あさおきると、めのまえにあの子のすがたがあったの。
どうかしたのかな、っておもってるとね、わたしのへやで八雲紫となにかをはなしてたんだ。
そう! まただよ。なんだかさいきんいつも八雲紫がいるようなきがする。ああ。そういえばまえ、そうおもってきいたんだ。どうしていつもきちゃうのって。きいたっけ? もしかしたらきいてないかもしれないけど、こたえはおぼえてるよ。
「やらなきゃいけないことがある」
ってね。なんだろうね。ころしてくれればいいのにね。どうせなら。
「あら、おきたの」
わたしがおきたのにさきにきづいたのは八雲紫のほうだった。わたしからみて八雲紫はせなかをむけているのにね。なんできづいたんだろ。こわいね。しね。
「もう昼前よ。寝坊にしてはおそすぎるんじゃない?」
「しらないよ。どうせなにもたべないし」
どっちかっていうと、かってにわたしのへやにはいってくる八雲紫の方がしつれいだよね。あの子とはなしたいならべつのへやでやればいいのに。まあ、どうでもいいけど。わらえるね。
やっぱり、なんかいみてもわたしのへやはひろいよ。むかし、ほらあなでねているときとはちがう。ほらあな? そんなところでねてたっけ。だけど、いくらひろくてもさ、だからといって、かってにはいっていいわけじゃないじゃん。
「というより、なんのはなししてるのさ」
べつにきょうみもなかったけど、そうきいたんだ。なんでだろうね。
「わざわざわたしのへやで」
「お空についてだよ」
みっつのめをくるくるとまわしながら、しっかりしている、橋姫いわくふつうのほうの古明地がそうこたえたの。さすが! しっかりしてる。
「ほら、この前お空がこの部屋を燃やしたじゃん。だから、何があったのかなって」
「あー。みずでもかけときゃいいんじゃないの?」
「そんな可哀想なことはできないよ」
めずらしくぼうしをかぶってなかったんだ。なんでかな。わたしがかぶってるからかな。これすぺあなのに。ふるいほうのすぺあ。
「ほら。お空もお燐も泳げないでしょ? だから、水なんてかけちゃだめよ」
「およげないの? ださいね」
「ださくはないよ」
なのに、ひはつかえるんだね。どうしてだろう。わたしのしってる霊烏路空はひなんてはかなかったのに。ただのからすだったのに。しゃべったし、しんぞうまっさーじもしてきたけど。ま、ようかいだから、なにがあってもおかしくないか。
「何かトラブルにまきこまれてなければいいんだけどね」
「そうね」
八雲紫がこくんってうなずいてた。
「でも、大抵嫌な予感というのは当たるものよ」
「「そういうこといっちゃだめだよ」」
べつにこころをよんだわけでもないのにね、姉妹でこえがかぶったの。ぜんぜんうれしくないけど、八雲紫はなぜかくすくすわらってた。はらがたつね。
あの子もあの子でなんでかわらってたんだ。たははって笑うすがたはぜんぜんしっかりしているようにはみえなかった。けど、そのこころをよめば、しっかりしているっていわれているりゆうがわかる。わかっちゃう。
“姉妹二人分まで、私が頑張らなきゃ”
けなげだね。じゅんすいだね。どうしてさとりようかいなのに、こんなにまともなんだろう。こわいよね。いったいわたしはどこでまちがえたんだろう。
たぶん、うまれるのにしっぱいしたんだね。
“私がいないと本当に駄目なんだから”
そういつものこころのこえがきこえた。ついさいきんにきいたばかりなのに、なんでかこころがくるしくなったね。なんでだろう。ほんとうはわかってるけど、わかりたくない。もうおわり。そうなんだよ。もう、おわり。
「ま、今のところ実害はそこまでないから、霊烏路空についてはゆっくり様子をみましょうか」
「いいの? ゆかりん。何かあってからじゃ遅いんじゃない」
「かといって焦りは禁物でしょ。急がば回れって言うし。迷っているなら、まったほうがいいわ」
