(良かった……死ぬのがボクで……)
ピトーは薄れていく意識の中、そう思った。
目の前の少年、ゴンの牙は王に達し得る。
だが、自分を倒せる年齢(レベル)まで無理やり成長した揺り返しにより、ゴンは少なくとも念が使えない状態にまで弱体するはずだ。
(後は頼んだよ……ユピー、プフ……)
「蘇生」
(にゃ?)
意識がはっきりしていく。
それどころか、ボロボロに破壊された体まで治っていく。
自分の能力「玩具修理者(ドクターブライス)」より遥かに強力だ。
「大丈夫?」
「き、君は……いや、それよりゴンは?」
「ゴン?」
自分を見下ろしていた少女は、そこで初めてゴンの存在に気づく。
「うわ、メチャクチャ睨まれてる。ていうかステータス高すぎ。あぁ、『強制成長』のせいかな?」
ゴンは少女の突然の出現と、ピトーの復活に1瞬戸惑った。
(あの人の念能力ならカイトも治せるかも……無理か。死んだら生き返らない……)
淡い希望を即座に捨てて、ゴンは少女の背後に瞬時に回りこむ。
少女を気絶させてもう回復できないようにしてからピトーを殺す。
今の自分が首に手刀を落とせば折れるかもしれないが、そんなことはどうでも良かった。
ピトーを殺す。
今のゴンの頭にはそれしかない。
ガシィ!
完全に隙を突いたはずの奇襲が防がれた。
かまわず右ストレートを繰り出すが、それも手首を捕まれて止められた。
なら蹴ればいい、と思った瞬間、ゴンの腹に少女の足が突き刺さる。
「ぐっ」
予想外のダメージ。
ゴンは地面を削りながら10m程吹き飛ばされる。
ピトーその光景に目を丸くする。
「問答無用ですか、そうですか……フェイス!」
少女はその場で剣を振った。
空振りか?
ピトーはそう思ったが、もしかしたら念能力かもしれないとゴンの方を見る。
ゴンはゆっくりこちらに歩いてくる。
とくに変わった様子はなさそうだ。
「ドンアク」
また剣を振る。
少女はよしよしと満足そうに頷くとピトーの方に向き直った。
「いやいや、何満足してるにゃ。ゴンはピンピンしてるよ!」
「当分何もできないから大丈夫だって」
やはり念だったのか?
だが“凝”で見ても少女は普通の人間並みのオーラしかないのだが……。
その時、南の空に薔薇のような雲が湧き上がった。
遅れて爆発音が聞こえてくる。
「げ。核爆弾? パスパス。こんな危ない世界じゃ命が幾つあっても足りないよ。ヴァルゴ、今度こそ頼むよ」
少女が懐から青い結晶を取り出した。
少女の言葉に頷くかのように、結晶がキラリと光を放つ。
「ま、待って! あそこには王がいるはず! 王も治して!」
薔薇の雲からは言いようのない不吉さを感じる。
治療はピトーにもできるが、瀕死の状態から1瞬で傷を治すことができる能力者がいるなら一緒に連れて行かない理由はない。
ピトーは説得しようと少女の手を掴んだ。
「あ」
「え?」
視界が光に包まれたかと思うと、ピトーと少女は見知らぬ場所に転移していた。
以下、少女が使った技についてです。
蘇生:戦闘不能から復活させる。
ゴンのステータスを見破る:プレイヤーは敵のステータスが見えるんです。
白刃取り:確率で攻撃を防ぐ。
ハメどる:カウンター技。
フェイス:信仰心をカンストさせる。この状態では魔法の成功率が100%になる。
ドンアク:移動以外の行動を封印される。