局のところこういうのは才能と努力次第さ」
俺がそう言った途端、空にふくろうの大群が現れた。配達の時間だ。頭上から一羽のふくろうが目の前に降下し、トットット、と足踏みしてピタリと目の前に着地した。いつぞやのイケメンふくろうだった。俺の前にほらよと言わんばかりに手紙を投げ、ベーコンを咥えて去って行く。心なしか、羽ばたきの音が他のふくろうよりも切れ味鋭い気がするんだが。
「両親から?」
「え?ああ、いや。父からだ。母は昔に亡くなってる」
「あ、ごめん……」
羨ましそうに俺の手紙を見ていたハリーは、ハッとして謝った。俺はいいよと気にしていない事を伝える。ハリーは両親がいない事もあり、手紙を受け取ることがない。以前に一度受け取っているのを見たが、どうやら入学時にホグワーツ特急から城まで案内してくれた大男、ハグリッドからのお茶のお誘いだったようだ。そのせいか、他の生徒たちが手紙を受け取っているのを見る目はどこか悲しそうだ。
俺に届いた手紙は、またもやイヴと俺両方に宛ててあった。父はすごく良い人だが、こういうところはとても物ぐさだ。……支障はないんだしいいじゃない。ほら、読んで読んで。……はいはい。
「ばあちゃんから、思い出し玉が来た」
俺が心の中で読んでいると、ネビルがガラスの玉を目の前に掲げて言った。祖母から受け取った荷物に入っていたようだ。ネビルは首をかしげるハリーにそれが何かを説明するが、「何かを忘れていると赤くなる」と説明しながら握った玉が赤くなってしまった。丁度その時、わざわざスリザリンのテーブルからこちらへ移動してきたドラコがネビルから玉を奪った。後ろに従えたグロッブとゴリル……クラッブとゴイルだよー。……そうそう、その二人と一緒になってニヤニヤとネビルを見下ろす。ハリーとロンは素早くそれに立ち上がるが、何かを言う前にマクゴナガル先生が現れた。
「何事ですか?」
厳しい目がテーブルをサッと撫でる。それだけで、何か悪い事をしたような不思議な感覚になる。例えば、テーブルの上のパンくず。特に散らかしてはいないが、もっとお行儀よく食べれたんじゃないかとか。そういった事が急に気になるのだ。……気にし過ぎじゃない?……イヴから突っ込まれる。でもあの視線に逆らえる人間なんている?
マクゴナガル先生の介入で、特に何かが起きる前にドラコは思い出し玉を置いて去った。ネビルはそれをポケットに入れてドラコを睨む。全く、何であいつはグリフィンドールにちょっかいかけたりケンカをふっかけるんだ?……スリザリンだから、でしょ。こちら側から言わせてもらえば、グリフィンドールはどうしてスリザリンを攻撃してくるんだ?俺たちはまだ何もしていないのに、だよ。廊下ですれ違う時とか、めっちゃ睨んでくるからね?……あー、鶏が先か卵が先かってやつか?……最初はイメージでスリザリンは嫌な奴、グリフィンドールは嫌な奴と思っていたのが、睨んだりいざこざがあったりして、いつの間にか本当にそうなるってのが怖いとこだよね。……寮のイメージか。……言っとくけど、イメージ以前に性格の不一致や心理学的要素がてんこ盛りだからね?……心理学的?……そう。育って来た環境が違えば、好き嫌いだって違うし、セロリが好きって……やめろ訴えられるぞ!……つまり、単純に相手が好きかどうかなんだよね。最終的には。そんで、お互いが好きになる心理を考えてみる、と。お兄、そういう本読んでたじゃん。
言われて、俺はああ、と思い当たる。前世に読んだビジネスのコツ、心理学の本だ。客の懐に飛び込むために、手っ取り早く仲良くなる方法。まず初対面での印象。相手を褒める。共通項を探す。距離を物理的に縮めるなどなど。
有名な例で言えば『吊り橋効果』。一緒に危険な体験をすることで、一気にお互いに好意を持つ事になる。あれは決してただドキドキを勘違いしたという訳ではなく、心理学的なステップを踏んでそうなるのだ。
そういう心理学に当てはめれば、なるほど、この組み分けの寮制度と言うのはなんとも罪作りだ。同じ寮の仲間はどんどん仲良くなる仕組みになっている。ビジネス会話で相手と仲良くなる基本は同意だ。もし自分の考えと違っていた場合でも、返事はまず「YES」から入る。間違っても相手の意見を否定しちゃいけない。だが、他の寮だと否定から入る事が多くなるだろう。「授業かったるいしサボりたい」と言えば、グリフィンドール寮生なら大多数が「そうだね」と答える。でもハッフルパフは?レイヴンクローは?スリザリンはどう答えるだろう?
