「クソッ!?ブリュンヒルデの奴棄権しやがった!!」
兵士のような格好をした男がスマートフォン片手に叫ぶ。どうやらモンド・グロッソの速報を見ていたようだ。
「ハッ、だから言っただろうに、賭けは俺の勝ちだな、ちゃんと奢れよ?まぁ、報酬からすりゃはした金だろうが」
同じような格好をした男が扉に注意を払いながら笑う。だから言ったじゃないかとでも言いたげだ。
「そうだけどよぉ…」
そのやり取りをうっとおしそうに見ていた女が口を開く。ISを纏っているのはもしもの事態のためなのだろう。
「静かにしろお前ら、ずらかるぞ…、っとその前にだ」
グサッ…
胸に衝撃が走る、刺された、そう理解するのに少し時間がかかった、刹那、激痛。声をあげることすらできずに、意識を失う。
「わりぃな、顔見られて生かして帰すわけにもいかねぇんだ」
IS用のブレードに付いた血糊を払いながら女がいう。
「聞こえちゃいねぇか、撤収撤収…っと」
部屋には拘束された死体のみが残された…、しかし、その死体の傷が不自然にふさがり、息を吹き返す。
この日、織斑一夏は死に、
―――――――――
数年後
「全員揃ってますねー。じゃあショートホームルームを始めますよー」
…辛い、弾でも数馬でも啓太郎さんでも修二さんでも勇介でもいいから助けてくれ…。というかここで助けてくれるならなおやんでも神に見えるだろう。
「そこ代われ、一夏」とか「ゴメン、いっくん…」「ゴメン、無理だ」「ヤダ」「ちゅーか俺の扱い酷くないかいっち?」といった声が聞こえた気がしたが、気のせいだろう。うん、彼らはここにいないし。周りには女子ばかり、しかも自意識過剰ではなく、周りからの視線を感じる。当然だ、この教室に男子は俺一人、当たり前だ、女性にしか乗れないISに乗れてしまったのだから。正直、どうして乗れるかの心当たりはない、強いて言えばあの天災の仕業か、それともアレ…いやアレは無いな、だったらずっと前になおやん辺りが乗れて騒ぎになっているし、勇介だって乗れるはずだ。というかアレが原因ならむしろ勇介が乗れなきゃ俺が乗れないはずだ。
「…くん、織斑一夏くんっ!!」
「は、はいっ!?」
いきなり大声で呼ばれて思わず声が裏返ってしまう、あ、笑われてる…仕方ないけど。
「あっ、あの、大声出してごめんなさい。お、怒ってる?」
「あ、大丈夫です。それで何ですか?山田先生…というか落ち着いてください」
正直、同い年と言われても(一か所以外)納得してしまいそうな先生が申し訳なさそうに言っている、これでは長くなりそうなので適当に切って、聞く。
「あ、あのね、自己紹介、あから始まって今おなんだけど…」
「あ…ごめんなさい。自己紹介ですね」
「うん、よろしくお願いします」
後ろを向くと、今まで感じていた視線をモロに受ける。窓際に、正直今みたくない顔…というより俺個人の問題で合わせられたもんじゃない顔がいるけど、気にしない。彼女からすれば、懐かしい顔を相手に思い出話の一つもしたいかもしれないのだし…。どうやって「アレの話題」を避けるかだな…。とりあえず、去年の夏に見た新聞記事の話は絶対にしない。
「織斑一夏です。…趣味は家事…特に洗濯が好きです。何故かISを動かしてしまい、IS学園に入学することになりましたが、皆さんと違ってISの知識は全くと言っていいほどありません。迷惑をかけることになると思いますが、よろしくお願いします」
やっぱりイケメンだよねー、趣味が家事って家庭的だねー、一応の礼儀は心得ているようですね。みたいな声が聞こえる。掴みはまぁまぁ…か?
「ふむ、自己紹介はできたようだな」
「ちふ…あ、織斑先…生?」
「そうだ、織斑」
生きなり後ろから聞き覚え…というより人生で一番聞いてるんじゃないか?って声がして振り返ると姉がいた。思わず名前を言いかけて止まり、姉がここにいる理由を即座に思いつき、そういう風に呼ぶ。つまりはそういうことだろう。成程、教師か…似合わな
パァンッ!!
