串刺し公は勘違いされる様です(是非もないよネ!) 【完結】 作:カリーシュ
――第三十四層 DKギルド本部前
「ふぁ〜〜ぁ………ネミィ」
現在時刻は午前六時。 今日からKoB所属という事でヒースクリフから呼び出しを受けているオレなのだが、何が悲しくてこんな早朝からホラー感満載(まあ眠過ぎて全然怖くないケド)な他ギルドの本部に出向いているかというと、結構複雑な事情があるのだ。
だからと言って人に聞かれたら、『ピトに脅された』としかいいようがないのだが。 それで大体説得できそうなのが流石毒鳥クオリティ。 そこに痺れぬ憧れぬ。
……実際の所は、全く別だ。
昨日のデュエルの最中に起きた二度の『違和感』に気がついたピトは、奴の正体を疑ったのだ。
――『
確かにオレが勝つ寸前で感じた、あの『時が盗まれた』様な現象は、今分かっているスキルでは再現出来ない。 それにピトに言わせれば、ヴラドの槍が折られたのもおかしいらしい。 曰く、『STR極が延々ブン回し続けたのに耐えられたようなシロモノが、ヒースのステで、それもあんな不安定な状態で折れる訳ない』だそうだ。
更に、他にも根拠があるらしいが…… 何故かその場でははぐらかされ、この時間、この場所に来るように指定された。
されたのだが……
「……あのヤロー、自分で言った時間になっても来ないってどういう事だよ……」
かれこれ二十分くらい待っているのに音沙汰無し。 メッセを送ってもスルー。 かといって帰ると後が怖過ぎる。
泣く泣く待ち続けるも、あまりの暇さ加減に扉に寄り掛かってうつらうつらし始めてしまう。
何とか意識を保とうと、項垂れる頭を勢いよく起こして
「――おっ待たせー! 遅れてメンゴ!
………うん?」
これまた勢いよく開いた外開きのドアの縁に後頭部強打され、ついでに吹き飛ばされて顔面からダイブし、別の意味で意識がアイキャンフライしていった。
お、オレが何をしたっていうんだ……
――十分後。
何とか意識を取り戻した後に案内されたのは、ボロボロの楽器がそこらじゅうに放置された倉庫らしき部屋だった。
メンバーはオレの他に、
どっから攫って来たんだ、オイ。
ピトにツッコんだら、「訳ありっ娘を拾った」との事。 もうコイツがラスボスでいいんじゃないかな。
「それじゃあ、第一回『茅場攻略会議』をはじめまーす!」
相変わらず人格以外は完璧な美少女が、珍しくマイクを持たずに微妙に物騒な台詞を吐く。
――て、いうか。
「オイちょっと待て。 茅場攻略会議って、昨日の感じだと最有力候補はヒースクリフだろ? だったらなんで
素朴な疑問を突きつける。
ヴラドだけじゃない。 本気で茅場相手に証拠集めに走るなら、それこそもっと人手が要りそうだ。
そもそも、本当に茅場がプレイヤーとして参加しているかどうかも確証が無い。
だというのに、そんな疑問は、
「へ? そんなの、
毒鳥の吐いた毒に、あっさり溶かされた。
「……は? だって、
「ねえキリト。 この世界の初日に、あの
「……? 確か――」
台詞を途中で被せられるも、今まで見た事がないくらい真面目な表情のピトに押され、記憶を掘り返す。
確か――
『――この状況こそが、私にとっての最終的な目的だからだ。 この世界を創り出し、観賞するためにのみ私はナーヴギアを、SAOを造った。 そして今、全ては達成せしめられた』
……忘れる訳無い。 一万人のプレイヤーが、電子世界の囚人へと変えられた、あの赤い悪夢を。
「じゃ、思い出した所でもう一つ。
キリトはさ、他人のやってるRPGを傍から眺めていて、どう思う?」
「は? そんなの、詰まらないに決まって――― まさか」
ふと脳裏に浮かんだ考えに、戦慄する。
「――まさか、本当に『この世界を楽しむ為』だけに、このデスゲームを創ったのか?」
思わず、考えがそのまま口から出る。
「付け加えれば、SAOのシステム調節の為にも、『トップギルドマスター』の肩書きは都合がいいわよね。 何たって、ほっといても『攻略の為』に各Mob、各マップ、各システム内外のスキルの情報が入ってくる訳だし」
ペラペラと恐ろしい証拠を並べつつ、「この時点で有力容疑者は三人」と、指を三本立てる毒鳥。
「
薬指を降ろし、数字の二を作る。
「さて、残りは二人なんだけど……
もう一度、茅場の動機を思い出してみよっか」
「……この世界を、楽しむ為、か? それがどうしたんだよ?」
「んじゃあ聞くけど………
……何が、とは聞けなかった。
SAOの主住区は、その多くが中世からありそうな、ヨーロッパ風の建造物だ。
そんな中に佇む、古風な言葉使いで、
或いは、――
――西洋最強格の『
……最悪だ。 伏線としては十分だ。
攻略組トップの内半分以上が敵かもしれないと思うと、目眩がする。
流石のピトフーイも茶化さず、苦笑いを浮かべる当たりが絶望を加速させる。
「……お前がヴラドも疑ってるのは分かった。 それで、オレはどうすればいいんだ? わざわざ一晩明けてからこんな話をしたって事は、何かしら考えてるんだろ?」
「That's right!」
いっそ清々しくなるほど綺麗な発音で肯定すると、俯きっぱなしだった少女の肩をバシバシ叩きだす。
「この娘、ルクスっていうんだけどね。 一緒にヒースの事探って欲しいのよ。
あ、腕なら心配しなくていいわよ。 この娘が本気で隠れたら、私じゃ分からないもの」
「はぁ…… えぇっと、よろしくな」
「っ! は、はい! よろしく頼む。 ……頼み、ます」
少し調子が悪いのか、GM(仮)相手に諜報する事に緊張しているのか、顔が赤いルクス。 大丈夫なのだろうか?
