たとえサンタが不法侵入してるジジイだとしても、子供の夢を叶えるオジサンなんて言ってるロリコンジジイでもこの際我慢する!!お願いだジジイ!!俺に、私に……ドラゴンボールくれェェエエ!!
「雛森桃です!不束者ですがよろしくお願いします!!」
黒い髪の毛を後ろでポニーテールに纏めた女性、五番隊新人の雛森は憧れの藍染を追って五番隊に入隊した。藍染は優しく雛森達新人を出迎えてくれ、尚且つ雛森の顔も覚えていた。その事が雛森にとっては舞い上がる程嬉しかった。勿論、藍染の目の前でそんなみっともない姿は見せてはいない。…ギンには見られたが。
「それでね!?それでね!!藍染隊長も優しいんだけど意外と市丸副隊長も優しいんだ!」
「お、おう……良かったな…」
休憩時間。どこかでお昼を取ろうと思っていた雛森は五番隊を出てぶらぶらとしていた。丁度その時、近くに阿散井が通った為、雛森が阿散井に話しかけると阿散井も丁度ご飯を食べに行くとのこと。どうせなら一緒に食べようとなり、今定食屋で雛森の藍染熱弁大会が開催されているのだ。
「阿散井君はどう?十一番隊に行ったんでしょ?」
「楽しいぜ。尊敬する人もできてよ、この隊に来て良かったって思ってる」
「そっかぁ~。…そう言えば吉良君は何番隊だっけ?」
雛森が阿散井に聞くと阿散井は「確か…」と少し考える素振りをした後「四番隊だったと思うぜ」と言った。
「アイツもあの時の市丸副隊長に惚れて五番隊志望してたらしいが…」
「え――!?そうだったの!?」
「し、知らなかった…」と雛森は小さく呟いた。
「(まァアイツ、雛森に明らかに好意を抱いてたからなァ。追っかけもあったんだろうけどよォ……)」
阿散井は水を飲みながらそんなことを考える。勿論口には出さない。流石の阿散井でもそんな野暮なことはしないのだ。逆に吉良は雛森から意識されている節が見当たらないのでエールを送っておく。
「でも確かに分かるよ、吉良君の気持ち。わたしもあの時の藍染隊長を見て尊敬し、自分の憧れの人にしたんだから」
これはまたヤバい方向に行き始めている。阿散井は若干身構えた。また、あの藍染熱弁が始まる、と。案の定そこから雛森の藍染熱弁が始まる。それを黙って聞いていた阿散井は雛森に気付かれないようにそっとため息を吐いたのだった。
――雛森、それさっきも聞いた
また阿散井はため息をつく。この熱弁が終わったのは中々帰ってこない雛森を心配した藍染がギンを寄越し、ギンが阿散井に熱弁している雛森を見つけるまで永遠と続くのだった。
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「本当にすいませんでした!市丸副隊長!!」
「わたし話に夢中でお昼休み終わってたことに気づかなくて……」と言った雛森にギンは「別にええよ」と言った。
「ちゃんと仕事してくれるなら五番隊は時間にルーズやから」
「はい!がんばります!!」
雛森は「よし」と呟くと両手で両頬を叩いた。それをギンは横目で見ている。鋭いギンは雛森に声をかけた。
「なァ雛森ちゃん」
「?何ですか?市丸副隊長」
「雛森ちゃんは始解、覚えたい思うん?」
ギンが雛森に聞くと雛森は「当たり前ですよ!!」と大きく頷いた。
「わたし、将来は藍染隊長の右腕…いや、右腕は市丸副隊長だから左腕になりたいんです」
「…左腕って……」
「近くで支えるならやっぱり力は必要不可欠になってきます。だから何れわたしは始解を覚えて、卍解は…分からないけれど、とにかく藍染隊長に力を貢献できるようになりたいんです!!」
と言った。ギンは「へェ~大層な夢持っとるなァ」と言うと「ならボクが力貸したろか?」と言った。
「へ…?」
「ボクが雛森ちゃんの始解を使えるために力貸してあげるわ」
「え、いいんですか…?」
「?ボクから言い出しとるのに悪いも何もあるわけないやろ」
ギンは「何言うとるんや?」みたいな顔をしながら言った。雛森は驚きのあまり目を見開いてパチパチと瞬きを数回する。そしてパァアと輝いた表情に変わる。
「ホントですか!?ありがとうございます!!」
まさか副隊長に手伝って貰えるなんて。雛森は歓喜の声をあげた。
「…でも何で急に……?」
「………雛森ちゃんなら……」
「え?」
ギンの「雛森ちゃんなら……」から何も聞こえなくなった雛森。雛森はギンに「すいません聞き逃しちゃいました。もう一度言って貰えますか?」と言った。するとギンはいつもの笑顔、いやいつもの笑顔とはまた違う何か違和感のある笑顔で言った。
「いや、そこまで良いこと言うとらんから聞かれとらんで良かったわ」
ギンは少し早歩きで行ってしまう。その場に残された雛森は訳がわからなかった。
『………雛森ちゃんなら……』
――ボクの代わりに隊長、任せられるやろ?
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新年を迎え、尸魂界には新しい顔が沢山増えた。勿論この五番隊にも沢山の新隊士が来てくれた。そして俺の中でもかなり印象に残っているのがこの子だ。
「藍染隊長!!本当にすみませんでした!!」
俺にものすごい勢いで頭を下げている彼女は雛森桃君。女の子なんだけどギンや京楽隊長みたいに気安くちゃん付けでは呼べないので君付けである。彼女も嫌がっている素振りはしていないためまあいいだろう。
「いや、そこまで謝らなくて大丈夫だよ?」
「とりあえず頭を上げてくれないかな?」と雛森君の頭を上げさせる。どうやら彼女は昼休みが終わったことに気づかなくて遅れてしまったことについてこんなに謝ってくれているみたいだ。何とも責任感の強い子である。…平子隊長に雛森君の爪の垢を煎じて飲ませてやりたいぐらいだ。
……俺としては雛森君が変な事件に絡まれていなかったようなので良かったと一安心。仕事を彼女はサボる性格はしていないと見込んでいるためそこまで怒らない。怒りよりも安心の方がかなり上回っている状況である。
そう言えば雛森君を探しにギンを向かわせたと思っていたんだけど…。
「雛森君、ギンは?」
「あれ?隊長会ってませんか?何か、急に早歩きで何処かへ行かれてしまったのでてっきり隊長に何か急用でもあったのかと思ってたんですけど……」
「…いや、会っていないね」
一体ギンは何処へ行ってしまったのだろうか。まあ仕事は粗方片付いていると言っていたし、雛森君とは違って男だからそこまで心配していない。少し時間が経てばフラッと帰って来るだろう。
ギンを怒らせてしまってたのだろうかと心配している雛森君の頭を一撫でして俺は言った。
「仕事頑張りなさい。雛森君」
「は、はいっ!!」
みるみる雛森君の顔が茹でタコのように真っ赤になっていく。…熱でもあるのだろうか。よし、雛森君の仕事少なめにしておこう。
とりあえず今年の新隊士のキャラが濃いことだけは確かなようだ。
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あの子がある程度成長するまでまだボクはここを離れる訳にはいかない――。