「女の子の気持ちが知りたい? なら束さんに任せてよ!」 作:天道詩音
先に立ち上がった一夏に手を引っ張ってもらって立ち上がる。
目を合わすと、何だか一夏が驚いている。そうだよね。女の子になっちゃってるし!
「えっ、もしかして」
「もしかして一夏なら分かってくれるか!」
小さな頃から一緒に居たんだ。一夏なら性別が替わっても分かってくれるよな!
「箒だよな! 元気にしてたか?」
「……あぁ、うん」
だよね-!分からないよね-!たしかに小学5年くらいの箒ってこんな感じだったような?でも箒ってもう少し鋭い目つきだったからなぁ。今の学校で怖がられて無ければいいけど……。あっ……。
「ふむ。箒を任せていいか? 私は仕事に向かわないといけなくなった。荷物持ちを頼む」
「どんだけ買っているんだよ! えーっと湊の家まで運べばいいのか?」
「よろしく頼む。では箒は一夏と気をつけて帰ってくれ。くくっではな」
「千冬さんありがとうございました! ちょっとひどいですけど!」
「またな。何かあったら電話してくれ」
千冬さんが手を振ってから仕事に向かっていった。
一夏は荷物を全部持ってくれたけど、一つくらい持とうか。
「一夏一つ持つよ?」
「箒は女の子なんだ。俺が持つよ」
「あ、ありがとう……」
笑顔で腕をまくって、紙袋を見せてきた。一夏のこんなところがモテるんだろうなー。弾の情報によるとクラスの女子の6割くらいが一夏に惚れているらしい……。でも一夏は気付いていないし、鈍感すぎだろ!
「でも久しぶりだよな! 小学5年以来会って無かったし3年ぶりかー!」
ここは取りあえず箒だと思わせておこう!説明は家に着いてからかな?外だと落ち着いて話せないし。
「それくらいになるか。一夏は元気にやっていたか?」
「ああ。湊と楽しくやってるよ」
「そうか……」
箒ってこんな感じの口調だったよね?電話越しだと、『そうか』とか『なんだと』とか『羨ましいな』って感じで一言しか喋らないから、昔を思い出して箒を演じてみる。
箒ももう少し会話が得意になればなぁ……。今度から電話で会話の練習しようか?でも女の子になっちゃったし、電話越しで俺って分かるかな……?
姉さん作の、俺と箒しか持ってない携帯があって、特殊な回線で通話するから情報の流出が一切起こらないらしい。その携帯を持っているのが俺たちだけだし、箒との思い出を話せばなんとかなるでしょう!ダメなら姉さんを使うしかないね!
「でも、町に帰ってきたのは何かあったのか? 湊から聞いたけど、いろいろ大変だったんだろ?」
「大変だったが、久しぶりにこの町を見たくてな? 一夏とも会えて嬉しいぞ」
箒って一夏のことを気に入っていたし、会えたら嬉しいだろうなーって思う。昔の箒が一夏に頑張って声を掛けていたのが微笑ましくて、ちょっと笑ってしまった。
「お、俺も嬉しいぜ! でもちょっと服を買いすぎじゃないか? いくらするんだこれ……?」
「千冬さんがたくさん選んだのだが、支払いは姉さんだし気にするな」
「そう言えば今日は千冬姉と一緒にいたのか?」
「ああ。家に千冬さんが来て、一緒にレゾナンスに向かったんだ。この靴と服もそこで買った」
「そうなのか。可愛い箒に似合ってるよ!」
「世辞はいらん」
よかった-!一夏に褒められてもときめかなかった!
やっぱり心は男なんだよね。千冬さんがイケメンすぎただけなんだよ!
「いや。本当に似合っているから! 今の箒みたいに可愛い子とか初めて見たし!」
「そ、そうか……」
あっあれ?……気のせいだよね。
「本当に可愛いから自信を持ってくれよ!」
「わかった! わかったからあまり褒めるな!」
一夏に可愛いって言われて、少し嬉しくなってしまった……。
いやいや、容姿を褒められたら嬉しいよね!普通だよね?
