if物語 藍染に成り代わった男   作:フ瑠ラン

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将来の夢

「ねぇ、惣右介。アンタってさ、昔から学者になりたいって言ってたじゃない?今も…そう、思ってる?」

 

 

少年こと藍染惣右介に俺が成って早2日。目の前にいる榛巳は俺に聞いてきた。

 

…少年は学者になりたかったのか。確かに顔は頗る頭のよさそうな顔をしている。が、しかしである。俺はそんなに頭よくねぇぞ?机に向かって鉛筆やらシャーペンやらを持っているよりも外でかけっことかがしたい派である。

 

読書は好きだが勉強は嫌いだ。昔から俺は変わり者なのだ。

 

 

「私は、死神になりたい。死神になってバンバン(ホロウ)を倒すの。ねぇ、惣右介。私とさ、一緒に…死神になろうよ……?」

 

 

死神、とは…?あれか?なんか神話とかに出てくるあれか?黒いデカい鎌持って人間の魂を狙うあれか?……そもそも虚とはなんだね?バンバン倒すって言ってるぐらいだしやっぱり敵なんだよな?ううん?そもそも死神って何の味方だよ。

 

死神じたい俺は知らないのでうん、とも、ごめん、とも言えない。

 

 

「…何でそんなに死神になりたいんだ……?」

 

「何で、って。カッコいいし私の憧れだからよ。アンタが一番それを知っていたでしょう?少なからず…結右華(ゆうか)さんが生きてた時まで、アンタも……」

 

 

『結右華』とは誰だろうか?生きていた、と言うことは少なからず、今はもう死んでいるのだろう。

 

 

「アンタのお母さん…結右華さんは昔、四番隊の副隊長やってたもんね。お陰でアンタは回道の腕は一流だし、破道だって少しは使える。けれど結右華さんが死んでからは鍛練も何もしなくなった。けれど!アンタこの前、瞬歩使おうとしたよね!?死神になる気になったの!?」

 

 

お、おう…。俺の知りたいことをベラベラ喋ってくれるな榛巳よ。とりあえず『結右華』って言うのは少年の母親だったワケだ。何か副隊長やらなんやら…。意外に結右華さんって凄い人なんじゃね?だから少年もハイスペックなのか…。理解できるわ、うん。

 

 

「…死神じたいには興味はある」

 

「えっ、ホント!?」

 

 

ガシリと俺の肩を掴む榛巳。どれだけ俺を死神にしたいのか。それともそんなに死神が好きなのか。はたまたは両方なのか。…やはり女子の考えることは俺には解らんな。

 

因みに死神に興味があることは本当だ。榛巳の話を聞いている限り、死神って職業ぽいよな?そんな職業あったら入ってみたいと思うのは普通な筈だ。どんな職業なのか少し気になる。

 

 

「なら、私と一緒に修行しましょう!!惣右介と私なら、きっとなれるわ!!死神に!!目指せ隊長!!皆から尊敬される隊長になるのよっ!!」

 

 

榛巳は俺の肩を揺らしながら興奮したような感じで言った。とりあえず…酔うから止めて、榛巳。

 

 

 

 

▼▲▼▲▼

 

屋敷にある本を読んでいて気づいた。榛巳と少年はどうやら親戚らしいのだ。しかも少年も榛巳も貴族と言う…。ヤバすぎだろ。設定盛りすぎだって。

 

何?頭が良くて、イケメンで?更には貴族っていう金持ちで?更にはちょっと気の強い美人な幼なじみがいるって…なんだよ、頭も悪くて顔面偏差値もかなり下回ってて、更には貧乏人で美人な幼なじみもいない俺に自慢してんのかよコノヤローっ!!

 

この世は不公平である。俺は今、猛烈に泣きたい気分だ。…泣かないけどな。

 

因みに今俺は少年の母親こと結右華さんの部屋を漁っている。結右華さんは元死神らしいから関連の本が有るだろう。現に今見つけた。

 

 

『死神について』

 

 

黒い表紙に金色の文字でそう書いてある。この辺は随分随分と埃被っており、埃が部屋に充満する。咳き込む俺だが、俺は気にせず本を開く。本には黒装束に日本刀のような物をもった男の人と女性の写真がかかれていた。

 

 

