モンストD×D 〜我、堕天の王なり〜   作:☆桜椛★

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最後の辺りを少し書き変えました。


聖杯システム・アヴァロン起動

ルシファーside…

 

 

私は弱々しく返事をして気を失った女性悪魔を見ながら本当に間に合って良かったと安堵した。

かまいたちを見付けるのは思っていたより簡単だった。空を飛んで森を見下ろすと、一本の道が作られる様に次々と森の木々が切り倒されて行ったからだ。私はアヴァロンと一緒にその跡を辿っていたのだが、道中悪魔達の死体が7人分程転がっていたので、スピードを上げて跡を辿ると、この女性悪魔がかまいたちに襲われているのが目に入り、すぐにこの女性悪魔をバリアで守った。

かまいたちは自分の鎌を防がれたのが気に食わなかったらしく、私に向かって唸り声を上げて威嚇している。そして私がかまいたちに視線を向けると、かまいたちは私を攻撃して来た。だが嵐の様に襲い掛かってくる斬撃は全て甲高い音と共に私のバリアに防がれた。何度も繰り返しバリアを切りつけて来るかまいたちに、私は早く済ませる為にレーザーを放った。

だがかまいたちはまるで風の様な速さでそれを躱し、今度は高速で移動しながら斬撃を飛ばして来た。勿論全てバリアで防ぎながら再びレーザーを放つが、擦りはしても直撃しない。

これではかなり時間が掛かってしまう。

 

 

「面倒な奴だな。………なら」

 

 

私が指をパチン!と鳴らすと、私を中心に薄紫色の光の輪…エナジーサークルが現れ、かまいたちを周囲の木々ごと貫き両断した。周囲の木々はエナジーサークルが貫いた部分が綺麗に焼失してメキメキと音を立てながら地面に倒れ、かまいたちは光の粒子となって私が取り出した“小さな監獄”に吸い込まれていった。

そして全ての粒子が吸い込まれたのを確認して監獄を仕舞った時、タイミングよくアヴァロンが到着した。

 

 

「………ルシファー、早い」

 

「済まないアヴァロン。急がねばこの女悪魔がかまいたちに斬り殺される所だったのでな。………そうだ、アヴァロン。お前の能力で彼女を直してやってくれないか?」

 

 

アヴァロンは表情を変えること無くジッと私の足元に倒れて気を失っている女性悪魔の怪我を見てから私の方を向いてコクリと頷いた。

 

 

「………ん、分かった」

 

「感謝するぞ。帰ったらお前の好きなアップルケーキを作ってやろう」

 

「………頑張る」

 

 

心成しか嬉しそうな顔をしたアヴァロンは女性悪魔の側に歩み寄ると、ゆっくりと目を閉じた。するとアヴァロンの胸を貫く様に巨大な黄金の鍵が出現した。

 

 

「“聖杯システム”……アヴァロン治療システム起動」

 

 

アヴァロンが呟く様にそう言うと、彼女の背後に巨大なリンゴの様な赤い外殻の機械が出現した。元々アヴァロンは彼女の背後に出現したこの巨大な機械の事なのだ。このアヴァロンには傷付いた者を拾い、癒す習性がある。ある日昏睡状態だった少女を治療すると、未熟だった彼女の自我によって機械部分と自身の肉体との境界が不明瞭となり、一体化してしまったのが今の彼女だ。

以来その治療された少女…アヴァロンは、その高度な医療システムを搭載した戦闘古代兵器を自分の意思で操る事が出来るようになったのだ。

そして機械部分から多数の赤と青の人間の手の様なアームが伸びて、気を失った女性悪魔を抱き上げた。アヴァロンも機械部分の中心にある赤い手が作り出した椅子の上に座り、抱き上げられた女性悪魔をジッと見詰めた。

するとアヴァロンの胸を貫く黄金の鍵がもう1本出現し、女性悪魔の胸を貫いた。これが治療なのかと疑問に思うかもしれないが、あの黄金の鍵がアヴァロンが持つ医療器具なのだ。以前ライブの打ち上げ会で私がつい流れで絡んでくる酔っ払ったサタンを瀕死状態にした時、アヴァロンがあの鍵をサタンの胸に刺して治療した事がある。初めて見た時は私も目を見開いて驚愕したものだ。

 

 

「……むぅ、見た目より酷い傷。……治すには少し時間が掛かる」

 

「そうか、だが治るなら問題ない。ゆっくりやるといい」

 

 

アヴァロンはコクリと頷くと、女性悪魔の治療に集中した。あの怪我ではかなり時間が掛かりそうだったので、私は背後に神化ルシファーが座っていた玉座を出現させ、それに座って治療が完了するのを待った。

だが待っている内に段々睡魔が襲って来たので、私はゆっくりと目を閉じて睡魔に身を任せた。

 

 

 

 

 

 

