「曜ちゃんどうしたんだろ?お腹痛いのかな?」
「多分違うと思いますけど……はははっ……」
多分だが、いつもの二人の間では先程のような挨拶を交わしているんだろう、しかしそこに見知らぬ男が一人追加されれば話は別である。正直俺だったら○にたくなる。
「曜ちゃん!ほら顔上げてよ!自己紹介しよっ!」
自己紹介という言葉に膝を抱えて俯く渡辺さんの体がピクッと反応する。確かに今のままだと俺の中では渡辺さんはヨーソローの人というなんだかよく分からない位置づけに収まってしまう。
「うぅ……」
少しだけ顔をあげてこちらをチラッと涙目で見やる渡辺さん、よくよく見たらこの人もめちゃくちゃ可愛いんですけど。内浦の遺伝子恐るべし。
「ど、ども井上将生です、よ、よーそろー……」
ここは掴みが肝心とこちらから先に冗談を添えて声を掛けてみる。
「あぁぁぁぁん!!やだやだやだ!もう無理無理無理ぃ!!」
地雷を踏み抜いた。
「とーちゃーく!!」
「おぉ、ここまでくると結構拓けてるんですね」
「………」
無事俺たち三人は沼津市街に到着、日もほとんど傾いてしまっているので折角だから外食して行こうと言う話になっている。そのついでに普段使えそうなお店だったり簡単に遊べそうな所を案内してもらうという予定だ。
「曜ちゃん!そろそろ元気出して!私は好きだよ?曜ちゃんのヨーソロー!!えへへ今の似てた??」
千歌さんそれは今の渡辺さんに効く。
「うぅ…どうせ私はイタイよーそろーの人……」
こうなれば俺も一つ男を見せなければいけないか、と、ひと芝居打つことにする。
「そうですよ!俺もカッコイイと思いますよ!ヨーソロー!ねっ千歌さん!でもなんでヨーソローなんです?船関係の趣味を?」
ささっと話を拡げることも忘れない、うーん俺って意外にできる男なのでは。などと得意気になっている場合ではないのでちらっと渡辺さんを伺う。
「えっと……パパが船の仕事してて…」
「へぇ!!船の!凄いですね!渡辺さんもお手伝いしたりしてるんですか?」
「ううん、私はそんなに……」
「そうなんですか、でも渡辺さんって海が似合いそうですよね!髪型もウェーブが波みたいで可愛いですし」
「ふぇ!?か、かわ!?」
ここが会話の掴みどころと、勢いに任せて何かとんでもないことを口走ったかもしれない、可愛いとか、まぁでも間違ってはいないしヨーソローだ。多分使い方は間違っている。
「むぅ!!まーくん私にはそんな事一言も言ってくれてないのにー!」
何故かここで伏兵が登場してきた、千歌さん今は渡辺さんの機嫌を戻してもらおうとしているところですよ、なんであなたまで口を尖らせてるんですか。
「えぇ…ま、まぁ千歌さんは口にしなくても溢れ出る可愛いオーラが、ね??」
なんだ可愛いオーラって、自分で言ってさすがにこれは苦し紛れ過ぎたかと思っていると案外まんざらでもなさそうに、そう?と頬を指でかきながら顔を赤くしてしまった。ちょろくないですか千歌さん?
「あ〜浮気だ〜」
三年目の浮気ぐらい許してくださいよ〜、ってまだ出会って初日だ、伏兵はこちらだったか、渡辺さんがニヤニヤしながら袖をクイっと掴んできた。それ可愛いですね。
「私は遊びだったのまーくん!?」
「はぁ!?えっ!?」
割りとこちらは真面目に言ってきてそうで反応に困る、こういう時は旧友の渡辺さんに頼るのが一番だ、と視線を渡辺さんに向けるとニヤニヤ顔を崩さずあろうことか腕を絡めてきた、何してるんだこの人は、後めっちゃ腕に当たってるんですが。
「昔の女より今の女だよね、よーししゅっぱーつ!ぜんりょくぜんし〜んヨーソロー!」
「あーっ!!だめーっ!!まーくんっ!私もっ!えいっ!」
さては千歌さんのことをよく分かってて煽ったな、機嫌は直してくれてよかったけど渡辺さん……要注意だ…。あと千歌さん力の限り腕にしがみつくのは思春期の男子に効くのでおやめください。
「………マサキくん……ありがとっ」
「……っす……」
渡辺さん………本当に要注意だ……。
「あーっ!!内緒話してる!!だめなのっ!!もーっ!まーくん!めっ!だよ!?」
三年目~の浮気ぐらい~って今の高校生って知らない人多いかもしれないですねw