ハリポタ世界に双子転生したった 作:島国の魔法使い
かぼちゃは好きです。
ハーマイオニーはあの夜の一件以来、ハリーとロンを避けていた。ロンは知ったかぶられなくてせいせいすると言っていたが、俺としては全く反省の色が見えないロン達に少し腹が立っていた。理由や経緯はどうあれ女の子を危険な事に巻き込んだ、その事に少しも罪悪感がないようだ。むしろ、なんであんな凄い冒険が出来たのに怒っているのかと言いたげだ。……全く、これだからグリフィンドール脳は。……いや、さらりと貶めるのやめて。俺もグリフィンドールの一員だし、ハーマイオニーもグリフィンドールの人間だから。……その内みーんな朱に交わって赤くなるから問題ないよ。大丈夫大丈夫。……全然大丈夫くないやつだろそれ。
なんにせよ、俺もしばらくハリー達とは距離を取りたかったので、ネビルとハーマイオニーとの宿題の会はありがたかった。なにせ、ハーマイオニーといればあちらから声をかけられることはない。ネビルも、ハーマイオニーが丁寧に勉強を教えてくれるのでありがたがっていた。
授業は相変わらず面白かった。あれから頑張って練習したかいもあって、マッチは爪楊枝から針に進化を遂げた。……人、これを成長と呼ぶ。……そうだな。お前もちゃんと針に成長したんだろ。よかったな。……うん、ずっと爪楊枝しか作れなかったらどうしようかと思ってたよ。
ついでに言えば、魔法薬学でも今のところマシなものが作れている。極端な失敗はしていない。ネビルが時々やらかしそうになるが、基本的にはあの授業の雰囲気のせいだ。落ち着いてやらせればそうそう大きな間違いはしない。……時々ドジはかますんでしょ?……だって、ドジっ子担当なんだろ?しょうがない。
薬草学は逆にネビルに頼りっぱなしだ。俺は園芸とか苦手だし、植物の見分けがあんまりついていない。その点ネビルは詳しく丁寧に教えてくれる。……お兄は夏休みの朝顔を毎年枯らしてたもんね。……クラスで植えたチューリップ、俺だけ芽が出なかったのは今も軽いトラウマだ。
呪文学も悪くない。これぞ魔法という感じがして、覚えるのは楽しい。……逆に魔法史は全然面白くないよ。なんだってあんなつまんない授業がこの世に存在するんだろう?……確かに、あの授業は毎回気付くと寝てしまっていてきちんと最後まで受けれたためしがない。……闇の魔術に関する防衛術もどうかと思うよ?くっさい。……にんにくの臭いがなぁ、頭が痛くなるよな。……授業が終わった後、自分に臭いが染みついてるのが嫌。ダフネもいつも、早くお風呂に入りたいわってしずかちゃんみたいな事を言ってるよ。……ダフネちゃんの入浴シーンかぁ。……想像しなくていいから。ロリコンって呼ぶぞ!……ロリコンって俺たち一応同い年だよ?!
天文学はちょっと感じが違って面白いよな。……夜中に授業って今までないもんね。……天体望遠鏡で星を見るとか、なかなかロマンがある。授業というか単に楽しい。……それは同意する。
さて、三頭犬と出会ってしばらくしたある日、ハリーに箒が届いた。部屋で聞いた話だが、本来一年生はクィディッチの選手にはなれない。しかしハリーは規則を超えたのだ。マクゴナガル先生からの強い推薦で、一年生にしてクィディッチチームのシーカーになった。これは百年ぶりの珍事らしい。……わあい、主人公補正ってやつだね!……そだね!って事で、必然ハリーは週に何回かある練習に参加することになり忙しそうだった。俺はクィディッチの良さがあんまり分からないからロンほど喜んではしゃいだりはしなかったが、シェーマスは興奮気味だった。……因みにドラコは歯ぎしりして地団駄踏んでたよ。……坊ちゃんはなんであんなにハリーに突っかかるんだ?ほっときゃいいのに。……プライド高いからね。列車で友達になろうって誘ったのを、ハリーが断ったのをよっぽど根に持ってるみたいよ。……本当これだから坊ちゃんは。
その日も、俺はネビルとシェーマス、ディーンと朝食に向かった。ハリーとロンはもう先に行っていたので、残ったルームメイトで向かう事にしたのだ。途中、ハーマイオニーが一人で歩いていたので声をかけて立ち止まると、シェーマスたちは先に行ってるぜと早足に行ってしまった。残ったネビルと俺は肩をすくめ、ハーマイオニーを誘って朝食に向かう。
「ハーマイオニーのルームメイトは先に行ったのか?」
「ええ、パーバティとラベンダーは仲がいいから」
男の子が六人で一つの部屋を使っているのに、女の子は三人で一つを使っているらしい。聞いた感じでは部屋の大きさは違うようだが、羨ましい話だ。今はまだいいが、これから成長して体もがっしりしてきたら、六人部屋はさぞむさくるしいだろう。……原作では五人だけどね。お兄がいないから。……俺のせいなの?!いや、五人でもむさくるしいけどさ!
