if物語 藍染に成り代わった男   作:フ瑠ラン

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新作はこの作品を完結させるまで温めておこうと思います。この作品完結させたいですしね。さて、完結はいつになることやら……。


さあ、私を

「さあ、私を使ってくださいまし!!我が主!!」

 

「…ここのフォーメーションを、固めて…いや、それだとここががら空きに…んー、ギンを置いとけばどうにかなるかな……これで、んー」

 

 

つい先程まで隊首室で色々と考えていた俺。しかしいつの間にか精神世界へと来ており『鏡花水月』が無理やり連れてきたことは明白だった。

 

 

「無視は駄目ですわよ、主!!」

 

「…いや、参席君を……あー、駄目だ」

 

「主!!」

 

 

俺の右手に持っていた書類が『鏡花水月』に奪い取られる。無理やり奪ったのでその書類はビリッと嫌な音をたてた。

 

 

「あ」

 

「あ」

 

 

『鏡花水月』からポタポタと大量の冷や汗が流される。因みに今俺の眼は野獣の如くギラギラとしているだろう。

 

 

「あ、主…?話し合えば、分かる、筈ですわ…」

 

「かまちょも大概に……しやがれ!!!!」

 

 

ゴン!!と俺の鉄拳が『鏡花水月』の頭に当たった音がする。『鏡花水月』はあまりの痛さに泣き出した。チクショウ、俺だって泣きたいぜ。三時間の労力無駄にしやがって。

 

 

「で、何。何で今日は一段とウザいわけ」

 

「…主は動かないのでありますか?本命の敵が直ぐそこにいるのです。敵が殺せるチャンスでありまするよ!!さあ、私の名を呼び殺しましょうぞ!!」

 

「ムリ」

 

「何で!?」

 

 

ブーブーと大声で『鏡花水月』は俺に文句を言った。あまりの煩さに俺は手で耳を押さえながら言う。

 

 

「俺、隊長。副隊長時代よりも忙しいの。それに今は…尸魂界が凄い混乱してる。俺だって周りの隊長から監視されてる身なんだよ。下手なことは出来ねぇ」

 

「だからこそ、私の始解を使えば!!」

 

「仮にアイツを殺したとして、三番隊の隊長はどうするんだよ。また探すのか?あれ、結構大変なんだよ」

 

 

破けた書類の束を持って『鏡花水月』の頭をパシパシと叩く。

 

 

「では、尸魂界全員に催眠をかけ、本当は死んでるけど生きているように見せかければいいのでは?」

 

「それもムリ。まずあんな奴に労力をかける時間がない。それに俺はアイツのことなんて何一つ知らねぇからな。アイツのフリをするのもムリ」

 

「むぅ。普通に殺してしまえばそれが一番楽ですのに」

 

「お子ちゃまとは違ってな、大人には沢山の事情ってもんがあるんだよ。オマエわかってるか?俺、アイツの斬魄刀の能力何一つ知らねえんだよ。こっちの手の内も見せてはいないが、あっちだって何一つ手の内は見せてねぇ。今は冷戦状態が俺達にとっても一番のベスト。何もしないのが得策だ」

 

 

俺がそう言うと『鏡花水月』は黙り俯いた。

 

 

「…せっかく卍解を覚えましたのに…」

 

「無理やり覚えさせたの間違いだろ」

 

「いつ使う日が来るのでしょう」

 

「さあな。一生来ないんじゃね?」

 

 

俺がおちゃらけた口調で言うと怒った猫のように「シャー」と『鏡花水月』は俺に威嚇してきた。

 

 

「卍解を覚えさせれば、私の出番が増えると思っていましたのに!!全く増えないではありませぬか!!」

 

「ソウダネ」

 

「こんなにも私は頑張っていると言うのに!!」

 

「ソウダネ」

 

「ちょっと!!ちゃんと聞いてますの!?」

 

 

ホント、俺の斬魄刀ってめんどくせー。死ぬほどめんどくせー。てか、一回死んで矯正して貰いたいほどめんどくせーわ、うん。

 

……とりあえず、この破れた書類どうしよ。

 

 

 

▼▲▼▲▼

 

精神世界から戻るとどっと疲れが自分に降りかかって来たように感じた。思わず藍染はため息を付く。

 

 

「隊長の斬魄刀ってそないため息が付くほど難の有る斬魄刀なんか?」

 

「難が有るって言うか…兎に角面倒だね。名前呼べ呼べ五月蝿いんだ」

 

 

藍染が苦笑いしながら言うとギンは「色々大変やね」と言った。

 

 

「気分転換に外にでも出てきたらどうです?ずっと引きこもっとるからそうなるんよ、きっと」

 

「引きこもってるって言うか仕事してるだけなんだけどね」

 

 

藍染はそう言うと「そうしようかな。少し散歩に出掛けてくるよ」とギンに一言告げた。

 

 

「羽織、羽織っていかないんですか?」

 

「流魂街に行こうと思ってるからね。住民が畏縮しちゃ嫌だろ?」

 

 

隊首羽織を机に置くと念のため斬魄刀を持ち、隊舎を後にした。

 

 

 

▼▲▼▲▼

 

「ふぅ~、散歩生き返る~」

 

 

こった体を伸ばしながら俺は流魂街まで散歩に来ていた。隊長になってからと言うもの忙しすぎて散歩する時間がなく、今は丁度息抜きとして有意義な時間を過ごせていた。

 

さて、流魂街に来たのはいいけど一体どうしようか。ノープランで来ていた為、過ごし悩む。買い物もありだしそのまま散歩を続行するのもありだ。

 

そんな事を悩んでいると俺の前にフラフラと今にも倒れそうな黒髪の女の子が血相を変えて、まるで何かを探しているかのように歩いていた。顔色が悪い。きっと彼女は病を患っているのだろう。

 

彼女は俺の近くまで来ると倒れた。……ふぅ、間一髪セーフ。俺がキャッチ出来てなかったらこの子、地面とこんにちはするところだったよ。危ねぇなぁ。俺はこの子をつれて近くの宿屋まで行った。…言っておくけどこれ、誘拐とかじゃないから。俺、ロリコン違うから!!

