side 一誠
「うわああああああああ!!!」
今俺は全力で走っている。何故かって?よく分からんけど前にも襲われたことのある堕天使のおっさんがまた俺のことを追いかけてきてるんだよ!!せっかくの休みの日だし、真っ昼間からエロ本を買いに行こうと思ったのに!!ちくしょう!俺も追われるなら女の子に追われたい!!
「待て!!人間風情がこの私を前に逃げ切れると思うのか!」
ヒィイイイイ!!おっさんが手から出した光ってる槍を転ぶようにして避ける。膝を擦りむいて痛いが、今はそんなことを気にしてる場合じゃない!急いで曲がり角を曲がり、ポケットから木場に渡されていた鳥の羽を取り出す。これを折ると木場が来てくれるらしい。いざ折ろうとした時に
「追いかけっこはお終いか?」
さっきまでそこそこ距離が離れていたおっさんが真後ろにいた。
「ひっ!?」
もうだめだぁ!お終いだぁ!!恐怖を堪えるように思いっきり目をつぶったが、一向に痛みは襲ってこない。恐る恐る目を開けるとおっさんは俺の方を見ていなかった。
「チッ、もう見つかったか。つくづく悪運のいい小僧だ。まぁいい。今回は見逃してやろう」
そう言っておっさんは飛んでいってしまった。
「大丈夫かい!?兵藤くん!!」
「おせぇよ!俺のこと守ってくれるんじゃなかったのかよ!」
「本当にごめん。もうこんな事がないよう、また監視を強化しておくよ」
「チッ!もういいよ!」
そう言って俺は木場を置いて家に帰った。ここが悪魔の領土だって言うならあんなやつらさったさと殺しちまえばいいんだ!そしたら俺もこんな危険な目にあわずにすむし、女の子を安心して追いかけられてきっと彼女も出来るんだ!
side out
side 裕斗
「チッ!もういいよ!」
そう言って兵藤くんは帰って言ってしまった。彼は今日再び命の危機を感じた事が不満らしい。それも当然なのかもしれない。彼は僕たちの保護下に入ったんだからもっとちゃんと守ってあげないと、彼は恐怖で外も出歩かなくなってしまうかもしれない。もっとしっかりしないと...。
少し、幼少期の皆んなを守れなかったことを思い出してしまう。何だかちょっと疲れてるみたいだ。公園で飲み物でも飲んで休憩しよう。
そう思って公園に入るとそこにはおととい再会したアルジェントさんの姿がベンチにあった。
「やぁ、アルジェントさん。おとといぶりだね」
「あっ、木場さん!こんにち......は?」
何だかアルジェントさんが怪訝そうな顔をしてこちらを見てくる。
「えぇっと、僕の顔に何かついてるかい?」
「いえ、何だか随分と思いつめてる顔をしてらっしゃったので。何かあったんですか?」
「いや、大した事じゃないよ」
「.........本当ですか?」ジトメ
「ほ、本当だよ....?」メソラシ
「......木場さんがそう言うなら信じます。でも、疲れてるのは明らかですよ。よ、良かったらどうぞ///!」
そう言ってアルジェントさんは自らの膝をポンポン叩いている。顔を赤らめながらするその仕草はとても可愛いのだが、目の前の現実をうまく受け止められない。
「......え?」
「で、ですから///!!良かったら私の膝をお貸しします!......それとも、お嫌でしたか?そ、そうですよね!私なんて肉づきの薄いちんちくりんじゃ「そ、そうじゃないよ!嫌なんかじゃない。でも、本当にいいのかい?」
「はい!でしたら、どうぞ!」
「う、うん。じゃあ、失礼するね」
僕はアルジェントさんの膝枕に頭を乗せた。その膝枕はとても暖かく、太陽のようにポカポカしていた。頭を撫でられていると気付かぬうちに僕は眠りに誘われてしまった。
「皆んな.......。守れなくて...ごめ...」ツ-
「木場さん...。やっぱり何かあったんですね?私では力になれそうもありませんが、主のご加護があらん事を......」
「ウッ!?うぅ......」
「はうっ!?そういえば悪魔さんにお祈りは毒でした!す、すみません木場さん!!」
そのまま僕は夕方までしっかり眠ってしまっていた。この町には部活の皆んなの使い魔が監視用に飛び回っているのも忘れて......。
side out
side リアス
「で?どうしてあなたはシスターの娘の膝枕でこんな時間までぐっすり眠ってたのかしら?」ニッコリ
「ええっと...」
私は今裕斗を尋問している。何故かですって?そんなの裕斗がシスターの娘に膝枕されてたからに決まってるでしょ!私でさえ小さい頃以来やってないのに!!こういうのを羨まけしからん!!と言うのよね。
そんなことはともかく、最近裕斗はそのシスターの娘との仲を深めているようだし少し危機感を感じてるのよ。あんな過去があったとしても元々は裕斗も教会側だった人間。もしかしたらシスターに憧れがあるかもしれない...。そう思うと問い詰めずにはいられないわ!!