「……ねえ、私ってそんなに嫌な女の子かしら」
「どうしたいきなり」
俺はうつむきがちにポツリとこぼしたハーマイオニーを見る。ネビルも驚いて目を向けていた。ハーマイオニーは大広間の方向を見ながら、ため息を吐く。そして歩きながらぽつりぽつりと喋り始める。
今みたいに、ハーマイオニーが側に来ると急に用事が出来たり急いだりして皆が離れていく事。部屋でもパーバティたちと話が合わない事など。
「だってあの子たち、口を開けば男の子の話ばっかりで。私が授業の話をするとすごく嫌がるの」
「男の子の話って、誰が好きかとか?俺の名前は?出てた?俺の事イケメンって誰か言ってなかった?」
「落ち着きなよアダム……」
思わず食いついた俺を、呆れた顔でネビルが引っ張る。ハーマイオニーも少し呆れた顔をして、しかし笑った。
「アダムは人気高いわよ。だからあなたの事も聞かれるの。どんな女の子が好みかとか」
ううん、ここでダフネちゃんの名前を出すと、一気にグリフィンドール女子から総スカンされる気がする。……そして恐らくその予感は当たると思うよ。……やっぱり?
「私だって、そういう話が嫌いってわけじゃないのよ。でも、それ以上に……」
「勉強が好きなんだね」
ネビルが言った。ハーマイオニーはそれに首を振る。
「少し違うわ。私は『勉強ができる私』が好きなの」
「えーっと、それはつまり……?」
勉強が好きというのとは何が違うのかと、ネビルが首をかしげる。俺は意味は分かるが、何を言いたいのかが分からず首をかしげる。
「ようするに、知ったかぶるのが好きなのよ。皆の言う通り、私って嫌な知ったかぶりなんだわ」
「そんなことないよ!僕、君にいつも助けてもらってる!」
ネビルの大声に、ハーマイオニーは驚いた。俺は笑ってそれを後押ししてやる。
「そうだな。ハーマイオニーが知ったかぶってくれなきゃ、この間の魔法薬学でネビルは大鍋を大爆発させるところだった。その前は変身術で危うく自分の手を変身させかけたのを食い止めてた。そうだろ?」
「それに君が助けてくれなきゃ、呪文学で豆を転がすことも出来なかったよ」
にっこりと笑うネビル。ハーマイオニーは頬を赤くして嬉しそうに微笑み、丁度そこで大広間に到着した。俺とネビルは一緒に座ろうと誘ったが、ハーマイオニーは首を振って離れた場所に座る。無理強いするのも良くないと、俺とネビルはシェーマスたちの隣に座った。朝食はいつも通り、トーストにベーコンにサラダとウィンナーなど。置いてあるのはお馴染みのかぼちゃジュースだ。
「そういえばもうすぐハロウィンだろ。皆はかぼちゃ好きなのか?」
俺が尋ねると、全員「もちろん」と頷く。
「もしかして、アダムは嫌いなの?」
「嫌いってわけじゃないけど、あんまり好きでもないかな」
まさかという顔をするネビルに俺が言うと、皆は眉をしかめる。
「じゃあ君、かぼちゃジュース飲まないの?」
「かぼちゃパイも?」
シェーマスとディーンも信じられないと言いたげだ。
「じゃあ、ハロウィンのディナーはアダムにとっては災難だな。当日はかぼちゃフルコースなんだ」
近くで話を聞いていた上級生、ロンの兄のパーシーがそう言って笑った。イヴからそれを聞いていて知っていたが、やっぱりそうかと肩を落とす。食べられないほど嫌いと言う訳ではないが、苦手なものばかりが並ぶ食卓なんて地獄だ。今からハロウィンが憂鬱になる俺に、シェーマスが杖を取り出した。
「じゃあ、アダムのために僕がかぼちゃジュースをワインに変えてあげるよ」
「あー……いや、気持ちだけ受け取っておく」
ハロウィン会場で爆発させるわけにはいかない。彼の特技を思い出して丁重に断る俺。シェーマスは遠慮しなくていいのにと肩をすくめた。そう言えば、ハロウィンに何かあった気がする。猫が可哀想な目にあったような。なあ、あったよな、何か。おーい、イヴさーん?
