特別な君へ   作:Hnbebe

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#2 天然

「はぁはぁ!!トラックだ!」

 あれから急いで来た道を戻ってくると案の定自宅の旅館前にそこまで大きくないトラックと車が一台止まっている、出遅れだー!急げ急げ!

 走りながらよく見ると車の前で志満ねぇと知らない女の人が何か話している、あの人が聞いていた井上さんだろうか、ということはその子供である将生君もいるはずなのだが。

「こ、こんにちは!!すいません挨拶が遅れました!高海千歌です!」

「あら!こんにちは!千歌ちゃん大きくなったねぇ!美人さんになっちゃって!私の事覚えてる?」

「えっ、あぅ…あ、あの……」

 あれ、もしかして引っ越して来た人じゃなかった?それにこの女の人全然記憶に無い…誰だろう…。

「ちょっとアキ先輩、千歌混乱してるじゃないですか……千歌?こちら今日越して来られた井上アキさん、千歌が小さい頃になんどか遊びに来てくれてたけど、その様子だと覚えてないみたいね」

 やはり引っ越して来た当人だったようだ。

 確かに言われてみれば、まだ小学生ぐらいの時に何度か内に遊びに来てたような気がしないこともない。

「す、すいません、あまり覚えてなくて…」

「あーいいのいいの!それよりマサキのやつどこ行ったかな、ちょっとその辺見てくるって言ってたんだけど」

「!!」

 そうだ!将生君!!いっぱいお話したいって思ってたんだ!おいしいみかんもご馳走してあげないと!でも当の本人が見当たらないみたい。

「私探して挨拶してきます!」

「ごめんねぇ、見つけたらガツンと言っといて」

「あ、はい!!ガツンと!」

 手短に一礼してその場を切り上げ将生君を探し始める、トラックから業者さんらしき男の人が降りてきて志満ねぇとアキさんとこの後の事についてまた話し始めたようだ。あまり時間がないかもしれない、急がないと。

「ん〜そんなに遠くには行って……あっ!」

 やはりそこまで遠くには行っていなかったみたいだ、旅館の敷地を出た所から周りをグルグル見ながらスマホをいじっている。きっと彼に違いない、この辺りでは見ない顔だ。

 途端に何故だか鼓動が早くなり顔が熱くなってきたような気がする、いきなり声をかけて変に思われないかな、不審者って思われたらどうしようか、こんにちはでいいのか、はじめましてから?えーっと………

「あのー……」

「ひゃいい!!?た、高海千歌です!高校二年生です!みかんが好きです!」

「えっ……は、はぁ」

 しまった、やってしまった。

 いつもの考え込む癖が出てしまいあろうことか彼の方から声をかけさせてしまった、ふぁーすとこんたくと失敗だ。

「俺………僕は井上将生…です、今日引っ越してきて」

「うん!!知ってる!私は高海千歌!宜しくね!」

 さっきも名乗ったような気がするけどまぁ気にしない、名前を名乗るのは大事なことだ、二回ぐらい言っても構わない。

「お家はどの辺なの!?高校生!?何歳!?みかんは好きですか!?趣味は!?えーっとえーっと!」

「お、落ち着いてください、一つずつ一つずつ!!」

 またやってしまった、逸る気持ちをどうしても押さえきれず質問でまくし立ててしまった。思わず恥ずかしくなって彼の顔を見れなくなる。

「家は多分近所だと思います、母がこちらの旅館で働かせてもらうらしいので、高校は今年通信制の学校に入学しました、一年生なので高海さんからは後輩ですね、みかんは……」

 私が頭を抱えているのをよそに彼は丁寧に質問に答えてくれる、自分より身長が高いので年上かと思っていたが一年生と聞いて驚いた。通信ってなんだろう?スマホで授業とかするのかな?なんか都会だ!こんど曜ちゃんにも教えてあげよう!

「…かみさん?」

「ふぇ?」

「高海さん聞いてます?」

「はぇ!?き、聞いてるよ!!スマホで都会なんだよね!!」

「スマホ…??あ、ラインとかですか?」

「え?あ……そ、そうそう!!それなんだよ!!あはは!!ラインね!ラインだよね!…………ライン交換しよ……」

「あ、は、はぁ……」

 またまたまたやってしまった、一人で盛り上がって自分の世界に入ってしまうのはなんとかしなければ、初対面でこんな恥ずかしいところを見せまくって穴があったらなんとやらだ。

「はい、行けましたね」

「うん!ありがとう!改めてだけど宜しくね!」

 さてさて、連絡先も交換できたことだし彼に早速一つ訂正してもらうことにしよう。

「こちらこそ宜しくお願いします、あ、そうだ高海さんは普段は……高海さん?」

「千歌!」

「は、はい…?」

「千歌でいいよ!」

「えっと……いいんですか?今日初対面で……」

「うん!私達もう友達でしょ、だから!私も、まーくんって呼んでいい?」

「うぇ!!?ま、まー……あっ……は、はい」

「うんうん!じゃあヨロシクねまーくん!」

「は、はい高……千歌…さん」

 なんとも丁度良いタイミングだ、ウチは三姉妹で全員高海だから、下の名前で呼んでもらうほうが勝手もいい、それに殆ど下の名前で呼ばれることに慣れているので名字で呼ばれるのが何か変な感じがしてしまう。ところでまーくんの顔が赤いようだけど、大丈夫だろうか?

「まーくん風邪?」

「高…千歌さん、天然ってよく言われません?」

「ふぇ??」

 

 

 




呼称などが間違っていたり違和感があればその都度直していきたいと思います!
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