「八雲紫はばかだなあ」
え、とこえがした。ふたりがこっちをみてくる。さいしょはね、わたしがこえをだしたことにきがつかなかったの。むいしきだったね。こわいこわい。
「そんなんだからだめなんだよ。まってばっかでじぶんはなにもしないからておくれになるんだ」
「手遅れ、ね」
「そうだよ。だからね。迷ったらやった方がいいよ。よくいうでしょ。迷ったらやれって」
「初耳よ」
迷ったらやれ。そうだよね。まよったらやんないとだめだよね。だったらわたしもやらなきゃならないことがあるよね。じさつ? それもそうだね。だけど、そのまえにやらなきゃ。だれかがころしてくれるなららくでいいんだけどさ。
「でも、やれって言われてもねえ」
八雲紫は、ほんとうにおばあちゃんみたいによわよわしいこえをだしたんだ。こころはよめないけどね。よめてもどうせいみないか。
「何をしようかしら」
「一応お空にも話を聞いてみたけどさ」
「しっかりしてるわね」
わたしはしっかりしてないもんね。
「いつからそんなふうに火を使えるようになったかって聞いても、覚えてないって。心をよんでも駄目だった。本当に忘れてるみたい」
「三歩以上あるいちゃったのね。さすが鳥頭」
「ペットの悪口はやめて」
わたしのわるぐちはいいのに。
「まあでも、なんか火って感じじゃなかったよ。もっと強いエネルギーを感じた。恐ろしかったね。星熊よりも強いんじゃいかな、あれは」
「さすがに言い過ぎじゃない?」
「どうだろ。でも、もしお空が物騒なことを考えたら、ただではすまないかも」
「物騒なこと?」
八雲紫はめんどうそうにくびをひねってた。
「まあ、鬼よりは物騒じゃないと思うわよ」
「でも、勇儀たちは最近そこまで物騒じゃないよ。喧嘩はするけど」
「分かってないわねえ」
八雲紫はしんそこつらそうに、いきをはいたの。わたしもまねをして、わかってないわねえ、っていってみたんだけど、むしされた。ひどくない?
「以前、勇儀たちは妖怪の山って場所にいたんだけど、そこには鴉天狗がたくさん住んでいたのよ」
「知ってる知ってる。地上にいたときに見たことあるし」
わたしはないけど。
「ある時ね、ひとりの鴉天狗が勇儀の杯を奪ったのよ。鬼の秘宝のあの杯を。まあ、命知らずというか馬鹿というか。当然勇儀たちは猛烈に怒って。その鴉天狗を退治しようとしたのだけれど」
「退治、ねえ」
「まあでも、怒った鬼がどうするかなんて、想像に難くないでしょ。だから、私は止めたのよ。妖怪の山で鬼が暴れるだなんて、それだけで幻想郷の危機なんだから」
いやになるわね、と八雲紫はわらったんだ。なんでわらったんだろうね。わらえるね。
「そしたらね、勇儀は何て言ったと思う?」
「さあ。お灸を据えに行くとか?」
「焼き鳥をつくってるだけだ」
「え?」
「そう言ったのよ。ほら、物騒でしょ」
「それは怖いね」
「でしょ? あの呑気な霊烏路空がそこまで物騒なわけないじゃない。彼女が考えるぶっそうなことって、どんなことだと思ってるの?」
八雲紫はのんびりそういったんだ。だから、わたしがおしえてあげたの。
「たとえばちじょうをせめるとかでしょ。もしそうだったらいいよね」
「良くないわよ」
八雲紫のかおがきゅうにこわくなった。もともとか。
「萃香の件でもぎりぎりなのよ。これ以上地底と地上のいざこざは勘弁してほしいわね」「もし起きたらどうするの?」
「そんなことがあれば」
そこで八雲紫はことばをつまらせた。めずらしいね。
「そんなことがあれば、霊夢にまた動いてもらわなきゃならないわね」
「博麗の巫女? なんで?」
「だって、地底と地上は本来妖怪は行き来してはいけないのよ。もし自由にするとしたら、その間に人間を使って、規則を曖昧にするしかないじゃない」
「でも、ゆかりんきてるじゃん」
「ばれなければいいのよ」
ばれなければいい。なるほど!
