『ホムンクルス』個体識別番号23番   作:ホテルベルリン

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全国の学生の皆さん、我々は意志を同じくする同志だ。




さあ立ち上がれ!拳を掲げろ!!腹から声出せ!!



せーのッッ!!!!




『『『『『テスト反対!!!!!』』』』』





.......はい、という訳で更新が遅れて申し訳ありません。模試が見事に被ったんです。タグに亀更新つけた方が良さそうだZo......





ファイルNo.1『忍者?えっアレただの変態坊主じゃないの?』

 

 

 

 

 

 

「.......で、なぜここにいるんだ」

 

 

 

 

 腕を組み、仁王立ちする達也。その隣に寄り添う深雪。

 

 

 

 ──その二人の前で、正座をさせられている少年。

 

 

 

 取り敢えずフライパンを置かせた達也は、深雪も交えて三人で目の前の少年の尋問タイムを開始した。当の被告人である彼は、質問の意図が分からないといった様子である。

 

 

 

「御当主様からの指示です。『どうせ同じ学校に進学するのなら、いっその事同居してしまえば色々手間が省けるでしょう?』とのことです。と、ヒロイは回答します」

 

 

 

 

「.....お前、昨日の入学式にいたか?見かけた覚えがないんだが」

 

 

 

 

「当然です、見つからないようにしていましたから。と、ヒロイはドヤ顔をかまします」

 

 

 

 

 拾がふんっ、と胸を張る。まったく反省していないようだ。

 

 

 

 

「その顔腹立つからやめろ。なぜそんなことを......」

 

 

 

 

「そんなの、驚かせるために決まってるじゃないですか。と、ヒロイは表情筋が仕事をしていないお兄様の仏頂面を見て、サプライズの失敗を悟ります」

 

 

 

 

「.......それで、今日になって押しかけてきた訳か。何も聞いていないんだが」

 

 

 

 

 いよいよ頭痛がしてきた達也が再び米神を抑えた。隣の妹が、「悩んでいるお兄様の横顔も素敵です!」などとフォロー(?)を入れてはくれるが、正直頭痛の種が増えている気がしてならない。妹よ、お兄ちゃんは悲しいぞ。

 

 

 

 

「それは可笑しいです。驚かせるつもりではありましたが、同居することはしっかりとメールをしたはずですが......と、ヒロイは認識の差に疑問を抱きつつ、自らの端末を確認します」

 

 

 

 

 懐から情報端末を取り出し、そして何度か文字に視線を滑らせ何かを確認すると、「フッ」と何故か無性にイラッとする含み笑いをしてから視線を此方に向けた。

 

 

 

 

「やはりしっかりと送信されています。お姉様からは『楽しみに待っているわ』という返信まで送られてきました。と、ヒロイは自分が正しかった事実を確認して胸を張ります」

 

 

 

「.......そうなのか?深雪」

 

 

 

 

 隣でニコニコとしている妹に聞くと、何やら嬉しそうに返事をした。

 

 

 

 

「申し訳ありません、お兄様。昨日の夕方頃に連絡があったのですが、どうせならサプライズして差し上げた方がお喜びになるかと思いまして......ご迷惑、でしたか?」

 

 

 

 

「そんなことはないよ。俺もどうせなら少しは面白みがあった方がいいと思うしな」

 

 

 

 

「うわぁ、あっさり意見裏返しやがったよこのシスコン軍曹.....と、ヒロイはお兄様の態度の変わり様にほとほと呆れてみます」

 

 

 

 

「拾、俺の拳は硬いぞ?」

 

 

 

 

「すいませんでした申し訳ありませんごめんなさい。と、ヒロイは自らの危機管理能力に従って最善の行動をとります」

 

 

 

 

 流れるような動作で額を地面に擦り付けたヒロイは、これから始まる新生活でこのシスコンブラコン兄妹の被害者が(物理・精神的に)どれだけ出るのかと考えて思わずため息をついた。既に一部女子生徒がその片鱗を垣間見ていることを彼が知るのは、これから数時間後のことである。

