if物語 藍染に成り代わった男   作:フ瑠ラン

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藍染の藍をよく愛と間違えている人を見かけるのですがそれ程までに彼は愛に飢えているということなんでしょうか?


攫われた井上織姫

井上織姫が攫われた。それを知ったのは一護達がグリムジョーとの再戦が終わった後だった。

 

 

「お話は分かりました山本総隊長。それではこれより日番谷先遣隊が一、六番隊副隊長 阿散井恋次、反逆の徒井上織姫の目を覚まさせるため虚圏へ向かいます!」

 

「恋次…!」

 

 

恋次は一護の顔を見ると笑った。しかし総隊長はそれを許してくれなく井上を見捨てると言った。ルキアは総隊長の命令を聞いて苦虫を噛み潰したような顔をする。そして言う。

 

 

「…恐れながら総隊長殿…その命令には…従いかねます」

 

『やはりな。――手を打っておいて良かった』

 

 

穿界門が開かれる。穿界門からやってきたのは更木剣八、朽木白哉の二人だった。二人はルキアと恋次を尸魂界に連れて帰った。そして総隊長は一護に釘を刺すように言った。

 

 

『身勝手な行動も犬死も許さぬ。命があるまで待機せよ』

 

 

総隊長の言葉は一護の体を深く縛り付けた。

 

 

 

▼▲▼▲▼

 

総隊長の言葉を無視し、一護達が虚圏に向かっている間、織姫は皇と会っていた。

 

 

「ようこそ、我等の城『虚夜宮(ラス・ノーチェス)』へ。…井上織姫、って言ったかしら」

 

 

高い場所に置いてある椅子に皇が座っている為織姫が見上げる形になる。織姫は皇に名を問われ合っていたので返事を返した。それを聞いた皇は霊圧を織姫に掛けながら織姫に命令をした。

 

 

「早速で悪いけど織姫、君の能力(チカラ)を見せてくれるかな」

 

 

ゾクリと阿寒が織姫の背筋を沿う。織姫は立っているのがやっとで小さく返事を返した。

 

 

「どうやら貴女をここに連れてきたことに納得していない者も居るみたいだから。…そうだね?ルピ」

 

 

ルピとはグリムジョーの後にNo.6(セスタ)になった破面である。そしてルピは先の戦闘で日番谷にやられていた。

 

 

「…当たり前じゃないですか…。ボクらの闘いが全部…こんな女一匹連れ出す為の目くらましだったなんて…そんなの納得できる訳ない…」

 

「ごめんなさいね。貴女がそんなにやられるとは予想外でね」

 

「………………!」

 

 

ルピは静かに鋭い目で皇を睨みつけた。しかし皇はそれを咎める事無く涼しい顔をしている。

 

 

「さて、そうね。織姫、貴女の能力(チカラ)を端的に示すために…グリムジョーの左腕を治してくれないかしら」

 

 

グリムジョーの左腕。それは東仙に灰にされた腕である。その為、ルピは無理だと主張した。しかし織姫はルピの予想を超え見事グリムジョーの左腕を治した。

 

織姫の能力は『神の領域を侵す能力』だと皇は称した。

 

グリムジョーは織姫に穴の空いた背中を治させるとルピの胸を貫く。こうしてグリムジョーはNo.6(セスタ)の称号を取り戻した。

 

グリムジョーは大きな口を開け笑う。織姫は後悔した。グリムジョーの左腕を背中を治さなければルピは死ななかった。

 

怪我をするから治す。治すから戦える。

 

織姫は“治す覚悟”をまだ持っていない。

 

 

 

▼▲▼▲▼

 

(「ここでおとなしくしてろ」って言われたけど…なんにもすることないなあ…。お腹すいた…)

 

 

小さな窓から見える月を眺めている織姫。そんな織姫の部屋にコンコンとノック音が響いた。織姫は窓から視線を外しドアを見つめる。

 

 

「返事ないけど入っちゃうねえ――っと」

 

 

入ってきたのはウルキオラのように白い死覇装――と言ってもお腹辺りの布はなくへそが見えており、短い白い短パン――を着ている金髪の破面だった。金髪の女性の青い瞳が織姫を写す。

 

 

「ぼくの名前はねえ、シンテシスって言うんだあ!!よろしくねぇ、井上織姫ちゃん!!」

 

「え、えーと…よろしくお願いします?」

 

 

織姫の反応が面白かったのかシンテシスは大きく笑いながら「よろしくう!!」と織姫の背中をバシバシ叩いた。

 

 

「い、痛いよぅ……」

 

「あ!!そう言えばお腹空いてない?料理持ってきたんだあ!!食べる?」

 

 

何処からか料理を取り出したシンテシス。織姫は口からヨダレを垂らしながら料理を見つめている。

 

 

「毒なんて入ってないから安心してよお!!」

 

「ほ、本当に食べていいの…?」

 

「いいよ!いいよ!!」

 

 

織姫はパアアと嬉しそうな顔をしてご飯を食べ始めた。

 

 

「美味しそうにたべるねえ」

 

「ふぁって、おいひいもん!!」

(訳:だって、美味しいもん!!)

