ルシファーside…
「さて、本来ならば後はレイナーレ達を始末してこの場を去るだけだったのですが……そちらのお2人とルシファーを相手にそれは難しいですね。一応お聞きしますが、見逃してはくれませんか?」
「私が自分が管理する町で殺人を犯した悪魔を見逃すとでも思うか?」
私は右手に紫電を纏わせながらバアルを睨む。同時にアリスはピンクカラーのガトリングガンを出現させてバアルに銃口を向け、ゼフォンはローラーシューズに搭載されているブレードを展開した。
そんな私達を見て、バアルは深い溜息を吐いた。
「はぁ〜……やはりそうなりますか。ならば仕方ありません。私も捕まりたくはありませんので……」
バアルはそう言うと懐から5個のチェスに使う駒を取り出し、空中へ放った。投げられたチェスの駒は光を発して巨大化し、チェスの駒を模した鋼鉄の鎧を纏う兵士となった。これがバアルの能力で、奴はチェスの駒に自分の魔力を与える事で本物の兵士にする事が出来るのだ。
だがバアルの能力で作られた駒兵士は本体の6分の1程の力しか無く、更に細かい命令が出来ないという欠点がある。本来ならアリス1人でも楽に倒せるのだが……なんだ?なんだかいつもと違う気がする。
「アリス、あの兵士を撃ってみろ」
「え!?いいの!?なら早速、穴だらけの蜂の巣にしてあげるね★アハハハハハァ♪」
ドガガガガガガガガガガガガガッ!!!
私がアリスに指示を出すと、アリスは喜んで弾丸の嵐をバアルの駒兵士に浴びせた。バアルの駒兵士程度ならば簡単に貫通出来る筈だったが、どういう訳か弾丸は駒兵士達にめり込みはしたが貫通せず、更にゆっくりとではあるが破損した部分が
以前は再生能力どころか、アリスの弾丸を貫通させない程の硬度も無かった。やはり以前よりも強くなっている。この分だと力やスピードも上がっているかもしれないな。
「あれ!?なんで!?防がれちゃったよ!?」
「ククク……そうでしょうねぇ。なんせ今回使っている駒はちょっとだけ特別製なんですよ」
驚くアリスを見てバアルは笑いながら駒を私達に見えるように見せた。何処にでもありそうなチェスの駒ではあるが、その駒から悪魔の気配を感じる。しかもモンスター界の悪魔のものではなく、
………成る程、そういう事か。
「貴様……“悪魔の駒”を盗んだな?」
「御名答……この町にいた赤髪の悪魔の小娘を中心に冥界から隙を見て少しずつ拝借させて頂きました。さぁ、行け!!兵士達よ!!」
バアルはニヤリと笑いながら駒兵士達に指示を出し、駒兵士達は剣や槍を構えて襲い掛かって来た。予想通り以前モンスター界で闘った時よりも速い。私達なら簡単に対処出来るが、堕天使共は動けなさそうだな。アイツ等にはアイツ等でこの町で悪事を働いた罰は受けて貰わないといけないし………仕方ない。
「アリスはそこの堕天使共と……生きているならあの
「う〜〜〜ん………ホントはアリスも暴れちゃいたいんだけどなぁ♤ま、いっか☆その代わり、今度一緒にお茶会しましょ♡」
「相手に少々不満がありますが……まぁいいです。では私には“旋律の翼”で何か奢ってもらいます」
「お前達………はぁ、分かったから早くし……っと、話し過ぎたな」
話している間に駒兵士達はすぐ近くまで迫っており、剣を振り上げていた。だが振り下ろされる前にゼフォンが前に出て足を一閃させる。ブレードによって駒兵士達は横に真っ二つになり、ガラガラと音を立てながら崩れ落ちる。
