久しぶりに家を出たら、そこは巨人が闊歩する地獄だだった   作:虚ろな勇者の影

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キャラ崩壊注意。


自覚のない厨二病

「巨人発見!」

 

青い空が目に染みる晴れの日。小鳥がチュピチュピ鳴いている。

そんな清々しい朝に巨人が一体。全くもってお呼びではない。

だが、こちらには気づいていないようだ。

 

アンカー発射。

対角線上にある建物に着地───すれ違う巨人───そのまま流れ作業的にうなじを切り落とすスタイル。

血の付いたブレードを収め、蒸気を出しながら倒れる巨人をバックに一言。

 

「またつまらぬものを斬ってしまった…」

 

…………。

 

決まったァ!!!

もうかっこよすぎて自分が怖い。

なんかもう、かっこよさの極みだと思う。

今までで2番目ぐらいかな。

1番は、

 

「闇の炎に抱かれて消えろぉぉぉ!!!」

 

あの憎きあんちくしょうの顔を睨み付けつつ言った時だった。

もう、床を高速で転げ回って後悔するぐらいだった。かっこ良すぎて悶絶してしまったのは後にも先にもあれがだけだ。

 

 

「それにしてもなんか今日巨人多くね?」

 

……これでもう4体目だよ?

血涙止まんないし、太ももの筋肉がちぎれつつあるんだけど。とりあえず、

 

 

「1回、死んどくか」

 

 

 

 

 

◆◇◆

 

ウォールマリアが壊されてはや2年。

私は今日も巨人をぶっ殺しつつ、その辺旅というか、歩いてる。

この立体機動装置は駐屯兵団の武器倉庫からかっぱらってきた。

駐屯兵団時代の経験が役に立ったぜ。

永く生きてると色々経験出来るね。自慢だけど私、憲兵団だったこともあるんだぜ!半年ぐらいで辞めたけど。

 

でも、なんだかんだ言ってこれ使うの30年振りで焦ったわー。普通にバランス感覚鈍ってるし、なんか装置は改良されてるしでちゃんと使えるようになるまで何回死んだよ、私。

壁とキッス、巨人にぱっくりと、誤作動して地面とキッス、巨人握り

潰され、筋肉痛が酷いから自殺……。

 

「我ながら酷いな…でもいいんだ!そのおかげで今は自由自在に使えるから!」

 

私の2年間の努力は無駄じゃなかった!!

というか、ケガを恐れずにガンガンやれるから上達も早いんだなこれが。と、自画自賛してみる。

1人だと褒めてくれる人もいない。寂しい。

あーあー、人肌が恋しーな。誰か喋り相手プリーズ。

 

「ん?なんだあれ、狼煙?……って煙弾?」

 

いやぁ、久しぶりに見たなぁー、あの色。訓練兵の時振りだから……50年ぶり?

 

「って、あの色!!緊急事態のやつじゃんっ!!」

 

呑気に長生き自慢してる場合じゃないよ。

緊急ってつまり巨人相手に詰んでるってことじゃん!!

 

「早く、助けに行かないと!!」

 

……やばい、そんな場合じゃないけど顔がニヤけるの止めらんない。

 

「だって!人間だよ!?約2年ぶりの!!

会話、そう会話ができる!!言葉のキャッチボールだぞ!いやっフゥーー!!」

 

 

 

 

◆◇◆

 

猛スピードで煙の出どころに近づく。

するとやはり、と言うべきか巨人がわんさか群がっていた。

その巨人達の周りを私のと同じ、そう立体機動装置を使って飛び回る緑の人影が何個か。

 

「あの紋章は……調査兵団じゃないか!!」

 

なるほど、調査兵団がいたのか!そりゃ壁外に居るっつたらそれ以外ありえないよな、うん。

いや、ウォールマリア内だから壁内か?

 

「まぁ、いいや。兎に角っ────!!」

 

壊れかけた民家の屋根に着地、人間の全力ジャンプ、立体機動なしで10メートルは軽いね。

人間の馬鹿力舐めんなよ。その気になれば壁を垂直に走ることだって出来るんだぞ。

 

───アンカーを近くに居る巨人の首にぶっ刺す。そのまま一直線にうなじカット。1体死亡っと。

────別の巨人がこちらを向いたので眼球にアンカーをぶっ刺し、伸びてきた腕とカッティングしつつ、頭上をフライアウェイ。

 

「本日6体目の巨人か。

支配者級とあえるのはうれしいが……おまえも殺すぞ!!」

 

────んでもって、うなじをスライスイング。

うん。今日は一段と決まってるね私。

うんうんと頷いていると、緑の服を着た…戦っていた兵士の1人が話しかけてきた。

 

「?!増援か?!助かった!!」

「おっす、おっす。煙弾見つけて飛んできました」

「1人か?ほかの班員は?」

 

ガッカリとした様子で尋ねられる。

いや、班員も何も私調査兵団じゃないぞ。

返す言葉が見当たらず、沈黙していると、男は何かを察した様で申し訳なさそうな顔をした。

 

「……あぁ、そうか……しかし!今は悔やんでいる時間ではない!