アヴァロンside…

 

 

「スゥ……スゥ……」

 

「……ルシファー、寝ちゃった?」

 

 

私は女性悪魔の治療を続けながら、玉座に座って小さく寝息を立てるルシファーに視線を向けた。

彼女は私がモンスター界に生まれたばかりの時、自分の力を制御出来ずに暴走していた所を止めてもらってから、私を養子として引き取ってくれた私の大好きなお母さんだ。

普段は恥ずかしくて『お母さん』ではなく、『ルシファー』と普通に名前で呼んでいるけど、彼女がいない時にはいつも『お母さん』と呼んでいる。

 

 

「……起きてる時はカッコイイのに、寝ている時は可愛いわね」

 

 

普段あまり表情を顔に出さない私の顔に、自然と笑みが浮かぶのを感じる。このままジッと彼女を見ていたいけど、この女悪魔を早く治さなきゃ。

お母さんの料理はとっても美味しい。偶にお母さんと最近新しく家に住み始めたカインと一緒に外食をする時はあるけど、私はお母さんの料理の方が好きだ。

特に私が大好きなのは今回のご褒美のアップルケーキ。多分お母さんのアップルケーキの為ならこの冥界を滅ぼせると思う。

 

 

「な、なんだコイツは!?」

 

「……あ、悪魔だ」

 

 

後もう少しで女悪魔の治療が完了するという時に、空から沢山の悪魔達がやって来た。その中でも偉そうな悪魔が私達に順番に目を向けると、私の前……今治療している女悪魔で目が止まった。

 

 

「おい小娘、その女に何をしている?」

 

「……治療。治せばご褒美が貰えるの」

 

 

偉そうな悪魔に聞かれたから私は正直に答えた。するとその偉そうな悪魔が突然炎の塊を放って来たから、私は高速移動で回避する。自分ではよく分からないけれど、お母さんから見たら瞬間移動している様に見えるらしい。

 

 

「な!?は、速い!!」

 

「……どうして攻撃するの?私は何も悪い事はしていない筈」

 

「ふ、ふん!貴様がその女を治療しているからだ!その女を殺す邪魔をするならば、貴様とそこで寝ている女を殺す!さぁ、その女を渡せ!」

 

「……………」

 

 

私はその悪魔が言っている事を理解した瞬間、凄まじい殺意を感じた。今あの悪魔は何て言った?私のお母さんを殺すって言った?あの悪魔がお母さんを殺すイメージが全く湧かないけれど………私と、お母さんに害を及ぼす彼は絶対に排除する。

 

 

「……聖杯システム、アヴァロン第2形態起動。外敵排除システム起動」

 

『外敵排除システム起動。治療と並行して外敵を排除します』

 

 

私がアヴァロンの外敵排除システムと第2形態を起動させると、アヴァロンは左右に3つずつ巨大なアームを伸ばし、左側のアームが巨大な金の装飾が施された大剣を握り、右側のアームが巨大な黒い槍を握り締めた。

悪魔達はアヴァロンの形が変わった事に驚いている。

 

 

「な、なんだ!?変形したぞ!?」

 

「おい小娘!貴様何のつもりだ!!?」

 

「………貴方達は、私とルシファーの敵と判断した。よって、私は貴方達を排除する」

 

 

私の言葉を聞いた偉そうな悪魔は顔に青筋を浮かべて仲間に攻撃するよう命令した。多数の火の玉や雷の槍が私に向かって放たれたが、そんな物ではアヴァロンには傷1つ付く事はない。

私は無傷のアヴァロンを見て驚き動きを止めた悪魔を次々と槍で貫き、大剣で両断して行った。

 

 

「く、クソ!小娘を狙え!あのデカ物を操っているのはあのガキだ!」

 

「そ、それが…あのデカいのが速過ぎて攻撃が当たらないんですよ!」

 

「……迎撃システム。リワインドブラスター、起動」

ドドドドドドドドドドドドッ!!!

 

「ギャァァァァァァァ!!?」

 

「グワァァァァァ!!」

 

 

アヴァロンから64発の住複属性弾が悪魔達に向かって放たれた。放たれた住複属性弾は空中を逃げ惑う悪魔達を次々と撃ち落とし、遂に残りは仲間達が落ちて行くのを唖然と見ているあの偉そうな悪魔だけになった。

アヴァロンが大剣を振り上げると、我に返った悪魔が意味がよく分からない事を叫び始めた。

 

 

「ヒィ!?き、貴様!この私を殺す事がどういう事か分かっているのか!?私を殺せば旧魔王派の仲間達が黙ってn「……うるさい《 ザンッ!! 》」ガハッ!!?」

 

 

その悪魔はアヴァロンの大剣によって一刀両断された。私は他にも彼等の仲間が辺りに潜んでいないかアヴァロンに索敵させる。

 

 

『………周囲に敵対反応無し。外敵の全滅を確認。第2形態から第1形態へ移行。外敵排除システムを終了します』

 

「……お疲れ様、後は彼女の治療だけね………?」

 

 

私はアヴァロンに労いの言葉を掛けて治療の約98%が終わっている女悪魔に目を向けた時、ふと彼女の違和感に気付いた。さっきまで戦っていた悪魔達と同じ気配がしていたのに、今は何か違う物が混ざっている感じがする。

 

 

「………あ、しまった」

 

 

私が違和感の正体に気付いた時には既に遅く、丁度お母さんが目を覚ましてしまった。………どうしよう?

