「女の子の気持ちが知りたい? なら束さんに任せてよ!」 作:天道詩音
「鈴はやっぱ、湊の事を待っているよな?」
「だな……まあ、来れないのは仕方ないんだ。俺たちがフォローしようぜ」
弾と一緒に空港で鈴を探しているけど、小さいから見当たらない……何処にいるんだ?
昼ごろに電車に乗って、空港まで来てからしばらくロビーを探しているけど見当たらないし、鈴に電話してしてみるか?
「あんた達遅いわよ!」
後ろからそんな声が聞こえて振り向くと、俺達を指さしている不機嫌な鈴がいた。どこに居たんだ?普通に見落としたけど……。
「ごめんな。ちょっと前に空港に着いていたけど、鈴が小さいから探すのに時間が掛かってさ」
「だな。鈴が小さいのが悪い」
「あんたらぶっ飛ばすわよ?」
「冗談だって、ごめんごめん」
「見送りに来たんだ。許してくれよ?」
「ふん。まあいいわ。湊はどうしたのよ?」
鈴が一番来て欲しかったのは湊なんだし、やっぱり聞いてくるよな。嘘つくのは悪いと思うけど、湊が女になったって言って変にこじれたまま、鈴が中国に行くのが一番最悪だろうから……ごめん。
「湊は風邪で寝込んでいて、来れなくなったんだ。ごめんな」
「……そう。来るって言ってたのに……バカ湊」
「鈴、来れなくなった湊から手紙を受け取ってきたんだ。これだけど、読んでみて欲しい」
「……まあ、読んであげるわ」
鈴が手紙を読み始める。湊がどんな事を書いたかは知らないけど、真剣に書いていたからな。ちゃんと気持ちが伝わってくれるといいな。
「今さら……なんでそんな事を……もう遅いわよ……」
鈴が溢れる涙を拭いながら、手紙を読んでいる。
「…………バカ湊」
手紙を封筒に戻して、長い息を吐いて気持ちを落ち着かせているみたいだ。湊は何を書いたんだ……?
「一夏、弾! 湊に伝えときなさいよ! 必ず日本に帰ってくるから、次に会ったら毎日酢豚を作るわって!」
鈴はすごい良い笑顔でそう宣言した。それってつまりそう言う事だろ……?
「これから毎日味噌汁を作ってくれ的な意味か?」
「プロポーズって事か? 任せてくれ、ちゃんと伝えとくぜ!」
「ち、ちがうわよ! 見送りに来ない湊なんて嫌いなんだから!」
「ツンデレ乙」
「ツンデレだな」
顔を真っ赤にしながら照れているんだ。嫌いな訳ないよな。鈴はツンデレだからなー。
「あんたら一発ずつ殴らせなさい!」
「ははっ、ごめんごめん。でも元気を出してくれてよかったよ」
「悲しい別れじゃなくてさ、笑顔で見送りたかったからな」
「ふ、ふん。殴るのは日本に戻ってからにしてあげるわ。覚悟しておきなさいよ!」
「ああ、楽しみに待ってるよ」
「鈴もがんばってくれよ。何かあればいつでも連絡してくれ」
鈴の手を握って握手をする。弾も同じようにしたところで、鈴がキャリーケースを取りに行って戻ってきた。
「そろそろ行くわ! 私も元気でやっていくから、あんた達も元気でいなさいよ! バカ湊には早く風邪を治しなさいって言っておきなさい!」
「ああ。ちゃんと伝えておくよ」
「プロポーズの件も伝えておくさ……いてっ、足を踏むな足を!」
「プロポーズじゃないの! 湊が私の酢豚が好きって書いていたから、毎日酢豚を食べて欲しいって思っただけなんだから!」
「ツンデレ乙」
「ツンデレ乙」
「あんた達もほんとバカなんだから! じゃあ行くわ」
「いってらっしゃい。またな」
「また会おうぜ。気をつけてな」
俺達みんなで待っているからさ、さよならじゃなくて、またなでいいよな。
「…………バカ。またね」
後ろ手に手を振って、鈴は検査場に向かっていった。背中が見えなくなるまで見守っていたけど、最後まで振り返らなかった。元気でな鈴。鈴が帰ってくるからまでに湊も男に戻っていればいいけど、どうなっているかな?
「……帰るか」
「そうだな。湊も待っているからな」
弾と一緒に空港を出て、電車に乗って帰る。今日は湊は大丈夫か?一人だと思うけど、出掛けてないよな?
「湊は家で大人しくしてるかな? 出掛けていたら心配なんだけど……」
「家に籠もるって言っていたんだろ? なら家に居るんじゃないか?」
「うーん……心配だ。早く帰るか」
「湊はめちゃくちゃ天然だけど、しっかりしてるところもあるし大丈夫じゃないか? たぶんな……」
「弾も不安じゃねーか!」
「よく考えたら不安だわ。あの容姿であの天然だろ? 一夏は昨日一緒に居たけど、どうだったんだ?」
「あんな可愛いのに、疲れたからマッサージして欲しいって言われたんだぞ? ヘンな声も出すし、めちゃくちゃ危なかった……」
「何やってんだお前ら……」
弾に呆れられた顔をされたけどさ……いやいや、あの湊のお願いとか断れないだろ!
「ほら、駅に着いたから降りようぜ!」
「まあいっか。学校でも俺達がちゃんとフォローしてやろうぜ」
「だな。クラスの女子達と仲良くなれればいいけど、湊なら何とかなるか」
「だろうなぁ。男の時もクラスのまとめ役していて、女子達とも仲が良かったからな」
一緒に改札を出て、湊の家に向かって帰る。今日は千冬姉は家に居ないし、湊の家で夜御飯を食べるか。
「弾、今日は湊の家で夜御飯食べるから、スーパーに寄ってから帰るよ」
「オッケー。俺は家に帰るとするか。湊によろしく言っておいてくれ。また明日な」
「おう。また明日」
弾に手を振ってから別れ、スーパーに向かって歩く。駅の近くのスーパーは品揃えもそこそこあって安いから、食材を買うのはだいたいここだな。
昨日湊はオムライスが食べたいって言っていたから、それでいいか。後は適当におかずを作るかな?少し時間が掛かるけど、グラタンでいっか。
食材を買ってスーパーを出て、湊の家に向かう。湊も不安だろうから、鈴は元気に中国に向かったって教えてあげないとな。
もう夕方だから料理の準備してなければいいけどな。もし準備していたら明日の分にするか。
よし、湊の家の前に着いたけど、なんか仲が騒がしいけど、誰か来てるのか?
「……むー!?」
いや、湊のくぐもったような声がした。大丈夫か湊!?
「えっ、どうしたんだ湊!? 鍵空いてる! 入るぞ!」
「い……いちかぁ……はぁ……」
「ッ! 大丈夫……か……へ?」
部屋に入るとソファーの上で寝ている湊に覆い被さっている、青髪の女の子がいる。て言うか襲ってる……?
「湊が痴女に襲われている……!?」
「だれが痴女よ!? 私は湊ちゃんのお姉ちゃんよ!!」
湊の姉は束さんだけだろ!一応箒もだけどさ!
鈴ちゃん初登場ですね。ツンデレ可愛いです。
ツンデレと言えばバカって台詞かなって思ってます。
今回も読んでいただきありがとうございます。