木場裕斗GX   作:柳ノ介

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現れた白(あっちではない)

 side 裕斗

 

 僕は絶望していた。なぜなら聖剣使いであるゼノヴィアの実力が想像していたものより、あの時僕たちが目指していた聖剣使いに届いていなかったからだ。教会の最低なやつらに教えられていた聖剣使いの実力はまさに神の使者にふさわしい、勇者や英雄のようなものだったはずだ。それなのに相手が怒りで冷静でなかったとはいえ、あんなにあっさり勝ててしまうとは思っていなかった。言ってしまえば、弱かった。

 

 何故だ。どうしてそんなことになっている。僕たちは聖剣使いとは人間の中だと最強クラスの人間にしかなれず、そういった者が聖剣を使うことで怪物すら打倒すると教わっていた。だからこそ僕たちは辛い訓練にも耐えられた。実験だって精神修行の一環だと言われ耐えきってみせた!それがあんな結末を迎えた。あの殺されかけた時、やつらは用無しだと僕らに向かって言った。ということはおそらくあの実験で何かしらの目的が達成されたのだろう。僕たちは何かの犠牲にさせられたのだ。そして僕たちが犠牲になって出来たものの一部が彼女たち2人だ。それなのに、あの程度?あんなに多くの仲間を犠牲にしたのに?僕たちの憧れた聖剣使いって何だったんだろう......。

 

 頭の中がぐちゃぐちゃだ。今の僕には降りしきる雨の中、あてもなくふらふら歩くことしかできなかった。

 

 side out

 

 all side

 

 夜になった。まだ裕斗は帰っていない。

 

「裕斗さん、まだ帰ってきませんね......」

 

「どこか様子がおかしかったものね。ちょっと私探しに行ってくるわ!」

 

「わ、私も行きます!」

 

「いえ、アーシアには入れ違いにならないように家で待ってて欲しいの。それに2人とも探しに行ってる間にもし裕斗が家に帰ってきたら、誰も支えてあげられないでしょう?だから裕斗が帰ってきたらケアしてあげて欲しいの」

 

「分かりました。お家で待ってます!」

 

「ありがとう、行ってくるわ」

 

 そのまま裕斗を探しにリアスは家を出た。

 

 

 

 場所は変わってとある裏路地。そこに裕斗はいた。

 

「あれれ?そこにいるのはいつぞやのイケメンあーくま君じゃないですかぁ?」

 

 そして運の悪いことにそこにドーナシークの件で戦ったはぐれ白髪エクソシスト、フリード・セルゼンが現れた。裕斗はフリードの方を向くことなく答える。

 

「......フリード。まだこの町にいたのか」

 

「ええ、ええ。まだ目的を達成してないんでねぇ」

 

「目的?」

 

「はん、教えるわけないでちょ!でもたった今一個やりたいことが出来ちったなぁ〜」

 

 そう言いながらフリードはある剣を抜く。

 

「あの時の仕返しをさせてもらうぜぇ!!!」

 

 そう言って切りかかってきたフリードを裕斗はギリギリで刀を想像して受け止めた。

 

 受け止めた?前回の戦いでは不意打ちでも避けられた。なのに今僕は防御しかできなかった。スピードが上がっているのか?

 

 そんなことを思いながら、ここでようやくフリードの姿を視界に捉えた裕斗の表情は驚愕に染まる。

 

 その手に握られていたのは聖剣だった。

 

「!?何故お前がそれをもっている!!?」

 

「ああん?この天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)ちゃんのことか?いいだろこれ!!最強の聖剣の一振りさ!!なんで俺がもってるかって?決まってんだろ!選ばれたんだよ!!この聖剣にさぁ!!」

 

 そう言うとフリードは人間でありながら、裕斗の全速力と同じくらいのスピードで動き、裕斗の背後をとった!!