 

 

 

 

 

 

ルシファーside…

 

 

「はぁ……どうしたものか」

 

 

私の目の前で眠っている傷跡すら残っていない女性悪魔を見ながら悩んでいた。私が眠りから目覚めた頃には彼女の治療は終了し、寝ている間に襲撃して来た悪魔達はアヴァロンが全て倒していてくれた。

コレだけなら全く問題無いどころか完璧だったのだが、問題はこの眠っている女性悪魔の変化だ。

 

 

「まさか種族が変化してしまう(・・・・・・・・・・)とは……」

 

「……ごめんなさい、ルシファー」

 

 

アヴァロンは申し訳なさそうにペコリと頭を下げて謝って来た。確かに治療は成功したのだが、女性悪魔の種族が悪魔とモンスターのハーフになってしまったのだ。

原因はおそらく輸血に使用した血だ。アヴァロンは今回初めて外の世界の住人の治療を行った。そして治療の際、足りない彼女の血を輸血したのだが、この輸血で使用した血はモンスター界のモンスターの血だったようだ。

そしてアヴァロンの検査の結果、彼女は私達モンスターと外の世界の悪魔のハーフになってしまったらしい。

 

 

「これは、どうすればいいんだ……?」

 

「………う、うぅん」

 

「「ッ!!?」」

 

 

私が腕を組んでどうするか考えていると、件の彼女が目を覚ました。私達とは対の銀色に輝く長髪をしており、モデルさんの様な整った顔と容姿をした美女だ。

彼女はしばらくぼんやりと空を見上げていると、突然ガバッ!と体を起こし、自分の首や胴体を何かを確かめる様に触り始めた。

 

 

「い、生きてる?……夢?じゃ、ないわよね」

 

「目が覚めたか……具合はどうだ?」

 

 

私は目が覚めたばかりの彼女に話し掛けてみた。すると彼女は私達の方を向き、目を見開いた。

 

 

「ッ!!?あ、貴女は…さっきの?」

 

「あぁ、いきなりで済まないが……少しいいだろうか?」

 

「え?あ、はい…」

 

 

私は彼女に、かまいたちに襲われている所を助けた事、怪我が酷かった為アヴァロンの能力で治療した事、そしてその際事故で彼女の種族が変化してしまった事を話した。

彼女は黙って私達の話を聞き、口を開いた。

 

 

「そうですか……ちょっと不思議な感じですね。モンスターとは…」

 

「済まない。今回の事は全て私達の責任だ」

 

「いえいえ!滅相もありません!御2人のお陰で私は生きているんですから、感謝こそすれ恨みはしません」

 

 

彼女は笑顔でそう言ってくれた。過去に何度か仕事中に外の世界の悪魔と遭遇した事はあるが、彼女の様な悪魔は初めてだ。因みにそれ等は基本私に襲い掛かって来るのでエナサーで消した。

私とアヴァロンがちょっとホッとしていると、今度は彼女が質問して来た。

 

 

「ところで、私はこれからどうなるんでしょうか?」

 

「取り敢えず私達の住むモンスター界に一緒に来てもらう。最悪向こうに住まないといけなくなったら私が責任を持って家で預かろう」

 

「分かりました。私も出来れば貴女方に恩を返そうと思っていましたし、出来ればメイドとして雇って欲しいぐらいです」

 

 

メイドか……確かに彼女の服はボロボロになってはいるがメイド服だ。私としても彼女の願いを出来るだけ叶えるつもりだから、別に構わないな。

………少し複雑ではあるが。

 

 

「分かった雇おう。さて、早く行こう。また悪魔達が来ては面倒だからな………そういえば名前をまだ聞いていなかったな?」

 

「あぁ、申し遅れました。私はグレイフィア・ルキフグス。グレイフィアとお呼びください」

 

「グレイフィアか……いい名前だな。この子はアヴァロン。私はルシファーだ。呼びやすい言い方で呼んでくれ」

 

 

彼女は私の名前を聞くと少し驚いた表情を浮かべたが、すぐに「よろしくお願い致します。アヴァロン様。ルシファー様」と言って綺麗な一礼をした。

そして私とアヴァロンはグレイフィアを連れてモンスター界に帰還した。


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