 

 

 

 

 

「.....まあいい。来てしまったものは仕方ないしな。部屋は後で用意するから、荷物は取り敢えず俺の部屋に置いておいてくれ」

 

 

 

 

「了解しました。と、ヒロイは悲劇の未来が去ったことに安堵しながら、そういえばこの後お兄様は朝稽古のはずですが時間は大丈夫なのでしょうかと時計を確認します」

 

 

 

 

 そう言われて確認してみれば、確かにそろそろ準備を始めなければ不味い時間になっている。「そうだな」と立ち上がり、手早く着替えて玄関に向かった。

 

 

 

 

「お姉様もいかれるのですか?と、ヒロイは問いかけます」

 

 

 

 

「今日は先生に、進学したご挨拶にいかなければならないの......そうだわ。お兄様、拾を先生に紹介した方がよろしいのではないでしょうか。これから何かと顔を合わせることもあるかもしれませんし」

 

 

 

 

「そうだな。拾、来るか?」

 

 

 

 

「お供しましょう。と、ヒロイはきびだんごは貰っていませんが快く了承します」

 

 

 

 

「鬼退治に行くんじゃないぞ。いや、確かに戦いはするが.....」

 

 

 

 

「マジですか。と、ヒロイは冗談が現実味を帯びていたことに驚愕します」

 

 

 

 

「.......まあ、来たらわかるさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こういうことでしたか。と、ヒロイは納得します」

 

 

 

 

 目の前で行われているのは、《とあるエロ忍者坊主》が体術を教えている中段以下の弟子達が達也1人相手の乱取りである。門に入った瞬間に複数の人間に襲いかかられた時はその人間達の衣服を爆破(・・)して阻止しようとしたが、深雪に事情を説明されて今に至る。

 

 

 どうやら達也は、ここにいる『忍術使い』として名高い九重八雲和尚から体術を指南してもらっているらしい。この乱取りは毎朝の恒例なんだとかで、もう既に最初いた人数の半分ほどが地面に転がされている。

 

 

 

 

 

「それにしても凄いですね。あれだけの大人数を相手にしているのにまるで攻撃を受ける様子がありません。と、ヒロイは驚きを顕にします」

 

 

 

 

「ふふん、当然です。お兄様の腕ならばあの程度雑作もないことです。流石ですお兄様!!」

 

 

 

 

 なぜお姉様が得意げなのですか、と言おうとして、速攻で引っ込める。口は災いの元、言わぬが花、薮を続いて(スノークイーン)を出す。日本に古来より伝わるそれらの格言は、即ち先人達が残した偉大なる自己防衛のための叡智である。余計なことを言って氷の彫像に変えられる趣味は彼にはない。取り敢えず便乗しておこうと《さすおに》を言おうとしたところで──

 

 

 

 

「おおっ!?」

 

 

 

 

 ──深雪の背後に忍び寄っていた《とあるエロ忍者坊主》の気配を察知し、即座に回し蹴りをお見舞した。

 

 

 

 

「まさか、今のタイミングで防がれるとは思いませんでした。と、ヒロイは密かに驚嘆します。気配を消してお姉様に触れようとするとは......ここには随分と煩悩に忠実な人がいるようですね。と、ヒロイは警戒心を全開にします」

 

 

 

 

「いや〜こっちこそまさか気取られるとはおもってもみなかったよ。君、一体何者だい?」

 

 

 

 

「質問に質問で返すとは無粋な人ですね。モテませんよ。と、ヒロイはマナーのなっていないクソ坊主をこき下ろします」

 

 

 

 

「色欲は戒律に触れるからねぇ.....」

 

 

 

 

 このクソ坊主......と、もう2、3発ほど蹴りを見舞ってやろうとしたところで、深雪が二人の間に入った。

 

 

 

 

「こ、こら拾!何をしているの!!」

 

 

 

 

「お姉様を背後からニヤニヤして見ていた不埒者を排除しようとしていただけです。と、ヒロイはクソ坊主から目線をそらさずファイディングポーズを取ります」

 

 

 

 

「お、君もやっていくかい?かかって来なさい」

 

 

 

 

「いいでしょう、後悔させてあげます。と、ヒロイは──」

 

 

 

 

 ゴチン!!

