…ジュケン、ホロビロ
「
志波海燕と呼ばれた青年は緊張の面影で自分の上司――十三番隊隊長 浮竹十四郎を見ていた。緊張して肩に力が入りすぎている海燕を見て浮竹は微笑む。が、しかしそれは一瞬のことであり浮竹の表情も真剣な表情へと変わった。
ピンと張り詰めた雰囲気。海燕はゴクリと唾を飲み込んだ。
「君に、この隊の副隊長をやって欲しいんだ」
元々海燕は浮竹からスカウトされ十三番隊に入隊。死神の才能と努力を惜しまない性格から僅か六年で参席となった
普通の死神なら副隊長に成ることは断らない。自分の地位も上がるし給料だって今までの倍となるからだ。しかし副隊長とは普通の隊士達以上に給料をあげなければやっていけない地位であり隊長までとはいかなくともかなりの責任が問われる地位である為そう簡単にはなれない。
海燕は嬉しかった。浮竹は海燕を認めたのだ。認めたから副隊長の話を持ってきてくれた。しかし海燕は唇を強く噛み、俯いて言った。
「…考え、させて……下さい」
責任感の強い海燕は直ぐに「はい」とは言えなかった。逆に断りたいぐらいだと思っている。しかし、浮竹は海燕の事を認めたから副隊長と言う重要な役割を押した。そんな浮竹の気持ちを無下にすることは海燕にはできなかった。
そんな海燕の気持ちを悟ったのか浮竹は「焦らなくてもいいんだ。断りたいなら断ってくれて構わない」と優しく言う。
「…すみません」
何故か落ち込んでしまっている海燕を見て浮竹はパンパンと手を叩いた。まるでこの話はここで終わり、と言っているかのようだ。
先程の暗い雰囲気とは変わって明るげな雰囲気へと変わる。浮竹は思い出したかのように海燕に言った。
「そう言えば、今日十三番隊は五番隊に集合って皆に伝えておいてくれないかな?」
「…五番隊、ですか……?」
海燕が聞き返すと「そうだ」と浮竹は大きく頷いた。
「話によると五番隊副隊長 藍染惣右介が皆に始解を見てほしいと言うことだ。彼は流水系の斬魄刀で、霧と水流の乱反射により敵を撹乱させ同士討ちにさせる能力を持つらしいんだ。味方まで同士討ちにさせてしまう恐れがあるからあらかじめかからないよう始解を見てほしいと言うことだ」
「(流水系……)」
海燕はなにやら考え込むような素振りを一瞬見せると…「解りました!!」と大きく返事をした。
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五番隊には沢山の隊士達が集まっていた。おそらく十三番隊以外の隊士もいるのだろう。
「うわっ……めっちゃいるなァ」
自分の先輩とおぼしき人物もそこらにいる。がしかし先輩達は海燕には気づいてはいないようだ。海燕が話しかけようとするが寸前でやめる。先輩達の嬉々とした顔を見て、今は話しかける時ではない、と悟ったのだ。
(藍染副隊長、すげぇ人気だな……)
藍染副隊長は何回か平子隊長の策略により隠し撮りの被害等を受けている苦労人だ。因みにその隠し撮りは九番隊にいき“瀞霊廷通信 藍染副隊長特集”で特集されていた。
因みにその藍染特集は瀞霊廷通信の売り上げ過去最多の一位となり、僅か一時間で全て売り切れてしまうという快挙を成し遂げた。
この場にいる“藍染ファン”達はまるで「自分はファンです!」と言っているかのように藍染特集を手元に持っていた。
少し時間が経つと、藍染副隊長が出て来て始解を見せた。彼の始解はとても綺麗で海燕は目をキラキラとさせる。
始解を見終わり海燕は隊士達がいなくなったのを見計らって藍染に駆け寄った。
「藍染副隊長!!」
「ん、君は…志波海燕くんだよね?」
海燕が「はい!!」と返事をすると藍染は「どうしたんだい?」と優しく海燕に聞いた。海燕は勇気を振り絞り大きな声で言った。
「俺を弟子にしてください!!」
▼▲▼▲▼
「なァ惣右介」
「なんですか?隊長」
仕事なんてする素振りもみせない隊長の言葉に俺は返事をした。
「オマエのホントの斬魄刀の能力知っとんのは俺だけか?」
「そうですよ」
俺が返事をするとソファーに寝転んでいた隊長は起き上がり「じゃァオマエの始解を見たことのあるヤツはどれだけや?」と聞いてきた。
「五番隊に入った時に先輩達に無理矢理させられたぐらいですね。任務とかは全て鬼道で終わらせてしまいますし」
「ほな、瀞霊廷におる死神全員に見せてこい」
「は?」
