Komeiji's Diary《完結》   作:ptagoon

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─許してくれないですね─

 わたしはきょう、めずらしくでかけたんだ。ほんとうはおわるはずだったんだけど。こうしてにっきをかいているの。たぶん、いや、なんでもないや。

 

 どこにいったかというとね、あそこだよ。えっと血の池地獄! そこでまちあわせしてたの。

 

 そう。霊烏路空とまちあわせ。

 

 でもね、ふつうにかんがえれば、こんなわたしなんかにあいにくるやつがいるわけないよね。よんだところで、くるわけないし、わたしだっていかない。

 

 だからね、かんがえたんだ。どうしたらかのじょがくるのか。ま、かんたんだよね。

 

 わたしはぺっとにきらわれている。それはもうこれ以上なく。

 

 そして霊烏路空はつよくなりたがってる。そうしってたんだ。だから、霊烏路空のへやにてがみを置いてきたの。まちがって火焔猫燐のへやにはいりそうになったけど、なんとか置けたんだ。ほかのぺっとにばれずにおけた、とおもう。

 

 これをおもいついたのは昨日のよるだった。だから、いそいでじゅんびしたんだ。うまくいっていればいいけど。

 

 てがみにはみじかくこうかいたの。えっとね。たしか『お空へ、つよくなりたかったら血の池地獄にきて。来なかったらぺっとがたいへんになるよ。あるじより』てね。

 

 まあ、もしこなかったらこなかったでなんとかしよう。そうおもってたらね、ふつうにきたんだよ。霊烏路空が。びっくりだよね。しかもさらにびっくりなのは、このわたしにあいにくるのに、なぜかふつうだったの。そう。きょうふをかんじてなかったんだ。

 

「ご主人様。わざわざよびだすなんてめずらしいね」

「まあね」

 

 ごしゅじんさまだなんて、なつかしすぎて泣いちゃうね。でも、そのことばには、まったくこころがこもってなかったんだ。かるいよ。わたしのいのちくらいかるい。

 

「それで? どうやったら強くなれるんですか?」

 

 こまかい疑問なんてふっとばして、そうきいてきたんだ。さすがだよね。きっと毎日なにも考えずに生きているんだろうな。しあわせだよね。もちろんわかってるよ。かのじょが毎日いろいろかんがえて、そして苦悩してることなんて、こころをよんでるからしってるよ。でもね。でも。それなのに、こんな元気なかのじょをみていると、どうしてもつらくなる。

 

「そのまえに、ひとつききたいことがああるんだ」

 

 そのつらさをごまかそうと、八雲紫をまねしてそういったの。そのときも、あたまのなかがぐるぐるしてたんだ。いつだっけ。たしか心臓まっさーじで骨をおられたこともあったね。ほんと、まさにほねがおれるよ。

 

「ねえ空。ちじょうを灼熱地獄にするとかきいたんだけど、あれほんとうかな?」

「え?」

「ちじょうを攻めるってきいたんだけど」

 

 わたしがそういうとね、かのじょはその大きなからすの翼をばさってひろげたんだ。うでにはみたこともない筒みたいなのがあって、むねにはでっかいビーだまみたいなのをつけてたの。なぞだね。

 

 だけど、それがすごいちからをもっていることはわかったんだ。

 

「そうですよ、ご主人様。私は地上を攻めます」

 

 またびっくりしたよ。すごいまじめだったんだ。あの霊烏路空が、まじめだなんて、びっくりだよね。ほんと、さいあくだよ。

 

「なんで? ひまだから?」

「だって、ずるいじゃないですか」

「ずるい?」

「地底はこんなにたいへんなのに、ちじょうはなにもしらないんだよ! わたしだってまいにち灼熱地獄の管理で忙しいのに。それに、力がうずくんです」

「うずく」

「よくわかんないけど、私の中の誰かが言うんですよ。地上を攻めろって。だから、わたしはせめます!」

 

 かのじょのこころを、ぼろぼろのサードアイでみてみたらね、ほんとうだったんだ。なんか、へんなの。こころが。ま、わたしのほうがへんなんだけどね。

 

 わたしを恐れていないりゆうが、すこしわかったきがするね。なんか変なのが体とこころにすみついてるのかな。よくわかんないや。

 

 ただわかったのは、霊烏路空がほんきでちじょうをせめようとしていることと、説得がむりっぽいってことだけだった。

 

