if物語 藍染に成り代わった男   作:フ瑠ラン

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またまた暫く藍染は出てこない予定です。もういっその事ギンを主人公認定した方がいいんじゃないかと思う今日この頃。

「そんなこんなでガンガン打たせて行くんでバックの皆さんおねしゃぁっす!!」


彼女だけは

敵と遭遇する前から、乱菊が戦闘していたのは霊圧で分かってた。けれど助けに行かなかったのは、乱菊が殺られる筈がないと思っていたからだ。

 

怠慢で副隊長と言ってもほとんど副隊長の仕事をしない乱菊だが、やる時はやるし空気だって読める。そもそも乱菊が死神になったのだって「ボク一人じゃ心配」だからだった。

 

死神とは何時、命を無くしても可笑しくのない職業だ。ボクは藍染隊長を尊敬した。あんな風な男になって何時か乱菊を護れるような男になりたいと思った。そこから本格的に死神への道を目指したのだ。最初はただ自分を救ってくれた藍染隊長に恩返しする為に死神になった筈なのに気がつけば『死神になる理由』が変わっていた。

 

これを乱菊に一度言ったことがある。確か、まだボクが藍染隊長が死んだと勘違いして病んでいた時だったと思う。

 

ボクが乱菊にそれを伝えると乱菊は「馬鹿ね」と言って笑った。そして言ったのだ。

 

 

「あたしはもう、ギンに護られなくちゃいけない程弱くないわ」

 

 

乱菊は強い。

 

多分ボクよりも強い。

 

遥かに。

 

――心が

 

乱菊はボクの顔を見るとボクを抱きしめて言ったのだ。

 

 

「でもね、ギン。『絶対』なんてこの世には存在しないのよ。人だって死神だって何時か死ぬ。病でも殺人でも。あたしは虚に、裏切り者に殺されないように努力してきたつもりよ。でもね『絶対』死ねないなんて約束は出来ない。だから――」

 

 

「だから――もし、あたしが死にそうになったらあんたが助けに来てよ。あたしもあんたが死にそうになってたら助けるから」そう含羞んだ乱菊を見て救われた気持ちになった。

 

そもそも、乱菊にこんな感情を抱くなんて遠の昔は思っていなかった。自分の目の前に倒れていた乱菊を助けたのも藍染隊長の言いつけがあったから仕方なく。最初はそんな気持ちだった。

 

 

「ギン。目の前でお腹を空かせて倒れていた子が居た時は自分の食料を分けてあげなさい」

 

「ギン。目の前で深手を負って倒れていた子が居た時は全力を持って治療に望みなさい」

 

 

ボクは、ただ、隊長のこの言いつけを護っただけだ。

 

 

「乱菊っ!!」

 

 

ボクは乱菊を助ける為、いち早く乱菊の場所へと向かう。

 

 

 

▼▲▼▲▼

 

乱菊が敵三人と戦っていたその頃。乱菊に思わぬ増援が来た。勿論、まだギンは到着していない。

 

 

「…雛森……」

 

 

ついこの前、見たような青白い顔色、隈は前ほど酷くは無かった。そんな雛森が五番隊の副官章をつけて乱菊の応援に駆けつけた。

 

 

「あんた…もう平気なの?」

 

 

雛森の青白い顔を見つめながら問うと雛森は力のない声で「はい」と返事をした。その返事は乱菊にとっては全く信用のならない返事で、応援に駆けつけてくれたのは嬉しいがどうせならまだ雛森には休んでいて欲しかったと乱菊は複雑な心境だった。

 

 

「心配しないで乱菊さん。あたしは確かに五番隊副隊長として副官章をつけてここへ来ました。…でもそれは“五番隊の隊員達を預かる者として”と言う意味です。“ただ皆に迷惑をかけてばかりの藍染隊長の死を嘆く女として”じゃありません」

 

 

乱菊は何も言わない。ただ黙っていた。

 

 

「…あの人はもう、尸魂界にも何処にも……いませんから」

 

 

そう言って視線を逸らした雛森を見て乱菊は「そうね」と答え、斬魄刀を握った。

 

 

「分かってるならいいわ。行くわよ!」

 

「はい!」

 

 

斬魄刀を構えるとどうやら乱菊達を待っていた破面達が言った。

 

 

「終わったかァ?」

 