 

「ケケケ!!これで仕返しかんりょ「裕斗!!」危ねっ!!」

 

 そこにリアスが魔力弾を放ち、裕斗は危機を脱した。

 

「チッ!邪魔が入っちまった。おい、クソイケメン!次はそこの赤髪おっぱいと一緒にぶち殺してやるから覚悟してやがれ!!」

 

 フリードはまるで消えたかのようにその場から居なくなった。その場にはリアスと裕斗のみが残された。しかしそこにあるのは普段の2人の穏やかな空気ではなく、どこか気まずい空気だった。

 

「ゆ、裕斗?ほら、もう遅いし一緒に帰りましょう?」

 

「......リアス。今は1人にしてください」

 

「そんなこと言わないで?悩みがあるなら私たちに相談しなさい。一緒に考えるから。一緒に悩むから。仲間なんだから一緒に苦しませて?」

 

「......これはリアスには、今の仲間の皆んなには関係ない。昔の僕の仲間の問題なんです。だから関わらないでください」

 

「そんな「でも!」!」

 

「......結論が出たら、その時はそれが正しいのか間違ってるのか相談させてください」

 

「!待ってるわ。私たちは皆んなあなたを待ってる。でもね、裕斗。正しいとか間違ってるとかは考えなくていいわ。あなたのしたいようにしなさい。どんな結論だって、あなたが悩んで悩んで選んだ結論なら私たちは受け止めるから」

 

「......しばらく帰りません。でも、ありがとうリアス。またね」

 

 そう言って裕斗はリアスに少しだけ笑顔を向け去って行った。

 

 side out

 

 side リアス

 

「というわけで裕斗には時間が必要なの。だからとりあえず私たち7人があなたたちに協力するわ」

 

 裕斗が去ってから3日経った今、私たちは教会の2人に聖剣の回収もしくは破壊について協力すると伝えていた。私の領土で好き勝手させてたまるもんですか!

 

「そうか......。正直私を打ち倒したあの騎士にこそ協力してもらいたかったんだがな...。まぁ、それでもありがたい。協力感謝する」

 

「ありがとう!」

 

「それで、どうやって聖剣を見つけるかの算段はついてるの?」

 

「いや、全く。怪しい道をパトロールするくらいしか考えていない。だが、連中もそう目立つ場所にはいないはずだ。なら候補も絞れるだろう?」

 

「ずいぶんザックリとした計画ね。あ、そういえば一本だけなら私見たわよ」

 

「なに!?どこで、誰がもってた!?」

 

「どこかはあなたに言ってもわからないでしょう?まぁでも確かに薄暗くて怪しい路地裏ではあったわ。持ってたのはフリード・セルゼン。白髪の若いはぐれエクソシストよ」

 

「フリード・セルゼンか......」

 

「知ってるの?」

 

「あぁ。やつは教会でもその残虐さが問題視され追放された者だ。だが、その実力は確かで多くの悪魔を討伐していたはずだ」

 

「確かに人間とは思えない速さだったわ」

 

「ん?速かったのか?」

 

「えぇ、下手すると裕斗と同じくらいには」

 

「なるほど。ならやつの持つ聖剣は天閃の聖剣で決まりだな」

 

「何かしらそれは?」

 

「聖剣エクスカリバーが七本に分かれてるのは知ってるな?そのうちの一本で所有者に無類の速さを与える。因みに私の聖剣が破壊力でイリナの聖剣が」

 

「色んな物に形を変えられるのよ!」

 

「一本一本特別な力があるってことね」

 

「その通りだ」

 

「聖剣について分かったところで、パトロールのチーム分けをしましょう」

 

「そうだな。9人いるわけだし3チーム3人ずつがいいだろう」

 

「そうね。んー、どうしようかしら?」

 

「アーシア・アルジェントと私たちで組んでも構わないだろうか?」

 

「どうしてかしら」

 

「なに、あの騎士が聖女と認めたんだ。きちんと会話して彼女の人となりを知りたい。そしてあの時魔女と罵ってしまったことをもう一度しっかり、自分の意思で謝りたいんだ。あの決闘の後だと強制的に謝らさせられたようで、何だか納得いかなくてな」

 

「......アーシアはどうしたい?」

 

