if物語 藍染に成り代わった男   作:フ瑠ラン

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感想欄でアンケートをとっていたのですが、作者の勉強不足のせいで消されてしまう事態が発覚しました。アンケートに返答してくださった皆様、本当に申し訳ございませんでした。今現在からアンケートは活動報告でとりたいと思います。少々お手数ではありますが、活動報告から返答をよろしくお願いいたします。

本当に申し訳ございませんでした。心からお詫び申し上げます。


赤子とバケモノ

人気も何も無いところ。そこに赤子の鳴き声だけが鳴り響いていた。赤子が捨てられるなど流魂街ではよくあることである。赤子の不運と言えば集落で捨てられたのではなく、人里の離れた人気の無いところで捨てられた、と言うことだろう。

 

赤子の鳴き声が鳴り響く。しかし誰の耳にも届かない、そう思われていた。

 

 

「…赤ちゃん…」

 

 

赤子を見つけたのは顔に白い仮面を付けた(バケモノ)であった。(バケモノ)と言っても人形(ヒトガタ)(バケモノ)である。

 

そんな(バケモノ)は篭の中に入れられた赤子を見た。そして…赤子を拾ったのだ。赤子を。

 

 

「…小さな、生命(イノチ)……」

 

 

泣いている赤子をあやすかのように揺れる(バケモノ)。表情は無表情であるが故に少し恐い。しかし、そんな恐い顔を見て赤子は更に泣き出すかと思えば笑ったのだ。嬉しそうに、楽しそうに。(バケモノ)は赤子の持っていない片方の指を出す。すると赤子は可愛く笑い少量の力で指を握った。(バケモノ)も嬉しそうに笑った。

 

 

 

 

▼▲▼▲▼

 

「『――』様、見てくださいこれ」

 

 

「アイツがくれたんです」と沢山の果実を少女は差し出した。『――』と呼ばれた細身の男は無表情で果実を見、「そうか」とだけ言葉を漏らした。

 

 

「食べます?」

 

「要らん。この体は食事を欲さん」

 

 

「何度も言っているだろう」と男が言うと少女は「食べれないこともないでしょ?食べよう?」と負けじと食い付く。男は「はあ」とため息をつくと「一つだけだ」と赤い果実を取った。少女は嬉しそうに笑った。

 

 

「今日はどうだった」

 

「別に。いつも通り、アイツが五月蝿くて五月蝿くて」

 

「それでも楽しいんだろ」

 

「………」

 

 

男は果実を食べながら「友は大切にしろ」と言った。

 

 

「それ『――』様が言う?」

 

「………」

 

「私、知ってるよ。『――』様がどうしてここから離れないのか。皆が恐がってるからでしょ?」

 

 

「そのダサイお面が恐いんだよ、きっと」と少女は『――』についている仮面を指差した。男は顔についている仮面を触る。

 

 

「外せないんだ、これは」

 

「…邪魔じゃない?それ」

 

「慣れると案外いいものだよ。これも」

 

 

そう言うと男は窓から外を見た。外は曇天の空である。

 

 

「…嵐が来そうね」

 

「ああ」

 

 

男は静かに窓から目線をずらした。

 

 

 

▼▲▼▲▼

 

イタイ アカイ イヤダヨ シニタクナイ

 

コワイ クライ ヒトリハ シニタクナイ

 

タスケテ ダレカ タスケテ タスケテ

 

カナシイ マッカ クライ アカイ シニソウ

 

ウエテル うえてる 飢えてる 餓えてる

 

ホシイ タベタイ タベル? タベチャウ?

 

 

「私の体、使っていいよ」

 

 

ダレ? オマエ タベル? タベテイイ?

 

 

「うん、食べていい。もう、一人じゃ無いんだよ」

 

 

ジャア タベチャオウカナ

 

 

「貴方に拾われた時から薄々こうなる、って感じてた。だから後悔はないよ」

 

 

少女は小さな手を広げる。バケモノは唯それを見ていた。

 

 

「(本当はアイツともっと……)」

 

 

イタダキマス

 

 

少女はバケモノに食べられた。目映い光が少女達を中心に覆った。数分後、目映い光は消え失せ出てきてのは先程のバケモノではなく、先程よりも成長した少女だった。

 

 

「…生き、てる……」

 

『生キテ、ナイヨ。モウ死ンダヨ。ダッテ、俺ト融合シチャッタカラ』

 

 

何処からか聞こえる声を聞いて少女は「そう…」と言った。

 

 

「生きてるの楽しかった?」

 

『………楽シカッタヨ。アノ日、アンタを拾ッタ日ハ掛ケ替エノナイ日ダッタヨ』

 

 

その言葉を聞いて少女は嬉しそうに笑う。「そう、良かった」と。

 

 

「まだアイツといれるんだね」

 

『当分ハネ』

 

 

伸びた身長、伸びた髪、その他諸々を見て少女は顔を綻ばせる。

 

 

「随分と大人っぽくなっちゃった」

 

 

 

 

▼▲▼▲▼

 

「な、ななな、なんだよソレ!!身長伸びてね?髪伸びてね?」

 

「うん」

 

「何で!?一体1日で何があったわけ!?」

 

「…成長期?」

 

 

女の言葉に少年は「あり得ないでしょ!?」と言う。

 

 

「人間あり得ないことなんてないよ」

 

「だからってそんなに身長も髪も伸びねーよ!!てか俺も欲しいよ!!」

 

 

「うおおおお!!俺も身長欲しいいいいい!!」と頭を抱える少年を見て女はクスリと笑った。

 

 

「そう言えばよ」

 

 

少年は思い出したような顔で言った。

 

 

「俺、決めたんだ。死神なろうかな、って」

 

「何で?」

 

 

「カッコいいと思ったんだよ」と少年は言う。

 

 

「この前さ、大雨降ったじゃん。そん時、俺虚に襲われちまって。助けてくれたんだ。鬼道長が、こんな俺を。あの後ろ姿すげえカッコよくて、あんな人に俺もなりたいな、って」

 

 

「カッコいい男じゃないと許嫁のオマエに迷惑かけちまうだろ?」とイタズラをする時のような顔で少年は言った。

 

 

「なら私もなろうかな」

 

「は!?」

 

「脅威のスピード出世しようかな」

 

 

後ろで少年がごちゃごちゃと言っているが完全に無視を決め込んだ。

 

 

女は…いや、女の中に入っていたバケモノは笑った。

 

 

 

コレデ俺モ頂点ニ立テル

 

 


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