いつもの調子、威力も痛みも角度もそのまま我が姉のものである…、どうやら姉は心を読めるらしい。
「織斑、口は禍の元だ」
いや言ってません。…というのはこの姉に通用しないな…。と何度も思ったことを再び思い返しているとおもむろに姉は口を開く。
「諸君、私が織斑千冬だ。君たち新人を1年間で使い物になる操縦者に育てるのが私の仕事だ。私の言うことはよく聞き、よく理解しろ。できないものにはできるまで指導してやる。私の仕事は若干15歳を16歳まで鍛え抜くことだ。逆らっても良いが、私の言うことは聞け、良いな」
…、なんという暴君、コレ…慣れてる俺は良いけど周りは…。
「キャ―――!!千冬様、本物の千冬様よ!!」
「ずっとファンでした!!」
「私、お姉さまに憧れてこの学園に来たんです。北九州から!」
…、どうやら、すでに訓練された連中が集っていたらしい。しまいには我が姉の為なら死ねると来た…。冗談なのはわかるが命は大切にするべきだ。生きたくても生きられない人だっていっぱいいるんだから。
「…毎年、よくもこれだけ馬鹿者が集まるものだ。感心させられる。それとも何か?私のクラスにだけ馬鹿者を集中させているのか?」
まぁ、いくら慕われているとはいえこれはウザいだろう。…でも千冬ねえ、それは最低だと思う。
「さて、ショートホームルームは終わりだ。諸君らにはこれから半月でISの基礎知識を覚えてもらう。その後実習だが基本動作は半月で体にしみこませろ。良いか。いいなら返事をしろ。良くなくても返事をしろ。」
つまり返事をしろということですね。あぁ…いつも自分基準で話を進めるから性質が悪い。というか、教師になったことくらい言ってくれ。負い目があるのはわかるけど、俺だって千冬ねえに負い目を抱えている。だって家族にすら「言えないこと」があるんだから。
――――――――
動物園の動物って、こんな感じなんだろうな…。と、心の中で思う。ISの基礎理論の授業が終わり、今は休み時間。かなり注目されている。クラスの皆はもちろん、他のクラスの連中や、恐らく上級生の姿まで廊下に見える。
それもそうか、「ISを動かしてしまった男」という珍獣がどんな存在か、気になるというのは自然の理だろう。新聞を見ていたら、一週間くらいいつの時間も絶対どこかのテレビ局が俺の特集をやっていたくらいだ。無論千冬ねえもセットで。
「ちょっと…良いか?」
「…箒…だよな?」
個人的には顔を合わせられたもんじゃない…、尤もこれは個人的なわがままだし、ここに来る以上、ほぼ確実に会うのだろうとは思っていたが。それでもこの状況で声をかけるのは勇気がいるはずだ。顔を合わせるのは6年振りとは言え幼馴染だとしても。
「廊下で良いか?」
とりあえず、この状況から救い出してくれるなら、地獄に仏…いや、俺にとっては閻魔様か何かなんだけど。まぁとにかく助かった。
「早くしろ」
「お、おう」
なんだか険が増した幼馴染に、「こいつまだ友達マトモに作れてないんじゃないかなぁ…」とかなりアレなことを思いつつ付いていく。
「…」
「…その…箒…さん?」
「なんだ?」
廊下まで呼び出しておいて何も言わないのはどうかと思う
とは言えない。
「あの…何か用事があったんじゃ…」
「そ…そうだな…。うん、何から話そうか…」
少し困ったような顔をして箒が言う。…当然、積もる話もあるか…。
「あー…、この時間じゃ終わらなそうだし、昼か放課後にでも話さないか?…今日の放課後は厳しいかもしれないけど」
「…」
ギロリと睨まれる。やっぱり嫌われてるのかなぁ…。
「…そうだな…」
箒がそう呟くとそろそろ二限目である事に気づく。
「じゃあ戻ろうぜ?」
そういうと教室に戻り、次の授業の準備をする、一応の予習はしたけど覚えることが多すぎるぜ…。
ちなみに一夏の死因(オルフェノク化の理由)は
1銃殺
2ISのブレード
3転落死
4焼死
5オルフェノクの記号
6使徒再生
でサイコロ転がして決めました。多分だけど、どれ引いても誰かアンチになったんだと思う。