ユグドラシル小話   作:赤紫蘇 紫

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オバマスの課金遺物、「メリー・嫉妬マスク」(一万円)の後のお話とでも思っていただけたら。読んでなくても大丈夫ですが、読んでると、あぁ、アレの後かー!って感じにはなります。イベント、混沌の黒き正月ネタも少しあります。ギルメンとモモンガさんがわちゃわちゃしてるだけのお話です。


アフタークリスマス【無課金同盟】

 

「さて!憎きクリスマスも終わった事ですし!次は新年に向けてカウントダウンですかね?」

 ウキウキとそう言うのはモモンガである。……今年も嫉妬マスクを入手してしまった男のうちの一人だ。……タブラと茶釜のタッグが巻き起こした激動のクリスマスに。

「ですねー。流石にもう、あんな事は起こらないでしょうし」

 そう答えるのは、なまはげ式クリスマスをタブラに吹き込まれていた男、ウルベルト・アレイン・オードルである。

「……姉貴、年末年始は特番で忙しいっぽいから、悪巧みする暇は無いと思いますよ」

 ウルベルトの言葉にそう言うのは、これまた嫉妬マスクを授与されてしまった男、ぶくぶく茶釜の実弟、ペロロンチーノである。

 今日も今日とて、元無課金同盟は三人でたむろっていた。ブラック企業勤めのモモンガであったが、年末年始は取引先が休みであるため、モモンガの会社も休みだったのだ。その、貴重な休みを、モモンガはユグドラシルに全ツッパしていた。喪男であるが故に。

 ……それは、ウルベルトもペロロンチーノも同様で。クリスマスイブの前日と同様、今後どうするか?と話し合っていたのだった。

「どーせ糞たっちは家族サービスとかでインしないんでしょ?ケッ、リア充めが」

 と、唐突なたっち・みーディスに、モモンガは慣れた様子でウルベルトを宥める。

「まぁまぁ、ウルベルトさん。たっちさんは普段警察官として俺たち市民の平和を守ってくれてますし……年末年始くらい家族サービスしとかないと、色々大変なことになっちゃいそうですから。……ほら、スタッフオブアインズウールゴウン作る時とかもユグドラシル優先して奥さんと揉めたらしいですし」

「……それは、まぁ、そうですね。リア充が幸せ満喫してるのはムカつきますけど、モモンガさんがそう言うのなら……」

 モモンガの言葉に、ウルベルトがそう矛を収める。すると、ペロロンチーノが話題を元に戻す。

「じゃあ、マジで年末年始何するー?今度は食材狩りに行く?……って、年越し蕎麦とお節の素材って何だろ?とりあえず、蟹狩っとけばいい?」

「そう言われると、悩みますね。蕎麦……素材にありましたっけ?運営から年末限定ドロップとかのお知らせ無かったですよね?」

 モモンガは首を捻りながらそう言う。……そもそも、普段の食事が液状食料な時点で、自炊の経験が皆無な面子である。蕎麦の食材もイマイチ理解していない。

「確か……年越し蕎麦は、天ぷら乗ってましたよね?海老天かかき揚げだったと思うんで、海老狩りましょう、海老」

 ウルベルトのその言葉に、二人とも大きく頷く。

「さんせーい!!じゃあ、海老と蟹は確定で!お節はどうするー?」

「お節……。俺、あんまり詳しくないんですよね。ローストビーフが入ってるってのは聞いたことがあるんですけど、それだと牛系のモンスター狩れば良いですかね?」

 ペロロンチーノのその言葉に、モモンガがそう答える。

「多分問題無いかと。他の素材は古代図書館で調べます?数の子とかも入ってたと思うんですけど、魚卵落とすモンスターって何でしょうね。あと、蒲鉾とかだと……鮫?レシピありましたっけ?あれば料理長に渡せば作ってくれると思いますけど」