「はっきり答えなさい!!ど・う・し・て、あんな事をしてたの!」
「はっ、はい!あの娘に心配されてああ言うことになりました!」
「心配?何があったのかしら?」
「えぇっと、公園に行く直前に兵藤くんが堕天使に襲われそうになってたので救助に向かったんです。堕天使は兵藤くんを殺す前に僕の存在に気づいたようで特に何もせずに去っていたんですが、兵藤くんにもっとしっかり守ってくれと言われてしまいまして。それがちょっと、心に来たというか、何というか...。そんな僕を見かねてアルジェントさんが膝を貸してくれたって感じです」
「なるほどね。裕斗は彼が襲われ始めてからどれくらいでついたのかしら?」
「そうですね、大体5分くらいだったと思います」
「十分はやいじゃない!それで文句を言うって彼は何様のつもりなのかしら!!説教してやるわ!!!」
「いえ、彼は命の危険を感じてたんです。だからきっと遅いもはやいも関係ないんだと思います。そんなものを感じること自体許容出来ないんですよ」
「それは、そうかもしれないけど......」
「それに彼は僕たちの保護下にあるんです。なら僕たちが守らないと...」
「.......はぁ。貴方がそこまで言うなら今回のことは不問にしましょう。でもね?裕斗。あまり自分を追い込みすぎないで?いくら貴方が強いと言っても、貴方だけで全てを守りきるなんてことは出来ないわ。だから、私たちにも一緒に守らせて」
「!......はい!これからもよろしくお願いします!!」
「えぇ、皆んなで頑張りましょう?」
私がそう言うと裕斗はなんだか憑き物が落ちたような感じがした。良かった。彼の悩みを少しは軽く出来たみたいね。非常に喜ばしいわね。王としても、女としても、ね?
side out
side 裕斗
部長に慰められて、次の日になった。今日は日曜日。散歩しながらパトロールしていると昨日アルジェントさんが膝を貸してくれた公園に着いた。何となく覗き込むと今日もまたアルジェントさんがいた。
「やぁこんにちは、アルジェントさん。昨日はありがとうね」
「あっ、木場さん!こんにちは!いえ、気にしないで下さい。少しでもお力になれたなら幸いです。今日は顔色もいいですし、もう大丈夫そうですね!」
「うん、アルジェントさんのお陰もあってもうすっかり元気だよ」
「良かったです!」
そう言った後、アルジェントさんの表情が少し沈んだように見えた。
「どうかしたのかい?少し表情が暗いようだけど...」
「い、いえ!大丈夫ですよ!?」
「......アルジェントさん。昨日は僕が君に助けられた。だから今日は僕が君の力になりたい。せめて話ぐらいは出来ないかな?」
「......そうですね。少し長くなるんですけど、聞いてもらっていいですか?」
「もちろん!ならベンチに行こうか」
2人でベンチに座るとアルジェントさんはポツポツと話し始めてくれた。
「私は元々ある教会で働いてたんです。木場さんはもうご存知だと思いますけど、私の神器の能力は回復。教会に沢山の怪我をした方がいらっしゃって、私は皆さんを治し続けていたんです。そうしたら気付けば私は聖女と呼ばれるようになりました。私は周りの人から聖女として振る舞うように強制されて、1人になってしまったんです。そんな中でも1人だけ私と友達と接してくれる人がいたんですが、その人も私自身も周りの人に止められて次第に会えなくなってしまいました。
そんなある日、教会の前に大怪我を負った悪魔さんが倒れていました。私は迷わずに神器で治しました。そこを誰かに見られていたんです。一気にその話が広がって、昨日まで私のことを聖女と呼んでくれていた皆さんは口を揃えて魔女だと私のことを罵るようになりました。そんな中でも友達は私を庇おうとしてくれました。ですが、私は彼女を巻き込まないようにすぐに教会を出ました。当てもなく歩いているとレイナーレさんにお声をかけて頂いたんです。「あなたの神器は強力だから、私たちの元へ来ない?待遇はある程度ちゃんとしてると思うわ。来る気になったらそのチケットで日本まで来て、この地図の場所まで来なさい。きちんと世の中を渡っていけるようにしてあげるわ」今でも一字一句間違えず覚えてます。