そうおもったらね、こころをよんだあの子がくびをふってきたんだ。どういういみだろうね。わたしもこころをよもうとおもったけど、あわれみしかなかったからわからないや。
そうそう。はくれいのみこっていう人間。にんげんなのにむちゃくちゃつよいんだって。もしきたとしたら、にかいめかな。にんげん。にんげん。星熊はよろこぶだろうな。もうどうでもいいけど。わたしはたぶんあえないけどね。
とくにやることもなかったから。いや、ほんとうはあるんだけどね。しぬとか。まあ、でもまだはやかったから、わたしはこのにっきをかこうとしてたの。かけっていわれてるから。だれに? わたしのともだちに。そんなやついないんだけどね。
「その日記、まだかいていたのね」
わたしがぱらぱらめくってると、八雲紫がすきまをつくってこっちにきたんだ。きもちわるいよね。こんなきょりあるいてくればいいのに。
「もう止めていると思ったわ」
「わたしもなんでかいてるのわからないけど」
「けど?」
「かかなきゃならないんだ。ともだちにそういわれたの」
そう。ともだちに。いないけど。八雲紫はびみょうなかおをしたんだ。きんいろのかみをばさって、てでかきわけてた。
「ねえ、見せてもらってもいいかしら」
「いいわけないじゃん」
「なんでよ」
「「日記ってのは生存証明だから」」
また、こえがかぶったんだ。ここまでくるとわざとらしいよね。だから、こころをよんでみたんだけど、むこうもびっくりしてた。こわいね。まさか、しまいだからとかあるのかな。さとりようかいだからにてるとか?
ありえない。そんなの、みとめるわけにはいかない。
「もしかしたら、あなたたちは無意識的につながってるのかもね」
八雲紫はわらいながらそういってきたの。なんだよむいしきてきって。
「人間も妖怪も、特に何も考えてなくても、深いところで何かを考えているのよ。根深い本性や意思によって、それが行動として出る。もしかしたら、そういう根っこがあなたたちは似ているのかも」
「そうかな。無意識とかよく分からないよ」
「心を読めるあなたたちには分からないかもね。妖怪の賢者である私は無意識的に幻想郷の安寧を目指すし、鬼である勇儀は無意識的に強者との戦いを望む。そして多分、地霊殿の主は地底の安寧を無意識的に望んでるんじゃないかしら」
そしたらね、八雲紫が「考えても机上の空論ばかり。少し休憩しましょう」ていってきたの。
「煮詰めすぎてもよくないしね」
「なにを? じゃむ?」
「なんでジャムなのよ」
「さとりようかいのじゃむとかどう? あんがいおいしいかもよ」
「猟奇的すぎるわ」
あ。そっか。さとりようかいはたべてもおいしくないもんね。わすれてたよ。たべたことないけど。
「せっかくだから、なんか飲もうよ。紅茶とコーヒーどっちがいい?」
ソファからたちあがったあの子は、のんびりそういってきたの。ないしんは霊烏路空のことでいっぱいなのに、むりしてきどってた。しんぱいなんだね。それほどぺっとのことをかんがえてるんだね。
まえのあのほねのことを、しんそこきにしているんだね。
「ねえ、どっちがいいの?」
「え?」
そんなことをかんがえてたらね、そうきいてきたの。
「コーヒーか紅茶、どっちがいい?」
「そんなの、こころよめばわかるじゃん」
「駄目だって。私だっていつも心を読めるわけじゃないんだよ。返事がなかったら、生きてるかどうかすら分からないじゃん。『生きてたら返事をしてください』っていわれたときに困るでしょ。だからちゃんと返事をしてよ。『紅茶がいいなー』って」
「いみがわからない」いみわかんないよね。
「それだと、生きていたら『紅茶がいいなー』ていわなきゃならないじゃん」
八雲紫が「紅茶もいい迷惑ね」とくすくすわらってたの。なにがおもしろいんだろうね。というより、こうちゃがほしいってわかってるならきかなくてもいいじゃん。ま、さとりようかいだもんね。くさっても、ふつうでも、そこはかわらないのかな。
じゃあなんでわたしはもっときらわれたんだろう。
まあでも、けっきょくコーヒーも紅茶あじが分からないから、いみないんだけどね。わたしの人生みたいに。いや、ようかいだからようせいか。
あの子が「あ!」って叫び声を上げたのは、ちょうどわたしが八雲紫のひざにあたまをのっけようとしていたときだったんだ。
「どうしたのよ。そんな大声出して」
「ゆかりん、聞いてよ! 紅茶が一人分しかないの」
しんそこどうでもいいよね。でも、あの子はこだわったんだ。
「ショックだなー。楽しみにしてたのに」
「やっぱ、姉妹って似るのね」
八雲紫はくすくす笑ったんだ。にてるわけがないのに。似てたまるか。
「でも、あると思ってなかったらショックでしょ。私は好きな物が無くなるととても悲しむタイプなんだよ」
「多分、みんなそうよ」
「わたしはちがうよー」
だって、すきなものなんてないからね!