 ウルベルトがそう言うと、二人は笑顔アイコンを出して頷く。

「良いですね!あと、朱雀さんとかがインしてれば訊くのも良さそうです」

 モモンガの言葉に、ウルベルトは?アイコンを出す。

「朱雀さんですか。朱雀さんも家庭持ちだから、難しいんじゃないですかね……。確かお孫さんもいらっしゃるんでしたっけ」

「あー……。じゃあ、ヘロヘロさんかぷにっと萌えさん辺りはどうです?色々豆知識ありそう」

 モモンガのその言葉に、ペロロンチーノが答える。

「……ヘロヘロさんは、多分デスマーチでイン出来ないんじゃないですかね……。ぷにっと萌えさんは大丈夫そうかも?」

 ……全員、さりげなく色々と詳しそうなタブラの事は除外していた。クリスマスイブの惨劇が記憶に新しい為だった。

「あー……それ、ありそうですね。前にブラック企業の社長ロールしてた時にそんな話してましたし……」

 モモンガはその時の事を思い出し、遠い目をしている。ペロロンチーノもウルベルトも、モモンガのその言葉にしみじみと頷いていた。あの、妙にリアルなブラック企業の社長の言動を思い出して……。

「……アレ、ガチなんでしょうね……」

「俺の会社も大概アレですけど……年末年始と盆は休めますからね……」

「って言うかプログラミング業界の闇なのでは?あそこまでブラックな会社、そうそう無いでしょ……?無いって言って……!!」

 モモンガにウルベルト、ペロロンチーノが口々にそう言っていると、円卓の間に弐式炎雷と武人建御雷が入ってきた。

「ばんわー。どうしたんです?三人揃って」

「皆さん、今日は狩りに行かないんですか?」

「あ、弐式さん、武人さん。こんばんは。実はですね……」

 と、モモンガが二人に事情を説明すると、二人とも乗り気になっていた。

「いいですねー。俺らも年末年始フルにインする予定ですから、食材狩りに付き合えますよ!」

「五人居ればPKにも対応出来ますから、安全に狩れますね」

 二人にそう言われて、モモンガは笑顔アイコンを出す。

「お二人がそう言って下さると安心です!じゃあ、下調べに古代図書館に行きましょうか」

「そうですね、行きましょう!」

 弐式がそう言うと、全員が笑顔アイコンを出してモモンガに続いた。

 

 

 

 

「へぇー。伊達巻って魚のすり身と卵で作るんだ?じゃあ蒲鉾と材料被ってる?」

「卵……鳥系のモンスター狩れば良さげですね。あとは魚系モンスターでしょうか。魚卵も必要なんですよね?」

「お節じゃないですけど、寿司も食べるらしいですし……魚類は多めでも良さそうですね。あと……イクラとキャビア?何かカナッペ?とかに乗せるみたいですよ?」

「あと、昆布巻きでしたっけ?これも魚を昆布で巻いてるみたいだし……昔の人、どんだけ魚が好きなんだよ!って話ですよねぇ……」

「まぁ、日本は島国ですし、昔は海産物が豊富だったようですからねぇ。庶民にも手が出る価格だったようですし」

 五人して口々にそう言いつつ、文献や動画を当たってゆく。色鮮やかなお節料理は、見ているだけで楽しくなってくる。が、当然全員が食べたことが無い為、全く味の想像が出来なかった。

「あれ?でもレシピ……ありますね?あまのまひとつさんが登録したのかな?年越し蕎麦にお節……これなら両方作れそうですよね」

 ユグドラシルにおけるレシピは、基本的に素材のみの記載であるが……あまのまひとつのレシピは実際に作ることを想定しているようで。調味料の分量などもしっかりと記載されていた。その為、実際には味わえないが、ギルメン達にも何となくその風味が理解出来た。

