if物語 藍染に成り代わった男   作:フ瑠ラン

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風邪引いてました。おかげで今も咳が止まらない常態が続いてる…。更新しようにも体重いし、頭痛いし、やる気でないし。次はできるだけ早めに更新できるように頑張ります。


志波海燕

「あ、藍染隊長お久しぶりッス!」

 

 

片腕を上げて走って来るのは、弟子(?)の一人、志波海燕だった。海燕は遠目から見ても分かる程疲れきった顔をしていた。

 

 

「どうしたんだい?そんなに疲れた顔をして」

 

 

俺が海燕に聞くと海燕は思い当たる節があるのか「あー…」と少し目線を上げ、ガシガシと乱暴に頭を掻き始めた。そして暫く目を合わせないと思ったら急に「実は…」と話始めた。

 

 

「…十三番隊にも新しい隊士が入ったんス。でもその隊士が…」

 

 

話を要約するとその隊士とは朽木(クチキ)家の養子の子らしく、朽木家と上手くいってない他に変に肩に力を入れ、十三番隊にも馴染めてないと言う。

 

 

「…どうしたらいいですかねェ……」

 

「どうしたらって、君が上司なんだから君が歩み寄るしかないでしょ」

 

「歩み寄る…」

 

「自分から歩み寄らないと駄目だよ。あっちから心開いてくれるなんて早々ないんだから」

 

 

そう海燕に告げると海燕は嬉しそうに「ありがとうございました!!」とお辞儀をしていた。

 

 

「うっし、行くぞッ!!」

 

 

どうやら何か吹っ切れたようである。

 

 

 

▼▲▼▲▼

 

何処もかしこも息の詰まる場所ばかりだった。六番隊隊長 朽木白哉様の奥方、緋真様に似ていると言う理由で養子に迎え入れられた。

 

しかし、私には朽木家が合う筈が無かったのだ。私は元々流魂街出身の身。貴族など合う筈がない。現に奥方、緋真様には数回程しか会ったことがなく、白哉様には何か壁を感じてしまう。

 

そんな中、私は真央霊術院を卒業し護廷十三隊 十三番隊へと所属することになった。席官入りすることは私の実力じゃ到底できず、知り合いも居ないため話し相手も居ない。白哉様を呆れさせ、友を作ることも出来ない。どこにいても息が詰まり休みをとっていても碌に取れている気がしなかった。

 

 

「な――に――辛気臭えカオしてんだオメーは!」

 

「ひい…!」

 

 

急に木の上からぶら下がって出てきた海燕殿を見て私は悲鳴を小さくあげる。…全く気配を感じなかった……。

 

 

「なんかオメー毎回俺に会うたびに「ひい!」って言ってんな…軽くキズつくぜ…」

 

 

ちょっとキレ気味に海燕殿は言うと「ホレ、オメーの分だ飲め!」と水を渡してきた。私はそれを大人しく受け取り、水を飲もうとする。そんな私の姿を見て海燕殿が急に語り始めた。

 

 

「…オメーのことだ。何でヘコんでんのかなんて訊いても答えやしねぇだろうが…忘れんな。オメーがこの隊にいる限り俺は死んでもオメーの味方だ」

 

 

何処を見つめているのか分からない海燕殿が言った。

 

素直に、格好いいと思った。そんなことを真っ直ぐと言える、彼が。彼なら本当にしそうでそれがまた凄いと思った。それに…嬉しかった。最近は何かと私のことを気にかけてくれる彼。最初は私が曲がりなりにも朽木家の者だからだと思っていたのだが、どうやら違うようで、本気で私のことを心配してくれているのだ。

 

「格好いい」そう言おうとした。けどそれは海燕殿の耳に届く前に酒を勝手に飲んで酔った虎徹さんと小椿さんに邪魔された。今現在二人は海燕殿にウザがらみをしている最中である。

 

小椿さんが私に何か言ってくれているが志波隊長が全て「ウザイ」で片付けてしまった。そして最後にはキレた海燕殿に「休憩終了」を言い伝えられた。

 

