if物語 藍染に成り代わった男   作:フ瑠ラン

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卍解のお話。さて藍染はいつ卍解を使う時がくるんだろうか…。名前考えたのはいいけどそこが一番問題だよね。


卍解

結論から言うと海燕は泣いて喜んでいた。本人はとても喜んでいた為よかったと思う。…まあその後俺は死んだんだけどね、色々と。

 

まず最初に死んだのは海燕の奥さん都さんはとても美しかったことだ。流石に弟子の嫁さんに惚れるなんてマネはしないが確かに海燕が惚れるのも分からなくはない。…いっちょ前にデキル奥さん捕まえやがって俺にもわけてくれコノヤロー。

 

次に死んだのはデロンデロンに酔った京楽隊長や海燕の後処理である。大声で歌うは酒ぶちかますわ、平子隊長があまりの五月蝿さでキレるわ、矢胴丸(やどうまる)副隊長が京楽隊長の両頬腫れるまで殴るわ、なんやらで兎に角大変だったのだ。どんちゃん騒ぎも限度を弁えてやって欲しいものである。

 

最後に死んだのは残っていた書類達だろうか。無理やり海燕の祝宴会に出たせいで、祝宴会が終わって家に帰ったら残業をやらなければいけなくなった。お陰でロクに睡眠をとることは出来ず現在五徹目である。

 

その五徹目でようやく書類の山を消すことに成功し俺は布団と言う安息領域で休みを取ろうと目を瞑った。勿論瞬殺で睡魔にやられた。

 

 

 

 

▼▲▼▲▼

 

「我が主、どうか返事をくださいまし。我が主」

 

「……ねぇ、五徹目なんだけど、俺」

 

 

斬魄刀『鏡花水月』に呼ばれ俺は頭をガシガシと掻きながら『鏡花水月』を見た。『鏡花水月』は悪いことをしたという意識はないらしく表情もふてぶてしい顔のままだった。

 

 

「質問よろしいでしょうか、我が主」

 

「早く寝たいからうん、いいよ。できれば簡単な質問でよろしく」

 

 

俺がそう言うと彼女は「では」と言って俺に聞いてきた。

 

 

「いつになったら私を使ってくれるのですか?名を呼んで貰える時をずっと待っていますのに一向に使ってくれる素振りすら見せないではありませんか」

 

「副隊長は滅多に虚退治とか行かないしね。主に隊長の世話か机仕事(デスクワーク)だし」

 

 

俺がそう言うと『鏡花水月』は頬を膨らませ言う。

 

 

「もういっそのこと尸魂界の反逆者となりましょうぞ。さすれば、主は私を使ってくださいましょう」

 

「いや、アンタ昔光の道がどうのこうの言ってたじゃん。悪用しないで欲しいとかなんとかさ。何自分から闇の道行っちゃってんの」

 

「それほどまでに私は名を呼んで欲しいのです」

 

 

そう言われても仕方ないと思う。よほどの事件が無い限りは副隊長が行くなんてないし暫くは無理な話である。

 

 

「ではこうしましょう、我が主」

 

 

『鏡花水月』はまるでいいことを思い付いたと言うように手をポンとし言った。

 

 

「卍解を覚える、と言うのは」

 

 

俺の目が点になったのが分かった。そして心の中で渦巻いた言葉は唯一つ。

 

 

「嫌だ」

 

 

俺は一言そう言う。すると『鏡花水月』の顔が驚愕の表情へと変わる。

 

 

「何故でありますか、我が主!!卍解とは即ち力を手に入れると言うことですよ!?誰もが目指す場所ではありませんか!!」

 

「それが嫌なんだよ!!卍解の修行して使えるようになってみろ!!誰かにバレたら隊長推薦されて無理やり隊長に隊長にされるのがオチだ!!唯でさえ副隊長の仕事で参ってるって言うのに虚に殺される前に事務に殺されるわ!!」

 

「大丈夫です!!我が主はそんなことでは死にませぬ!!さあ、修行を!!」

 

「一体何の根拠があって言ってるわけ!?」

 

 