突然の無茶振りのせいで俺は書類を書く手を止めてしまった。因みに今の平子隊長は真剣なような…悪人顔のような……となんとも微妙な顔をしている。
「悪い予感がするんや」
「悪い…予感?」
神妙な顔で頷く隊長。隊長は顔を見上げ、天井を見ながら言った。
「俺の悪い予感、以外と当たるんよ。だからしといた方がいい。オマエの能力わりと使えるしな」
「万が一に備えることも大切なんやで?」と言う隊長。確かに何かあったとき、瀞霊廷の皆が『鏡花水月』の催眠にかかっていると動きやすいこともあるだろう。…珍しくマトモなこと言ってるなこの人……。
コンコンコン
ドアのノックと共に「九番隊です。頼まれたものをお届けに参りました」と言う声が聞こえた。
「……頼まれた、もの…?」
「…?……!ちょっ、待っ――」
最初は解らないような顔をしていた隊長だが思い出したのだろうか。急に焦った声へと変わった。そんな隊長を見て思った。
…――怪しい
あの慌てようは異様である。なんだかんだ食えないような顔をしているあの隊長が今俺の前で慌てているのだ。
…――何か隠してるな、コイツ
俺は慌てている隊長を横目で見ながらドアをノックしてくれた九番隊隊士に「入ってください」と声をかけた。
「惣右介!?」
「失礼します」
九番隊隊士は律儀に入る前に一礼をし、隊長の元へと近づいていった。
「平子隊長が予約していました“瀞霊廷通信 藍染副隊長特集”です」
「お……僕の…特集…?」
全く身に覚えの無い特集が組まれていたことに俺は今知った。九番隊隊士は平子隊長に茶封筒に包まれた雑誌らしきものを渡すと隊首室から出ていった。
「…平子隊長。あなた、知っていましたね…?」
「ちちち、違うんや!これはちょっとワケありで――」
「問答無用っ!!」
これは瀞霊廷にいる死神に始解を見せる日の一週間前の出来事である。
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そんなこんながあり、無理矢理隊長のせいで人前で始解を見せるイベントなるものを実行してしまった俺は今、とてつもなく焦っていた。始解を見せるだけのイベントだったはずなのに目の前の志波海燕は俺を師匠にしたいと言ってきている。
「藍染副隊長の綺麗な始解に俺、惚れました!!同じ流水系の斬魄刀ですし学べることがあると思うんです!!」
「そ、そうか……」
…――ってイヤイヤイヤ!!危うく納得しかけたけど!俺ホントは流水系の斬魄刀じゃないし!!無理に決まってんじゃん!
と、とにかく早くこの事態を収拾させなくては。こんなところ隊長に見つかったら面倒なことに……。
「あ、おったおった。こんなところにおったんか惣右介」
自分でフラグをたてて自分で回収してしまったァァアア!!
「浮竹んとこのやつと何を話しとるん?……オマエまさか男にまで告白…」
「誤解を生むようなこと言うんじゃねェェエエ!!」
「藍染副隊長をししょムゴッ!」
隊長に告げ口的な事をしようとした志波の口を押さえる。…隊長にそんな事知られたら面白そうとかそんな理由で師匠させられるに違いない。この事態を打破するためにもそんなことは言わせられない。
「面白そうなハナシしとんなぁ。…何隠しとるん?惣右介。ホラ隊長に言うてみ」
「嫌です」
「ムゴッ、ムゴゴゴ!ムゴムゴムゴコゴムゴゴゴ!!」
(訳:俺、藍染副隊長に!師匠に成ってもらうよう頼んでたんです!!)
「そうかそうか。面白そうやん。やてあげてもええんちゃう?惣右介」
「いや、なんで話通じてんだよアンタら」
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文字の読み書きをしてたけど解らん文字が沢山出てきたから藍染副隊長に教えてもらおう思うて探してたんやけど……。
「…なんでそない疲れた顔しとるんや?副隊長」
「もうやだ。俺、五番隊やめようかな…」
「賭けには勝ったで惣右介!!」
「これからよろしくお願いします!!」
異様に疲れた顔しとる副隊長ともの凄い嬉しそうな顔をしとる隊長と……あと知らん人。全くこの状況が掴めん。一体何があったんや。
「平子隊長、誰ですか?コイツ」
「志波ァ、兄弟子が顔出したでアイサツしとき」
「志波海燕です!!ヨロシクお願いします!兄弟子さん!!」
……いつの間にかボク兄弟子になっとった……。ほんまこの短時間で何があったんや副隊長…。