そんな居心地のいい仲間たちの集団に属していて、果たして他の集団の人間とあえて仲良くなろうとするだろうか?特にスリザリンなんて初対面時にはマイナスイメージが付加されている。相手もこちらに対してそうだ。好意は伝染するが、悪意もまた伝染する。その状態でどうやって相手に好意を抱けばいいのだろうか。……おおう、話を振ったのは私だけど、お兄ってば真剣に考え過ぎだよ。……え、今って真剣な話してたんじゃないの?
そろそろ移動しよう、と誘ってきたディーンに頷いて俺はため息を吐いた。色々考えてはいるが、正直な感想を言えば俺もスリザリン生は苦手だし、あえて友達になりたいと思うやつもいない。あ、ダフネちゃんとか可愛い子は別ね?
午前の呪文学で『机に置いた豆をコロリと動かす』のを練習した後、昼食を食べて薬草学の教室へ向かう。スプラウト先生がたくさん生えている植物の中から、ひとつの葉っぱを指さした。うーん、俺には
「この植物が何か、分かる人は?」
即座にハーマイオニーの手がびゅんと挙がる。風を切る音が聞こえたのは気のせいだろうか。っと、ハーマイオニーを横目で見る俺の視界にネビルの手首がちょこ、と挙がるのが見えた。俺はその手をぐいと掴んで上げさせる。
「はい、ネビル・ロングボトム」
ハーマイオニーの不満そうな視線が痛い。が、ネビルのなんてことするんだよ、みたいな視線の方が近い。俺は指で先生を指して、ほら早く答えろよと急かした。
「……い、イラクサです」
「正解です、ロングボトム。これはイラクサと言います。先日、魔法薬学で材料として扱ったと聞いていますが、その時はすでに干した状態だったはずです。では、この生えているイラクサを扱う時に気を付けるべき事は何だと思いますか?」
ハーマイオニーの手が挙がると同時に、俺もネビルの手を挙げさせる。ちょっと!というネビルの小さな抗議の声が聞こえたが無視した。
「では、ロングボトム。続けて答えられますか?」
「あ、あの……茎や葉っぱに産毛の様な刺があって、触ると痛くなったり、腫れたり……します……」
尻すぼみになるネビル。だが、スプラウト先生はにっこりと笑って「正解です」と答え、グリフィンドールに一点をくれた。俺もネビルにニヤッと笑ってやる。ネビルは赤くなって俯いた。
「もう!勝手に僕の手を挙げないでよ!」
「悪い悪い、でもネビル答えられるじゃん」
「そうだとしても!」
授業が終わると同時に、ネビルと俺は教室を出る。ぷりぷりするネビルに謝りつつ、俺はネビルが内心喜んでいる事に気付いていた。まあ、口元がさっきから笑わない様にしようとひくひくしているからバレバレだ。寮に得点できたのが嬉しいのだろう。
「あんなの、私だって答えられたわ」
ツンとした声がそこに割って入る。ハーマイオニーだ。手を挙げていたのは知っているし、授業での才女っぷりはすでに全員が知っている。あの場面でなぜスプラウト先生がハーマイオニーを無視してネビルを連続指名したのか。それは普段、ハーマイオニーばかりが答えているからだ。それをわざわざ言いに来る辺りが、なんというか……。
「ハーマイオニー。そりゃそうだよ、君に分からない事なんてないもの」
しかし、当のネビルはにこにことハーマイオニーにそう返す。ハーマイオニーは毒気を抜かれた顔をして頷いた。そして、自分がちょっと嫌な言い方をしたと気付いたらしい。
「あー……薬草学は得意なの?」
「うん、僕、この教科好きなんだ」
「そう。じゃあ、今日の宿題一緒にやらない?」
「いいよ!……あ、でも」
「彼も一緒で構わないわ」