しかし、初めて見る顔だな。新兵か?

いや、そんなことはいい。まだ戦えるか?!」

「私を誰だと思っている?シナン・イッガールノだぞ?死しても尚戦ってやるさ」

 

久しぶりの会話だ。楽しい。やっぱ聞いてくれる人がいないと私のかっこよさも伝わりにくいって事ね!

 

「……戦えるんだな。現在我々は兵糧拠点設置の為、巨人の誘導作戦を行っている。

お前も巨人共の目をここに引き付けておいて欲しい!!任務は以上だ!

グレグレも無駄に死んでくれるなよ!!」

 

決死を覚悟したような顔。いや、実際しているのだろう。そんな決意に充ちた顔で彼は巨人達の群れへ突っ込んでいく。

 

「ふむふむ。りょーかい。

でもそれって──別に殺し尽くしてしまってもかまわないのだろう?」

 

ニヤリ、顔が歪むのを感じる。

久しぶりに人と喋れたんだ、コイツらを殺させはしないぞ。私はこの後こいつらと酒を飲み語らう予定がある、だから邪魔な君達は駆逐してしまおう。この巨人共が!!

 

───アンカーを撃つ─削ぐ──そのまま反動で回転──背後をとる─切り刻む──引っ張られる─飛ぶ──削ぐ──削ぐ─削ぐ、削ぐ削ぐ削ぐ削ぐ削ぐ────

 

………………。

 

「私の前に現れたことが、お前のミスだ」

 

群がっていた最後の一体の首が地に落ちる。

大量に殺したせいか、水蒸気で辺りは真っ白。

 

「お前、本当新兵か?!強いなんてものじゃないぞ……!」

「本当に全て殺し尽くすとは……」

「あんなに囲まれてたのに、生き残ったぜ、俺達……!!」

「あぁ、信じられねぇ……」

 

戦っていた、兵士達が私の周りに集まりそんなことを言ってくる。

 

づ、づがれだ。本気出しすぎた。血塊が詰まって息が出来ない。ダメだもう立てない。死ぬ。死んでしまう。よし、死のう──あっ、ダメだ人が居る!!

ちょっとみんな近寄らないであっちに行っててくれないかな?!

 

 

「援軍に来た!!状況は?!」

 

そんな声と共に向かってきた数人の兵士達。

 

「リヴァイ班?!」

 

リヴァイ班?いや、そんなのどうでもいいから早くどっかいってくれ、私は人知れず死にたいんだよ。

あー、やばいなんか視界が赤かったのに、白っぽくなってきた。

 

◆◇◆

 

緊急事態の煙弾を目認し、駆けつけたリヴァイ班。巨人による大殺戮が広がっているであろうと予測されたその場所。

しかし、あったのは蒸気になり消えゆく巨人の死体の山と、生き残ったであろう十数人の兵士達。

 

「こりゃどういう状況だ?巨人が1匹もいねぇじゃねぇか」

「リ、ヴァイ兵士長!なぜここに?!」

 

突然現れた自分では声の掛けることの出来ない英雄に、ミーハー心のある兵士が声うわずらせて問いかける。

 

「……チッ。いいから早く説明しろ、クソが」

「はっ!……申し訳ありません!!

誘導作戦のため巨人の群れと我が班の兵士達が戦っていました。戦況は絶望的、このままでは10分と持たず全滅かと思われた頃、そこに居る新兵が現れ、全て討伐し尽くしました!!」

「本当か?」

 

にわかには信じ難い事実。巨人を一体倒すのに30人の犠牲が必要と言われている。リヴァイ兵士長ほどの人ならともかく、新兵が?群れと呼ばれるぐらいの巨人達を1人で殺し尽くしてしまった??

 

 

「……とんでもねぇヤツが居たもんだな」

 

その呟きを聞き取れたのはたまたま近くにいたペトラという少女だけだった。

後に彼女は語る。「兵長はあの時確かに笑っていた、もちろん網膜に焼付けた」と。




現在後悔可能な情報
◆シナン・イッガールノは自覚の無い厨二病患者である。
◇シナン・イッガールノは不死身なのをいい事によく死ぬ。食事をするように、トイレに行くように、息をするついでに死ぬ。
◆シナン・イッガールノは過去に、訓練兵団、憲兵団、駐屯兵団だったこともある。
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