「つまんねえお喋りはよ」

 

 

いきなり乱菊と雛森が攻撃を受ける。咄嗟に乱菊の『灰猫』でガードした為無傷だったが、息をつく間に二撃目の攻撃が乱菊達を襲った。

 

 

「飛梅!!」

 

 

リングのような物を雛森の斬魄刀『飛梅』で攻撃する。リングはそのまま爆発し、破面の元へと戻って行った。

 

破面の腕で未だにリングは回りつ続けている。その為、乱菊も雛森も警戒は怠らない。

 

 

「…成程な。さっきの爆発はそいつの能力か。見たところ副隊長みたいだけど…副隊長二人じゃ三対一と大差ねえぞ」

 

 

クルクルと回っていたリングから棘のような物が出てきた。破面はそれを空中へと投げ、キャッチした。それを見た二人の破面も戦闘態勢へと入る。

 

 

「ミラ・ローズ!! スンスン!! 終わりにするぜ!!こんなママゴトみてーな戦いとっとと片してハリベル様んとこ行くんだよ!!」

 

「仕切んな馬鹿」

 

「一番ダラダラしてたのはあなたでしょ」

 

「でもまあ」

 

「意見には同感ですわ」

 

 

三人は空中を蹴り、乱菊達の元へと向かう。

 

 

「じゃあな!!牛オンナ!!」

 

 

その時、三人は何かに引っかかった(・・・・・・)ような(・・・)感覚(・・)を覚えた。まるでそう、蜘蛛の糸(・・・・)()絡まれた(・・・・)ような(・・・)感覚(・・)に。

 

 

「何だ……こりゃ…!?」

 

 

破面、アパッチの疑問の声に雛森は当然の如く答えた。

 

 

「…考えませんでしたか?最初にあたしがどうやって(・・・・・)あなたに(・・・・)飛梅を(・・・)命中(・・)させたのか(・・・・・)

 

 

雛森の言う通り、乱菊を助けるため雛森は一度アパッチに飛梅を命中させていた。

 

 

「あなた達はみんなあたしよりずっと強いです。飛梅を当てられる距離まで気付かれずに近づくためには鬼道で姿も霊圧も消して近づかないといけなかった…。だから姿を消したついでに乱菊さんの周りに鬼道の網を張り巡らせておいたんです」

 

 

そう説明する雛森の副官章には糸のような物が繋がっていた。

 

 

「まさか三人ともかかってくれるとは思いませんでした」

 

「ガキが…!」

 

 

悔しそうな、そんな顔をするアパッチを見た雛森は淡々と言った。

 

 

「――弾け『飛梅』」

 

 

『飛梅』は鬼道の網を伝ってアパッチやミラ・ローズ、スンスンを巻き添えに大きな爆発を起こす。風圧が凄く暫く乱菊達は顔を上げることが出来なかった。

 

風圧がおさまり、乱菊は息が上がっている雛森に声をかける。

 

 

「…大丈夫?雛森…」

 

「はい。すいません、初めて使う組み合わせの術式だったから……」

 

 

乱菊はそんな雛森を褒めた。すると雛森は嬉しそうに術式の解説をする。

 

 

「『伏火(ふしび)』に『赤火砲(しゃっかほう)』を練り合わせたものを縛道二十六番の『曲光(きょっこう)』で覆って見えなくして、それを慎重に伸ばして網状に練めぐらせました」

 

 

乱菊に分かるように解説する雛森を見て乱菊は少し安心した。

 

――凄い…こんなに幾つもの鬼道を自己流で組み合わせるなんて…この子いつの間にかそんなに力つけてたのね。まあ、ギンが育ててた子だし……当たり前か。

 

 

「…上手くいってよかった」

 

 

――…良かった。思ったより大丈夫そうね…

 

案外大丈夫そうな雛森を見て乱菊は優しく微笑んだ。

 

そんな和やかな雰囲気の中、突如煙が晴れる。煙が晴れた先には怒り狂った破面達がいた。

 

 

()()げろ『碧鹿闘女(シエルバ)』!!!」

 

()()らせ『金獅子将(レオーナ)』!!!」

 

()(ころ)せ『白蛇姫(アナコンダ)』」

 

 

先程とは異なった姿になった破面三人。帰刃(レスレクシオン)だろう。無傷で再び乱菊達の前に現れた三人を見て乱菊達は驚きが隠せなかった。

 