 まあ、どうでもいいんだけどね。

 

「それで、そろそろ強くなる方法を教えてください!」

 

 ぱたぱたって翼をはばたかせながら、かのじょはまた聞いてきたの。せっかちなのはかわってないんだね。

 

「わかったよ。なら着いてきて」

 

 わたしがそういうと、いきようようとついてきたんだ。ほんとうにびっくりだよね。なんでわたしがつよくなるほうほうをしっているとおもったのかな。こんなよわいわたしが、つよくなるほうほうなんてしってるはずないのに。

 

 わたしはね、ゆっくりと血の池地獄をすすんだんだ。ちょうど、このまえ星熊にくんれんされたばしょだね。そんなことあったっけ? あったじゃん。そう。あったの。そしてわたしは似たようなことをするんだ。さすがにうじむしはないけどね。

 

 

 

 霊烏路空はね、ほんとうに、なんのうたがいもなくわたしについてきたの。まえあったときは、ほんとうにきょうふしていたのにね。わたしをみただけで、ぜんりょくでにげていくほどに。いまでもきょうふはあるみたいだけど、やっぱどこかおかしいのかな。ぜんぜんにげないや。うれしくないな。

 

「とりあえず、ここおりようかな」

「ここ?」

「あしばがあるの」

 

 そういって、わたしはいっちょくせんにおりたんだ。血の池地獄に。ぼうしがとんでいきそうになったけど、なんとかぶじだったよ。

 

 とくにめじるしなんてないとおもってたけど、そのあしばはすぐにみつかったんだ。星熊とのまえのとっくんのせいか、がけがくずれて岩がたくさんころがっていたの。こわいね。でも、たすかったんだ。

 

 霊烏路空もわたしにつづいておりてきたの。いったいなにをするんだろうかってぎもんをいだいていたけど、それだけだった。無知はおそろしいよね。

 

 おりていったらね、まあ当たり前だけど、血の池があったの。いやー、やっぱすごかったよ。あの星熊ですら耐えられない血の池だもんね。わたしなんて落ちたらすぐしんじゃうよ。

 

 そういえば、まえここにいた舟幽霊たちはいなかった。というより、いないところをえらんだんだけど。こころをよんで。

 

 この池のなかに入るだなんて、かのじょたちはどうして耐えられるんだろうね。たぶんすごいせいしんりょくなんだ。ふつうはむりだよ。

 

 そう、ふつうは血の池にはいってもたえられないんだよ。

 

「こんなに血の池に近づいたのは初めてだ!」

 

 霊烏路空はきょうみしんしんだったの。こんなにおそろしいところなのに。

 

「灼熱地獄のほうがまだましだよ」

「そうなの?」

「だって火じゃん。火は熱いだけだけど、水は嫌いなんですよ。まあ、血だけど」

「そうだね」

 

 やっぱそうだよね。お空はみずがきらいなんだよね。あの子のいったとおりだ。

 

「そこだよ、おくう」

 

 わたしのこえはすこしうわずってたんだ。このごにおよんでだよ。ばかだよね。なにをいまさら。

 

「そこ?」

「じゃくてんをほうっておいたら、つよくなれないんだよ」

「なるほど」

「だから、こくふくしようか」

 

 そういって、わたしはゆびさしたんだ。なにを? なんだとおもう? そうだよ。

 

 ちのいけをゆびさしたんだ。

 

「ここにはいってみれば、つよくなれるよ」

「え?」霊烏路空はやっとそこでぎわくをいだいたんだ。おそいね。

「だから、このいけにはいるの。さあはやく」

 

 霊烏路空はこんわくしてたよ。そりゃそうだよ。わたしでもこんわくする。

 

「でも、ご主人様」

 

 そのとき、やっと霊烏路空にきょうふがうかんだの。どうぶつとしてのほんのうなのかな。でも、もうおそいね。

 

「私、およげない」

「だいじょうぶだって。すぐたすけてあげるから」

「でも」

 

 このとき、霊烏路空がしなきゃいけなかったのは、なんだとおもう? もちろん逃げることだよ。でも、かのじょはそうしなかったんだ。そうだよね。てがみにかいておいてよかったよ。

 

「だいじょうぶだって。わたしのいうとおりにしたらちゃんとつよくなるから。それに、わたしのいうことをきいといたほうがいいよ! なんで? なんでだっけ。そうそう。ほかのぺっとのためにも、ね」

