「全員捕捉は完了したか?」
グリムジョーはこれからの戦いに思いを馳せながら言う。
「行くぜ、一匹たりとも逃がすんじゃねえぞ!!」
グリムジョーのその言葉を最後に破面は各自散らばる。強大な霊圧を放ちながら――。
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「おい、市丸…」
「どうやら敵さんはボク等を休ませてはくれんみたいですね」
先ほどまで日番谷の横で寝ていたギンだが強大な霊圧を感じて目を覚ます。日番谷とギンは懐から飴のようなものを取り出すと口の中に入れた。すると
「怪我しねえ場所に逃げとけ!」
「はい!」
「んー…あんまやんちゃはやらかさんといてね」
「そんなん言われなくてもわかっとるわ~」
日番谷とギンが義骸が走り去っていくのを見送っていると死覇装を着た乱菊がやって来た。どうやら義骸はもう脱いでいるらしい。
「隊長!ギン!」
乱菊の声を聞いた日番谷は乱菊に問う。
「井上織姫は?」
「戦闘に参加させないよう下で義骸に見張らせてます」
「そうか」
「確かにそうでもしとかんと、あの子戦いそうやね」
ギンが笑いながら言った。日番谷はずっと空を見つめている。暫くすると日番谷は少し緊張した様子で言った。
「おい、市丸、松本。…構えろ、来たぜ」
日番谷、乱菊、ギンの前に現れた破面は三人。それもかなりのスピードで現れた為、日番谷達は目を見開く。
「…初めまして」
破面が一言そう言うと日番谷に攻撃を仕掛ける。日番谷は咄嗟に斬魄刀『氷輪丸』を鞘から抜くと破面の攻撃を受け止める。
ギンが加勢に入ろうとする。するとそれを見た破面がギンをおもいっきり蹴り飛ばした。ギンはものすごい早さで飛んでいく。それを見た乱菊がギンの名前を呼ぶがギンの返事は帰ってこない。
「ギン!!」
「貴方の相手は私です」
破面は一言そう言うとギンが吹っ飛んで行った方向へ向かっていく。
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「(吹っ飛ばされただけ…。軽症の怪我すらしとらん。ボクを乱菊達から離れさせるのが目的か……)」
吹っ飛ばされる直前、ギンは腕でガードをした。しかし破面の蹴りの威力を抑えることは出来なかったのか織姫の家からかなり遠く離れた場所まで吹っ飛ばされてしまっていた。
吹っ飛ばされてもギンは焦ることなくない冷静に相手を分析する。
「…どうも」
破面がギンの前に姿を現した。この破面は律儀なのかわざわざお辞儀までする。
「…えっと…現世では戦う前に自分の名を名乗るのが主流だと聞きました。――我が名はフュズィオン。とある女性の従属官をさせていただいています」
「わざわざ名乗ってくれるんや。なら
ニコニコと自分の考えていることは顔に出さずギンが言うとフュズィオンは「御丁寧にありがとうございます」と頭を下げた。
「先ほどは蹴り飛ばしてしまい申し訳ありませんでした。二対一は卑怯だと思ったので苦肉の策で蹴り飛ばさせて貰いました」
「いやええよ、別に。そんぐらい気にしとらんわ」
どうやらフュズィオンと言う破面は変わり者らしい。少なくともギンはそう思った。
「…ところで貴方は先ほど副隊長と仰られましたよね?」
「確かにそう言うたなァ」
「なら貴方はお強いと思って構わないのですね?」
「さァ、それはどうやろ」
ギンはそう言った。
「少なくとも自分の事を強い、なんて言える自信はボクに無いしなァ。ボクが強いかどうかなんてアンタが決めるもんとちゃうの?」
「…それはそうですね。まあ、お強くても弱くてもどちらでもいいのです。私のこの腹の減りを、渇きを無くしてくれるのであれば誰でも――」
フュズィオンは血走った目でギンを見ると大きく地面を蹴り、ギンの懐に入る。
「さて、貴方は一体何味でしょうか――?」
ギンは滅多に見開かない目を見開く。そして咄嗟に避けた。
一体フュズィオンは何をしようとした――?