海燕殿の隣は心地好かった。あの息苦しさが忘れられるぐらいに心地好かった。そんな海燕殿には妻がいた。女の身で第三席にまで上りつめた女傑でありながら聡明で優しく、美しかった。憧れた。あんな風になりたいと思った。私の、理想だった。

 

そんな彼女が任務をすぐに諦め、仲間を連れて焦った表情で帰って来た。私は焦った彼女の顔を暫くは忘れることができないだろう。

 

 

「海燕ッ!!」

 

「都!!」

 

 

あまりの慌てぶりに海燕殿が近寄る。都殿は海燕殿に詳しい事情を話そうとするが、息があがっており、中々話すことができない。

 

 

「藍、染……隊長、が…これ、をッ…!!」

 

 

都殿が懐から出したのはクシャクシャとなった紙だった。海燕殿は都殿から紙を受け取り、読み始める。

 

 

『彼女達の部隊では僕が無理だと判断した。虚は僕が倒しておくから』

 

 

簡潔にそう書かれた紙を見て海燕殿は目を見開いた。

 

 

「…あの人が助けてくれたのか」

 

 

ようやく息が整った都殿は言う。

 

 

「最初は偶然だったの。散歩中の藍染隊長に会って、少し話をしたら藍染隊長もついていくって。止めたんだけど、大丈夫の一点張り。だからやむ終えなく連れていったら……」

 

「助けられたのか」

 

「ええ。虚と戦闘になって、殺されそうになった瞬間藍染隊長が出てきたの。そして私にこの紙を渡すように告げられて、撤収命令も告げられた。藍染隊長は十三番隊の隊長じゃないけれど、あの人も隊長。隊長の判断は絶対。だから私は部下を連れて帰って来たの」

 

 

都殿がそう言うと海燕殿は「そうか」と言った。そして俯いていた顔を上げ、都殿に抱きつく。

 

 

「生きていて、良かった。都」

 

「藍染隊長のお陰よ」

 

「あの人に礼しなきゃな」

 

 

海燕殿は都殿を愛していた。今見ての通りだ。都殿が羨ましかった。どんな手段を使おうとも、生きて帰りその生還を喜ばれる彼女が。きっと私ならそうはいかないだろう。朽木家の名に泥を塗り、そして白哉様からは冷たい眼差しを向けられるに違いない。周りに力を認められていない所詮私のような者は一人誰にも気付かれぬよう死んでいくのが運命(さだめ)だろう。

 

 

 

▼▲▼▲▼

 

メタスタシアと言う名の虚を倒した俺は一人五番隊に帰っていた。暇だったので丁度会った都さんに無理を言ってついてきたのだがそれが良かったらしい。参席の彼女でもあれは力の差が歴然だった。まあ俺のチートと言っても過言ではない『鏡花水月』を使えばどうってこともない相手であったが。

 

余談だが俺に久しぶりに名を呼んでもらえた『鏡花水月』は凄くうるさかった。俺が思わず『鏡花水月』の刃をへし折りそうになるぐらいには。

 

閑話休題

 

五番隊に帰ると一人の隊士が走ってこちらに向かってきた。

 

 

「隊長!」

 

「どうしたんだい?」

 

「客室にお客様が来ております」

 

 

お客様?一体誰だろう。ギンなんかが五番隊に来たら客室なんかには通されないだろうし海燕もそうだろう。しかもお客様って。丁寧な言い方だなぁ。でもせめて名前教えて欲しかったな。

 

客室に行くとそれはまた珍しい客がいた。

 

 

「君は朽木隊長じゃないか…」

 

「急に押し掛けた。済まぬ」

 

「いや、大丈夫だが…」

 

 

頭を下げてきた彼に俺は「大丈夫」と伝えると頭を上げた朽木隊長は言った。

 

 

「家に来てはくれないだろうか」

 

「は?」

 

 

思わず素を出してしまった俺は悪くない。

 

 

 

▼▲▼▲▼

 

「隊長をなされてたんですね」

 

「…えーと……」

 

 

何処か見覚えのある彼女、名は緋真と言うらしいのだがその子がずっと俺に礼を告げていた。理由を聞くとどうやら俺は命の恩人らしい。……え?俺が?