体調を伺おうと顔を見つめたら、もっと赤くなってから忽然とその場で消えた。
ハイディングスキルか。 しかも完全に透明になってるところを見るに、カンストしてるのかよ。
「じゃあ、ピトはヴラドを探るのか?」
一先ず問題無さそうなのを察して、ピトの方に向き直る。
「まーね。 あの人、超が付くほどの方向音痴で、付いてくのに理由もスキルもいらないし」
「楽そうでいいなぁ」
……ま、うだうだ言っても仕方がないか。 KoBの方の集合時間も近いし、そろそろ行かないとな。
◇◆◇◆◇◆◇
――キリトたちを見送った後、ギルドホームの中を堂々と進んでいく。
時間は七時前。
朝御飯までまだ少しあるのを確認してから、ギルメンの私室やダイニングがある、言うなれば主住区を通り。
私ですら薄ら寒いものを感じる、ここがダンジョンだった頃そのままの景色が残る深部も通り抜けて、その最深部――
――旧ボス部屋に、足を運ぶ。
――深海の様な深い青を基調にしたフィールド。
部屋の奥には、まるでステージの様に盛り上がった台座があって――
その手前に、あの男が立っていた。
何をするでも無く、ただただ、立っていた。
それでもボーッとしていた訳ではないのか、扉を開ける音に反応して振り向くと、声を掛けてくる。
「む、ピトフーイか。 此処に来るとは、珍しいな」
「ちょっち歌詞のアイデアが行き詰まっちゃってね」
そのまま近づいて行って、私も隣に立つ。
元々ボスが座っていた台座を眺めるヴラドは、無表情で……
『――
今と同じ様に無表情で、
それでも、今にして思えば『
思い返してみれば、あの時は戦い方も何時もと違った。 一分一秒でも早く斃そうとしたのか、ロクに相手の攻撃も躱さずにひたすら槍を振り回して。
そのクセ、投剣や体術は一切使わないで。
ステージに座っていた、あの歪な鎧兜を纏った人――
「――余はもう行くが、お前らは如何する」
いつも通りの静かな声を掛けられて、急に思い出から引き戻された。
「んー、もうちょっとここに居るわ」
「そうか」
黒コートの裾を翻して、ボス部屋を後にするギルマス。
その表情は、いつも通りの
――気配が遠くに消えてから、取り留めも無くエムに話を振る。
「ねえエム。 どう思う?」
「……ヒースクリフは多分黒だな。
ただ、ヴラドの方は……」
「確かに分からないわねぇ……」
キリトにはああ言ったけど、実際の所は微妙なラインね。
時々ボス相手に、まるで最初から知っているかの様に動くことがあったし、茅場との何らかの繋がりはあるとは思う。
ただ、その程度が分からない。
茅場の協力者?
巻き込まれただけのアーガス社員?
それともまさか、AI? 流石にそれは無いか。
――一つだけ断言出来るのは、あいつが何かしら隠していることだけ。
「さてと! それじゃ、私たちも行こっか」
まあ、その内分かるでしょ!
次回予告
皆様どうも。 二回連続で次回予告を担当することになりました、ジルでございます。
さて、前回の後書き欄にてアンケートを取らせて頂きました『エイプリルフールネタ』についてですが、約千七百もの投票、誠にありがとうございます。
結果については、『シリアル』ルート一強だったので、その様に進めたいと思います。
それでは次回予告を、どうぞ。
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――ザ・シードのネットワーク内に出現した謎の空間『UnKnown』。
そこは、様々な仮装空間が混在する、未知の世界。
菊岡らの依頼で『UnKnown』の調査を進めるキリト達。
――しかし彼らの前に、突如として見たことの無い、黒い靄を纏ったMobが立ち塞がる。
辛くも撃退には成功するも、更なる異常事態が彼らを襲う。
……迷い込んだのは、見渡す限りの地獄。
如何なる存在が暴虐の限りを尽くしたのか、雨が降る崩壊した街に放り出されてしまったキリトら。
そして、呆然とする彼らの前に。
同じように、けれど全くの異界から迷い込んだ一組の男女が現れる――
『ソードアート・オンライン ディープ・エクスプローラー
【
……これは、決して記録に残らない、外典にして、――
―――叛逆の物語