if物語 藍染に成り代わった男   作:フ瑠ラン

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学校を卒業したと同時に友達と喧嘩して友達を一人失った自分です。春休みに入ると沢山の課題、制服採寸、そして喧嘩していない友達からは仲直りしようと催促され疲れ切った日々をおくっている自分ですがようやく投稿出来ました。

最初はオリジナルキャラクターを何人か入れ、新しい章をかこうと試行錯誤したのですが何かBLEACHじゃなくなってしまうような気がしてやめました。

因みにもう次回作について考え始めている自分は本当に末期だと思われます。


機嫌

「どーしよ!!!」

 

 

とある休み時間。浅野(あさの)啓吾(けいご)の叫び声が教室に木霊した。啓吾の横に居た小島(こじま)水色(みずいろ)は耳を塞ぎながらも「どうしたの?」と啓吾に聞いた。啓吾は顔を青く染めながら言う。

 

 

「す、数学の教科書忘れた…」

 

「あー。それはもう藍染先生に言うしかないでしょ。休み時間も後1分で終わるから他クラスに借りること出来ないし」

 

 

優しい風貌をしている数学教師、藍染惣右介。顔もイケイケでモテモテの教師であるが啓吾はそんな藍染に恐怖していた。

 

何故か、それは藍染が平子にクナイを投げた所である。的確に眉間を狙うあの技術、絶対前職は暗殺業か何かに就いていたと確信を持っている啓吾は藍染に苦手意識を持っていた。

 

 

「ちゃんと言ったら許してくれるよ……多分」

 

「………教科書だけだったら、な」

 

「え、もうしかして全部忘れたわけ?」

 

 

水色の問いに啓吾は小さく頷いた。水色は呆れてため息が漏れる。

 

 

「啓吾ってもうしかして死にたいの?」

 

「なわけねえだろ!!…昨日は色々とあったんだよ。コンビニ行ったらさ、何かハゲに捕まって……姉ちゃん気に入って………あー!!もう!!」

 

 

急にブツブツと何か呟き出したかと思えば大声で叫び頭を掻き毟り始めた啓吾を見て水色はドン引きしている。もちろんそんな事になっているとは啓吾は気づいていない。

 

数秒後にチャイムが鳴る。啓吾の顔は絶望で塗り固められた。そんな啓吾を見て水色は啓吾の肩に手を置いた。

 

 

「今度風鈴買ってあげるよ」

 

「何で風鈴!?」

 

「この前屋台見つけたんだ」

 

 

清々しい笑顔で去っていく水色を見てくそうと顔を歪ませる啓吾。啓吾はこのわずか数十秒で死を悟った。

 

ガラガラとドアが開かれる。啓吾は忘れたことを藍染に言いに行こうと立ち上がったが足が直ぐに止まった。それは何故か。恐怖? ――違う じゃあ何故か。それは藍染の顔から手にかけてだった。

 

啓吾以外の視線も藍染に降り注がれる。そして一気に教室がザワザワとどよめいた。

 

 

「あ、藍染…先生」

 

 

クラスメイトからお前が聞けとプレッシャーをかけられ啓吾は涙目で右手を上げ藍染に喋りかける。一瞬藍染は冷たい視線で啓吾を――見たような気がするがそれも一瞬で啓吾は気づく事無く藍染に問う。

 

 

「そ、その怪我は…――?」

 

 

藍染の顔は絆創膏が沢山貼ってあり、もし傷が残ったらどこかの海賊王にでもなれるのではないかというぐらいのものであり、手首には痛々しい包帯が巻き付けてある。まるでひと戦してきたような雰囲気にクラスメイト達は興味と少しの恐怖を持つ。

 

藍染はニコリと笑うとまるで大きな壁を作るように言った。

 

 

「何もありません」

 

 

勿論、藍染の言葉にクラスメイトの皆が「何も無いわけあるか!!」とツッコミを入れる。

 

 

「あ、あれだよ……絶対織姫たちと関係あるよね……」

 

 

誰かが言った。今は欠席していて居ない井上織姫の席に視線が集まる。織姫だけではない、黒崎一護、石田雨竜、茶度泰虎、その他休んでいる席にもチラホラと視線が集まった。

 

 

「関係ありませんし、本当になんでもないんです。ただ目つきの悪い蛇に咬まれただけですから」

 

「咬まれた?噛まれたじゃなくて咬まれた?」

 

「へ、蛇って大丈夫なの?毒とかで死なない?」

 

「…だ、大丈夫よ藍染先生って忍者だから解毒剤の1つや2つ持ってる……でしょ」

 

「現職教師の人が解毒剤って……」

 

 

クラスの話は途切れる事無くコソコソと続けられる。暫くは笑って見ていた藍染だがバン!!と大きく机を叩きざわめいていたクラスを一瞬で静かにさせた。

 

 

「なんでも、ないです。 ――分かりました?」

 

 

クラスの全員は大きく頷き返事をした。そして決めた。もうこの話は学校ではしないと。関わらないと。

 

 

「で、浅野君」

 

「は、はい!!」

 

 

藍染の視線が浅野に行く。浅野は藍染に呼ばれたことにより大きく返事をした。藍染はにこやかとした表情で藍染に問うた。

 

 

「机に数学に関する物が出されていないみたいですが――何故か聞いても?」

 

 

浅野啓吾16歳。今年で何回目か分からない死を悟った。

 

 

 

 

▼▲▼▲▼

 

「何か――嬉しそうね、ギン」

 

 

どことなく楽しそうな雰囲気を纏っているギンを見て乱菊は笑いながら言った。暫く姿を見なかったギン。少し心配していた乱菊だがそれも杞憂に終わり良かったと心の中で安心した。

 

藍染が殺されてからというものギンの笑みはどことなくきごちなく、そして少しの哀愁を漂していた。それを頑張って隠そうとギンはしていたみたいだが――女の勘を持つ乱菊には隠せない。それに気づきできるだけギンから目を離さないように、何かあれば自分が駆けつけられるようにと気を張っていた。

 

しかし、ついこの前までは僅かに漏れていた哀愁も今にはなくなって、無理に作っていた笑みもちゃんとした心の底からの笑みに変わったことに乱菊は瞬時に気づいた。

 

 

「うん、ええことあったなあ」

 

「へえ。アンタがそこまで言うなんて…気になるわね」

 

「秘密や、秘密」

 

 

ギンが何を隠しているのかは流石の乱菊にも分からない。けれど、この秘密がギンの次に生きる為の目的ならいいのかもしれない、そう思い少し笑った。

 

 

『ギン。この事は誰にも言っちゃいけないよ』

 

 

 

▼▲▼▲▼

 

チリンと風鈴の音が鳴る。パーカーのフードを深く被った男は空を見上げる。

 

 

「もう、こんな時期かよ…。早ぇな」

 

 

懐かしそうに、少し後悔を混ぜた声色で男は言う。そんな風鈴屋の屋台の前をスーツを着た男性が通りかかった。藍染だった。

 

藍染は視界に入った風鈴屋の屋台の前で足を止める。

 

 

「…風鈴……」

 

「なんか買っていくか?」

 

 

藍染は悩みに悩んだ末、綺麗な黄色が特徴の風鈴を1つ買うことに決めた。男は風鈴を木箱の中に入れ割れないようにする。そして風鈴入りの木箱を藍染に渡す時男はボソッと呟いた。

 

 

「…アンタ、変わったな」

 

「は?」

 

 




水色に「我に従え!!」って1度でいいから言って欲しい

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