 

 これじゃあまるで八雲紫だね。でも、しょうがないもんね。こうするしかないもん。

 

 そのとき、たまたまだけど、ぶくぶくって血の池地獄からおとがしたんだ。なんのおとかはわからないけど、霊烏路空はびびってたね。血の池地獄じゃなくて、わたしにびびってた。さっきまでびびってなかったのに。

 

「本当に入るんですか」

「あたりまえじゃん」

「入らなきゃいけないんですか?」

「だいじょうぶだって。星熊は入ってもぴんぴんしてたから。星熊にすらまけてたら、ちじょうでもかてないよ」

 

 じしんまんまんにそういったんだ。こんきょなんてないけど。そんなのいらないよね。しょうがないよね。

 

 霊烏路空のこころはすごいことになってたんだ。ただですら変だったのに、もっとへんになってた。きょうふとこうふんとにくしみであふれてたね。にくしみ? だれにたいするにくしみだっけ。ああ。かんがえるまでもないね。ここには書かないけど。

 

 でも、やっぱ霊烏路空はすごいよ。しばらくかんがえてたけど「なら、はいる!」っていったんだ。さすがわたしの、わたしたちのぺっとだね。ぺっとだったんだね。

 

「でも、助けてくださいね」

「わかってるわかってる」

「ほんとうですよね」

「だいじょうぶだって。わたしはうそをついたことなんてないよ」ほんとだよ?

 

 ぐつぐつっておとがして、血がこっちにむかってきたの。わたしのほうにむかってね。よけようとしたけど、できなかった。むちゃくちゃいたかったね。おもわず、ひめいをあげそうになったよ。あげなかったけど。もっと痛いめにあったことがあったからね。何回も。

 

 はいるっていったはいいけど、やっぱり霊烏路空は物怖じしているみたいだったんだ。ぶくぶくしてる血の池をみおろしては、そのつばさはぷるぷるふるわせてたの。むいしきなのかな。うでのつつからすこしほのおがでてたんだ。いつのまにからすはひをはくようになったんだろうね。

 

 でもね。わたしはやさしいから。そう。やさしいんだ。ちていのぜんいんからきらわれるくらいに、きらわれなければならないくらいにやさしいわたしはね、かのじょのせなかをおしてあげたんだ。

 

 だいじょうぶだよ。おくうならいけるよ。っていいながら、おもいきり、どんってね。

 

 いひょうをつかれたからかしらないけど、おくうはいきおいよくおちていったんだ。とちゅうでそらをとぼうとしてるのは、こころをよんでわかったけど、まにあわなかった。

 

 どぽんって重いおとがきこえてね。ばっさーんってなみをうったんだ。星熊のときとおなじだったよ。でも、星熊のときとちがうことがひとつだけあったんだ。それはね。おちた霊烏路空のはんのうだったの。

 

 どうしようかな。書こうかな。書いたほうがいいね。なににいいんだろうね。こんごのためかな。

 

 

 霊烏路空のつばさはね、ぬめぬめの血のせいでまっかになってたんだ。そのせいでぜんぜんうごいてなかった。かわいそうに。

 

 それがおもりになってたのかな。ばたばたってもがいてたけど、全く浮かべてなかったんだ。かおをあげようって、あっぷあっぷしてたよ。息をすおうとしてたんだね。

 

 でもね。ぜんぜんすえてなかったんだ。いきはね。じゃあなにをすってたのって? そんなの考えなくてもわかるじゃん。血だよ血! 血ばっかりすってたの。のみこんでたっていったほうがいいかもしれない。

 

 手を目一杯にのばしてね、ばたついてたんだ。目をみひらいて。いきができてないからかな。すごい血ばしってたよ。しかも血の池じごくだからね。肉がやけるようなにおいがしたんだ。すごいよね。

 

“助けて、死んじゃう!”

 

 霊烏路空はこころのなかでそう叫んでたんだ。からだがやけるように、ううん。そんなんじゃないね。もっとひどいや。ぜんしんの肌がただれてね、つばさはぼろぼろになってた。くろかったのに、もうまっかになってたよ。血の池のせいか、それとも霊烏路空の血かはもうわからないけどね。

 

 たすけてって、くちでもいおうとしているからかな。それとも、ただ息をすいたいだけかもしれないけど、くちをぱくぱくさせてたんだ。まるでこいみたいだね!