 

「そっかそっか」

 

 

シンテシスは嬉しそうに食べる織姫を見て笑って眺めていた。

 

 

「ウルキオラってさあ仏頂面で面白くないよねえ。んーでもグリムジョーと比べればマシなのかなあ?」

 

「さ、さあ…?」

 

「織姫って現世捨てて来たんでしょ?やっぱり嫌だった?ん?無理やり連れて来られたわけだから嫌なのは当たり前だよねえ。んー悲しかった?怖かった?誰かに助けを求めたかった?」

 

「そんなに質問されても答えられないよ……」

 

 

質問攻めに会う織姫は食べる手を止め言った。「じゃあさ」とシンテシスは笑って織姫に問う。

 

 

「現世に好きな人って居た?」

 

「ぶふー」

 

 

シンテシスの質問を聞いて思わず織姫は味噌汁を吹き出してしまった。

 

 

「わ、私のことよりもシンテシスちゃんのこと聞いてもいい?」

 

「うんいいよ。なんでも聞いて」

 

 

織姫は箸を置き、少し俯きながらシンテシスに聞いた。

 

 

「シンテシスちゃんもグリムジョーさんと同じ――」

 

「うん、十刃(エスパーダ)だよ」

 

 

No.9(ヌベーノ)なんだあ」とクスクス笑いながらシンテシスは言った。

 

 

「そ、そうなんだ…やっぱり強いよね……」

 

「さあ。それはどうだろ」

 

「え?」

 

「自分が強いかなんて戦ってみないとわかんなくない?」

 

 

純粋に言ったシンテシスに織姫は頷くことしか出来なかった。

 

 

「し、シンテシスちゃんはさ、皇さんに忠誠を誓ってるの?」

 

「誓ってないよ」

 

 

キョトンとさも当然に言うシンテシスを見て逆に織姫が毒気を抜かれる。

 

 

「え?」

 

「忠誠なんて誓ってないよ。そもそもここの破面達は昔の退屈してた生活よりもこっちの方が少しでもマシに見えたから皇様についてきてる人が多いし、バラガンって奴が居るんだけどさ。アイツはいつも皇様の寝首を狙ってるよ。皇様よりも隣に居る乾って男がいつも目ェ光らせててさ、あっちの方が恐怖対象だよね。死神の鬼道沢山使えちゃうから斬魄刀の能力見たことないし」

 

「な、なんか破面の裏事情聞いちゃったような気がする…」

 

 

シンテシスは大きく笑う。

 

 

「裏事情って程でもないよ!そうだなあ、破面って仲間意識があんまりないからかなあ?十刃とか本当仲悪かったりするよ」

 

「そ、そうなの?」

 

「うん。ぼくは好き嫌いとか特にないんだけどね。こんな性格してるからかな?グリムジョーとかからは顔合わせるだけですっごい嫌な顔させるしウルキオラとかは五月蝿そうな顔するし――男にモテてないなあぼく」

 

「モテたいの?」

 

「全然」

 

 

真顔で即答で答えるシンテシスを見て織姫は笑う。

 

 

「破面の男達はダメだよ。周りが見えて無さすぎるもん。付き合う相手で戦闘狂と仏頂面はダメだね。後お爺さんもダメだし、研究熱心な人もダメ。ぼくに心酔してくれるような人がいいなあ」

 

 

「織姫の好きな彼は織姫に心酔してくれるような男?」と聞かれ織姫は困ったような顔で「えーと」と言う。

 

 

「姐様」

 

 

ドアが開かれ黒髪の女性が顔を見せる。「フュズオン」とシンテシスが呟くと立ち上がった。

 

 

「もうちょっと話して居たかったけど、お迎えも来たことだしぼくはそろそろ行くねえ!食べ終わったら皿、廊下に出しておいて!!んじゃ!」

 

 

片手を上げ去っていくシンテシス。織姫はシンテシスに「ありがとう」と礼を述べた。


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