このリボンを可愛いと言ってくれたから、このリボンはもう、付けない。
~~~~~~~~~~~~~~~~
ライブでも、フェスでも、テレビに出る時でも、衣装は用意してもらえることが多くなった。昔はよくみんなでああでもないこうでもない、ってお店を巡ったけれど。ちょっと懐かしいな。
でも、リボンだけは、必ず自分で選ぶようにしてる。「トレードマークは頭のリボン」。だから、リボンだけは私の気持ちを込めたい。私の個性を詰め込みたい。
それに、プロデューサーさんはよく、私のリボンを見てくれている気がするから。
~~~~~~~~~~~~~~~~
「春香ー、着替え終わったかー?」
「はい、ばっちりです!」
「じゃあ入るぞー。……うん、今日もばっちりだな!」
「もう、プロデューサーさん! こういう時は、もっと、こう、相応しい言葉が……」
「ああ、そうだなごめんごめん。今日も可愛いぞ、春香!」
「えへへ、ありがとうございます!」
「そのリボン、新しく買ったのか?」
「はい、次の曲はクールでかっこいい感じだったので、黒いリボンにしてみました」
「そうなのか。言ってくれれば、こっちでお金出すなり用意するなりやるのに」
「いいんです、普段からリボンつけてますから、色々買いたいんです」
「春香がそれでいいなら、俺からは何も言わないけど……」
「すみませーん、天海さんそろそろリハの方準備お願いしますー」
「あっ、はい! じゃあプロデューサーさん、行ってきますね」
「おう、行ってこい! ……春香!」
「はい?」
「そのリボンも、衣装と合っててばっちりだぞ!」
「……プロデューサーさーん? こういう時は……」
「おっとそうだった。カッコいいし、最高に可愛いぞ!」
「えへへ。じゃあ、行ってきますね!」
~~~~~~~~~~~~~~~~
ドキドキが止まらない。収録番組だし、リハーサルなんだから緊張しなくたっていいのに。
……わかってる、理由なんてわかってる。
ただの担当アイドルに対する誉め言葉。そう、わかってる。わかってるけれど、この胸の鼓動は止められない。
私からねだって、お約束のように言わせているだけ。そう、わかってる。わかってるけれど、それでも、その言葉を聴きたい。
私は悪い子だ。そう、わかってる。わかってるけれど、でも、こんなお約束に、私の自己満足のために、プロデューサーさんを付き合わせている。
このリボンを可愛いと言ってくれたから、このリボンはもう、付けない。
次のリボンも、可愛いと言って欲しいから。