サーゼクス暗殺計画 作:キュウシュ
AbemaTVであと2日くらいは無料なのでぜひ見てみてください。
今回ネタバラし回。ちょい短いです。
結果を端的に言うと、解除は成功しなかった。
グレイフィアの想定通り、中からの解析で封印の痕跡を見つけることは出来たが思った以上に強固だったからだ。
夜明け前まで、深く入れてみたりと色々な方法で試してみたが解除には至らなかった。
しかし部分的に隙間を開けることには成功した。これは流石グレイフィアというべきで、解除がムリだとすぐに気づくや否や少しづつ削っていく方法に切り替えた。
その甲斐もあり、翌朝ライの魔力量は目に見えて増えていた。
「ありがとうございました」
ライは疲労していてベッドに体を横たえているグレイフィアに感謝を告げた。この短期間で成長、更にはまだ成長の余地がある事を知れたことに対しての礼だった。
「いえ、当たり前の事をしたまでよ。……それにまだ終わってないじゃない」
まだ、終わっていない。確かにまだ終わってはいないのだが……。
「……自分の感覚では今回の穴は全体の何万分の一くらいの大きさしか出来ていません。この方法ではキリがないです。もっと、封印に詳しい方に話を聞きに行きましょう。もう、性こ……」
──ういはやめましょう。
そう言いかけたライの口をグレイフィアが指で押さえた。
「これはそんな不埒な行いじゃないわ。だって貴方は昨日私に何もしてないじゃない。何も出してない、ただ私の中に貴方のものが留まってただけ。違わない?」
「違くはないです、けど」
必要だったのは連結という事象だけであるので、それ以上はしてはいなかった。なのだが、昨日以上に今日のグレイフィアは少しおかしいようにライには見えた。前とは何か変わってしまったような。
「……貴方の力になりたいの。だからまた、ね」
「もう……」
断りの言葉を言おうとしたライの口をグレイフィアの口で塞がれた。長い長いキスをして、ようやくグレイフィアは唇を離した。
「ど、どうしたんですか。こんな、急に」
「どうって? したい事をしているだけよ。それがどうかしたの?」
ライには今のグレイフィアが酷く不気味なものに見えた。普段から、何かとあればサーゼクス、サーゼクスと言っているグレイフィアがこんな浮気の様なものを自らの意思で行うとはとても思えなかった。だが、現状行なっている。
心がサーゼクスからライへと移ったと考えるのなら、全てに納得がいくのだが、果たしてそうなのかどうかは分からなかった。
──本人がしたいのなら断る理由もない、のか?
グレイフィアの謎について、ライは頭を回そうとするが上手く頭が働かない。考えてみれば、昨日から少し頭の冴えが良くはない。
──自分に何か起こっている、のか?
ライの直感は警鐘を鳴らしているのだが、それが何かは分からない。考えれば考えるほど、ドツボにハマっていくような感覚をライは味わっていく。
考えて考えて考えて考えて、考えぬいてライは
「また、夜にやりましょうか」
「うん!」
◆
それから、ライとグレイフィアは幾度も交わった。交わる毎にライの魔力量は上がっていった。そして交わる毎にお互いを求めあった。
朝、昼は魔力の基本的な扱いや記憶にあった惑わしの力の練習を行う。いつの日かの様な模擬戦ではなく、グレイフィアが行ったものをライが真似をするといった様な安全なものばかりであった。ライは拍子抜けして、一度模擬戦はやらないのかをグレイフィアに聞いて見たところ、「そんな気分じゃない」というよく分からない理由でやらないらしかった。ライとしてもあまり危険な目にあいたくない事もあり、深くは言及しなかった。
だが一ヶ月、二ヶ月と日々体を交わらせていくうちに段々と修行の時間が短くなっていった。その代わりに夜の時間が増えていく。
安全に魔力を増やせるやり方、先ずは魔力を増やしてから。そんな理由から修行を行うより、性行に力を注ぐ様になっていった。
この辺りからはライもグレイフィアの中に入れているだけでは我慢ができなくなり動かし始める様になる。
グレイフィアはそれを止める様な事は言わず、寧ろ歓迎している節があった。グレイフィアとしても動かす事なく中に入れられただけというのはもどかしいという面もあるのに加えて、二人の体の相性が良かったという事もありここから性行為は加速する。
朝昼晩と交わる生活になっていった。
それが終わったのは、半年が過ぎた頃だった。
◆
「ライくーん! ここに居るよねー?」
ライとグレイフィアが例の如く交わっていると、家の外から大きな声が聞こえてきた。
「今のって、セラ様?」
「……そうね。一体何の用かしら」
三戦目に入ろうとした所を邪魔されたグレイフィアは若干言葉に棘があった。
「……この状況不味くないですか?」
「……早く着替えましょう」
パッと着替えられる事が出来たライが先に玄関まで向かい、ドアを開いた。案の定、セラフォルーが立っていた。
「あ☆ ライくんだ! 久しぶり!」
会えて嬉しかったセラフォルーはライに抱きついた。
セラフォルーの柔らかい感触に少したじろいだ。
「お久しぶりです、セラ様。どうかしたんですか? こんな突然。とりあえず、ここで話をするのも何ですので中にお入りください」
セラフォルーは言葉に従い家の中に入ったと思ったら、後ずさって再び外に戻った。
「……どうかしましたか?」
不思議な動きをするセラフォルーに疑問が湧いた。
「……これってライくんが何かしたの?」
「これ、とは?」
セラフォルーが家の中を見ながら「これ」というものを指をさして問いかけてくるが、ライにはセラフォルーが宙を指差している様にしか見えない。
「これだよ! この小さな魔力の球。家の中にいっぱいあるんだけど、大丈夫なの?」
──魔力の球?