 

宿屋につくと俺はこの子をすぐに布団の中へと入れた。パッと見だけど今のところ病はそんなに進行してなさそうだ。俺の回道で治せそうだな。

 

俺は霊術院の頃から回道が鬼道の中でも一番得意だった。それは今でも変わっていない。小さな命。目の前にいるそれは俺でもまだ助けられる命。助ける他に俺の中で選択肢はなかった。

 

この子にはこの子の何かの目的が有る。だからあんな血相を変えて歩いていたんだ。こんなところで病なんかで死んだらたまったもんじゃないだろう。…寝てる間に治しといてやるか。俺はこの子に暖かな回道の光を当て始めた。

 

 

 

▼▲▼▲▼

 

彼女が目を覚ます頃にはもう治療も終わっていた。うっすらと目を開けると目に入ってくる光が眩しかったのだろうか。彼女は目を細めた。暫く彼女はボーっとする。そして数秒後、俺を認識し、慌てた。

 

 

「!!」

 

「調子はどうだい?」

 

「え…」

 

 

自分の体が前よりも軽くなっていることに驚いたのか彼女は目を見開いていた。

 

 

「何故…」

 

「治したんだ、俺が。あんまり体を酷使しちゃ駄目だよ。小さい内の体って案外脆いんだ」

 

 

彼女は怒られていると勘違いをしたのか顔を俯かせて「すいません」と一言謝った。

 

 

「あんなに必死な顔をしてたんだ。何か目的が有るんだろ?その目的を成し遂げる前に死んだら元も子もないからね。大切に使いな」

 

 

俺は立ち上がり部屋から出ようとした。すると先ほどの子が「待ってください!!」と俺に声をかけた。

 

 

「名前を教えてもらえませんか?私は、私は緋真(ひさな)です!!緋真と言います!!」

 

 

俺は彼女――緋真の方へと振り替えると言った。

 

 

「名を教えるほどの者でもないよ」

 

 

きっともう、会うことはない。それに俺って色々有名だから風の噂やらなんやらで聞くだろう。

 

後に「名を教えるほどの者でもないよ」と言う言葉はタイムマシンで過去に帰って消したい言葉にランクインするのだが調子にのってる俺はまだ気づかない。

 

 

 

▼▲▼▲▼

 

体の調子から悪くても私は探すのをやめなかった。あの時、捨ててしまった妹。今さら妹を捨ててしまったことに後悔して探してるなんて…。

 

体が前よりも傾くのが分かった。倒れる。そう感じてももうすぐ抗う事をやめた。見つかりっこない、もう嫌だ。いっそ、このまま……。

 

冷たい地面とぶつかる覚悟をしていたのに、そんなことはなくて暖かい何かに包まれたような気がした。

 

目を覚ますと光が目に飛び込んできた。思わず私は目を細める。いつぶりだろうか。こんなに寝たのは。覚えていないけれど久しぶりのような気がする。

 

そして気がついた。隣に男の人がいることに。

 

 

「!!」

 

「調子はどうだい?」

 

「え…」

 

 

もうしかしてこの男と人は私を助けてくれたのだろうか。もしそうだとするのなら一番最初に思い浮かんだのは「何故」だった。

 

 

「何故…」

 

「治したんだ、俺が。あんまり体を酷使しちゃ駄目だよ。小さい内の体って案外脆いんだ」

 

 

この人はきっと優しい人なのだろう。流魂街にはこんな人は居ない。当たり前だ。流魂街では自分一人で生きることでも精一杯なのだから。

 

私が「すいません」と謝ると男の人は優しい笑みを浮かべた。

 

 

「あんなに必死な顔をしてたんだ。何か目的が有るんだろ?その目的を成し遂げる前に死んだら元も子もないからね。大切に使いな」

 

 

そう言うと男の人は立ち上がる。もう帰るつもりなのだろう。それを読み取った私は男の人を引き留めた。せめても名前を知りたいと思ったからだ。

 

 

「待ってください!!名前を教えてもらえませんか?私は、私は緋真です!!緋真と言います!!」

 

 

男の人はゆっくりと私の方へと振り替えると笑って言った。

 

 

「名を教えるほどの者でもないよ」

 

 

そう言って帰ってしまう後ろ姿を私はただ呆然と見るしかなかった。決めた。妹を探して、見つけたら次はあの人を探そう。容姿はしっかりと覚えた。あの人を見つけてそしてお団子の1つや2つで済むとは思っていないけれど、何かをおごってお礼を言おう。

 

私はあの人に救ってもらったこの命を大切に扱おうと心に誓った。この数日後私は運命の人と言える――朽木(くちき)白哉(びゃくや)さんと出会った。

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