『死神とは霊力の有るものがなる職業である。霊力の有るものは腹が減り、食べ物を食べていくことで成長していく。そのような者は真央霊術院(しんおうれいじゅついん)で死神としての学、力の扱い方を学び死神としての教育を受ける。真央霊術院で浅打(あさうち)をもらい、現世で魂魄の魂葬を行い虚を倒す。死神とは虚を倒し尸魂界(ソウル・ソサエティ)を護る者である』

 

 

…所謂あれか。ヒーローみたいな感じだろ?って言うかこの世界は尸魂界って言うんだな。初めて知ったわ。何か俺のいた所と全然違うから焦るわー。俺のいた所なんて死神なんて職業なかったし。浅打だっけ?そんなの持ってたら警察に捕まるわ。じゅーとーナントカってやつでね、うん。

 

こんなのに榛巳はなりたい、って言ってんのか…。危なくね?少なくともこの虚っていう写真見たら化け物だぜ?こんなのと戦うんだろ?やめた方がいいって。命いくつ会っても足りねーよこんなもん。死ぬって、確実に死ぬって。……頑張って榛巳止めさせねぇと。少なからず、榛巳は少年の知り合いであり大切な人なんだ。俺の目の前で死なれたら少年に会わせる顔がねぇ。女子は前線で戦うんじゃなくて後方で護られてろ。少年が(多分)護ってくれるから。

 

え?俺が護ってやらねぇのかって?ムリムリ。死ぬよ、確実にね、うん。確かに運動は好きだけど運動と戦は違うのよ。命かけてるから。俺は無謀なことはしない質なのっ!!

 

 

 

▼▲▼▲▼

 

惣右介と私は小さい頃からの付き合いだった。結右華さんのお兄ちゃんが私のお父様で、お父様と結右華さんはとても仲が良かった。それに、結右華さんは小さい頃から体が弱かった、って聞いてたしそのせいでお父様も更に結右華さんを気にかけるようにしてたのかもしれない。

 

私と惣右介は兄妹のように育ってきた。いつも隣には惣右介がいるのが当たり前。だから横に惣右介がいなくなったあの時期が私には信じられなかった。

 

結右華さんが死んで、惣右介は家に引きこもるようになった。昔はよく私と鬼道の練習とかしてたりしたのにそれも無くなって、私が家に行っても出て来てくれなかった。

 

でも、惣右介は強いから、私は信じてた。いつかきっと乗り越えてくれるって。案の定、惣右介は結右華さんのいなくなった悲しみを乗り越えて外に、私に会ってくれた。

 

そんな感動的な事があって約2年。惣右介が惣右介じゃなく感じた …違和感を感じるのだ。外見とかはそのままなんだけど「惣右介」って呼んでも一回じゃ振り返らないし、鬼道とか死神とかの話をしても全く解ってない顔ぶり。

 

惣右介は私よりも頭が良かったからすぐに可笑しいと気づいた。今だってその違和感を感じる。

 

 

「榛巳、死神絶対やめた方がいいよ」

 

「はぁ!?」

 

 

昔の惣右介はこんなことは言わなかった。私がやりたいって言えば「自分が後悔しない選択をすればいい」って言ってくれて大抵は了承してくれたし、昔の惣右介は死神になることも賛成してくれてた。

 

 

「…最近のアンタ、可笑しいわよ。昔はそんなことは言わなかったのに。変なモノ拾い食いでもしたの?」

 

 

惣右介の顔がギクリと動く。そのギクリは果たして拾い食いのギクリなのかはたまたは…私の可笑しいと言う言葉にギクリなのか。まあ、興味ないからどうでもいいんだけど。

 

 

 

 

▼▲▼▲▼

 

この生活にも慣れてきた。そりゃあもう五年も経っていればなれてくるだろう。時々、榛巳から怪訝な目で見られる事が多々あったが、全て無視を決め込んでやった。

 

3ヶ月後には噂の真央霊術院に入学する。俺はかなり必死に勉強して『縛道』やら『破道』やら『回道』やらを習得してやった。

 

因みに俺が一番信じられなかったのはこの少年のハイスペックさである。勉強も、鬼道全ても軽々と頭に入ってくる。昔の自分の体と比べると何もかもがランクアップしているのだ。

 

暗記能力もいいし、身体能力もいい。全てにおいて、オールエーを取れる程である。思わず俺は泣いた。虚しくなって泣いたとか違うから。格の差を見せつけられて虚しくなったとか違うからっ…!!