返事がない。首をかしげてスリザリンを見ると、イヴは金髪オールバックと会話をしていた。見た感じ、フォイフォイが何かをイヴに渡している。何だろう?袋?その隣に同じ袋を持ったパンジーがいるところをみると、皆に配っているのか。お菓子かな?
「そういや、ホグワーツって家庭科室みたいなところはないのか?」
「家庭科室?なにそれ」
ロンが首をかしげる。俺は料理できるところ、と答えながら、そう言えばホグワーツに副教科がない事に気付いた。家庭科と技術みたいな授業はないのか。そうか。調理実習で女子の作ったマフィンをチラチラ見ながらドキドキすることもないのか。
「ぼ、僕、暗黒物体のチョコレートも、でろでろの卵液もいらないよ……!」
何を勘違いしたのか、ネビルが泣きそうな声で俺に訴えた。いや、そういえばそんな話したな。忘れてたよ。俺は今にも席を立って逃げだしそうなネビルを捕まえて宥めながら、目の前のハリー達を始めとする男の子たちを眺める。どう考えても料理とか出来そうにない。こいつら大きくなって自炊する事になった時、ちゃんと生きていけるのか?
とまあ、そんな心配はさておき。毎日毎日必死に過ごしていたら、あっという間にハロウィンの日はやって来た。グッドモーニングからかぼちゃが主張するこの日は、巨大なかぼちゃを口に押し込まれる悪夢で目が覚めた。スプラウト先生が腕によりをかけて作った魔法の巨大かぼちゃをマッシュにして、マダム・ポンフリーが健康のためだと言って子供の腕くらいあるスプーンで俺の口にぎゅうぎゅうに詰め込んでくるのだ。それを冷ややかな目で見ながら「残してはいけませんよ、ミスター・キャロル」とマクゴナガル先生が厳しい口調で言うものだから、俺は必死でそのかぼちゃをもごもご咀嚼しているという、一歩間違えば何かに目覚めそうな、まさに悪夢だった。
深呼吸して落ち着こうとすると、胸いっぱいに広がる甘い匂い。パンプキンパイを焼くこの匂いのせいで、俺はあんな訳の分からない夢を見たらしい。他のベッドのカーテンはまだ開いていない。うなされて目が覚めた俺が一番起きのようだ。……ふぁああ、お兄おはよぉ。……おはよう。早いな、イヴ。お前もパンプキンパイの匂いで目が覚めたのか?……パンプキン?なあに、それ。私いつもこれくらいにおきてるよぉおあああうふ。……欠伸交じりに訳の分からん返事をするな。っていうかそっちは匂いしないのか?めっちゃパンプキンパイの匂いするんだけど。
これだけ充満している匂いに気付かないはずがない。まさかグリフィンドール寮にだけ充満しているのか?……多分、そうかも?いや、逆かな。うちは地下だから。ハッフルパフは確か厨房の近くだし、レイブンクローもきっと匂いしてるんじゃないかな。大丈夫なの、お兄かぼちゃの何が一番苦手って、匂いがダメなんじゃなかった?……マジか。って事は今日一日、授業中もずっとこれ?
