「さあ、見せてちょうだいウルキオラ。貴方が現世で見たもの、感じたことの全てを」
皇が膝まついているウルキオラを上から見下したような感じで言った。ウルキオラは何も言い返すことなく「はい」と返事をすると自分の左目を割った。
全ての映像を見終わった皇は「…なるほど」と一言呟く。
「それで彼を『この程度では殺す価値無し』と判断したのね」
「はい」
ウルキオラが返事をすると「
「こんな奴等俺なら最初の一撃で殺してるぜ」
そう言ったのはグリムジョーと言う男。右口元に仮面を残した
「理屈がどうだろうが『殺せ』って一言が命令に入ってんなら殺した方がいいに決まってんだろうが!」
「同感だな」
「いずれにしろ敵だ。殺す価値は無くとも生かす価値は更に無い」
グリムジョーの後ろに立っていた
「大体ヤミー!テメーはボコボコにやられてんじゃねえか!!それで「殺す価値無し」とか言っても「殺せませんでした」にしか聞こえねーよ!」
グリムジョーが言うとヤミーはグリムジョーを睨み付けながら言った。
「…てめえグリムジョー。今の視てなかったのかよ。俺がやられたのはゲタの男と黒い女だ。このガキじゃねえ」
「わかんねえ奴だな。俺ならその二人も一撃で殺すっつッてんだよ!」
グリムジョーの挑発に乗ったヤミーは「…なんだと?」と言いながら立ち上がる。それを見たウルキオラがヤミーを止める。
「…グリムジョー、我々にとって問題なのは今のこいつじゃ無いってことは分かるか?」
「あ?」
「皇様が警戒されているのは現在のこいつではなくこいつの成長率だ。確かに潜在能力は相当のものだった。だが、その大きさに不釣合いな程不安定でこのまま放っておけば自滅する可能性もこちらの手駒に出来る可能性も在ると俺は踏んだ。だから殺さず帰ってきたんだ」
ウルキオラがそう言うとグリムジョーは怒りを含んだ眼差しでウルキオラを睨み付ける。
「それが
グリムジョーの言っていることは正論だった。が、ウルキオラはグリムジョーの言葉を聞いても慌てることなく冷静にまるで本当に出来るかのように言った。
「その時は俺が始末するさ」
どうやらウルキオラはそこまで自分の力に自信があるらしい。
「…………」
「それで文句は無いだろう」
ウルキオラの言葉一つ一つがグリムジョーの怒りを買っていく。ウルキオラの言葉を聞いた皇は面白そうに笑って言った。
「そうね。それで構わないわ。貴方の好きにしなさい、ウルキオラ」
「ありがとうございます」
▼▲▼▲▼
「チィ!!!」
グリムジョーは大きく舌打ちをすると側にあった椅子を蹴り倒した。
「随分ご機嫌ナナメだねえ!グリムジョー!!」
グリムジョーの近くにいた金髪の女がケラケラと嗤う。グリムジョーはその笑い声に苛ついたのか金髪の女の胸ぐらを掴むと「あ?文句でもあんのか」とドスのきいた声で言った。
「姐様!!」
金髪の女の後ろでおどおどとしていた黒髪の女。しかし金髪の女が胸ぐらを捕まれると慌てたようにして駆け寄る。その姿を金髪の女が横目で見ると「別にこれぐらい大丈夫、大丈夫!!」と明るく言った。
「元数字持ちの
「そうよ。彼女結構強いんだあ!」
ニコリと嗤って言う彼女の姿を見て嫌気がさしたのかグリムジョーは手を離す。金髪の女は少し身だしなみを整えるぐらいでどうやら胸ぐらを捕まれたことは気にしていないらしい。
「ねえねえ、グリムジョー!現世に行くつもり?」
「だったら何だって言うんだよ」
「じゃあこの子も連れていってあげてよ!!」
金髪の女は黒髪の女をグリムジョーに見せる。グリムジョーは一瞬黒髪の女に視線を移すと鼻で嗤った。
「ハッ、誰がそんな奴連れて行くかよ」
「え~、彼女強いよ?」
「絶対ェ連れて行かねぇ」
グリムジョーがそう言うと金髪の女は駄々を捏ねる子供のように「お願い、お願い」と言う。
「だったらてめえが連れていけばいいじゃねぇか」
「それはムリ。ぼくまでついていったら意味がないんだ」
「はあ?」
「だから頼むよ~!」とグリムジョーに懇願する金髪の女。あまりのウザさに遂にグリムジョーが折れた。
「ウゼエ。連れていってやってもいいが…邪魔したら
金髪の女はグリムジョーの言葉に「いいよ」と言った。
「彼女もそこまで莫迦じゃないさ」
▼▲▼▲▼
「姐様……」
グリムジョー達と一旦別れた後、黒髪の女が不安そうに金髪の女を呼ぶ。金髪の女は歩く足を止め、後ろを歩いていた黒髪の女の顔を見るためか振り向いて「何だい?」と聞いた。
「何故私を現世に?」
「ああ」
質問の意図がわかったのか金髪の女は頷くと黒髪の女に向かって言った。
「そろそろ
黒髪の女がおどおどと頷く。それを見た金髪の女は嬉しそうに嗤うと言った。
「なら沢山食べてくるといい。特に強い奴を狙うんだ。グリムジョーとか破面は食べちゃダメ。後、グリムジョーが気になってたあのオレンジの死神も食べちゃダメ」
「フュズィオンが殺されちゃうからね」
黒髪の女もと言いフュズィオンは金髪の女に言われたことを忘れないように頭に叩き込みながら頷く。
「後、無いとは思うけれど死にそうになったら逃げるんだよ。ぼくはフュズィオンに死なれると
「大丈夫です。私は――死にません」
フュズィオンの強い意思を聞いて金髪の女は嗤った。
「そう。じゃあ――行っておいで」
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三日月の夜。空に数名の破面が現世に舞い降りた。
「あの女以外誰にも見られてねぇだろうな」
「無論だ」
一人の破面が肯定すると共に「ウルキオラの報告と一致しない」と言った。
「複数の強い霊圧を感じます」
黒髪の女が言った。グリムジョーは苛立った顔で舌打ちをすると「
「…思った通りだ…メチャメチャ増えてやがる…!尸魂界から援軍を呼びやがったか…ゴタク並べてねェで
グリムジョーは苛立った顔から呆れた顔に変わる。グリムジョーは立ち上がると一人一人の名を呼んでいく。
「ディ・ロイ」
「シャウロン」
「エドラド」
「イールフォルト」
「ナキーム」
「……フュズィオン」
「行くぜ」
下の街を、死神達がいる方向を見つめながらグリムジョーは言う。
「遠慮も区別も必要無え。少しでも霊圧の在る奴は…一匹残らず皆殺しだ」
グリムジョーの命令に破面の皆が返事を返した。