if物語 藍染に成り代わった男   作:フ瑠ラン

50 / 56
小さくなった「藍染惣右介」

藍染、いや、この場合は藍染光右介と言った方が正しいのか。兎に角、光右介は気づいて居ないのだが、光右介と惣右介の魂が急に入れ替わった、と言う訳では無いのだ。

 

元々、前兆は起きていた。しかし、光右介は生活苦でバイトを掛け持ちしていた程忙しい人間だった。その為、時折起きていた前兆を「唯の疲れ」で「夢」だと思っていたのだ。何故なら前兆が起きていたのは光右介が疲れて気絶するように寝静まった頃であり、前兆が「起きた記憶」が無いからだ。

 

しかし、そう思っていたのは光右介だけであって、幼い惣右介はかなり悩まされた。何か謎の体験をしたような気がする、体が重いような気がする、酷く疲れていたような気がする。

 

どれも「気がする」であって確定したものは無い。それに、前兆が起きていた頃は惣右介の母親、結右華の容態が悪くなった頃だ。更に悩まされた。

 

最初は光右介のように疲れだと思っていた。しかし、疲れだけでは現せない妙な感覚。それに「脳に記憶」されていなくても「魂は記憶」している。それがまた惣右介を悩まさせた。

 

――もうやめてくれよ

 

――母さんが大変なんだ

 

――私が疲れている場合じゃ無いんだ!!

 

惣右介はマザコンでは無い。しかし、母親の結右華をとても大切にしていた。父親は生まれた頃からいなかったし、結右華は父親の事を話そうとはしなかった。だから深くまでは聞かなかったし、何より結右華は惣右介を愛して育てた。だから惣右介も結右華を倣って愛していたのだ。

 

近くにいた人間と言えばうるさくて頭を使うのが苦手な幼馴染にその両親、そして病弱な結右華だ。周りにいた人間は少なすぎた。だからこそ結右華の看病に明け暮れていた惣右介は誰にも相談する事が出来なかった。

 

結右華の看病をする人は幼い惣右介しかいなかった。結右華は親戚と絶縁されてるらしい。詳しいことは結右華を除く誰一人知らなかった。

 

だからこそ、結右華を離れた幼い惣右介は不安になったのだ。

 

――自分がいなかったら、母様は死んでしまう。

 

辺りが知らない場所だったのもあるかもしれない。兎に角、惣右介は不安で柄にもなく泣いてしまったのだ。元々、惣右介は泣き虫だった。けれど、結右華の容態が悪化してからは、明るく振舞ってきたつもりだし、しっかりしてきたつもりだった。

 

だからこそ、久し振りに泣いた自分がみっともないと思ってしまったのかもしれない。

 

 

 

 

▼▲▼▲▼

 

平子とギンは心の底から思った。この場に雛森が居なくて良かった、と。雛森が居たらきっと平子は有らぬ疑いをかけられ下手をすれば刑軍に行ってた可能性だってあった。因みに、雛森は今、休暇中である。休暇を取って誰と一緒にいるかなんて聞くのは野暮である。

 

 

「グスッ…済みません、取り乱してしまいました」

 

 

五番隊隊首室。そこに、見事に小さくなってしまった藍染と顔を青くした平子そしてギンがいた。平子を見て急に泣き出すもんだから平子の顔が怖いのかとか試行錯誤したが泣いている藍染が首を横に振ったので平子は整形をせずに済んだ。

 

小さくなってしまった藍染――この際、ミニ藍染と名付けよう――はソファーに座っていた。立って威圧感を与える訳にもいかないので平子とギンは藍染の傍の地面に片膝をつけてしゃがみこんでいる。端から見たら完全に平子とギンは怪しく誤解を招きそうな絵面なのだが、内心意外とパニクっている平子達は気づかない。

 

 

「えーと…ここがどこだが、分かるか?」

 

 

恐る恐る平子が聞けば藍染は首を横に振った。

 

 

「…でも、その格好知ってます。死神さんですよね」

 

「あらら、いつの間に俺ら有名人になってもうてん。ちょー恥ずかしいやないの」

 

「いえ。貴方は知りません。その死覇装を知っていると言っただけです。勘違いしないで頂きたい」

 

「うん、やっぱ小さくなっても藍染は藍染や」

 

 

しみじみとした顔で平子は頷いた。藍染は少し首を傾げると「貴方達は私の知り合い…なんでしょうか」と聞いてくる。まだミニ藍染はイマイチこの状況を理解できていないらしい。

 

 

「知ってるも何も、なァ」

 

「せやねェ」

 

 

平子がギンの方を向けばギンは深く頷く。何が何だか分からないミニ藍染は心配になってくる。

 