 

 かのじょのこころはきょうれつだったよ。さっきみたいな、へんなかんじはもうきえちゃってたんだ。なら、どんなふうだったかって? そんなのかんたんだよ。

 

 苦痛だよ! サードアイがじりじりけずれそうになるぐらい、みているこっちがつらくなるくらい苦しんでたね。はねがとけ、のどがやけ、かみがぬけ、はをじぶんでかみくだくほど、つらそうだったんだ。

 

 それならまだよかったんだけどね。よくないか。まあ、わたしにとってはよかったのかもしれないけど。ざいあくかん? そんなの、あるわけないじゃん。あるわけないんだよ。わたしにはそんなものは、もうないんだ。ないはずなんだよね。はずなんだ。

 

“助けてよ。助けて、さとり様!”

 

 なみだすらこぼすことができずに、そうさけんでたんだ。まあしってたけどね。やっぱそうだよね。ふつうはそうなるよね。ちれいでんのあるじってなんなんだろうね。わたしたちのぺっとじゃなかったんだね。わたしたちにわたしは入ってなかったんだね。

 

 ばたばたもがいているお空のちょうど真上にわたしは移動したんだ。あんまりちかづくと、わたしまでひきずられそうだったから、宙をとんでね。

 

 何をするためか? 霊烏路空をたすけるため? そんなわけないよね。ぎゃくだよぎゃく。

 

 わたしはね、あしばにころがっていた岩をもって、跳んだんだ。かのじょをみおろしていたの。なにをするためか。そんなの、もうわかってるよね。

 

 重い岩を、霊烏路空にむけていきおいよく落としたんだ! しっかりねらいをさだめて、おもいきりね。

 

 ごんってにぶいおとがしたんだ。でも、ざんねんなことに、不運なことに。あたまにはぶつからなかったんだ。もがいてたらからな。うでにあたったの。おしかったね! でも、それでちょうどよかったのかも。

 

 けっこうおおきいいわだったからかな。うでがへんなふうにまがってたんだ。ほねがおれちゃったみたい。まだ、つつにあたってたほうがましだったのにね。失敗した。

 

 でも、ふつうはこっせつだけだったらたいしたことじゃないんだよ。だって妖怪だから。ぺっとのようかいだから。

 

 だけど、血の池にいるとなると、はなしはべつだよね。

 

 腕のせいでばらんすをくずしたのか、頭までいっかいぜんぶつかっちゃったんだ。悲惨だったよ。目はまっかになっててさ。まっくろなかみも、もうまっかだったよ。つらいよ、いたいよ、ってこころがずっといってたんだ。たすけて、たすけてってね。だから、わたしはもういっかい。そう。もう一回いわをはこんで、かのじょのうえへともっていってあげたんだ。はやくたすけないと。

 

 さっきとおなじかんじでね。またうえからおとしたんだ。こんどはあたまにおちるようにね。

 

 ゆっくりおちていく岩をながめてたんだ。うえから。きっと、どんっておとがするんだろうな。これでうまくいくんだろうな。そうおもって、めをとじたの。みっつのめすべてをね。めがねをなげすてて。もういっかいたべようとしたの。なんで? おいしそうだったから。これでおしまい。そうおもったんだ。

 

 だけど、どんっておとはしなかったの。

 

 したのは、どぼんっておとだったんだ。岩が血の池に落ちる音だけだったの。

 

 だから、わたしはおそるおそるめをひらいた。まあ、だいたい何がおきているかはわかっていたけどね。よそうどおりだ。でも、やっぱりめをみひらいちゃったよ。ふたつのめを、ね。

 

「なにやってんの!」

 

 うしろからこえがきこえたんだ。こころのこえじゃないよ。ふつうのこえ。とてもなつかしくて、とても愛らしくて、とてもききおぼえがあって、とてもだいすきで、

 

 とても憎しみに満ちた声がきこえたんだ。

 

「なにって」

 

 わたしはそのこえをしたほうをふりかえったんだ。そこには、霊烏路空をかかえる一人の少女のすがたがあったの。わたしがだいすきだった、ゆいいつのかぞくの姿が。かぞくだった子のすがたが。

 

「みたらわかるでしょ?」

 

 わたしはね、ほんしんからわらって、いったんだ。

 

「焼き鳥を作ってるんだよ」

 

 

 




巡り巡って、私のせいでもあります
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