「・・・なるほどなぁ。そんなことがあったのか」
一通り事情を説明し終えると、ハジメは椅子の背もたれに倒れこむように身を預けた。
他のユエやティアたちの反応も、だいたいハジメと似たり寄ったりだ。
「少し調べてみたが、たしかにそれらしき事件のニュースが報道されてたな。偶然気づいたツルギと偶然巻き込まれた遠藤がいなけりゃどうなってたことやら・・・」
「俺たちだけならどうにでもなる。が、逆に言えばそれ以外は全滅の可能性もあったし、ベルセルクの影響を受けていないことがバレたらまた狙われる可能性もあった。わりと間一髪だったな」
「それにしても・・・地球って、思っていたよりもファンタジーな世界だったのね」
そう呟いたのは雫だ。
俺たちだって、トータスという異世界に転移したからこそ、まだ冷静に受け止められているが、もしそうでなかったら『そんなバカな話があるか』と一蹴していただろう。
「んで、後のことは遠藤に任せてあんのか?」
「あぁ。さすがに全部片付くには数日かかるだろうし、俺も俺で上の方に報告しなきゃな・・・」
「・・・イギリス政府とは、上手くいきそうか?」
イズモの問いは、今後イギリス政府と敵対するようなことがないか、ということだろう。
それに関しては、まだ確定はできないが・・・
「おそらく、真っ向から衝突することはないはずだ。向こうからすれば、俺と遠藤はイギリス、ひいては世界を救ったヒーローだし、万が一敵対したとして、そうなったらどうなるかって見せしめもしておいた。それに何より、国家を第一に考えてる局長殿が、国を危険にさらすような真似はさせないはずだ」
遠藤や俺に対する恩という意味でも、敵対した場合のリスクという意味でも、あの局長が俺たちと政府を敵対させるような真似は絶対阻止しようとするはずだ。
あるいは、その辺のことも遠藤の後始末に含まれているなら、遠藤がどうにかするだろう。
「とりあえず、俺は俺で上に報告してくる。ていうか、さっきメール送ったら、すぐ来るように返信が来た」
「そうか」
「いってらっしゃい、ツルギ」
皆に見送られながら、俺は上への報告に向かった。
当然というか、上から大目玉を喰らってしまったが、あくまで異能を見せたのは保安局の面々にエミリー博士とその関係者だけで、政府や軍には大っぴらに認識されていないこと、もしかしたら保安局とは協力関係を結べる可能性もあることを話すと、遠藤から報告が来るまで保留ということになった。
ぶっちゃけ、何かしら処罰を喰らうと思っていたが、事が事だけにその場で判断を下せることではなかったようだ。
とりあえず、ついでに俺たち“帰還者”の今後の扱いも遠藤の手に委ねられることになりそうだ。
もちろん、遠藤には言わないが。
* * *
翌日、遠藤から連絡がきた。
とりあえず、だいたい上手くいったらしい。
まずベルセルクについて、上層部に対するベルセルク不要論は、今のところ聞き入れられそうな感じらしい。
どうやら、俺が見せた悪夢がいい具合に効いてくれたようで、さらに局長の声もあって、ベルセルクの運用は見直されることになりそうだということだ。
別の拠点を制圧した軍が押収した実物と製造データも遠藤が一つ残らず破壊したらしいし、ベルセルクはエミリー博士の頭の中以外からは完全に抹消したと言っていい。
次に俺たち帰還者の扱いについて、こちらも特別悪いようなことはなかったらしい。
さすがにバルスヒュベリオンで派手に地形を変えた後始末やら情報統制やらで苦労をかけさせた良心の呵責(やったのは遠藤じゃなくて俺だが)もあってかイギリスでの活動に条件は付けられたものの、遠藤に専用回線を渡してイギリスで何か活動をするときは一報を入れる程度に収まった。
最後に、エミリー博士について、こちらは実家に保安局の護衛だけでなく、遠藤からも分身体を送ることにしたらしい。
エミリー博士はずいぶんと遠藤に懐いていたし、本人じゃないとはいえ嬉しいのは間違いないだろう。