卍解とは死神たちの中でも、選ばれた者だけが使用できる力。 死神の専用武器、斬魄刀の能力は通常であれば「対話と同調(精神世界で斬魄刀と対話をして信頼関係を築き、名前を知る)」を済ませて習得できる「始解」だけで引き出すことができる。 事実、死神で編成される部隊護廷十三隊の中でも副官以下の死神たちは、基本は始解しか習得していない。戦闘力としてはそれで十分と見なされるのだ。

 

始解で許される、即ち卍解は扱うことも習得することも難しく副隊長クラスでも出きるものは早々といない。それ故に卍解が出きるものは即戦力、隊長へと推薦されるのだ。

 

俺は副隊長のままで十分である。隊長になりたいなど一回も思ったことはない。隊長の事務がめんどくさいこともあるが一番は平子隊長の下でずっと働いていたいと思っているからだろうか。あんな人でも俺は尊敬し唯一無二の隊長なのである。

 

 

「隠しとけば万事解決でありますれば、主!!」

 

「嫌だ、嫌だ!何かポロっと出しちゃったりするかも知れないでしょ!!それに唯でさえ『鏡花水月』はチートなんだからこれ以上強くしなくていいって!!もうすでに敵無しだって、最強だって!!」

 

「卍解使えるようになったら呼んで貰える回数増えるかもしれませぬ!!少しの可能性がある限り私はその可能性に掛けます!!」

 

 

「少ない可能性に掛けても意味無いよ、無理だよ!」と言うのだがあっちは中々折れない。チクショウ、こちとら五徹目で無理やり呼ばれたって言うのに…。対話って寝た気がしないから嫌なんだよね。

 

え?いや、決して『鏡花水月』のことが嫌いって訳じゃ無いんだよ?唯、今は疲れてるって言うか…。

 

 

「わ、我が主は私のことが嫌いでありまするか」

 

「だから、違うって!!」

 

「なら卍解を覚えてくださいまし!!私を幸せの道へと連れていってくださいませ!!」

 

「卍解覚えても幸せの道なんて行けないって!待ってるのは幸せじゃなくて大量の事務作業と書類だよ!?地獄しか待ってないよ!!」

 

「ホラ!!我が主は私のことが嫌いなんですわ!!だからこうやって駄々を捏ねる!!」

 

 

シクシクと泣いた真似をする『鏡花水月』。その泣いた真似が無性にイラッとくる。……この斬魄刀めんどくさいなー(本音)。

 

 

「どっちかって言うと『鏡花水月』が俺のこと嫌いだろ!!明らかに過労死させようとしてんじゃん!!」

 

「人間、そんなヤワには作られておりませぬ!!さあ、目指せ卍解!!」

 

「目指してねぇよ!!目指す気も無いわ、アホ!!」

 

 

「アホ!!」と俺が言うと一瞬『鏡花水月』は動きを止めた。そして数秒後ワナワナと肩が震え始める。

 

 

「私は決してアホではありませぬ!!」

 

 

『鏡花水月』は涙目で言った。『鏡花水月』は意外と泣き虫らしい。と言うかそこまで俺に卍解を習得して欲しいのかよ。いい迷惑である。

 

 

「そもそも女と言うものは強いものに憧れ、恋愛感情を抱くもの!!我が主はカッコいい男になりたいのでしょう!?」

 

「………」

 

 

俺は俯く。『鏡花水月』に何も言い返せないからである。『鏡花水月』は更に言葉を続けた。

 

 

「卍解とは選ばれた者だけが習得できる力。それ即ち女子にモテ放題でありますれば故に。さあ、どうしましょうぞ我が主。覚えてはみませぬか、卍解を」

 

「……流石に今日は無理だが、明後日からならば!!」

 

 

俺は俯いた顔をあげ『鏡花水月』を見た。明日からは流石にキツいので明後日から。そうしないと俺の体が壊れる。確実に死ぬ自信があるからだ。

 

『鏡花水月』は嬉しそうに笑い「その言葉、待っておりました」と手を差し出してきた。俺は手を出し『鏡花水月』と熱い握手を交わす。

 

 

「(…意外とチョロいですわね、我が主)」

 

 

勿論、『鏡花水月』がそのような事を思っているなんて俺は知らない。って言うか知らなくていいよね。

 

 


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