セラフォルーに指摘され、振り返ると部屋中に魔力の球が浮かんでいるのが
──なんだ、これ?
試しに触ってみるが、痛みなどは全くなかった。だが、こうもびっしり浮かんでいると入るのを躊躇するセラフォルーの気持ちも少しわかる。
セラフォルーの言う通り、この魔力はライの持っている魔力と質がとてもよく似ていた。だがこんなものをライは出した記憶がなかった。というか、そもそも今の今まで気づいてすらいなかった。
なんだか、気味が悪かったのでライは魔力が消えるように念じてみた所、部屋中の魔力の球は瞬時に消えた。
と、同時に冷静な思考が戻ってきた。
「は?」
ライは今まで何をしていたのかを思い出した。思い出したという言い方は正しくない。正確に把握したという方が適切かもしれない。
──自分は? どういう事だ?
気が動転して、ライは地面に倒れこんだ。それを見てセラフォルーが何事かと助けに入るがそれを気にする余裕がライには無かった。
──何をしていた、自分は……。
グレイフィアと修行をする予定でここに来ていた、筈だった。当初は本当に純真な気持ちで強くなりたい、とそう思っていたはずだった。
──だが、一体何をしていた?
自らの魔力量を増やすという名目で爛れた事ばかりしていた。グレイフィアという最高の指導者がいるにも関わらず、そんな事しかしていなかった。魔力量なんて後からでもどうにか出来る事であるのに。
互いに互いの体を求める言い訳にしていた。
──いや、問題はそこじゃない。
問題はそこではない。
そもそも、この現象は何かという事。
だが、これは直ぐに分かる。ライの魔力に関係している事だと。部屋中の魔力の球がライとグレイフィアに何かをしていたという事も。
──何をしていた?
ライは何ヶ月か前に思い出した記憶を掘り起こす。あの母親と自称していた女はライの魔力の事を『惑わす力』と呼んでいた。その後に『誘導して、誘惑させて、誘引して、誘致して、誘発させる』事が出来るとも。
そこから推測するにライとグレイフィアは誘導、もしくは誘惑されていた。だが……。
──魔力の持ち主である自分まで?
持ち主にまで牙を剥く力などあるのだろうか。ライの惑わす力というものはサーゼクス──というよりバアル家──の滅びの力と似ていると予想していた。そして、サーゼクスはその力を身に纏えるという話をライは聞いた事があったため、自らには効果を及ぼさないと思っていた。しかし、見ての通り自らも術中にはまってしまっていた。
ライは頰を一度叩いた。
今考えるべきであるのはそこでもない。
いつからこの現象が起こっていたのか。そして、具体的な効果内容が最優先で考えなくてはならない事だ。
最も可能性が高いのは記憶を取り戻した日だと考えられた。思い出したと同時に体から先の魔力の球が無意識に放出されていたのかもしれない。
しかしこれだと腑に落ちない点があった。グレイフィアがこの事に気付かなかったという事だ。セラフォルーとグレイフィアの実力はそう離れていないとライは思っている。そしてセラフォルーは家に入る前に直ぐに気付いたにも関わらず、グレイフィアは気付かないという事はあるのだろうか。
何か見逃している事がある、と思いライは再びあの日の事を思い出す。
──グレイフィアが性行為を誘うような事なんてありえるのか?
冷静に考えるとグレイフィアは罪悪感を拭うために性行為を自らするような性格ではないような気がしてくる。ライから見てグレイフィアはサーゼクスの事を溺愛していた。それなのにサーゼクスを悲しませる事になる事をグレイフィアがした、という事がそもそもおかしい。この時点で既に術中にはまってしまっていたのかもしれない。なので、これより前にあった出来事を思い出す。
──あの、酔っ払ってしまった日か。
酔っ払った拍子にこの力を無意識に使った。そう考えるのが自然な気がしてくる。思い返すと、あの次の日から少し自分はおかしかった。まだ仲良くなる時期であると分かっていたはずなのに、体の関係を偽装してみたりと……。だが、まだそこまでなら良かった。それ以降の出来事など酷すぎて目も当てられない。毎日毎日飽きもせずに、ベッドをギシギシさせ続けていた。
そこでライは気づいた。
自分の意思がはっきりと戻っているのなら、グレイフィアもそうであるのでは、と。
地面に手をついて視線を下に向けていたのを戻す。セラフォルーがワタワタとしているのがまず見えて、次に奥の部屋からグレイフィアが歩いて来ているのが見えた。
そして死がやってくる。
次で序章が終わりだと思います。
数話前から何かとポカをやらかしていたのはこんな理由からです。