 

「俺、お前の上司な」

 

「ボクがキミの部下」

 

 

そうミニ藍染に伝えればミニ藍染藍染は「えっ」と驚く。震える指で平子を指さすと言った。

 

 

「こ、この人が…上司!? ……世も末ですね」

 

「オイコラ。どう言う意味やそれ」

 

 

「殴ったろか」と拳を構える平子を見てギンが「まあまあ」と平子を宥める。「相手は子供なんやから」と。

 

 

「それにしても、このミニ藍染、記憶まで幼児化しとるみたいやなァ」

 

「ホント、色んな意味で雛森ちゃん居らんくて良かったわ」

 

 

説教もそうだが、居たら居たで「きゃー」やら「可愛い」なんて言って五月蝿そうだ。女子とはそういうものである。逆に男の平子達は全然そう思わない…いや、レアだなァとは思うがそれぐらいであって、藍染に向かって「可愛い」等言う気に起きない。考えただけでもゾッとする。

 

 

「それにしても何時になったらこれ治るんや?」

 

「さァ。そんなのボクが知るわけ無いやん。ここはやっぱ聞きに行くしか無いんやない?もしかしたら治す薬有るかもしれんし」

 

「いやァ、マユリやで?そんな簡単に教えてくれるわけ無いやろ。解毒剤だってくれるかどうか…」

 

 

そう、マユリはそんな優しい性格はしていないのだ。情報1つ聞き出すだけでかなり面倒である。と言うか面倒くさそうな性格は容姿からかなり滲み出していると思う。マユリのあのファッションは一体どこに向かおうとしているのだろうか。藍染のことよりもそっちが知りたい。

 

 

「まァ、考えるのは後や。取り敢えず、飯でも食うか。腹減ったわ」

 

 

現在の時刻は12時である。ちょうどお昼時だ。平子が「何か飯でも作ろか」と言えばミニ藍染が「私が作ります」と言った。

 

 

「何、言うてんねん。子供が火ィなんて使ったら危ないやないの」

 

「私、人が作ったものは食べないようにしているんです。何が入ってるのか怖いし、人の作った料理で死にたくない」

 

「……なんやろ、大人の頃よりも辛辣のような気がしなくもない」

 

「いつもの事やろ」

 

 

ギンがチラッと見たミニ藍染の瞳は虚無を映していた。きっと誰かの料理にトラウマか何かがあるのだろう。汗の量が半端なかった。

 

大人の藍染は普通に人の手料理食べれたのになァ、と思うギンだが大人の藍染は「光右介」である。二人の目の前にいるのは「惣右介」なのだがそれを知る由もない。

 

「台所はどこですか」と聞くミニ藍染に「あっちや」と答え台所まで連れていく平子。なんか完全に立場が変わっているような、平子が歳上に見えなくなってきているような感じがするのだが、まァいつものことか、と納得させる。

 

ミニ藍染の作った手料理は美味しかった。大人藍染がたまに作る料理もそう言えば凄く美味しかったなと平子とギンは思い出した。

 

 

 

 

▼▲▼▲▼

 

なんと言うか…似てる。それが平子とギンを見た感想だった。二人とも、似たような喋り方をするし、年中無休で笑っている。いや、訂正しよう。喋り方は平子の方がなんかおちょくった感じがするし、笑い方だってギンの方がなんか胡散臭い。よく考えてみると全然違ったような気もする。兎に角、二人ともキャラが濃いのは確かである。

 

ご飯を食べ終わった後は、二人して何か話し込んでいる。途中途中、顔色を変えながら話しているので、きっと重要な話なのだろう。迷惑をかける訳にもいかないので大人しくしとこうと思った。

 

そう言えば、平子…さん、は私の上司だと言っていた。平子さんは五の文字が乗った羽織を着ていたので私も五番隊に所属しているのだろう。

 

自分は一体どのような仕事をしているのだろうか。あの上司だと絶対書類仕事とか押し付けられてそうだ。そう言う細かいこと出来なさそうだしな、あの人。

 

あれが上司だと絶対に部屋に缶詰めさせられそうな結末が見えるのに、どうして大人の私はあの人を上司に選んだのだろうか。

 

実は書類仕事とかちゃんとやる人だったり?

――いやいや、それならあの机の上に置いてある山のような書類はどうやって言い訳するつもりだ。思いっきり『平子期限内に提出!九月十五日まで』って書いてあるぞ。この案はなさそうである。

 

なら、頭がずば抜けて良かったりするのだろうか?