「私もお2人と行動したいです。お2人は優しそうですし、仲良くなりたいです!私も教会の人間でしたし、色々お話ししたいと思ってましたし!」

 

「なら決定ね。私たち6人はどうする?」

 

「そうね。元堕天使3人で固まる?」

 

「そうだな。今回戦闘もあるかもしれないし1番チームワークが良いチームで行動するのがいいだろう」

 

「そうっすね!元堕天使チームで行くっす!!」

 

「なら私たちは元祖オカ研のチームってところかしら」

 

「あらあら、これは失敗できませんわ」

 

「......頑張ります」

 

 このようにして教会(元含む)チーム、元堕天使チーム、元祖オカ研チームの3チームに分かれ怪しい場所をパトロールすることになった。

 

 そうして5日が経った。その5日間さまざまな怪しい人たちに出会った。怪しい取引をしていたり、露出狂の変態がいたり、泥棒をしようとしたりしていた。全員ひっ捕らえて警察署の前に放置した。あ、あと兵藤くんがのぞきをしようとしていたので、結構本気で叱ったあと今この町は危険だからウロウロしてないで家にいなさい、と伝えた。

 

 まぁ、色々あったわけだけど、目的は達成されず今は6日目のパトロール中。もくあたりはすっかり暗い。そこにアーシアから連絡があった。

 

「ふ、フリードさんが見つかりました!町外れの森の中の廃墟にいます!皆さん向かってください!!」

 

「わかったわ!今から行くから時間稼ぎしておいて!」

 

「はい!伝えておきます!」

 

 待ってなさい!この町に、裕斗に危害を加えるものはこの私が消しとばしてあげる!

 

 side out

 

 side ゼノヴィア

 

「その聖剣を返せ!フリード!!」

 

「やなこった!返して欲しけりゃ奪ってみやがれ!!」

 

 破壊の聖剣を振りかぶり切りつけようとするが、今のフリードのスピードの前には無意味だった。

 

「あたらねぇよ!」

 

「これならどうよ!」

 

 イリナは擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)を鞭のようにして範囲攻撃を仕掛けたが、それも上手くかわされる。

 

「はっはっは!!教会の聖剣使いは雑魚しかいねぇのかよ!!」

 

 そう言ったフリードは、とんでもないスピードで私たちの視界から消えた。

 

「「ぐあっ!!」」

 

 気づけば2人とも全身傷だらけになり、服だってボロボロだ。くそっ!聖剣の扱いも剣の腕も相手の方が上だ!正直フリードの武器が聖剣である以上、他の悪魔たちが合流しても被害が拡大するだけなような気がしてならない。せめて、彼がいてくれれば......。

 

「お前たちみてぇな雑魚にエクスカリバーは扱いきれませぇん!俺ちゃんみたいな天才イケメン青年じゃないとなぁ!!お前たちを殺してその2つも俺が有効利用してやるよ!!」

 

「2つも、だと?まさか貴様それ以外にもエクスカリバーを持ってるのか!?」

 

「その通り!正解です!!俺のところにあと二本もあるんだせぇ?そして、お前らがもってる2つで合計五本だぁ!!!」

 

 またフリードが視界から姿を消す。やられる!!と思った時、私とイリナの周りに大量の剣が地面から生えてきた。

 

「一応、形式上2人は僕の後輩なんだ。それに今はどうやら同盟関係でもあるみたいだしね。だから手出ししないでくれるかい?」

 

 そう言いながら廃墟の屋根に立つ彼は、その金髪に月明かりを反射させてどこか神々しさを感じさせた。

 

 side out

 

 

 side 裕斗

 

 リアスと別れた後、僕は一旦落ち着こうとホテルを取った。幸い貯蓄は結構ある。仮にホテル暮らしを数ヶ月続けても大丈夫だ。続けるつもりは無いが。

 

 チェックインした後も、シャワーを浴びてる時も、その後も、僕は1つの事に脳内が支配されていた。何故フリードは聖剣を使えるのか。それがわからない。

 