あとは木場さんも知っている通りです。この町に来て、木場さんと出会って、レイナーレさんたちと再会しました。お三方ともとても私に優しくして下さって、友達のように接して下さっていました。
ですが、先ほど聞いてしまったんです。「あのシスターの神器は有用だが、あのシスター自身はいらない。はやく神器を抜き取って殺してしまえ」そう言ってたんです。
私、もうどうすればいいか、誰を信じればいいか分からなくなってしまって、あのお三方のことを友達だと思ってたのは私だけなのかなって。やっぱり人間の私と他の種族の方では友達にはなれないのかなって...。もしかしたら木場さんも私のことなん「アルジェントさん!」!?」
「少しだけ質問してもいいかな?」
「は、はい...」
「君のことを殺せと言ってたやつはどんな見た目、どんな格好をしてた?」
「えっと、シルクハットを被ったおじさまでした」
「やっぱり...。いいかい?そいつがドーナシークという堕天使だ。確かアルジェントさんも僕がレイナーレさんたちにそいつの情報を聞いてたときその場にいたよね?」
「は、はい。何だか不審な動きをしていると...」
「つまり、そいつとあの三人の繋がりは強固なものじゃない。いや、むしろあの三人もドーナシークには不信感を抱いているはずだよ。だからあの三人がドーナシークと同じ意見だとは思えない。
それに、今日までアルジェントさんが見てきた三人はそんなに信用出来なさそうだった?」
「いえ、さっきも言いましたが、とてもよくしてくれました。ミッテルトさんはよく一緒に遊んでくださいましたし、カラワーナさんは優しく色々なことを教えてくれました。そしてレイナーレさんは私のことをからかってきたり、逆に私からからかったり、本当に仲の良い友達のように接してくれていました」
「なら、きっとそれが答えだよ。君が感じた三人を信じてあげなよ」
「はっ、はい!」
「それでも不安になった時はこの前渡したハウルの羽を折って僕を呼んで?必ず駆けつける。僕が君の友達だってことを行動で証明する。僕が君の友達だってことを忘れないでね?」ニッコリ
「っ!?......うっ、ぐすっ」
「えぇっ!?あ、アルジェントさんどうしたの!?」
「い、いえ、嬉しくて、そんな風に言ってくれて、私のことを友達だって言ってくれて、本当にありがとうございます」グスッ
「ううん、当然のことを言っただけだよ。何度でも言ってあげる。僕とアルジェントさんは友達だよ!」
「そ、それなら、その、私のことはアーシアと呼んでください!それと、裕斗さんって呼んでいいですか?」
「もちろんいいよ。これからもよろしくね、アーシアさん!」
「はい!」
こうして僕とアルジェントさん、いや、アーシアさんの絆が深まっていった。これからも彼女とはうまくやっていけるだろう。
「くだらない茶番はここまでだ。聖母の微笑は持って行かせてもらうぞ!」
その声が響いた瞬間僕の目を閃光が貫いた。
「ぐあっ!?目潰しか!」
「裕斗さん!裕斗さん!!!」
「ええぃ、大人しくしろ!」
「アーシアさん!くそっ!!どこだ!!」
「ふん、さらばだ。私はこいつを使ってやらなければならないことがある」
「くそっ!アーシアさん、必ず助けに行く!それまで待っててくれ!」
「わかりました!裕斗さんを待ってます!」
「ふはは、間に合うといいなぁ?」
その声が聞こえた後、羽ばたきが聞こえ奴がアーシアさんを連れていってしまったことに気づいた。
待っててアーシアさん。必ず助けに行く。僕が君の友達だってことを必ず行動で証明してみせる!!
どうも、おはこんばんにちわ。
7話目でした。今回遅れた分文量は多くなりましたね。でもストーリーはそんな進んでない気がする。いや、次回ようやく話動くんで、後2、3話くらいでこの章終わるんでこんくらいで許してくれさい。
次回は一体何ナシークさんがボコボコにされてしまうんだぁ...。
本日も最後に、感想、評価、お気に入りしてくださった皆様、本当にありがとナス!!!
次回は「デュエル開始の宣言をしろ、磯野!!」って感じでバトル展開が始まると思われ。(海馬社長感)
バトル描写ほんと書けねぇなぁ。