「なるほどー。昆布巻きって甘塩っぱいんだ?伊達巻きは甘い……。ためになりますね!」

「カナッペってクラッカーに食材乗せた物なんですね。酒に合いそうで良いですね。こうなったらチーズと酒も揃えたいですね。お屠蘇って日本酒らしいですけど」

 ペロロンチーノのその言葉に、ウルベルトは酒の肴になりそうな物をチェックしている。塩味の強そうな魚卵の乗ったカナッペに、興味津々である。

「じゃあ、データをコピーして素材のある場所を順に回りましょう!クリスマスの時と違ってまだ日数的に余裕もありますし、まずは年越し蕎麦の素材を集めちゃいましょうか」

「そうですね。じゃあ、植物系モンスターの素材と……海老と蟹、でしたっけ?」

「……蕎麦粉、ってドロップしますかねぇ。ショップ購入品かな?」

 コピーしたデータを見ながらモモンガがそう呟くと、武人建御雷が口を開く。

「俺、前に蕎麦食べたことあるんですけど……確かドロップ品でありますよ、蕎麦粉。小麦粉落とすモンスターの類似モンスターが居て……」

「あぁ、建やん確かに前食べたって言ってた!どこだっけ、シュヴァルツアルフヘイム?に群生してたような?群れてるから狩るの少し面倒なんですよねー」

 弐式炎雷のその言葉に、全員は少し考える。移動のタイムロスを。最適なルートは、食材の取得地が解らないと割り出せない訳で……。

「海鮮、肉、穀物ってのが最適ルートですかね?年越し蕎麦優先だと逆順になるんですが、どっちにしろ穀物と海鮮が遠いのが残念と言うか……」

「二手に別れるのは危険過ぎますしね」

 モモンガのその言葉にウルベルトがそう返すと、他の全員も頷いている。

「じゃあ、どっち先にします?穀物なら俺戦ったことあるんで案内出来ますよー」

「……弐式さん、単騎で突っ込んだ時の話じゃ参考になりませんからね?俺ら隠密からの一撃死とか無理なんでー」

 弐式にペロロンチーノがそう言うと、弐式は笑顔アイコンを出しながら答える。

「大丈夫です!その場合気付かれない距離で魔法ブッパで行けるんで!!」

「あー……。ウルベルトさんとモモンガさんの魔法砲台戦法ですか。俺も一応遠距離担当なんで、補助出来ますし……そう考えると、穀物の方が楽っちゃ楽なのかな?」

「穀物系なら、炎の魔法の効果が良いし……MPあんまり消費しない低位の魔法でも大丈夫なんでしょ?なら、安心して回れそうですね」

 同じ魔法詠唱者とは言え、ワールドディザスターの称号持ち故に魔力消費がモモンガよりも多いウルベルトがそういう事で、穀物の方から攻めることがほぼ確定した。

「じゃあ、穀物ルートにしますか。皆さん、準備は大丈夫ですか?」

「はーい!」

「大丈夫です」

「おっけー」

「問題無いです」

 モモンガのその言葉に、四人が口々にそう答えて。全員揃って当初の目的地であるシュヴァルツアルフヘイムへ向かったのだった。

 

 

 

「いやー、豊作でしたねぇ。小麦に蕎麦がこんなに大量に……。これだけあれば、ケーキとかも作れちゃいそうですね」

 ウルベルトの広範囲殲滅魔法で大方狩り尽くし、残党をペロロンチーノの遠距離射撃や近接戦闘の弐式、武人で掃討し。狩り尽くしたらそこで暫くリポップ待ちをして……を繰り返し。モモンガたちはギルメン全員分の食材を補って余りある程の穀物を入手していたのであった。

「……流石に、今日次のフィールドは無理ですよ。俺のMPが心許ないので、安全に狩るのが厳しいと言いますか……」

 穀物狩りの立役者であるウルベルトが、自身のMP残量を確認してそう言うと、周囲の全員がウルベルトを見ながらそれぞれが口にする。

「すみません、ちょっと無理させちゃいましたね」

「ウルベルトさんの魔法で燃えるのが楽しすぎてやり過ぎちゃいましたよね、ごめん!」

「確かに燃えさかるあの様子は中々の見物でしたよねー」

「お陰で楽に残党を狩れましたからね。お疲れ様です、ウルベルトさん」

「そう言われると、一寸照れくさいですね。今MP残り三分の一くらいなんで、PKを警戒すると少しばかり不安なんですよ。すみません、足手まといになってしまって……」

 皆の言葉を受けて、ウルベルトはやや照れくさそうにそう返す。

「じゃ、安全第一にして帰還しますか!お家に帰るまでが遠足ですって言葉もありますし!」

 ペロロンチーノのその言葉に、全員笑顔アイコンを浮かべて頷いたのだった。

 