 聖剣を扱えるかどうかは生まれた瞬間、つまり先天的に決まる。いや決まっている。後天的にはどうしようもないのだ。それをなんとかしようとしたのが聖剣計画だった。僕たちの世代だと天然物はゼノヴィアだけだと聞いている。ならフリードは後天的に聖剣を使えるようになった者なのだ。そしてフリードは教会側にその残虐さで有名になるほどの男だ。

 

 ここから分かることは、やつは教会にいた間は聖剣を使っていないということだ。聖剣を使っていたとすれば残虐さで有名になることなど出来ない。そんなことをする前に悪魔が消滅さてしまうからだ。

 

 さらにこの町に来た後、具体的にはドーナシークの一件以降に使えるようになった、もしくは聖剣を手に入れたはずだ。僕が最初に戦った時奴は聖剣を持っていなかった。これは勘だが、この前戦った時の感じでは手に入れたのは最近で、今はならしているようにも思えた。なぜなら、あんな奴でも使っているのはエクスカリバー、僕と同じ程度のスピードが最高速な訳が無いのだ。仮に全開で扱えたのなら、あの時に僕は殺されていたように思う。それほどの力をあの剣からは感じた。

 

 話を戻す。僕が思うに、フリードの事を聖剣を使えるようにした人間はまだこの町にいる。使えるようにするだけして去るとは考えにくい。何かしらの組織か何かがやつのことを1つの戦力として仕立て上げたと考えるのが自然だろう。1人の人間を後天的に聖剣を使えるようにするなど、できる者は限られる。つまり、聖剣計画の首謀者にして教会を追い出された人間......。

 

「バルパー・ガリレイ......!!」

 

 いるのかもしれない。この町に。僕の復讐すべき相手が。

 そして、フリード。あいつも僕が倒すべきなんだろう。あんな奴に聖剣を持たせておくわけにはいかない。僕の仲間たちは聖剣使いを生み出すための計画の犠牲になったのだ。どんな人間が聖剣使いになるべきか、それを僕は考えなければならないのだろう。

 

 いや、それともそもそもの原因たる聖剣を破壊すべきなのかもしれない。あんなものが無ければあんな計画は無かったはずなんだから。でもそれは皆んなの犠牲を無意味にしてしまう。いやでも......。

 

 考え続けても答えは出ない。

 

 僕はまだホテルの部屋に引きこもっている。引きこもり始めてから何日経ったかも定かじゃない。だが、何をすべきか。どうすべきか。未だに答えは出ない。そう言えばリアスからのメールで教会の2人に協力することを知った。そんなことを考えてるうちに今日ももう夜になってしまった。気分転換に月でも見に行こう。

 

 そう思い、外に出る。あてもなく歩いていると町の外れから聖なるオーラのぶつかり合いを感じた。この状況でそんなこと、1つしかありえない。ゼノヴィアさんかイリナさんがフリードと戦っているのだ。

 

 そこに駆けつけると、ちょうどフリードが2人に切りかかるところだった。僕は2人を守るように、2人の周りに地面から大量の魔剣を生やす。

 

「一応、形式上2人は僕の後輩なんだ。それに今はどうやら同盟関係でもあるみたいだしね。だから手出ししないでくれるかい?」

 

 答えはまだ出ない。でもあの計画の仲間たちを侮辱するような存在である彼のことは少なくとも切らなければならないと感じた。




どうも、おはこんばんにちわ。
15話目でした。まだまだ木場裕斗の憂鬱は続きます。あー、イチャイチャさせてぇー。そんなもん書ける気しないけどなぁ!いつかやりたいですね。uaとかお気に入り件数とかのメモリアル回みたいな感じで。それはともかく木場くんがどういった結論を出すのか、皆さんも適当に推測したり妄想したりして楽しんでもらえたらいいなぁと思ったり思わなかったりします。
本日も最後に、感想、評価、お気に入りして下さった皆様、本当にありがとナス!!
次回も見てくれると嬉しさが滲み出て美味しい出汁がとれます。

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