if物語 藍染に成り代わった男   作:フ瑠ラン

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さか☆ゆうさんのリクエストです。
まだもう少し続きます。


涅マユリ

大量の書類の半分を終わらせ、息抜きとして藍染は他の隊に溜まった書類を届けていた。正直、十二番隊と四番隊には近づきたくない藍染であるが、平子のお使いもあり十二番隊に行くこことなっていて、気分はダダ下がりである。

 

 

「書類ぐらい自分で届けろよな、あのおかっぱ野郎」

 

 

朝、書類を整理してた所に平子が出てきて「惣右介、これマユリん所に届けてくれへん?」なんて言ってきたのだ。勿論藍染は「自分で届けて下さい」と断ったのだが、いつにも増して粘る平子。仕方なく、息抜きをする為にも、という事で了承したのだ。

 

十二番隊に着くと予め平子が伝えていたのか客室へと簡単に通される。いろんな意味で感嘆の声を漏らす藍染。勿論、十二番隊に客室なんてあったのか、という意味の感嘆の声である。

 

客室に通された後、色の可笑しい飲み物が出された。勿論、口を付けるつもりは無い。十二番隊で渡される物の殆どは信じてはいけないものだ。これは尸魂界内の暗黙のルールとなっている。

 

 

「ヤア、よく来てくれたネ」

 

 

涅マユリ本人がわざわざ出てくるとは思っていなかった藍染は少し驚くが慌てて立ち上がり会釈をする。

 

 

「どうやら作戦は今の所成功している様だネ。あの男もやれば出来るじゃあないか」

 

「…作戦?」

 

 

今、聞き捨てならない言葉が聞こえたような気がする。しかしマユリは「何でもないヨ」と言ってこれ以上喋ろうとはしない。

 

何だか嫌な予感がする。そう感じ取った藍染はさっさと書類を渡して帰ろうとする。勿論、現実はそんなに甘くない。藍染はマユリに呼び止められる。

 

 

「待ちたまえ」

 

 

そそくさと帰ろうとしていた藍染だが、仮にも隊長に呼び止められたのだ。無下にすることは出来ない。恐る恐る振り返るとそこにはドアップのマユリがいた。

 

 

「私はネ、あの男と取り引きをしたのだヨ。藍染惣右介、今から君は私の実験材料となって貰うヨ」

 

 

あの男とは誰だ。実験材料とは何だ。取り引きとは何だ。聞きたい事は沢山ある。しかし、いつにも増して目がイカれているマユリが答えてくれるとは思わない。というか、答えさせたら本格的に逃げられなくなってしまうような気がした。

 

 

「し、失礼します…!」

 

 

慌てて客室から出て行けば「逃がさないヨ」とマユリの独特な声が聞こえてくる。

 

仕方ない、ここは『鏡花水月』を使って…!

そう思い、腰に差してある『鏡花水月』を手に取ろうとするのだが、藍染の手は空を切るだけで一向に掴めない。

 

 

「え………」

 

 

そこで藍染は気づいた。この、絶望的な状況に。『鏡花水月』を持ってきていないと言うことに。

 

気を抜いていた。書類を渡すだけだからと、斬魄刀は必要無いと、尸魂界は安全だと、気を抜いていたのだ。朝、『鏡花水月』を持ってこなかった自分を恨む。

 

 

「卍解 金色疋殺地蔵(こんじきあしそぎじぞう)

 

 

十二番隊の隊舎の屋根を突き破って出てくるのは赤子の頭を持つ巨大なイモムシみたいな生物である。アレは、マユリの卍解だ。卍解をしてまで自分を捕まえたいと言うのか。本当に狂気の科学者(マッドサイエンティスト)の考えることは理解できない、藍染はそう思った。

 

 

「早く捕まった方が身の為だと思うのだけれどネ。この金色疋殺地蔵は致死性の毒を吐く。解毒剤は私しか持っていない。死にたく無ければ大人しく投降することだヨ」

 

 

一体、自分が何をしたというのか。雛森やギンに恨まれる事はあっても、マユリに恨まれることはしていない筈だ、そう思いながらも命欲しさに渋々投降する藍染であった。

 

 

「君が無能でなくて本当に良かったヨ」

 

 

 

 

▼▲▼▲▼

 

「あれ、今日は藍染副隊長居らへんの?」

 

 

毎度毎度、吉良に仕事を押し付け五番隊へとやってくるギンは藍染の居ない隊首室を見て言った。平子は「おう」と答える。

 

 

「珍しいなァ、副隊長がここに缶ずめしとらんって。ここ最近、あの人ずっとここにおったやろ」

 

「せやから無理矢理にでも追い出したんや。安心せえ、息抜きできるようマユリに頼んどる」

 

「は?マユリ??マユリって十二番隊隊長の?」

 

「他にどの『マユリ』がおんねん」

 

 

「莫迦か」そう言う平子に「アンタが莫迦やろ」とギンは真顔で言った。

 

 

「十二番隊の隊長さんとか藍染副隊長の心労増やすだけやて。早く止めさせな」

 

「お前も心配性やなァ。大丈夫、大丈夫。アイツはやれば出来るねん」

 

 

ゲラゲラと笑っている平子を見て更に心配になってくるギン。別に心配性という訳では無いのだ。明らかに平子の人選が可笑しいだけで。

 

心配になれば更に心配になってくるのが性分というものである。隊首室の中を行ったり来たりと繰り返していたギンだが、遂に十二番隊に行くことを決意する。

 

 

「何や?そこまでせえへんでも…」五番隊を出ていくギンに何だかんだ着いていく平子。どうやら平子はギンを止めようとしているらしい。勿論、ギンは止まらない。

 

ギンと平子が言い合いをしていると平子にドンと衝撃が来た。衝撃と言っても小さい子に当たったような衝撃である。痛くも痒くもない。

 

瀞霊廷内に子供が居るなんて珍しいなァ、なんて思いながらその子供を見る平子。その数秒後、平子の目は大きく見開かれる事になる。

 

 

「…は、藍染……?」

 

 

幼い少年の顔つきは藍染に似ていて、服はブカブカな服を引きずってここまで来ていたようだ。二回り以上大きい服――元言い死覇装――は引きずられたせいか、砂まみれになっていた。

 

涙目の少年。平子の死覇装を見てグッと掴むと言った。

 

 

「おじさん、ここ何処――?」

 


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