 

 

「MP回復まで結構時間ありますし、肉と海鮮は明日にします?大晦日までに揃えば調理間に合いますし。半分までの回復ならそんなに掛かりませんけど、それだと帰途のPK防げそうに無いんですよねぇ……」

 ナザリックに戻ってからすぐにウルベルトがそう言うと、モモンガは口を開く。

「そうですね。イブの時と違って、ギリギリじゃありませんから……明日以降の狩りで問題無いかと。じゃあ、今日はこれからどうします?」

「あ、じゃあ下調べしときません?他のギルメンに訊いて、食材がどのモンスターからドロップするのかを詳細に」

「そうしましょうか。蕎麦は弐式さんが知ってたから良かったですけど……レシピには食材名だけなので、どのモンスターと対応するかを調べておけたら、後でまた狩りに行く時に楽になりそうですし」

 モモンガとウルベルトのやり取りを聞いていて、ペロロンチーノは勢い良く手を挙げる。

「はいはーい!じゃあ、俺あまのまさんに聞き込みしてきまーす!多分今日なら居ると思うので!」

「じゃあ、俺と建やんは前食べて覚えてるヤツ書き込んどきます!」

「和食系統なら結構覚えてるので書き込み出来ると思います」

 弐式炎雷と武人建御雷はそう言って古代図書館へ向かった。残された元無課金同盟は、顔を見合わせる。

「モモンガさんとウルベルトさんは、誰に聞き込みします?被らないように回ろうと思うんですけど……」

「……タブラさんは、外せないかと思うんですけど。イブの夜を思うと、訊きにくいよなぁ、って思いますよね……」

 モモンガのその言葉に、ウルベルトも頷く。

「ですよねぇ……。また変なトラップ仕掛けられるの嫌ですし。じゃあ、朱雀さんとかブループラネットさん辺りですかね?今日はまだ28日ですし、多分まだインしてると思うので」

「決まりー!じゃあ、その辺当たってみて、あとは流れで!」

「何ですか、その八百長前の台詞みたいなの」

 ペロロンチーノの言葉にウルベルトは笑いながらそう突っ込むと、踵を返す。

「じゃ、俺朱雀さんから回ってみます!ある程度訊き終わったら、また円卓の間に集合って事で」

「了解です!じゃあ、俺も行ってきます」

「んじゃ、またー!」

 そうして、元無課金同盟も別れて聞き込みをすることにしたのだった。

 

 

 

 一時間と少し後。聞き込みを終えたメンバー達が円卓の間に戻って来ていた。

「じゃあ、情報を共有しましょうか。まずは、弐式さんと武人さん、お願いします」

「はい。えっと、俺らは建やんが食べたことがある素材中心に纏めました!このデータをコピーして、それぞれのデータをアップデートして下さい。で、全員のデータが最新になったら古代図書館のデータをアップデートしましょう。俺らだけが情報持ってても仕方ないんで」

「了解です。……え、何か凄い量書き込まれてません!?」

 弐式の言葉に、差し出されたデータを見たモモンガが驚愕する。……何故なら、年越し蕎麦とお節料理以外にも、大量の書き込みがされていたからだった。

「……武人さん、和食好き過ぎでしょ。味もしねぇのに、よくこんだけ食いましたね?」

 同じくデータを見ていたウルベルトが半ば呆れながらそう言う。悪魔であり、バフのある食材は無意味なウルベルトは、普段あまり意識して物を食べないためだった。

「いやー、だって見た目が綺麗な物も多いので。それにバフが付くなら、食うでしょ、普通」

「……カツ丼、見た目綺麗、ですかねぇ?いや、美味そうには見えますけども」

「勝利に掛けてカツ、ですからね。その辺は良く食べてましたよ」

 武人のその言葉に、ウルベルトは書き込まれたレシピと素材の採取地を確認してゆく。

「そっか。豚肉だから、やっぱり肉地帯なんですね、素材。あとは……牛丼も、牛肉だから同じく肉地帯、と。……ローストビーフも牛だし、次はこの辺ですかね、行くとしたら」

