カランと下駄の歩く音、そして次にザッと草履の歩く音が2つ。
「お」
俺と隊長は歩いていたのだが、隊長が足を止め振り替える。思わず俺はため息をついた。これは長くなる、と。
「お――す。おはようさん」
「あ、おはよッス平子サン」
俺達の後ろを歩いていた一人、浦原隊長が隊長の言葉に返事をする。
「シンジでええ言うてるやろ。めんどいやっちゃな」
隊長の言葉に浦原隊長は「ハハハ」と笑う。そして隊長は浦原隊長から視線を外すと浦原隊長の後ろを歩いていた一人、
「おはようさんマユリ」
「余所余所しく涅と呼べといっているだろう。不愉快な男だネ…!」
「めんどいやっちゃなァ」
隊長はせっかく挨拶してやったのに、と口を尖らせ涅参席に文句を言った。隊長は話題を変えようとした。そうした、である。決して変えることは出来なかったのだ。
「そういや聞いたかオマエあの話」
「どの話ッスか?」
浦原隊長が平子隊長の話に食いついて来たにも関わらず平子隊長はぶっ飛んで言った。平子隊長の背中に渾身の蹴りが入った、と俺には見えた。音もズゴォといい音がした…ような気がする。と言うかいい音がした。隊長を蹴った人物に隊長は怒鳴る。
「何やねんひよ里いきなり!」
「ウチへの挨拶がまだやっ!!」
平子隊長を蹴り飛ばしたのは十二番隊副隊長の
「なんでオマエにアイサツせなあかんねん!!」
「あかんにきまっとるやろ流れ的に!一人だけアイサツせえへんて」
自分だけ仲間外れにされたことがかなり逆鱗に触れたようだ。猿柿副隊長は顔を真っ赤にして怒っている。
「ええんですー!俺は隊長オマエは副隊長!隊長のすることにイチイチ口出さんといてん…あ痛たたたたたァっ!!」
ドタンバタンと目の前で乱闘が起きているにも関わら浦原隊長も俺もいつも通り平然とした顔で立っている。て言うかいつも通り出し。これが日常です。そんな日常をBGMに俺は浦原隊長に話しかけた。
「そうだ浦原隊長。もう耳にされましたか?」
「何をッスか?」
「流魂街での変死事件についてです」
俺が浦原隊長に言うと平子隊長は猿柿副隊長との乱闘を一時中断し「それや俺が言いたかったんは!ナイスフォロー惣右介!!」と言った。
「変死事件?」
どうやら浦原隊長の耳には届いていなかったようで俺と隊長に説明を求めた。隊長は浦原隊長に説明する。
「せや。ここ一月程、流魂街の住人が消える事件が続発しとる。原因は不明や」
「消える?どこかへいなくなっちゃうってことッスか?」
浦原隊長の疑問を平子は「アホか」と言って一蹴する。
「それやったら蒸発て言うわ。ちゃうねん。
「生きたまま人の形を保てなく…?」
浦原隊長にはまだまだ疑問が残るようだが平子隊長にはそれが答えられる程の知識は持っていなかった。
「スマンなァ。俺も卯ノ花隊長に言われたことそのまま言うてるだけや。意味わからへん。ともかくそれの原因を調べる為に今、九番隊が調査に出とる」
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『緊急招集!緊急招集!各隊長は即時一番隊舎に集合願います!!九番隊に異常事態!九番隊隊長、六車拳西及び副隊長久南白の霊圧反応消失!それにより緊急の――』
事務作業に勤しんでいた俺と隊長は手を止めた。
「…この警鈴、ただ事じゃないなァ」
平子隊長は重たそうな腰を上げ、立ち上がる。
「嗚呼、嫌な予感がするわ」
「確か隊長の嫌な予感って中るんでしたよね」
昔の記憶を俺は掘り起こしながら言う。平子隊長は面倒そうに頭を掻き「そうや」と言った。
「サボりたいなァ」
「隊長、こんな緊急時にサボったら打ち首ですよ、多分」
「あ、打ち首よりも
「惣右介、ついてこい」
「はい」
▼▲▼▲▼
「火急である!前線の九番隊待機陣営からの報告によれば夜営中の同隊隊長・六車拳西、同副隊長・久南白の霊圧が消失。原因は不明!これは想定し得る限りの最悪の事態の一つである!昨日まで起きた単なる事件のは一つであったこの案件は護庭十三隊の誇りにかけて解決すべきものとなった!よってこれより隊長格5名を選抜しただちに現地へと向かってもらう!」
総隊長が全て言い終わると同時に浦原が到着した。浦原は自分に行かせて欲しいと頼むが却下され選ばれた5名は――。
――三番隊隊長、
――五番隊隊長、平子真子
――七番隊隊長、
――鬼道衆総帥大鬼道長、
――鬼道衆副局長、
話し合いの末、鬼道衆のトップ2を出すのはさすがにと言うことで握菱鉄裁の代わりに
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「嗚呼、嫌や。面倒や。何で選ばれてしもうたんや、俺」
「こんな嫌な予感、ぴんぴんしとる言うのに」と曇った空を隊長は走りながら見つめていた。
「…選ばれたものは仕方ありません」
「せやなァ。ここで文句言うてもしゃあないか。ちょっくら行って拳西達救って帰ってくるわ」
平子隊長はそう言うと少し走るスピードを緩めて言った。
「惣右介、隊長命令や。俺が帰ってくるまで…五番隊頼む」
「…俺も、ついて行き……!!」
「隊長命令や、惣右介。ほんま俺こない使うたくないねん。けどもし俺に何かあった時頼めるやつなんて、五番隊引っ張って行ける奴なんてオマエしか、惣右介しかおらんやろ。安心せぇ、俺が帰ってくるまでや」
「…………」
「頼んだで、惣右介」
隊長の隣を走っていた俺の頭をポンと隊長は乗せた。
「…お気を、つけて」
俺は走る足を止め、隊長に深くお辞儀をした。
……隊長が五番隊に帰ってくることはなかった。
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「平子隊長が…!!?そんなことある筈が……!!」
「口を慎め、藍染惣右介。副隊長のお主にこの場の発言権はない」
「!!」
「藍染惣右介」
中央四十六室。俺は虚と処分された平子隊長と繋がっている等と言い掛かりをつけられ、ここで裁判をしていた。
「判決は平子達は虚処分と言い渡す。そして貴様には五番隊隊長として、五番隊を纏めるのだ」
「なっ!?俺が平子隊長の代わりなんて」
「ええい!!黙れ!!これ以上口を開くと言うのなら貴様も追放することになるぞ!」
「………」
俺は静かにお辞儀をして出ていった。
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「…ホントだ。隊長の、嫌な予感…当たっちゃった」
「憎いなァ、この晴天が憎い」俺は憎たらしい晴天を見て呟いた。隊長は帰ってくるのだろうか。いや、帰ってくる。隊長は「帰ってくる」と俺に言った。信じて待つんだ。俺が信じなくてだれが信じるんだ。
「…だれがが帰ってくるまで、五番を俺が護るんだ。隊長の座は俺が」
俺は一人、自分に誓いを立てた。