ユグドラシル小話   作:赤紫蘇 紫

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三人がアホな事話してるのが好きです!!


夏の元無課金同盟【ユグドラシル時代】

「なぁにが水着イベだよ!!せっかくのサキュバスっ娘の露出減ってんじゃん!!」

 と、怒りアイコンをピョコン、と表示させつつ絶叫しているのは、万年喪男であり、エロゲーをこよなく愛する男、ペロロンチーノである。

「まぁそうですね……。俺からしたら別に女性NPCの露出なんざどーでもいいですけど、今回イベント報酬の水着もビジュアルに凝りすぎてるせいか……性能がイマイチなんですよねぇ」

 そう言うのはいい歳して厨二病患者であるウルベルトである。

「確かに性能はイマイチですけど、ペロロンチーノさんならもっと喜ぶかと思いましたよ。だって、シャルティアにも着せられるでしょ?今回の報酬」

 モモンガのその言葉に、途端にペロロンチーノは上機嫌になる。笑顔アイコンを連打しつつ、羽根をばたつかせてテンション爆上げで二人に話し掛ける。

「そーなんですよっ!!今回のイベ、女の子モンスターの露出は軒並み下がってるんですけど、報酬がめちゃくちゃキュートでセクシーな水着で、二種類もあるんですよね!!プレイヤー以外も着られるとかマジ分かってんな運営!!って感じで!!」

「……アレ、野郎でも着られちゃうのがエグイですけどね……。誰得なんですか、ほぼ紐の水着に、それとは真逆のフリフリビキニとか。報酬二種類って時点で運営が気合い入れてるってのは解るんですけどね。

 それを着る野郎って……。性能が良いならまだ解るんですけど、糞性能ですからね。お嬢様セットと同様で」

 溜息を吐きながらそう言うウルベルトの視線は、モモンガに向いている。彼が高性能であれば女性向け装備でも身に着けるガチ勢だと知っているからだ。今回は流石のギルマスも着ないだろうな、と思って安堵したのだ。

「うーん……。一部のマニア向けですかね?俺にはよく分からないですけど。高性能なら俺も気にせず着るんですけどね」

 と、そんな事を言いつつ、モモンガはふと思った事を口にする。

「……今回の装備、粘体の人だとどうなるんですかね?やっぱり、体内収納になっちゃうんでしょうか?」

 モモンガのその言葉に、二人して!!マークをピョコンと出していた。

「確かに……それは気になりますね。茶釜さん、こういう可愛いデザイン好きだった筈だからゲットはするんでしょうが……」

「うわー。見たくねぇなぁ、姉貴のフリフリビキニとか。見た目は肉棒な粘体じゃん?アレ。よくあの造型でキャラメイク通ったな、って思ったし」

 そう言うペロロンチーノは、そのギリギリアウトな発言でBANされ掛かった癖に自分の事は棚上げしてそう呟く。この場にぶくぶく茶釜が居たら、即座に鉄槌が下されたに違いない。幸いにして彼女は本日は仕事でユグドラシルにはインしていなかったが。

「粘体は基本形が結構自由ですからね。ヘロヘロさんはベースは人型の粘体ですし」

 モモンガがそう言うと、ペロロンチーノは?マークを出す。

「じゃあ、何で姉貴アレにしたんでしょうねぇ、本体。色とか造型とか、狙いまくりじゃないですか。マジ下手したらBANかモザイクでしょ、アレ」

「知りませんよ。ご姉弟なんですから、本人に直接訊いたらいいじゃないですか?姉貴が出てるせいで最新作で抜けない!とかほざいていたペロロンチーノさん」

 笑顔アイコンを出しながらそう言うウルベルトの声は、アバター越しでも彼がニヤニヤと笑っていることが分かる程だった。

「そこ!!うるさいですよ!!しょうがないじゃないですかっ!!どーせ推しイラストレーターさんだから、って安心しきってサンプルボイスを聞かなかった俺が悪いんですよっ!!」

 泣き顔アイコンを連打しつつそう叫ぶペロロンチーノの気持ちは同じ男として皆何となく分かったが、口にはしない。

「……身内が声優さんなんですから、買う前にサンプルボイスは必聴でしょうに……マジで何やってるんですか、ペロロンチーノさん」

 呆れたようにモモンガにそう言われて、ペロロンチーノはその場に崩れ落ちる。

「も、モモンガさんまでそう言うんですか……!いや、確かに今回俺迂闊でしたけどっ!!まさか思わないじゃないですか、続編のメインヒロインに姉貴が抜擢されるなんてっ……!!」