「すっげぇ!武人さん、こんな大量の食材揃えてまで懐石も食ったの!?確かに見た目も綺麗だけどさぁ……!」

 レシピを見ていたペロロンチーノも驚きの声を上げる。

「え?やっぱり出陣時にはテンション上げたいでしょ!古式ゆかしき和食の真髄、懐石……良いですよね」

 うっとり、とそう言う武人建御雷に、ウルベルトはボソッと突っ込む。

「……出陣時は、搗ち栗とかそういう地味なのが本来なんですねどね……」

「しっ!ウルベルトさん!それ言ったら野暮ですからっ……!」

 慌ててモモンガがそう言うが、武人建御雷の耳にはウルベルトの言葉が届いていないようだった。

「じゃ、じゃあ次は俺ー!!今日はあまのまさん以外にも、姉貴達が居たから、スィーツ系のレシピが充実しましたよっ!!褒めて褒めてー!!」

 ペロロンチーノはそう言うと、書き込みを皆に見せびらかす。

「流石はあまのまさん。お節料理と年越し蕎麦の素材場所完璧じゃないですか!他は空欄もあるけど、推測可能な範囲内ですし」

「レシピ数多いですから、全部覚えてるのは無理ゲーですもんね……」

 ウルベルトがそう言うと、改めてあまのまひとつに書き込んで貰ったデータを見てペロロンチーノが嬉しそうに口を開く。

「あ。よく見たらビャンビャン麺のレシピもある!いっそのこと年越しビャンビャン麺しちゃいます?」

「うわー。出ましたよ、ペロロンさんの謎のビャンビャン麺推し。まぁ、素材揃いそうだから構いませんけど」

 素材の小麦は既に大量に確保済みであるし、挽肉も肉地帯に行けば入手可能なので、実現は難しくない。ウルベルトは苦笑しつつペロロンチーノの提案を受け入れる。

「ビャンビャン麺?何ですか、それ」

「初めて聞く名前ですね」

 あの時一緒に居なかった、弐式と武人は首を傾げている。

「あぁ、画数が世界一多い、中華系の麺類ですよ。何故かペロロンさんが推してて」

 と、モモンガが補足説明をすると、二人とも!アイコンを出して頷く。

「なるほど……?まぁ、年越し蕎麦も麺類ですし、いいんじゃないですかね。ついでに作っちゃいましょうか。あと、スィーツ系のレシピは女性陣に受けそうなのでそれも作りますか。小麦は大量にありますし、砂糖類も山程ストックあるから、多分作れるでしょう」

 武人のその言葉に、全員が頷く。所謂「映え」るスィーツ系は、ぶくぶく茶釜を始めとした女性陣に莫大な人気を誇っているからだ。

「俺は朱雀さんに中華系中心に教えて貰いました。……ビャンビャン麺は入っていなかったですけど、点心系は豊富ですね」

 ウルベルトはそう言って、データを皆に見せる。そこには、満漢全席でも作れそうな程の量の書き込みがあった。それを見て、皆が感嘆の声を上げる。

「すげぇ!北京ダックって実在するんだ!?」

「読めないメニューがめちゃくちゃたくさんある!!」

「何かやたらと凄いのだけは分かる!!」

「うわー!豪勢ですねぇ」

 そう言いながら、メニューを眺める全員の声はとてもはしゃいだもので、もし表情が動いたのなら皆の表情が活き活きとした物になっていたであろう事は間違いない。

「元のレシピが完璧ですから、食材が揃えば完璧に再現出来る筈ですよ。……リアルで食えないのが残念なくらいです」

 そうウルベルトは残念そうに呟く。他の面子もそう思っているのだろう、一気に場の空気が沈む。それを危惧して、モモンガが慌てて口を開く。

「えっと、俺はブループラネットさんに訊いたんですけど、素材の味を生かした物が多かったですね。ローストビーフとか丸鶏の香草焼きとかですね。メインディッシュになりそうな料理が多いです!」