 

 

 

 

「〜〜〜〜〜〜〜ッ!!?」

 

 

 

 

 清々しいほどの一撃。見ているだけで擬音が実際に聞こえそうなほどに綺麗に叩き込まれたそのゲンコツは、戦闘態勢に入っていた拾をしっかり沈黙させていた。

 

 

 

 

「お、お姉様、何をするのですか。と、ヒロイは頭部を抑えながら涙ながらに問いかけます.....」

 

 

 

 

「あなたが話を聞かないからです!先生も挑発しないで下さい!」

 

 

 

 

「いや〜ごめんごめん。つい面白くなっちゃって」

 

 

 

 

「やっぱぶっ飛ばしましょうかこのクソ坊主。と、ヒロイは両拳を固く握ります」

 

 

 

 

「だからやめさない!今度は凍らせますよ!!」

 

 

 

 

「.......申し訳ありません、お姉様。と、ヒロイはシュンとします」

 

 

 

 

 理由もわからずゲンコツを落とされ、そこに正座なさい!という氷の女王様の命令によって堅い石畳に正座させられる。拾君のメンタルはもうズタボロだ。

 

 

 

 

「いいですか拾、よく聞いてください」

 

 

 

 

「そうだよ、耳の穴をかっぽじってよーく.....あっすいません黙ります。いきがっちゃってホントすいません」

 

 

 

 

「.....この方は、九重八雲先生。かの忍術使いで、お兄様の体術の御指南をして下さっている方です」

 

 

 

 

「.............................Pardon?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「申し訳ありませんでした、先生。と、ヒロイは数分前の自分を殴り飛ばしたい衝動にかられつつ土下座を敢行します」

 

 

 

 

「こちらこそすまないね。ああゆう反応をされるとからかいたくなる性分なんだ」

 

 

 

 途中で手刀を振り下ろし乱入してきた達也の相手を終えた八雲に、少し前と同じく本能から最適解を選び出した拾は、再び地面に額を擦り付けていた。プライド?なにそれ美味しいの?土下座とは、即ち先人達が(以下略)。彼にとって、そんなものは生きていくのには犬の糞ほどにも役に立たないものなのである。

 

 

 

 

「.........ところで、そろそろ自己紹介をして欲しいんだけど.....」

 

 

 

「了解しました。と、ヒロイは立ち上がりながら答えます。このクモイの個体名称は拾、お兄様達の従兄弟(・・・)です。と、ヒロイは自らのプロフィールを語ります」

 

 

 

「......ふむ。従兄弟、ねぇ......そうかい。改めて、僕は九重八雲。巷では『忍術使い』で通ってる」

 

 

 

 一瞬細い目の奥が光ったような気がしたが、すぐにケロッとした様子になった八雲が返した。

 

 

 

「.....それにしても、お義兄様がここまでボコボコにされるとは驚きました。と、ヒロイは感想を述べます」

 

 

 

「それは当然だよ。まだ半人前の達也君に負けてしまうようでは、弟子達に逃げられてしまうさ。とはいえ、もう体術では達也くんにはかなわないかもしれないねぇ」

 

 

 

「ここまでやられた後にそれを言われては嫌味にしか聞こえませんよ.....」

 

 

 

 

「まあまあ、そこまで卑屈にならない方がいいよ。まだ君も高校生になったばかりだ。さ、もう登校の時間だろう?早く帰って準備しなさい」

 

 

 

「......はい、師匠。また明日もよろしくお願いします」

 

 

 

 

「拾君も、混ざりたくなったらいつでも来なさい」

 

 

 

 

「ありがとうございます。と、ヒロイは感謝を表明します」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「.........あれが『NEXT』の遺物.......人造調整体魔法師【弟達(ブラザーズ)】の1人、か」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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