――はい、ずっとこれでした。
今日は城中にパンプキンが充満している日らしい。すっごい気分悪い。なにこれー。俺、今日だけスリザリン生になるぅ。地下に住みたいぃ。
などとテンションだだ下げていた俺は、フリットウィック先生の呪文学も半ば死んでいた。いつもならネビルやハーマイオニーと仲良く授業を受けるのだが、今日はちょっとそんな気分じゃなかった。教室の端に座った俺を心配してネビルも端っこに座ってくれたが、授業の途中で気分が悪くなった俺は手を挙げて途中退場し、医務室に向かった。フリットウィック先生には悪いが、後日補習を受けさせてもらおう。
かぼちゃの匂いで気分が悪くて吐きそうだと訴えた俺を、マダム・ポンフリーは呆れた顔をしたが手厚く看病してくれた。天使かなと思ったが、胸焼けを治すためだとくれた薬はかぼちゃよりひどく吐きそうな匂いと味だった。これどっちがマシかって話ですね。
「アダム、具合はどう?」
医務室で大人しく横になっていた俺は、いつの間にかぐっすり眠っていたらしい。薬のお蔭だろうか。ネビルの声で目が覚めた俺は、その瞬間意識に訴えてきたパンプキンに眉をしかめつつも大丈夫だと体を起こした。
「ところで今何時だ?」
「もうディナーの時間だよ。大広間は今頃かぼちゃまみれだと思う」
「もうそんな時間か……」
大広間のテーブルに溢れるかぼちゃフルコースが目に浮かぶ。って、ちょっと待てよ。
「なんでここにいるんだよ、ネビル。ディナーに行かなくていいのか?」
「いいんだ。アダムがこんな事になってるのに、僕だけ楽しめないよ」
「気にするなよ。俺はかぼちゃが苦手だけど、ネビルは楽しみにしてたじゃないか」
「そうだけど……」
ネビルは一瞬迷う様な素振りを見せた後、俺が教室を出た後何があったのかを教えてくれた。二人一組になって羽を浮かす実践訓練で、フリットウィック先生に運悪くペアにされたロンとハーマイオニー。例によってハーマイオニーはロンに口出しをして、ロンはそれを知ったかぶりだと気分を害した。
「ハーマイオニーは親切で教えてくれたんだ。ロンがあんなに怒るのはお門違いだよ」
「ううん……多分、ハーマイオニーの言い方が、ロンには気に障るんだろうな。それにほら、男として女の子に格好悪いところを見られたくないっていう無意識の防衛反応とかもあるんじゃないか?」
「それじゃあ、単なる八つ当たりじゃないか!」
ネビルの言葉はもっともだ。俺は授業の後、ロンの心ない言葉に泣いてハーマイオニーがトイレにこもっていると聞いてため息を吐いた。女の子相手にロンは何をしてるんだか。
「僕、声をかけてあげたかったんだけど、女子トイレには入れないから」
同室のパーバティとラベンダーが声をかけに行ったらしいが、ハーマイオニーは出てこなかったそうだ。あの二人ともあまり上手くはいっていないみたいだったしな。せっかくのハロウィンだっていうのに、可哀想にハーマイオニーはトイレで泣いているのか。
「ロンはハーマイオニーが泣いてトイレにこもってるっていうのに、ハロウィンに夢中なんだ。大広間は確かにすごい飾り付けだったけど……」
なるほど、ネビルはハーマイオニーを泣かせた張本人が呑気にディナーを楽しんでいるところに居たくなかったのか。納得した俺は、ネビルに寮に帰ろうと声をかけた。このまま起きていても腹が減るばかりだ。こういう時は眠ってしまうに限る。もしもハーマイオニーが帰って来ているなら、慰めてやりたいしな。
「ちょっとだけならお菓子があるよ」
「でも寝る前にお菓子はなあ……美容に悪い」
「アダム……」
ネビルが呆れた顔をするが、男だって気を使うべきなんだからね?年頃になってお肌ブツブツの顔になりたくないだろ?そこのところを説明しようとした俺は、マダム・ポンフリーに医務室を出るのを止められた。え、そんな重病人扱いなの?と思った俺は、マダムの顔が険しい事に気付いて首を傾げた。
「今、連絡がありました。校内にトロールが侵入したという話です。安全のため、二人とも今日はここに泊まりなさい」
トロールの言葉にネビルの喉がひゅっと鳴った。俺は分かりましたと頷いて、ネビルとベッドに戻る。
「どうして学校にトロールなんか……」
ネビルの声が震える。俺はトロールと聞いて、今日がハロウィンで、ハーマイオニーがトイレにこもっているというのを思い出して、そういう事かと思っていた。
「ま、ここなら大丈夫だろ。へたに廊下をうろうろしなけりゃ安全さ」
「そうだね……うん。そうだよね。ハーマイオニーは大丈夫かな……」
「先生が動いてるんだ。ダンブルドアもいる事だし問題ないよ」
いや、本当はあるんだがな。
でも放っておいても大丈夫で、むしろ今となればその方がいいだろうと俺は判断する。下手なタイミングで介入するよりは、このまま原作の流れに沿ってトロールを三人でやっつける方が安全だろう。誰も怪我しない様にと、俺は内心で祈るしかできない。
マダムが大広間のディナーが中止になったので、と。各寮に運ばれた料理のおこぼれを俺達にも持って来てくれた。狭い机に広げられるかぼちゃ祭り。俺はそれを全部ネビルに押し付けて、ベッドに頭まで潜り込んだ。