 そう言ってデータを見せると、立体映像が浮かび上がる。そのボリューミーな肉料理、魚料理の数々に、全員の目は釘付けになる。

「ブループラネットさんも凄!!自然以外にも興味あったんだ!?」

「ペロロンさん……それ、なにげに失礼ですよ」

 相変わらずのペロロンチーノの発言に、ウルベルトが突っ込みを入れる。だが、当のペロロンチーノは気にもしていない。その様子に、他の面子は苦笑いだ。

「これで、かなり狩りが楽になりますね。モンスターの所在地も大体固まってますし」

 モモンガはそう言うと、周りを見渡す。

「とりあえず、明日またこの面子で狩りに行きましょうか。時間は今くらいで大丈夫ですか?」

「大丈夫です」

「おっけーでーす!」

「了解です」

「俺も問題無いです」

 皆の回答に、モモンガは大きく頷く。

「じゃあ、とりあえずこれで一度解散って事で。皆さんこれからどうしますか?俺はまだMPあるので、狩りに行くならお付き合い出来ますよ!」

「うーん……。俺はMP今半分くらいなんで、狩りは近場なら何とか。遠いと帰り道のPKが怖いですからね」

「俺もモモンガさんと同じく余裕があるので、狩りOKでーす!」

「俺らもまだ余裕ありますね。MP殆ど使わずに物理で殴ってたので」

「えぇ、物理のみでしたし、ポーションを使うまでも無かったので、余裕はありますね」

 その言葉に、モモンガは一瞬思考する。

「うーん……。肉も海鮮も場所遠いですし、かと言ってこの時期に近場で無理して素材集めする必要も無いんですよね。どうしましょう?」

 モモンガのその言葉に、ウルベルトは汗アイコンを出す。

「え、俺の事は気にしないで下さい!デミウルゴスでも年末年始仕様に衣装変えて遊んでますし……皆さんは狩りに行って下さい」

「あ!それ、楽しそうですね。俺もパンドラズ・アクターを衣替えしようかなぁ」

 ウルベルトの言葉に、皆が自身の創造したNPCを思い出す。

「そう言えば、俺もシャルティアの衣装変えてない!!正月なら着物っ!!」

「ナーベラルも着物着せたいですね。イベント報酬にあったような、晴れ着……」

「コキュートスは……着物というか武装を金色っぽいのに変えてみますかね。おめでたいカラーにしときたいです。ウルベルトさん、面白い事教えてくれてありがとうございます!」

「……じゃあ、今日は皆自分のNPCを飾り付けるって事で。ではまた明日円卓の間で!」

 モモンガがそう言うと、皆が口々に別れの言葉を口にして、自室にリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンで飛んだのだった。

 

 

 

 翌日は海鮮、その翌日は肉と、それぞれ狩りを済ませ。年越し蕎麦とお節料理の準備は万端だった。ついでに中華もスィーツ系も作れる程に食材を狩った皆は、厨房の料理長にレシピと食材を渡した。量が量なので、完成まで少し時間が掛かるため、その間は円卓の間でだべりつつ、時間を潰していた。

「皆さん、NPCに着せる衣装何にしました?俺は羽織袴を着せてみたんですけど」

 と、モモンガがそう言うと、その場の全員が答え始める。

「あ、モモンガさんもですか?うちも、デミウルゴスには着物にしました。何か正月って和装ってイメージがあって……」

「俺もー!シャルティアには振り袖着せちゃいました!!」

「やっぱり、皆さんも和装なんですね。俺もナーベラルには着物を着せてあげました。ペロロンチーノさん程衣装は持ってないんですけど、クリスマスと正月分くらいの衣装は持ってるので」

