if物語 藍染に成り代わった男   作:フ瑠ラン

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一応Twitterでも報告をしていたのですが受験だった為更新できませんでした。申し訳ない。中々更新できない状況にも関わらず、沢山の感想ありがとうございました!!すごく心の支えとなりました。

これからまた、更新を始めようと思います。見捨てないで貰えると嬉しいし助かります!


黒髪の男

ジリリリと大きな音が小さな部屋にこだました。焦げ茶色のフワフワとした髪を揺らしながら男は固く薄い布団から出ると目覚ましを止めた。

 

時刻は朝の4時。時間ぴったりに起きれたのが嬉しいのか男は少し微笑んだ。

 

まず男はタンスから服を取り出す。白のワイシャツに黒のネクタイ。そして黒の長ズボンをはくと洗面所に向かった。歯を磨き、顔を洗う。寝癖をお湯で濡らして無くすと黒淵眼鏡をかけた。

 

洗面所から台所へ行くと適当に朝ごはんを作り済ませた。時間は朝の5時30分。目覚まし時計を見てそれを確認すると男は靴を履いて家を出た。

 

男の行き先はコンビニだった。男の生活はお世辞でもいいとは言えなく、こうしてアルバイトを掛け持ちして生活をなんとか繋ぎ止めている。

 

 

「おはようございます」

 

「…おはよう、ございます……」

 

 

男が挨拶をすると交代する男は目を合わさず挨拶を返した。男はなんとも思ってなかった。これはもう(・・)日常茶飯事だから。慣れたのだ。

 

コンビニの制服に着替えると営業スマイルを張り付け、レジへと立った。朝早いがチラホラとコンビニに来る人はいるので何気に気が抜けない。

 

チリリーンと音楽が鳴る。客が来たことを知らせる音楽だ。男はコンビニに入ってきた客に「いらっしゃいませ」と言った。

 

客は女で見たところ高校生だった。女は手に何も持たずレジの前に立つと「あのっ…!!」と男に声をかけた。

 

 

「いかがなさいましたか?お客様」

 

「バイト…終わるのいつですか」

 

「はい?」

 

 

これも慣れたことだった。時々聞かれるのだ。バイトの終わる時間帯を聞かれることや出待ちは。正直男はうんざりしている。

 

 

「あたし、貴方に言いたいことがあるんです」

 

「申し訳ございません、お客様。プライベートな情報は教えられない規則となっていますので」

 

「お、お願いします!!」

 

 

この後男は丁寧に、やんわりと断り帰って貰った。泣きながら走って帰っていく女を見て男は重いため息をつく。

 

 

「ホント、最近モテるようになったよなー、お前って」

 

 

「よっ!」と男に話しかけてきたのは同じバイト仲間である。聞いた(・・・)所に(・・)よると(・・・)このバイト仲間とは同じ高校に通っていて、高校からの付き合いだと言う。

 

 

「まァ藍染は確かに隠れファン多かったけど、お前の家ってホラ、やのつくあれじゃん?そこらの女子も近寄り難かったみたいだったけど……変な才能でも開花した?」

 

「才能なんて開花してないよ。バカなこと言ってる暇あったら手を動かしてください、佐野」

 

佑規(ゆうき)でいいって言ってんじゃん」

 

「結構です」

 

 

ズバッと佐野と呼ばれた男の言ったことを却下すると佐野は「ちぇ、連れない奴だな」と言った。

 

 

「しかしよ、俺時々思うんだよ」

 

「………」

 

「お前がホントの藍染なのかな、ってさ」

 

 

藍染と呼ばれた男は何も言わない。静かに佐野が楽しそうに言っていることに耳を傾けている。

 

 

「バイトの時間には遅れて来たことのない生活苦のお前がある日突然大遅刻したり、ここまで一人で来れなかったり、色々さ。何かお前、違和感あるんだよなあ」

 

 

「もうしかして本物の藍染じゃなかったりして」とニヤリと面白そうに言う佐野の頭を藍染はバシリと叩いた。

 

 

「……やっぱ、なわけねえよな」

 

 

案外佐野(こいつ)の観察眼は鋭い。侮れないなと思った藍染だった。

 

 

▼▲▼▲▼

 

気が付けば硬いフローリングに寝転んでいた。身体中バッキバキで意味が分からなかった。周りは暗く何も見えない。そのせいで見渡しても何も見えなくて全く意味がなかった。

 

日が昇ってきて漸く辺りが見渡せるようになった。そして気づいた。ここは知らない場所だと。いくら知り合いの名前を呼んでも出てこない。勿論母の名前を呼んでも。

 

部屋は狭いし、暗いし、知らない場所だしで不安になった。その時、ポケットに入っていた何かが大きな音をたてて鳴った。

 

四角い箱形の何かだった。試行錯誤した結果、開いた。縦長の何かになってて、ボタンが沢山ついていた。適当に左端の一番上のボタンを押してみた。

 

 

『おい、藍染!!お前今、何してんだよ!!店長怒ってっぞ!!』

 

 

箱形から大きな怒鳴り声が聞こえた。思わず肩がびくついてしまう。

 

 

「店長……?」

 

『いいから早こい!!』

 

「…どこに?」

 

『はあ!?』

 

 

『そんなこと言っても説教からは逃げられねえぞ!!』と言われるが何がなんだかさっぱりである。

 

 

『あー!もういい!!てめえがグズグズしてっから迎えに行く!!絶対そこから動くなよ!!絶対だからな!!』

 

 

ブチッと何かがキレる音がすると共に声は聞こえなくなった。全く意味が分からなかったが、声の主は相当慌てていた様子だ。ここから動かない方がいいのだろう。

 

暇なので四角い箱形をさわっていると黒い画面に自分の姿が映った。見たことのない顔だった。本当に意味が分からなかった。

 

そこからは生きるのに、慣れるのに、必死だった。

 

どうやらこの男の名字が自分と同じ『藍染』らしい。下の名前も似ていた。けれど、昔自分がいた場所と今いる場所は全く違くて、焦った。

 

 

「…ここには斬魄刀も死神も尸魂界もない……」

 

 

霊力(チカラ)のある自分が死神を見れないなんて可笑しい。それに虚の被害とか誰もあっていないようで、まるで別の世界に飛ばされたのではないか、と思った。

 

今、自分の体はどうしているのだろうか。

幼なじみはどうしているのだろうか。

 

気がかりな事が多すぎる。

 

 

 

今日も飽きず『藍染』は『藍染』の体を探した。

 

 

 


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