「いや、想像しましょうよ?茶釜さん人気声優なんですから……。エロゲーでは別名義ですけど、出演件数多いんでしょう?」

 宥めるようにそう言うモモンガに、ペロロンチーノはしょんぼりアイコンを出す。

「そりゃ、そうですけどぉ……!!」

「あー、もう!!湿っぽい話は止めにしましょうよ。ペロロンさん、エロい水着モンスターっ娘ガンガン狩って報酬ゲットするんでしょう?とっとと狩りに行きましょうよ。今回イベント難易度そんなに高くないんでしょう?だったら、とりあえず三人で先に周回しませんか?」

 どうやら結構マジ凹みしているらしいペロロンチーノの背中を軽く蹴り飛ばし、ウルベルトはそう言う。

「愛しのシャルティアに、可愛い水着着せてあげたいんでしょう?……俺は、まぁ、使い道無いですけど。とりあえず入手だけはしときたいですし。モモンガさんもコレクションしたいんでしょう?」

「は、はい!復刻イベ来るか分かりませんし、ゲットしたいです!!……俺も使い道無いんですけどね。俺のNPC、アレだし……」

 困り顔アイコンを出しつつも、モモンガも狩りには前向きなようだった。

「じゃあ、とりあえず軽く回りますか。ペロロンチーノさん、行きたい場所はありますか?色んなモンスターっ娘の生息地丸暗記してるんですよね?効率良い所でも、ビジュアル重視でも良いですよ」

 いつになくペロロンチーノに優しいウルベルトだが、彼も内心同情しているのかもしれない。待ちに待った新作エロゲーが使えないという悲劇に。

「よーし!!エロ可愛いモンスターっ娘狩りまくって報酬ゲットするぞー!!」

 妙にテンションが高いペロロンチーノに引き摺られるようにして、三人はイベント報酬をゲットする為に狩り場に向かった。

 

 

 

 

「……夏なのに、ユグドラシルでしかイベント起きませんでしたね……」

「そりゃそうでしょ。水着が見たいって言うからプールに誘ったのにバードマンらしくチキンなペロロンチーノさんは尻込みしてたし」

 切なそうにそう言うペロロンチーノに、ウルベルトは容赦なく突っ込む。

「だって、ウルベルトさんまたナンパしようって言うでしょ!?俺、無理ですもんそーいうのっ!!」

「言いませんよ。ヘタレなペロロンチーノさん。あくまでも水着美女ウォッチに徹すればいいのに、何勝手に妄想してるんですか。……ひょっとして、モモンガさんも同じ様な事考えてました?」

 ペロロンチーノの言葉に不安になったのか、ウルベルトはモモンガの方を見る。

「えっと……はい。俺もそう思ってました」

 モモンガにそう言われて、ウルベルトはしょんぼりアイコンを出す。

「……言っておきますけど、俺、別に年中ナンパしてる訳じゃ無いですからね?お二人が出会いがないとか言うから、切っ掛け作りにと思ってしてただけなんですが……」

 夏ももう終わりが近い。だが、元無課金同盟の三人には浮いた話一つ無く。リアルでのイベントも一つも起こらなかったのだった。それ故に、ペロロンチーノの台詞なのだが。

「じゃあ、皆で花火大会でもやります?去年のイベント報酬で浴衣持ってたでしょ?それ着てギルメン全員で」

 モモンガのその言葉に、ペロロンチーノもウルベルトも笑顔アイコンを出す。

「いいですね!多分皆も花火を持て余してるでしょうし、華やかになりそうです」

「俺も結構持ってるので、いっぱい出せますよ!!」

「今から皆にメール出しますよ。急ですけど明日なら結構面子揃いそうですしね」

 モモンガがそう言うと、二人はまた笑顔アイコンを出す。

「愉しみですね、モモンガさん」

「ええ、本当に」

「花火って言ったら海ですよね!?俺、スイカも用意しちゃおうかなー。バフは付かないけど」

 そんな風に明日のイベントに心を躍らせる三人。こんな何気ない日々が、彼らにとっての日常だった。他愛も無い会話で笑って、盛り上がって。一年中、何かしらのイベントで楽しんでいるのが、ギルド、アインズ・ウール・ゴウンのメンバーなのだ。

 こうして、この年の夏は運営の主催した公式の水着イベントと、モモンガ主催の花火大会で終わった。それはそれでなかなかに充実していたのだが、それでも喪男たちは相も変わらずリア充への呪詛を撒き散らしながら、夏の終わりを嘆いていたのだった……。

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