 そう盛り上がっている皆を見て、武人建御雷はゆっくりと口を開く。

「うちのコキュートスは、着物じゃないですが黄金の武装に衣替えしました。紅白とどっちが良いか悩んだんですが……」

「すごい映えそうですよね、黄金の武装……!格好いいですね」

 モモンガのその純粋な言葉に、武人建御雷は笑顔アイコンを浮かべた。

「そう言って貰えると嬉しいです。お披露目が楽しみですよ」

「でもまぁ、その前に年越しカウントダウンですけどね!多分運営、今年も花火を打ち上げると思うんで……ナザリックの地表上で皆で花火を見ましょうよ。俺、皆にメール送っておきます!」

 楽しそうなモモンガを、皆が微笑ましそうに見守っている。

「そうですね。モモンガさん、お願いします」

 笑顔アイコンを出してウルベルトがそう言うと、モモンガはユグドラシル内のメール機能でギルメンに一斉に周知する。

「これで、皆さんがインしたら大晦日の夜集まってくれると思います。楽しみですね」

「えぇ。じゃあ、大晦日の後……正月のセッティングもしとかないとですね。あんまり前だとネタバレになっちゃうから、タイミングが難しいですよね……」

「あ!じゃあさ、ロイヤルスィートの会議室にまとめて隠しといて、花火直前に運び出すのはどう?同じ9階層だから移動時間短縮出来ますよ!」

 ウルベルトの言葉に、ペロロンチーノがそう提案する。

「それ良いですね。NPCたちも一緒に置いておけば、連れ出すの簡単でしょうね」

「……コキュートスはちょっと目立つので、後から連れ出しますよ。それ以外の食糧とかは会議室に入れときましょう。年末年始のこの時期、絶対会議室とか使いませんし。そろそろ料理も完成しましたかね?」

 弐式と武人がそう言うと、モモンガが口を開く。

「じゃあ、俺が受け取って来ますよ。皆さんは会議室に運び込むの始めてて下さい」

「はーい。巻物使ってサクッとやっちゃいます!シャルティア連れ歩いててバレたら元も子もないので」

「あ、じゃあ俺も……って、わざわざ巻物使わなくてもリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン使えばいいんじゃないですかね?」

 ウルベルトのもっともな指摘は、既に転移していたペロロンチーノには届かなかったが、残っていた三人にはきちんと届いていた。

「そうですよね。じゃ、俺もリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンでチャチャッと行ってきます」

 モモンガがそう言って転移すると、弐式も武人もそれに倣うかのように転移していった。

「さて。俺も行きますか……」

 ウルベルトはそう呟いて、第七階層へと転移したのだった。

 

 

 

 それから。こっそりと会議室に戻った五人は、こそこそとセッティングを済ませると、そそくさと立ち去った。他のギルメンにバレないように、バラバラに。

 

 

 

 

 そして、大晦日の夜。ギルメンの三分の二程が集まっていたが、夜の花火とカウントダウンまで居られるのは半数程とのことで、全員で年納めのPK祭と称して外で大暴れをしてきたのであった。……このせいで、翌年もアインズ・ウール・ゴウンは悪名高きPKギルドとして認知され捲ってしまうのだが、それはまた別の話である。