ギンの頭の中で警鐘が鳴り響く。フュズィオンはヤバい、強い、と。しかし逃げることは許されないし逃げるつもりもない。
フュズィオンは避けられたことに少し驚いていたのかボーと一瞬していたがギンを見ると楽しそうに笑い、攻撃を仕掛けてくる。
殴り殴り、蹴り蹴り、殴り、蹴り
テンポよく、リズミカルにフュズィオンは攻撃を仕掛けてくる。ギンは避けることしかできなく防戦一方だ。攻撃をしないことにはギンが勝つことはない。
何とかしてこのテンポを崩し攻撃をしなくては、ギンはそう思う。そしてギンは気づいた。殴りから蹴りに入る一瞬間が空くことに。この間を利用して攻撃に移らなくてはギンに勝機は無いだろう。
ほんの一瞬の間。これを逃すことは許されない。
殴り殴り…――今だ。
ギンは瞬時に斬魄刀の柄を掴むと斬魄刀の名を呼ぶ。
「射殺せ『神鎗』」
フュズィオンの顔面めがけて『神鎗』のなら刃が伸びる。フュズィオンは『神鎗』を初めて見た為か『神鎗』の早さにはついていけず、避ける時頬に切り傷を負ってしまった。
ツーと頬から赤い血が流れる。フュズィオンは親指でその血を拭うと親指を舐めニヤリと嗤った。それを見たギンは思わず苦笑いになってしまう。
「そこらの男子よりも普通にカッコいいなァ、アンタ」
関係ない事を喋る余裕はあるらしい。テンポのいい攻撃を避けながら一瞬の間を逃すことなくギンは攻撃していく。しかしもう『神鎗』の伸縮スピードに慣れたのか簡単に避けられてしまう。
『神鎗』を避けるとき、フュズィオンはバク転をしながら後方へと下がっていく。ある程度ギンと距離を開けると口を大きく開いて空気を吸う。
『
フュズィオンは口から霊圧の集中された閃光を口から放った。ギンは『神鎗』で受け止めようと一瞬思ったが直ぐにやめた。『神鎗』が折れてしまうと思ったからだ。体を無理やり捻り右に避ける。しかし虚閃をもろに受けてしまったのか左腕は血だらけになっていた。
「ッ――」
左腕を動かそうとすると痛みが迸る。思わずギンの顔が歪む。フュズィオンは二撃目の虚閃を撃つため、攻撃体制に入っていた。
ギンはその事に瞬時に気付き『神鎗』の名を呼び刃を伸ばす。攻撃体制に入っていたフュズィオンは避けることが出来なく『神鎗』の攻撃を受けてしまった。
『神鎗』がフュズィオンの腹を抉る。フュズィオンはこれ以上の傷を作らない為にも『神鎗』を手で掴み、抜いた。
そしてフュズィオンは思い出す。自分の我が主の言葉を。
『死にそうになったら逃げるんだよ』
フュズィオンが死ねば、主は行き場を失う。それはいけない。そしてフュズィオンは逃げることを決意した。まだ本当は戦える。戦いたい。けれど主に迷惑をかけるのはフュズィオンのポリシーに反する。そして何よりも彼はまだ
結局、フュズィオンの腹の減りも渇きも満たされはしなかった。けれど久しぶりの
「私は貴方に感謝します」
「?」
「ではこれにて失礼します」
急にお礼を言われ何が何だか分からなかったギン。そんなギンを数秒フュズィオンは見た後姿を消した。
「…全く……ワケ分からんわ」
まだどうやら空座町では戦闘が続いているらしい。皆結構苦戦しているようだ。ギンも乱菊の戦闘に加勢しに行きたがったが問題が発生した。
「ここ、何処や……」
現世には藍染に度々連れてきて貰っていた為、物の使い方やら何やらはある程度わかっていたギンだが、流石に地形を覚えることは無理だったらしい。
ついさっき来たばっかりの為、地形何かはさっぱりだ。乱菊の霊圧を辿るのもいいがかなり離されているようで霊圧を辿るのが難しい。乱菊が限定解除されているのなら辿るのは簡単で楽…いや、無い物ねだりはよそうとギンは頭を振った。
その後すぐ、日番谷が限定解除した為、日番谷の霊圧を辿って乱菊のもとへ行ったギンだった。