それを合図にアリスは銃弾をばら撒きながら動けずにいる堕天使共と神器を抜かれた娘の回収に向かい、ゼフォンはローラーシューズで滑走して他の駒兵士達を倒しに向かった。
「さて、私も自分の仕事をするとしよう。久々に少しはマシな戦いが出来そうだな」
そうして私は上からこちらを見下ろしているバアルの方を向いた。早く終わらせてグレイフィアの淹れた紅茶を飲むとしよう。
★
ルシファー達が地下でバアルとの戦闘を開始した頃、フリード・セルゼンと天草四郎による礼拝堂での戦闘は既に終了していた。天草四郎の目の前では、フリードが破壊された長椅子の上にボロボロの姿で倒れていた。
「ふぅ……全く、何故この様な男が神父とされているのか理解に苦しみますね。祈りを捧げる場である礼拝堂がボロボロになってしまいました。後でルシファーにこの教会を修復出来ないか聞いてみましょう」
天草四郎は少し哀しげな表情で礼拝堂を見渡す。彼女は出来る限り礼拝堂を破壊しないよう注意しながら戦っていたのだが、フリードはそんな事御構い無しに銃を撃ちまくり、光の剣で無駄に椅子などを破壊しながら彼女と戦っていたので、今礼拝堂内は破壊された椅子や割れたガラスなどで散らかっていた。
後で掃除をしようと考えていると、地下への入口からなんとか生きていたアーシアを背負ったアリスがレイナーレ達3人を連れて出て来た。
「あ!やっぱり終わってた♧天草ちゃ〜ん♪」
「あぁ、アリスさんですか。………ルシファーさんとゼフォンさんはどうしたのですか?それにその少女とそちらの方々は?」
「ルシちゃんとゼフォちゃんはまだ下で戦っててぇ、私が背負ってるこの女の子は神器を抜かれた人間♤この堕天使達は戦いの邪魔になるからルシちゃんに頼まれてこの女の子と一緒にここへ連れて来たの☆」
ガトリングガンの銃口をレイナーレ達に向けながらアリスは笑顔で答える。一方銃口を向けられている3人は何か諦めた表情で大人しくしている。
「そうでしたか。所で彼女達と手を組んでいたモンスターはどなただったのですか?」
「バアルって言う魔王族だったよ☆今下でルシちゃんとゼフォちゃんが戦ってるよ♤いいなぁ〜♡私も戦いたかったなぁ☆」
アリスは可愛らしく頬を膨らませて下で戦っている2人を羨ましがる。可愛らしい顔とは裏腹に結構物騒な事を言う彼女に天草四郎はやれやれと首を振った。
その時、地下からよく知っている魔力を2人は感じた。その直後ズシン!と鈍い音が鳴り響き、少しだけ教会が揺れた。
「ッ!……この魔力はルシファーさんですね」
「だねぇ〜♪それよりこの教会大丈夫かな?倒壊したりしない?」
「多分大丈夫だと思いますが………」
アリスと天草四郎はルシファーとゼフォンの心配はせず、ボロボロになった教会が壊れないかを心配した。
★
ゼフォンside…
「ハァッ!!」
私は戦斧を振り下ろそうとする戦車の駒を模した鎧の駒兵士をシューズに搭載されているブレードで斬り、この広い地下室内を滑走する。これで57回は駒兵士を斬っているのですが、何度倒しても再生するのでキリがありません。
更に“悪魔の駒”で作られたからなのか、騎士ならスピード、戦車ならパワーといった感じにそれぞれ“悪魔の駒”の特性を持っているようで、油断出来ません。
(ですが矢張り駒は駒……単調な攻撃しか出来ない所が変わらないのは幸いですね)
そう思いながらまた2体の騎士と僧侶の駒兵士の間を滑り抜けながらブレードで真っ二つにする。これで59回目……矢張りバアルを倒さなくては再生能力は解除されないのでしょうか?