 

「今ので倒すまではいかないと思ってたけど…ほとんど無傷なんて……」

 

帰刃(レスレクシオン)すると傷が回復するの。そういう連中よ、こいつらは」

 

 

驚きが隠せない乱菊達。破面三人も怒りを隠せていなかった。

 

 

「くそ…調子に乗りやがって…」

 

「長引かせた方が面倒そうだ。あれで一気に片付けるよ」

 

「…仕方ありませんね」

 

 

そう言うとアパッチは自分の左手をもぎ取り、ミラ・ローズは持っていた大剣で左腕を斬り、スンスンは捻って右手を切断し、空中に投げた。

 

 

「「「『混獣神(キメラ・パルカ)』」」」

 

 

空中に投げられた三人の左腕は勝手に融合し、そして新たな破面を生み出す。

 

 

「な、なによ…あれ…!?」

 

 

乱菊と雛森の冷や汗が止まらない。

 

そんな二人を見たアパッチは嬉嬉として喋る。

 

 

「『混獣神(キメラ・パルカ)』。解放したあたし達三人の左腕から創ったあたし達のペットだ。名前は“アヨン”」

 

 

その時、乱菊と雛森はとてつもない寒気を感じ取った。そう、例えば底の見えない深い穴を覗き込んだような――…。

 

アヨンは乱菊達に狙いをつけると襲いかかってくる。

 

 

「!! 『灰猫』!!」

 

 

乱菊が『灰猫』でガードしようとするがそれも遅く、アヨンによって右腹を抉り取られる。そんな状況を見てアパッチは楽しむような弾んだ声で言った。

 

 

「あァ、言い忘れてた。アヨンは死ぬほど強いから気をつけろよ」

 

 

グラッと乱菊の体が傾く。雛森が叫んだ。

 

 

「乱菊さん!!!」

 

 

落下して行く乱菊を見て雛森は慌てて乱菊の死覇装の裾を掴んだ。

 

 

「縛道の三十七!『吊星(つりぼし)』!!!」

 

 

『吊星』は近くにあった建物に霊圧の網をくっつけ空中で乱菊と雛森を受け取った。雛森は悲痛な声で乱菊に言った。

 

 

「待ってね乱菊さん!!すぐ治すから!!」

 

 

五番隊に入った時、一番最初に教えられるのは死神の心得やどのように迅速に動くか、そのようなものでは無い。一番初めに教えられるのは『回道』である。

 

四番隊が近くに居なくても、助けられる命を助ける為、『回道』が得意な藍染を筆頭にした先輩死神が新入りへと教えていく。その為、勿論ながらギンや雛森、そして藍染の弟子の海燕だって不器用ながらも使える。鬼道が得意な雛森だって勿論使える、使えるのだが――。

 

正直初めてだった。こんなに重症な人を治そうとするのが。そして乱菊の傷は深い。急いで治療をしないと乱菊が危ない。しかし、そんなこと勿論敵もアヨンも許しはしない。

 

雛森はアヨンに重い一撃を腹に喰らう。雛森は吹っ飛ばされ、絶望を感じた。

 

 

(あたしも…乱菊さんも…一撃…。めちゃくちゃだ…こんなの…勝てるわけないよ……)

 

 

そんな『絶望』から雛森を救おうと二人の男達が援軍に駆けつけた。『吊星』で雛森を受け止め、男達は言った。

 

 

「…よく頑張ったな。少し休んでろ雛森。こいつは…俺達で片付ける」

 

 

九番隊副隊長 檜佐木修兵、三番隊三席 吉良イヅル。檜佐木はアヨンを受け持ち、吉良は怪我した乱菊と雛森の手当に向かう。

 

しかし意図も容易く檜佐木はアヨンに敗れ闇討ちしようとした射場鉄左衛門も敗れてしまう。そして戦うターゲットがいなくなったアヨンは治療に専念していた吉良を標的に変えた。

 

 

「…く…来る…!くそっ…あと少しなのに…あと少し……!」

 

 

再び『絶望』が襲って来ようとした、その時。吉良にとってはとても心強く、力が湧いてくる声が聞こえた。

 

あの声は、僕が一番尊敬する――…。

 

 

「射殺せ『神鎗』」

 

 

銀色の鋭い刃がアヨンを襲った。

 

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