――それなら目の前の光景に言い訳して欲しい。ギンと名乗った男に完全に言い負けしているぞ、あの上司。この案も無さそうだ。

 

では、あの上司はものすごく強い、なんて案はどうだろう。

――これなら有り得るかもしれない。仮にもあの人は『隊長』であって隊を、尸魂界の住民を護る役目を課せられている。規定を超えた強さを持っているから隊長に慣れた訳で――。…正直全然強そうに見えないのはきっと私の目が節穴だからである。きっとそうだ、そう信じたい。

 

結論は、世の中にはたくさんの人間がいて、未来の自分はかなりの変わり者だ、ということだろう。

 

 

 

 

▼▲▼▲▼

 

結局、平子とギンはマユリに問いただす事に決めた。交換条件で一体どんな無理難題を押し付けられるのかとビクビクしていれば案外すんなりと教えてくれた。マユリ曰く「今回は失敗ダヨ」との事。何をしたかったのか問おうとすればマユリの目の色が変わったので聞くのをやめた。

 

 

「治るも何も放っておいたら治るヨ」

 

「いや、かれこれ数時間は治っとらんのやけど」

 

 

平子がマユリにそう言えば「知らないヨ。私に聞かないでくれ。忙しいんだ。君とは違ってネ」となんとも無責任な返答が帰ってきた。

 

困ったように空を見ているとネムが近づいて来て平子に言った。

 

 

「きっと数十分もしないうちに治りますのでご心配しなくても大丈夫ですよ」

 

 

だそうだ。平子はネムに「ありがとさん」と伝えると五番隊に戻っていく。平子が五番隊に戻った頃には藍染の体も治っていて――なんてことはなく、まだ子供のままだった。

 

残りの数分どうしようか、と平子が頭を悩ませた結果、写真を撮ろうと言う決断になった。因みに、カメラは現世から1台持ってきている為、困ることはなかった。

 

 

「なあなあ、写真撮ろうや」

 

「写真?」

 

 

「いいからいいから」と平子がミニ藍染とギンをセッティングする。背景は五番隊だ。誰かにシャッターを頼まうかと辺りを見ていたらルンルンな乱菊が通りかかったので乱菊に頼んだ。

 

 

「あら、カメラじゃない。それも中々良い奴ねこれ。ふふ、あたし、カメラは織姫から習ったのよ!この腕とくとご覧なさい!!」

 

 

乱菊の機嫌がいいのはきっと日頃監視役の日番谷が居ないからなのだろう。何故、日番谷が居ないのかなんて野暮なことは聞いちゃあいけない。

 

 

「行くわよー!! カツ丼、牛丼、親子ドーン――」

 

「ちょっと待てやー!!なんやそれ、聞いたことないんやけど!?」

 

「え?織姫はこうやって撮るって教えてくれたんだけどねぇ」

 

 

「可笑しいわね」なんて言っている乱菊に平子は「普通にハイ、チーズでええから」と言った。

 

 

「なによぉ、それ全然新鮮味ないじゃない」

 

「いいから!!こちとら時間無いねん!!」

 

 

「分かったわ」と少しいじけたような声で「ハイ、チーズ」と言って写真を撮った。フラッシュの大きな音にびっくりしたのか、それとも光にびっくりしたのかミニ藍染は目を瞑って写真に映っていた。

 

現像したらこれで藍染をからかってやろ、と独りでに平子は笑う。勿論、そんな事をしたら平子の命は危ない。実に学習しない男である。

 

写真を撮った数秒後に藍染は元の藍染へと戻った。妙にニヤニヤしている平子を見て殺意が湧いたと後に平子の屍を踏み越えて語っていたのはギンの記憶にまだ新しかった。

 

 




おまけ

「…そう言えば、真ん中にいた小さい子って誰なの?平子隊長の隠し子?相手はひよ里かしら」
「…無理やろ。手ェ出す前に隊長が力尽きるわ」
「じゃあ、ギンの隠し子?」
「それはもっと有り得んな」
「……んー、男なら「それは有り得ない。何故なら俺は乱菊を一番に愛しているからだ!!」とか言えないわけ?」
「んな無茶苦茶な。そもそも、ボクの一人称俺ちゃうし、そういうもんは口には出さんもんやろ。安心しィ、一番愛しとるのも、眼中にあるのも乱菊だけやから」
「…素直なギンはなんか怖いわね」
「……………」

「リア充爆発しろ」「リア充爆発しろ」「リア充爆発しろ」「リア充爆発しろ」「リア充爆発しろ」「リア充爆発しろ」「リア充爆発しろ」「リア充爆発しろ」「リア充爆発しろ」「リア充爆発しろ」「リア充爆発しろ」「リア充爆発しろ」

「誰かァー今すぐ卯ノ花隊長連れてきてェな!藍染が壊れかけとる」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。