翼を使って壁を滑走しながらチラッとルシファーとバアルが戦っている方を見る。どうやらバアルはまだ駒を持っていたようで、戦車と
援護に向かいたいですが、今戦っている駒兵士達を連れて行くと却ってルシファーの邪魔になりそうですね。
「……ッ!チッ!!」
そんな事を考えていると進行方向で2体の戦車の駒兵士がバットを振る様に戦斧を振っており、私は舌打ちをしながらも上半身を仰け反る様にして戦斧を回避しました。
「これではいつまで経っても終わりませんね。いつまで遊んでる気ですかルシファー?早く終わらせて下さい」
★
ルシファーside…
女王の駒を模した鎧の駒兵士が繰り出すレイピアの連続の突きを躱してレーザーを放って吹き飛ばす。するとバアルがレーザーや火炎弾を放って来て、それをバリアで防いでレーザーを撃ち返せば戦車の駒兵士の盾に防がれる。そしてもう1体の女王の駒兵士が向かって来る……さっきからこの繰り返しだ。
(はぁ……ここ十数年この世界のはぐれ悪魔や堕天使の相手しかしていなかったし、“悪魔の駒”でパワーアップしたならそれなりに楽しめると思ったのだがな……)
正直少しも楽しめない。しかも私があまり激しい反撃をしないからか、バアルの奴は油断して動きが疎かになって来ている。そろそろ仕留めないとゼフォンの奴が遊んでないで早くしろと不機嫌になるだろうし、もう終わらせるか。
「どうしましたかルシファー!?手も足も出ませんかぁ!?“悪魔の駒”はもう残り少ないですが、私が普段使っているものは沢山ありますよ!!」
どうやらバアルは余裕が出来てきたのか、顔に笑みを浮かべながら懐から青い駒を取り出し、新たに兵士を作った。仕留めるなら………。
「(……今だ!)ハァッ!!!」
私は同時に斬り掛かって来た女王の駒兵士を魔力を纏わせた蹴りで破壊し、バアルに向かって猛スピードで飛ぶ。バアルは急に動きを変えた私に虚を突かれたのか一瞬動きを止めたがすぐに駒兵士に指示を出して壁を作った。普通の駒で作った兵士なら再生能力は無い筈なので、私はレーザーを横薙ぎに放って駒兵士を焼き切り、そのままバアルに接近する。
「く、来るなぁ!!」
バアルは接近する私に焦りを感じたのか、出鱈目にレーザーや火炎弾を放つ。だが私にそんなものが当たる訳がなく、最後に奴を守っている盾を装備した戦車の駒を0距離で衝撃波を放って吹き飛ばし、唖然としているバアルに向かってレーザーを放つ為に指を差す。
「な!?ま、待って下さいルシファー!と、取引を………!!」
「いや………チェックメイトだ」
放たれたレーザーはバアルの眉間を貫通し、バアルは断末魔の叫びを上げながら体を光の粒子に変えて霧散する。同時にゼフォンが何度も破壊しては再生を繰り返していた駒兵士達はその場に崩れ落ちると元の“悪魔の駒”に戻った。バアルが倒された事によって、奴の能力が解除されたんだろう。
霧散した粒子が取り出した“小さな監獄”に全て入るのを確認すると、私は監獄を仕舞って人間の姿になる。
「やっと終わりましたか。少し遊び過ぎではありませんでしたか?ルシファー」
ゼフォンが少し呆れた表情で戻って来た。どうやらバレていた様だ。
「最近骨のある奴と戦っていなかったからつい…な?まぁ、思ったより楽しめなかったが……」
「でしたら今度模擬戦でもしますか?空いている日ならばお相手しますよ」
「考えておこう。さて、アリスと天草と合流しよう。堕天使共に与える罰も考えねばならないしな………ん?」
フードを被り直してゼフォンと一緒に地下室を出ようとすると、バアルが霧散した場所に小さな緑色の光を放つものが目に入ったので、それを拾い上げる。それはアーシアから抜き取られた回復系の神器……“聖母の微笑”だった。
「おや?それは……あの人間の神器ですか?」
「あぁ、バアルが消えた場所に落ちていた。全く、あの娘も運がないな。こんな物が宿ったばっかりに、悪魔や堕天使に狙われるとは……」
やはり人間界の神器は呪いだ。この“聖母の微笑”も珍しい回復系の神器と言われているが、これの所為であの娘は命を落とす事になった。何が回復系の神器だ?こんな物はただの呪いだ。
「どうするんですか?……それ」
「そうだな……後で考えるとしよう。そう言えばバアルの奴は“悪魔の駒”も持っていたな?どっかの馬鹿に悪用されないように回収してからアリス達と合流しよう」
「分かりました」
私とゼフォンは手分けして“悪魔の駒”を回収してから地下室を出る。礼拝堂へ続く階段を登り切ると、礼拝堂は見事なまでにボロボロになっており、アリス達は無事だった椅子に座って私達を待っていた。
「遅かったですね、ルシファー。何かあったのですか?」
「“悪魔の駒”の回収に手間取ってな。……ところで、神器を抜かれた娘はどうした?」
「彼女ならそこですよ。………もう長くはありませんが」
天草四郎は悲しげな表情で近くの椅子に寝かされている少女を見詰めた。
「そうか………ん?」
私は教会の外から近付いてくる複数の覚えがある気配を感じ、顔をしかめた。それは天草四郎、アリス、ゼフォンも同様だ。
「全く、黒歌の奴は何をしているんだ?帰ったら説教だな」
私が深い溜息を吐いた直後、既にボロボロだった教会の扉がバン!と乱暴に開かれ、5人の悪魔が現れた。