 

全く信じられない話ではあるが彼女がずっとお礼を言ってきているのだからきっとそうなのだろう。彼女の気が済むまでお礼を言わせたい朽木隊長の気持ちは分かるが正直やめて欲しい。なので俺は彼女に「お礼はもういいよ」と言った。

 

 

「藍染様のおかげで私は妹を見つけることができ、今もこうやって命長らえております。礼を言っても言っても足りない所存です」

 

「えーと……そこまで…?」

 

 

「だからお礼を言わせてください」と言う彼女を慌てて止めていたら誰かが帰って来たようだ。「只今帰りました、兄様、姉様」と聞こえる。朽木隊長は「そうか」と一言告げる。すると近くにあった気配は静かに消えていった。

 

 

「さっきのが例の妹さんかな?」

 

「…ええ」

 

 

どうやら家族仲筈が良好ではないようだ。彼女の暗い表情がそれを表していた。

 

 

「白哉様に無理を言ってルキアを朽木家に迎えてもらったのはいいのですがどうやって接すればいいのかわからなくて…顔も見れない状態なのです」

 

 

「それに白哉様は…」と言って彼女はチラッと朽木隊長を見る。

 

 

「ご存知のように口下手で…。きっとあの子には息苦しくて仕方のない場所なのでしょう」

 

 

悲しそうな顔をして彼女は言った。

 

 

「とりあえずは世間話でもしてみたらどうだろうか?」

 

「え…?」

 

「1日一回でもいいから何か会話をすればいいんだよ。そうしていく内に慣れる。そうすれば君の妹さんだって心を開いてくれる筈さ」

 

「……世間話…」

 

 

何か1日あった出来事等でも何でもいい。少しずつ、少しずつ話をしていけば慣れる。人類は万能に作られている訳である。

 

 

「ありがとうございます」

 

「いや、礼に及びはしないよ」

 

 

時間を見るとそろそろいい時間だった為、おいとまさせてもらうことにした。

 

 

「本当にありがとうございました」

 

 

彼女のお辞儀はとても深かった。

 

 

 

▼▲▼▲▼

 

「藍染隊長!!都を助けてくれてありがとうございますッ!!」

 

 

どうやら今日は沢山お礼を言われる記念日かなんからしい。土下座をして礼を言ってくる海燕を見て俺はそう思った。

 

 

「土下座はやめてくれ。恥ずかしいから」

 

「いや、こうでもしないと俺の気が済みません!!」

 

「もう一度言うよ。恥ずかしいからやめて」

 

 

冷たい眼差しで見ていると海燕は慌てたように土下座をやめた。

 

 

「都が死んでたら俺は多分仇討ちに、死にに行ってたと思うんです。だから、本当に」

 

「君、前に言ってたよね。部下の話」

 

「へ……?朽木のことッスか…?」

 

 

どうやら十三番隊の新隊士とは朽木ルキアのことだったらしい。丁度良かった。

 

 

「そこまで礼を言うなら、そのルキアって子を見捨てちゃ駄目だよ。彼女に歩み寄るんだちゃんと上司としてね」

 

「そりゃわかってます!!」

 

「死んだら駄目だよ」

 

 

俺がそう言うと海燕はポカンと口を開けた。

 

 

「さっき君は言ったよね。都さんが死んでたら自分も死にに行ってたって。それは駄目だよ。君には慕ってくれる上司も部下もいる。まだ部下の心も開けてない奴が全てを捨てて死ににいくつもりなんて大バカだ。心を開くどころかトラウマものだよ。誇りやらなんやらを言う前に、周りを見て本当に都さんが君の後追いを言うなら望んでいるのか一度冷静に考えなくちゃいけない。君の悪いところはカッとなると回りが見えなくなることだ」

 

「本当に、ありがとうございます!」

 

 

何故か礼を言われてしまった。が、言いたいことは言ったのでいいだろう。

 

 

「そろそろ帰りなさい。都さんが待っているよ」

 

「はい!」

 

 

……リア充滅びろ。嬉しそうな海燕の後ろ姿を見て密かに俺はそう思った。

 

 

 




…あれ?なんかルキア暗くね?
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