「好きな物が無くなるととても悲しくなる私の代わりに、ゆかりんはコーヒーね」
そうのんきなことをいって、机の上にカップをならべてくれたの。のんきだね。へいわだね。でも、へいわってのはくずれるためにあるんだよ。
ほんとうだったら、このままてぃーたいむをするよていだったんだけどね、よていがいのことがおきたんだ。まあ、よそうはできたかもしれないけどね。でも、まさかおもわないじゃん。
いくらあの子と八雲紫にようじがあるからといって、あの猫が、火焔猫燐が、わたしのへやにくるだなんて、かんがえもしなかったんだよ。
「さ、さとり様」
わたしたちのほうをむいて、かのじょはおそるおそるそういったんだ。ああ。なるほどね。まあ、そうだよね。きたいはしてないよ。もちろん。
「お空のことで、はなしたいことがあるんですけど」
「いまちょうどそのことについてはなしてたところだよ」
火焔猫燐のこころをよむ。だいぶよみづらかったんだ。なんでだろうね。めがねをしてるのに。まあいいや。
かのじょのここころにはね、きょうふとぜつぼうと、そしてしんぱいがうかんでいたんだ。すごいよね。こんなにもわたしのことをおそれているのに、しんゆうのために、ゆうきをふりしぼったんだ。さすがだね。
「お空、最近なんだか様子がおかしいんです。いえ、もともと変でしたけど、最近ますますって感じで」
「具体的には?」
八雲紫はかるいくちょうで、火焔猫燐にそうたずねたんだ。それでもね、火焔猫燐はしんそこおびえていたんだ。かわいそうにね。八雲紫もかのじょにとっては、おそろしいきょうふのたいしょうだもん。まあ、わたしにくらべればたいしたことはないみたいだけど。
だから、からだをぷるぷるふるえさせた火焔猫燐は、あの子のうしろにかくれちゃったの。それでも、ふるえるこえで、霊烏路空のことについてくちにしたんだ。えらいね。
「お空、いつもみたいに灼熱地獄にいるのはいいんですけど、なんか手に筒みたいなのもってて、そこから凄い強い火を出してて」
「ええ」
「なんか、『力が溢れてくる!』て目をキラキラさせてて。怖かった。話してみるといつものお空なんだけど、それでも違和感があって」
火焔猫燐のせなかをさすりながら、あの子がこっちをちらってみたんだ。なにがいいたいかはわかったよ。かのじょのこころをよんで、くのうしているんだね。
“この力があれば、地上も灼熱地獄にできる、っていってたけど、言わない方がいいね”
火焔猫燐はそう思ってたんだ。もちろん、それがわたしたちにつたわることはしってたとおもうよ。だけど、八雲紫にはしられたくなかったんだろうね。
「わかったよ、お燐」
そんな彼女をあんしんさせたかったのかな。すごいやさしいこえをあのこはだしたんだ。
「私たちが何とかするから、安心していいよ」
なんとか! なんとかってどうするんだろうね。わかんないよ。だって、だれもわかってないんだから。でもね、ひとつだけわかることがるんだ。
「へんにこだわらずに、シンプルなほうがいいよ」
「え?」
みんながこっちをみてきたんだ。びっくりしてたよ。しゃべった、ってね。
「八雲紫みたいに、へんにあたまをつかって、ふくざつなことをするとね、しっぱいするんだよ。たんじゅんなほうがいいんだって。そうじゃないと、しっぱいして、ぎゃくになっちゃうよ」
「逆になっちゃう?」あのこがこくびをかしげたんだ。じとめのまま、ふしぎそうにみあげてくるの。おさないね。おさなくないのに。
「そう。よくいうじゃん! てのこんだようかんはからい、って」
「初耳だよ」
「めんどうなてじゅんをふんで、とおまわしにすると、やろうとしたこととはぎゃくのけっかになっちゃうんだよ。たとえば!」
そこでわたしはぴん、ってひとさしゆびをたてたの。むかし、あの子がやってたみたいに、その場でくるくるまわってね。
「たとえば、どこかのバカなようかいを、きらわれているようかいをだれからもすかれようとするために、せいぎのひーろーにしようとするとね」
「え?」
「ぎゃくに、みんなからきらわれてることが、もっとわかっちゃったりするんだ!」