「い、一夏もかっこいいぞ!」
何言ってるんだ俺-!お互い無言になったのを誤魔化そうとしたら変なことを口走ってしまった……。
「あ……ありがとう。嬉しいよ?」
「お、おう……」
会話が無くなって、無言で二人で道を歩いている。何を話そう……?
「……箒は、また引っ越し先に帰るのか?」
「ああ。ここに長い間居たら、周りを巻き込んでしまうかも知れないからな」
暗部組織の青髪のお姉さんが言うには、箒を色々な組織が狙っているらしい……。暗部の人達が護衛しているおかげで日常生活が守られているんだって言われて、俺に出来たことは電話で箒を励ますことだけだった。
姉さんになんとかできないか聞いたら『箒ちゃんが私と一緒に逃亡してくれるならなんとかできるけど、束さんは嫌われちゃっているからなぁ。箒ちゃんに日常生活を送らせながら守り続けるのは国外に居る私には難しいかな……』って言っていたから、姉さんにはどうしようも無いみたいだけど、なんとかしてあげたいな……。
「俺がなんとか出来ればって、簡単には言えないよな……」
「そうだな。難しいだろうな……」
「俺さ、昔はみんなを護るためにって剣を振っていたんだ。千冬姉も湊も箒も束さんもみんな俺が護りたいって思ってずっと剣術を続けていたけどさ、いざ護らないといけない時に湊を護れなかったんだ……」
「……それは」
モンドグロッソで誘拐された日のこと……?
「湊から聞いたかも知れないけど、俺と湊が誘拐されて、人質は二人も要らないって、俺が殺されそうになったんだ……。怖くて動けなかった俺を突き飛ばして、代わりに湊が銃で撃たれて、血を流して倒れて……」
覚えている。一夏が撃たれるって思ったら身体が勝手に動いて、一緒に避けようとしたのに撃たれたんだ……。
「その直ぐ後に千冬姉と束さんが来てくれて、俺も湊も助かったけど、護るって決めていたのに、俺だけが護られただけで、何も出来なかったんだ……!」
銃を向けられて、動けないのは仕方無いって言っても、今の一夏には伝わらないよね……?
「だから、今まで以上に剣を振って強くなって、湊を、みんなを護りたいって誓ったんだ」
一夏がそんな事を考えていたなんて知らなかった……。俺を護りたいって……いいのに……。
「それでも、気軽に護るなんて言えないけどさ、何かあったら俺に言ってくれ。できるだけ力になるからさ」
「ああ。ありがとう……」
何か今までより一夏が大きく見えた。剣を振る回数を増やしたって言っていたのは知っていたけど、そんな理由があったんだ……。俺の……みんなのために……。
「ま、まあ今は湊の家に行こう! 湊も入れて三人で昔みたいに話そうぜ!」
「……そうだな」
その後は、俺が色々考え込んでいたから、一夏も話さないで家まで歩いていた。俺の今の状況よりも一夏のことを考えてしまう。
「着いたぞ。さっきの話は湊に聞かれたら恥ずかしいから内緒にしてくれよ?」
「ごめん一夏!」
「ほ、箒!?」
笑いながら、おどけて誤魔化そうとした一夏を抱きしめて、ごめんなさいって謝る。
「一夏がそんな事を思っているなんて知らなかった。身体が勝手に動いただけで、怪我をしたのも俺が上手く避けれなかったからで……」
「箒……じゃないのか……?」
「ごめん一夏。俺、湊なんだ……」
「…………え?」
なんだかシリアスな展開に……。
一夏が湊やみんなを護るために強くなるって決意しています。
それを聞いて湊ちゃんは……。
湊みたいに可愛い子は初めて見たそうです……箒と鈴はドンマイ!特に箒は似ている顔をしてるのに……。
今回は一夏回と見せかけて、箒回かと思ったら一夏回でした。