 

 

「んー、念のために森とかでやるわよ!」

 

「…了解」

 

 

現在は『縛道』と『回道』の苦手な榛巳の為に、森に向かっている。森で修行するのだ。

 

 

「…『破道』は得意なんだけどなぁ……」

 

「壊すことしか頭に入ってないんでしょ」

 

「ちょっと、どういう意味よ、それ!」

 

 

『破道』のポーズをとった榛巳を見て俺は直ぐ様平謝りをする。基本榛巳は莫迦だから上辺だけの謝罪も本謝りと勘違いしてすぐに許してくれるのだ。…チョロい、チョロ過ぎるよ、嬢ちゃん。

 

暫く、榛巳の苦手な場所を徹底的に練習していた頃。榛巳が大分ヘトヘトになってきたので、休憩をとることにした。

 

 

「彼処に座ろう」

 

 

大きな木の下を指差して俺は言った。榛巳も俺の意見に賛成のようで小さく頷く。俺と榛巳が木の元に腰掛けようとした時だった。

 

 

「グオオオオオオォォォォッ!!」

 

 

大きなドスの聞いた遠吠えのような声が聞こえる。それも…近い。

 

 

「惣右介っ!!」

 

 

ドン、と押される感覚がした。吹っ飛ぶ俺の体。大きな黒い何かが榛巳を掴んだ。そして数秒後には榛巳の赤い血が地面に落ちていく。

 

 

「え?」

 

 

全てが理解出来なかった。目の前にいるバケモノはなんだ。何故、赤い血が地面におちたんだ。榛巳の腹にはどうしてあんなに大きな穴が空いているんだ。

 

理解、出来なかった。

 

ボトリと重力に逆らえず落ちていく榛巳の体。俺は慌てて榛巳の元へと駆け寄った。榛巳はまだ意識が有るようで、俺に話しかけてきた。

 

 

「…よ、かった……惣右介、生きて、た、……。助け、ら、れた……」

 

 

青白くなった榛巳の白く細い腕が俺の頬を触る。その腕は段々と熱がなくなっていって冷たくなっているような気がした。

 

 

「わた、し…もう、ムリ、み、たい…」

 

 

力なく榛巳は笑うと俺に言った。

 

 

「………わたしの、分、まで……生きて、死神に……なって…………沢山、の、ヒト……助けて、あげ、………て…」

 

 

ガクンと力の抜けた榛巳の腕は落ちていく。榛巳はもう既に目を瞑っていて開けることはない。俺は悟った。

 

死んだんだ。

 

榛巳は、死んだんだ。

 

あの、黒いバケモノに、殺されて、死んでいった。あれだけなりたいと言っていた死神を俺に託して榛巳は死んでいった。怒りと悲しみが混じりあって何がなんだか解らなくなった。

 

気づいた時には赤い血の池の上に俺は立っていた。黒いバケモノは消えていた。

 

 

 

 

 

▼▲▼▲▼

 

榛巳の葬式では誰も俺を責める人はいなかった。逆に皆口を合わせて「惣右介だけでも生きていて良かった」と言った。

 

 

「…惣右介くん」

 

 

榛巳の葬式が終わって数週間が経ったある日。榛巳の父さんが少年の家に訪ねてきた。家に出迎えて俺はお茶を出す。

 

榛巳の父さんは真剣な眼差しで俺を見つめ、言った。

 

 

「惣右介くんは死神になる気はあるのかい?」

 

「なりますよ、死神」

 

 

即答だった。

 

 

「榛巳が、俺…私に託した最後の言葉、だったから」

 

 

俺がそう言うと榛巳の父さんは「そうか」と笑った。何故、笑えるのだろうか。最愛の娘を亡くしたにも関わらず笑えている榛巳の父さんの考えが俺には解らない。

 

 

「…榛巳は生きているよ。少なくとも、私や惣右介くんの心の中に。榛巳の意志を継いでくれる惣右介くんがいて安心した。私は惣右介くんを応援するよ」

 

 

榛巳の父さんは俺の肩に手を置いて「榛巳の分まで沢山の困った人を助けてあげてくれ」と言った。俺は強く頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




~オマケ~

榛巳父「惣右介くん、一人称の「私」はやめた方がいいと思うよ」

俺「え、何でですか…?」

榛巳父「若い子が「私」なんか使っていると壁を感じるからね。友達100人できるまではやめておいた方がいい」

俺「(友達100人って……小学生かよ……)」








更新遅くなってしまってすみませんでした!ほんとうに忙しくて更新は更に不定期になると思います!すみません!!
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