ハーマイオニーがチラリとこちらを見る。まあ、根は悪い子じゃないんだよなぁ。俺は乗り気なネビルに水を差すつもりはなかったので頷いた。ホッとした様にはにかむハーマイオニー。うん。やっぱりちゃんとすれば可愛くなると思うんだよなぁ。……まあ、あれだよ。その変身はダンスパーティーまでのお楽しみだよ。……ダンスパーティー?ああ、そういえばあったな。……今からダンス練習しておかなきゃね!……ダンスパーティーか。女の子のドレス姿が見られるとかホグワーツ最高だな。
「箒を選ぶときはなるべく枝がまとまったものがいいらしいわ。そして乗る時の重心は……」
いつの間にか薬草学からハーマイオニーの箒飛行教室へ会話の内容がシフトしている。今から始まる飛行訓練がやはり気がかりの様だ。俺は皆に笑われるのかなー、嫌だなーと思いながらその少し後ろを歩いて行った。
ザ・体育の先生といった風のキビキビした先生が、飛行訓練の担当教師だった。フーチ先生は鷹のように鋭い目つきに、ベリーショートの髪型。運動が得意そうな雰囲気がバシバシしてくる。グラウンドに等間隔で並べた箒。その隣に立つよう指示され、俺は適当な箒の隣に立った。ネビルはうろうろと箒の周りをうろつき、やがてこれだ、とばかりに位置に着いた。さっきハーマイオニーが言っていた、なるべく枝がまとまったものを探していたのだろう。ハーマイオニーもお目当ての箒が見つかったのか、緊張した様子で立っている。というか、今は緊張していない人間の方が少数か。
「こんな箒で空を飛ぶなんて、正気じゃないよ」
俺の呟きに、隣にいたロンが顔をしかめる。いやだって、箒だよ?絶対に絨毯の方が乗り心地最高だよ?……諦めなよお兄。魔女と言えば大鍋と箒。ハッキリ分かんだね。……いや、俺は諦めない。いつか絶対乗り物改革を起こしてやるぞ。
やがてフーチ先生の指示で、一斉に「上がれ」と声が聞こえる。箒を見つめ、俺も上がれと発生する。ピタリ、と手に飛び込んで納まる箒の柄。周りを見れば、一発で成功した生徒は少ないようだ。魔法使いの家で育った子はさすがに何度かやれば成功している。慣れだから仕方ないかな。俺の感覚的には、これは自転車に乗る時の様なものだ。一度乗り方を掴めばそんなに苦労しない。それが証拠に飛行訓練は一年生時のみの教科だ。
ところが、初めての人間に対して嘲りを隠さない人間がいる。ドラコを始めとするスリザリン生の何人かは、未だ箒が手に納まらない生徒にくすくす笑いや、わざと指をさしてこそこそ喋る姿を見せつけた。ネビルはその煽りをくらっている一人で、顔を真っ赤にしながら必死に上がれと連呼する。焦る気持ちでますます上手くいかないという負の連鎖。場所が遠いせいで、背を叩いて落ち着かせてやることも出来ない。眉をしかめてその様子を見る事しかできないのがもどかしい。
ああいう光景を見てしまうと、やっぱりこの二寮が仲良くするのは不可能なんじゃないかと思えてしまう。公平を期すために言えば、グリフィンドールの方に全く非がない事もない。現に「上がれ」と声をかけて失敗したスリザリンの生徒を、シェーマスが「スリザリンなのにできない奴もいるんだな」という類の事を言って笑っていた。それを差し引いても、スリザリンの方が悪質だとは思うが。
「イヴはこれ、得意なの?」
聞こえてきた声に目を向けると、一発で手に収めたイヴはブルドック女子……パンジー・パーキンソン。……そのパンジーに尋ねられていた。逆側にはダフネちゃんがいて、一生懸命箒に「上がって、お願いだから」と声をかけていた。何アレ可愛い。
「得意と言うほどでは。聖二十八族の皆様には敵いませんよ」
「そう?」
微笑んで答えたイヴに、パンジーは「でしょうね」とでも言いたげだ。イヴの隣の純貴族のダフネちゃんが苦戦してようやく箒を手にできたのはなかったことになっているらしい。……まあ、パンジーだから。……その一言で片づけちゃって大丈夫なの?……大丈夫大丈夫。それよりダフネさんからダフネちゃんに呼び方変わってるんだけど。……心の距離を縮めようかと思って。……実際には話すらしたことないのに?