「もう少しで花火、始まりますね。皆さん、地表に行きましょう。俺も準備したら行きますので」

 モモンガがそう言うと、事情を知っている四人以外は次々と地表へと移動して行った。

「……皆さん、今のうちに移動を……!」

 そうモモンガが小声で指示を出すと、四人はグッと指を立てて会議室に転移した。モモンガは、四人の不在を誤魔化すためにそのまま地表へと向かった。

「モモンガさん。今年は年末何もしないんですか?イブはあんなに楽しく過ごしたのに」

 と、タブラが笑顔アイコンを出しながら話し掛けてきた。

「楽しい、って言うかトラウマになりますよ、アレ!!タブラさんこそ、また変なこと仕込んでないでしょうね!?」

 そう訊き返すモモンガに、タブラは笑顔アイコンを連打している。

「してませんって。実際、今回変な動きしてたのってモモンガさんたちでしょうに。何かやたらとレシピ集めてるって聞きましたよ?」

「……タブラさんの所には誰も行ってない筈なんですけどねー。何で知ってるんですか、タブラさん」

「そこはほら、茶釜さん経由で。何か、愚弟がスィーツ系のレシピ集めてるーとかで。クリスマスももう終わったのにね?って不思議がってたんですよ」

「あぁ……そこからですか。まぁ、別にタブラさん達と違って、悪巧みはしてませんので、安心して下さい」

「茶釜さん、仕事で今日は居ませんけど……残念がってましたよ。スィーツパーティーするんなら行きたかったーって」

 タブラの言葉に、モモンガは苦笑アイコンを出す。

「まぁ、スィーツパーティーでは無いですけど、年越しなので料理を出しますよ。なので、レシピ集めしてたんですけど」

 ここまで来て隠すのも、と、モモンガはチラリとネタばらしをする。それで合点がいったのか、タブラは大きく頷いていた。

「あぁ、そう言う……。じゃあ、花火の後はそれで楽しめそうですね。……最初から私にも訊いてくれたら良かったのに」

「なまはげ式クリスマスを教えてくる人に訊いたらホラーなイベントになりそうなので……」

 と、二人で話していると、セッティングをしていた四人がやって来る。

「モモンガさーん、お待たせー!花火、まだだよね??」

「とりあえず、玉座の間飾って来ましたよ。ヘロヘロさんたちの許可も得てあるので、メイド達も着飾ってます」

 元無課金同盟の二人の言葉に、モモンガは笑顔アイコンを浮かべる。

「大丈夫ですよ、花火はこれからです。弐式さんたちは?」

「コキュートス連れて行ったら来るって言ってたので、多分すぐに来ると思いますよ。……ほら」

 そう言っているうちに、弐式と武人の二人が転移してくる。

「よっしゃー!セーフ?」

「セーフだろう、まだ」

「おつでーす!セーフですよ!これからですって、花火!」

 テンション高くそう返すペロロンチーノに、二人は慌てて花火の上がる方を向く。と、次の瞬間。

 

 ドーン……!

 

 と、花火が打ち上がる音がして。次の瞬間、花火が弾けた。

「うわー!!マジで綺麗ですね」

「ブループラネットさんがそう言うなら、やっぱりかなり出来が良いんですね、この花火。ユグドラシルって無駄に再現率高いですよね」

 隣にやって来ていたブループラネットにそう返し、モモンガは打ち上げられている花火を見つめる。リアルでは決して見ることが出来ない、光の饗宴。その美しさを、モモンガは強く記憶する。仲間と見た、最高の記憶として、強く。

 時間にして、十分くらいだっただろうか。花火が打ち上がり終わってすぐに、空にデジタル数字が表示される。30からカウントダウンが始まる。

「29、28~」

 ギルメン全員が、口々に数を唱えて、まるで大合唱のようになる。その賑やかさと、感じる熱気に、モモンガの気分も高揚する。

「5、4、3、2、1……ゼローーーーー!!!!!!」

「あけおめー!!!!」

「ハッピーニューイヤー!!!!!」

 全員でそう叫んで、近くのギルメンとハイタッチをして。ひとしきり騒いだ後、モモンガが口を開いた。

「皆さん!実は玉座の間にお節料理とか色々用意してあるので、時間が大丈夫なら寄って行って下さい。その、タイミングは外しちゃったんですが、年越し蕎麦もあるので……」

「え、いつの間に!?」

「お節とか見た事無い!!」

「すっげぇ楽しみー!!」

 好意的な反応ばかりで、モモンガは内心ホッとする。

「じゃあ、行きましょうか。……きっと、驚いて貰えると思いますよ!」

 数々の料理に、お正月仕様に着飾ったNPCたち。特にメイド達はその創造主の拘りで、華やかな衣装を身に着けている。

(……楽しみだな、本当に)

 ギルメン達の驚く様子を想像し、モモンガはひっそりと笑った。

 

 

 

 そして、年明けの宴は明け方まで続いた。モモンガの想像以上に賑やかになったその宴は、彼の中で忘れ得ぬ輝かしい思い出となったのだった。

 

END

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