また、一命を取り留めた、というか俺が蘇生したダウン教授も、一生塀の中にはなるらしいが、面会の許可は出せるようだ。「こんな形で生きながらえるくらいなら!」とかなんとか言ってたらしいが、遠藤の説得もあって今は落ち着いているようだ。とはいえ、エミリー博士に対するあれこれが消えたわけではないから、面会できるとは言ってもまともに会話できるのはまだ先になりそうだ。
そして、予定通りであれば、遠藤は今日帰国するはずだ。
今頃は、空港でお別れでもしているところだろう。
「そんで、ハジメ。
「おう。今頃、ちょうどいいタイミングで合流しているはずだ」
遠藤からの報告をハジメの家で話していたのだが、話し終わってから俺とハジメは口元に笑みを浮かべた。
その様子を、ハジメサイド、というか主にシアが軽く上機嫌になりながら頷き、俺サイドは呆れ半分の苦笑を浮かべていた。
「このタイミングでラナさんを送り込むのは、ちょっと悪趣味じゃない?」
そう。実はゲートキーの実験と称してトータスから地球に移住してきたラナを遠藤がいるだろう空港に送り出したのだ。
普通なら、エミリー博士の恋心は遠藤に恋人がいたということで儚く散ってしまうだろう。
だが、これは遠藤も知らないことなのだが、ラナは『ハウリア族の次期族長で、なおかつハーレム作ってる魔王の右腕たる者、嫁が1人では足りない!せめてあと6人ほしい!』などと言っているのだ。
嫁を7人集めてどうしたいのかはともかく、ラナは割と重婚バッチこい!な考えのため、合流しているのなら修羅場になっているはずだ。
まぁ、こればっかりは根本的に価値観が違うからなぁ。
現代ではどの身分というか立場でも重婚は嫌われているが、トータスでは身分が上の者は普通に愛人がいたり重婚もしていたりする。というか、亡くなったあとでも再婚どころか恋人すら作っていないカムが珍しいというか、いっそ特殊と言っても過言ではない。
そんなことを考えていると、ハジメのスマホに電話がかかってきた。
表示されている名前は、遠藤だ。
「おう、遠藤。どうし・・・」
『覚えてろよ、南雲』
「は?あ、ラナと合流したんだな?その様子だと、面白いことになってるみたいだな?」
そんなことを言いながら、ハジメはカラカラと笑う。
俺も似たような笑いを堪えるが、漏れ出た声が聞こえたのだろう。
『今度は絶対ぶん殴ってやる!峯坂も近くにいるんだろ!俺にラスト・ゼーレを渡したこと、後悔しろ!』
「え、ちょっ、おまっ・・・切りやがった」
「あらら・・・」
他人事のように言葉を漏らすが、まさか俺も巻き添えになるとは。
ぶっちゃけラナを送り込んだのはハジメの判断で、俺は止めなかったとはいえ、別に何も言ってないんだがな。
ただ「今回の事件で遠藤に惚れた女がいる」と話しただけなんだが、アウトだったらしい。
まぁ、こんなバカ騒ぎができる程度には平和になった、ということにしておこう。
前回にも言いましたが、今話をもって「二人の魔王の異世界無双記」は完結および連載終了とさせていただきます。
本当は二次アレンジ・オリジナル共にいくつか書きたかったアフターがあったんですが、今の調子だとただグダグダ続くだけになり、質がひどく低下してしまう恐れがあるため、今回で区切りといたします。
もしかしたら、いつか書ける余裕が生まれる可能性も0ではありませんが、大学その他諸々の関係で難しいのは目に見えており、仮に生まれたとしてもその時書いたものと今書きたかったものが一致するとは限らないので、未練を断ち切るという意味でも連載終了とさせていただきます。
投稿開始から3年と9か月、長い間本シリーズを読んでくださり、感謝の極みです。
今まで「二人の魔王の異世界無双記」を読んでくださり、本当にありがとうございます。
それでは、これで「二人の魔王の異世界無双記」の連載を終了させていただきます。
改めて、今まで読んでくださり、本当にありがとうございました。