妹に軽く心を抉られる。酷い。
その後、先生から乗り方や柄の握り方の指導があり、俺たちはついに飛ぶことになった。まずは二メートルほど浮いて降りる。二メートルか。俺は自寮から笑われ、蛇寮からバカにされる未来を思い浮かべてため息を吐いた。……お兄。私ね、ハリポタを映画でも観たし、原作も何度か読んだし、なんならイベントで薄い本も買ったんだよね。……ん?いきなりどうした。薄い本ってなに?……それで、この世界に生まれて、思った事があるの。……ハリポタ転生ひゅう~!って?……『
「ネビル!」
いつになく真剣で重いイヴの言葉に首を傾げる前に、周りの空気が一変した。フーチ先生の鋭い声にそちらを見ると、ネビルが空高く浮上していくところだった。黒ひげ危機一髪のごとく勢いよくポーンと跳ねあがった後、今度はきりもみをしながらさらに高度を上げていく。全員が見守るしかなかった。俺たちはまだ一年生で、暴走する箒から友人を助ける魔法なんて覚えていない。
先生なら、とフーチ先生を見ると、杖を出してはいるが迷っているようだった。なぜと思う間に、ついにネビルの手が箒から剥がれる。地面に叩きつけられる姿に、心臓が止まる、ような気分だった。
「ああ、手首が折れてるわ。ネビル、大丈夫ですから。医務室に行きますよ」
涙でぐしゃぐしゃのネビルを立たせ、フーチ先生は他の生徒をぐるりと見まわした。
「箒に触らず、そのまま待つように。空を飛ぶ危険性は今しっかりと見たはずです。それが分からず足を地面から浮かせた者は、退学になる事を覚悟するように」
フーチ先生の姿が見えなくなると同時に、生徒たちが騒めきだす。その中で俺はイヴを見つめていた。パンジーからさっきのネビルが間抜けだったと話を振られ、微笑みながら頷く姿。原作は改変してはいけないと、あいつは言った。そしてネビルが連れていかれて、俺はようやく思い出した。この光景を俺は知っている。
「見たか?あのロングボトムの間抜け面を」
ドラコの声が聞こえた。わざとこちらに聞かせるような声に、側にいたロンやハリーも目を向ける。ネビルのポケットからいつの間にか落ちていた例の『思い出し玉』を拾い上げ、ドラコはお供の二人とネビルを貶める。
「その玉を返してもらおうか。それはネビルのものだ」
ハリーが一歩前に出た。正義感からか、単に怒りからか。やや強い口調のハリーにドラコが一瞬表情を消して見返し、そしてニヤリと笑った。
「ロングボトムのものであって、お前のじゃないだろう、ポッター?」
「僕がネビルに返す。同じ寮の人間の方が返しやすいはずだ」
「確かにね。……だが断る」
ドラコはガラスの玉を宙に放り投げ、落ちてきたところをキャッチして言った。――何か言わなくてもいいのか、イヴ。だが断るって言葉、聞いた事あるぞ。……いいの?そんな事言って。今そんな気分じゃないんじゃない?……まあな。……怒ってないの?……怒ってないと思うのか?だが、それで会話をしなくなるほど俺は子供じゃないしお前との付き合いも浅くはない。……そっか。うん、そうだね。
ドラコがハリーを挑発して、箒にまたがり空に誘う。ハリーはそれを見て、箒にまたがった。
「ダメよ!先生の言葉を聞いていなかったの?」
ハーマイオニーが止める。ハリーはそれに答えを返すことなく飛び上がった。
「どうして後先考えずに行動するのかしら!ネビルの様に怪我をするとは考えなかったの?それに、減点されるかもしれないし、下手をしたら退学なのよ?!」
「落ち着けよ、ハーマイオニー。ハリーは箒で飛ぶのが得意そうだ。ほら」
隣に立って宥めながら、俺も空を見上げる。ドラコがハリーと何かを話しているが、さすがに何を喋っているのかまでは聞こえない。ドラコはガラスの玉を思いっきり振りかぶって投げた。クィディッチではなく野球が流行っていれば、ドラコは強肩として活躍したのではないかと思うような見事な投げっぷりだ。……この一件で、ハリーはクィディッチ選手になる。それは今後の話の展開に、絶対に欠かせない要素だと思ったから。……それに、ネビルは手首を骨折するだけで、大きな怪我はしないし、か?……うん、そう。そう思った。
イヴの声は苦々しかった。手首を骨折するだけ。大きな目的の前の小さな犠牲ってやつだ。ただ、その犠牲を仕方がないと割り切る事は出来ないのだろう。むしろそうであってホッとしたというのが本音だ。ただ、だからといって納得は出来ない。理解は出来るけどな。
見事にガラス球をキャッチしてみせたハリーと、それを目撃して連行していくマクゴナガル先生。城へと遠ざかっていく二人を眺めながら、俺は今学期の終わりの事を考えていた。イギリス魔法界を恐怖の底に叩き落とす闇の魔法使い。それを確実に倒すためには原作を改変してはいけない、か。
それが正しいのかどうか、俺には分からないし、多分――分かる事はないだろう。