オーバーロード ありのままのモモンガ   作:まがお

25 / 51
名前すら出ない者たち

 カルネ村に戻ってきてから、モモンガ様は無駄に明るく振舞っていたと思う。

 あの事は私が解決しておくから、安心するといい。

 それだけ言って、モモンガ様はどこかへ行ってしまった。

 

 

「お姉ちゃん、モモンガ様、なんか変だったね」

 

「うん…… またすぐに戻ってくると思うけど……」

 

 

 何だかんだ言って、モモンガの変化はすぐにバレる。

 お互いをよく見ており、思いやっている三人の絆は深かった。

 

 

 

 

 

 

 普段の鎧姿ではなく、闇色のローブを纏って王都を彷徨うモモンガ。久しぶりのフル装備で魔法を使い、八本指の情報を集めていく。

 

 

「どの世界でも腐った連中というのは、いるのだな……」

 

 

 敵は分かった。

 そして、今のモモンガは一人である。

 

『嫉妬する者たちの顔面』により、ステータスが跳ね上がっていく。

 

 組織は色々と癒着があるようだが、誰一人として逃す気は無い。

 皆殺しにする事は簡単だし、そうされても文句は言えない連中ばかりだ。

 しかし、自分は胸を張って、彼女達の元に帰りたい。

 自らの手では無く、法の裁きによって潰す事を決意する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 モモンガは集めた情報から、八本指の拠点を割り出し、次々と襲撃していく。

 

 

「〈魔法効果範囲拡大化(ワイデン)魔法位階上昇化(ブーステッド)魔法抵抗難度強化(ペネトレート)魔法持続時間延長化(エクステンド)魔法最強化(マキシマイズマジック)支配(ドミネート)〉」

 

 

 念には念を入れた、強化をこれでもかと詰め込んだ魔法により、拠点丸ごと魔法をかけていく。

 

 

「お前達はこれから王城に行け。そこで、自分の罪が正しく裁かれるまで、自らの犯した罪を喋り続けろ」

 

 魔法をかけられた人達が、ぞろぞろと王城に向かって進んでいく。

 こうしておけば、賄賂を積もうが何をしようが、裁かれるまでは意思を取り戻せない。

 王国の法に基づくと、彼らは皆、極刑である。

 

 その後、自らが死ぬその時まで、罪を喋り続ける囚人達という、異様な光景があったとか……

 

 

 八本指とその関係者は、こうしてリ・エスティーゼ王国から消えた。

 

 

「これで、少しは救われる人もいるのかな…… さぁて!! ネムに会って癒されに行こう!!」

 

 

 重い話はヤメヤメとばかりに、カルネ村に突撃していく骸骨。

 夜も遅いが、許してくれるだろうと軽く考える。

 

 ネムが笑い、エンリには叱られるが、そんなやり取りが日常を思い出させてくれる。

 

 

 モモンガはこれが大好きだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの骸骨!! こんな人数、どうしろって言うのよぉぉぉおおーっ!!」

 

 

 ちなみに八本指を襲撃した先で、助け出した人達は、全てラキュースに放り出してきた。

 渡した〈大治癒(ヒール)〉が籠められた巻物(スクロール)により、みんな怪我一つない元気な姿だが、ラキュースは途方にくれる。

 

 モモンガの知っている、〈大治癒(ヒール)〉の巻物(スクロール)を使えそうな神官が、ラキュースしかいなかったのだから、しょうがない。

 

 誰一人として見捨てず、何とかしようとするあたり、人選としてはバッチリだった。

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。