なんでだろうね。ふしぎだね。ばかだったんだね。ああ。ばかだったよ。わたしはだれからもきらわれていることなんて、わかってたのにね。おいしかったな。またおだんごをたべたいね。おいしくないけど。
なんでだろう。せかいがまわってるんだ。にっきのもじがぐにゃぐにゃだよ。ふしぎだね。しっぱいしたときのことをおもうと、あたまがいたくなるんだ。ふしぎだね。おわるときのことをかんがえたら、つらくなるんだ。ふしぎだね。なんでわたしはこんなにきらわれたんだろうね。
それはふしぎじゃないか。
わたしがそういったあとね、なんでかみんなだまっちゃったんだ。ひどいよね。かってにひとのへやにきたのに、わたしがしゃべったらだまっちゃうだなんて。いじめかな。
「あの、ご主人様」
そんななかね、さいしょにこえをはっしたのは火焔猫燐だったんだ。いがいだよね。びっくりしたよ。まさか、かのじょがそんなこえをだすだなんて。
きらいで、けんおしてて、きょうふしてて、ぜつぼうしてるわたしにはなしかけるだなんてね。そんなこえで。なにをかんがえているんだろう。こころをよんでいるはずなのに、わからなかったの。わかりたくなかったの。わたしはもうおわるんだ。そうきめたの。しななきゃならないの。なんのために? ちていのため? みんなのため? まさか。ちていもちじょうもどうでもいいよ。じゃあ、なんのため?
「ご主人様、ひとつ、きいていいですか?」
ねこらしい、ねこなでごえで、そうきいてきた。「だめだよ」っていったのに、かのじょはそれでもきいてきたんだ。
「ご主人様は、まえ、私たちペットを食糧にしたって言ってましたよね。死体をさばいて、かってに。でも」
あの子と八雲紫のせすじがのびたんだ。
「でも、言われたんです。さとり様がやってないって言ってたんです。本当は。本当はそれをやったのは」
「なにいってんの」
わたしはそこで、おもいきりさけんだんだ。なんでだろうね。じぶんでもわからないや。でもね、さけんじゃったんだ。なら、しかたないね。
「ペット? わたしはぺっとなんてしらないよ。ただわたしのいえにかってにすみついて、かってにしごとをして、かってにごはんをたべていくどうぶつでしょ? そのどうぶつがいえでかってにしんでたんだもん。そりゃ、すこしぐらいつかってもいいじゃん」
「でも」
「たぬきのにくはさばきにくかったね。ぶたのにくはつまみぐいしたけど、やっぱりおいしかったよ。はしびろこうはまずかったかな。からすはいがいにおいしかったし、そして」
「そして?」
「ねこのにくは、これいじょうなくおいしかったかな」
ひめいがきこえたんだ。そして、火焔猫燐がいきおいよくとびだしていったの。あの子が、わたしのこえをさえぎって、ずっと火焔猫燐になにかいってたし、いまもおいかけながらなにかいってるけど、よくわからなかった。
けっきょく、火焔猫燐はすごいはやさでどっかにいっちゃったみたいで、とぼとぼとあの子がかえってきたんだ。どこかつらそうだったね。なんでだろうね。
それから、しばらくわたしたちは、もくもくとつくえのうえにおかれたこうちゃをのんでたの。てぃーたいむだね。でも、そのこうちゃはぜんぜんおいしくなかったけど。みずとかわらないよね。あかいみずだよあかいみず。みじめだね。
「ねえ、あなた達にききたいことがあるのだけれど」
ずずずってこうちゃをのみながら、八雲紫がきいてきたの。てっきり、このままかえってくれるかとおもったのに。ざんねんだね。
それにしても、わたしたちにききたいことがあるだなんて、ものずきだよね。けがらわしいよね。
「あなた達は、仲がいいのかしら。それを本人達にきくのは野暮だとは分かっているけれど、もしよければ教えてくれないかしら」
わたしたちはかおをみあわせて、さーどあいをみつめあった。
あの子とわたしはどうじにくちをひらいて、どうじにことばをはっしたの。
こんどはこころをおたがいによみあったはずなのに。どうしてだろうね。
べつべつのことをいったんだ。どちらもほんしんからなのに。どうしてかな。
待ってますよ、彼女はいつまでも