サーゼクス暗殺計画   作:キュウシュ

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補足説明。
ハイスクールD×D hero のBD特典だったと思うんですが、そこで過去の物語が語られるものがありました。そこでセラフォルーさんはソーナが生まれる前は喧嘩っ早くて口調が荒いという設定と明らかになりました。
私はふぁっと思いました(笑)

ですが、今セラフォルーさんは魔法少女に出会っているのがずれていたり、大事な存在の出現によりいろいろ違います。

また、上記のの理由によりイベント1を改正しました。(本筋には関係ないので読まなくてもok。


魔王の眷属2

 ライと何気ない日常をすごした次の日、セラフォルーは彼を連れて首都リリスへと訪れていた。魔法少女の恰好──ではなくしっかりとした正装で。これは、私室からいたって何でもないように出てきたセラフォルーをライが引き止め、そして長時間説得したことで渋々、着させられたものである。

「もう、ライくんのせいで時間ぎりぎりだよ☆」

「……なら、ちゃんとした服を着てください」

「でも、ライくんがありのままでいいって言ってくれたんだよ」

 ライは額に手を当てた。

「わかりました」

 セラフォルーはどうして急にライのテンションが下がったのかがわからなかった。けれど、自分の中で都合よくとらえた。

 ──今度からは魔法少女の服でいいってことかな☆

 軽くステップを踏みながら、そしてその後をなぜかどんよりとしたライが歩きながら目的地へと進んでいった。

 

 セラフォルーはもう少しで到着というところでとある悪魔から声をかけられた。

「やぁ、セラフォルー。久しぶり……と言ってもいいかな」

 紅い髪をのばした青年悪魔──サーゼクス・ルシファーだった。ちらっと彼の後ろを見ると、あの女──グレイフィア・ルキフグスもいた。魔王同士の邪魔をしないためか声には出さなかったが、セラフォルーに向かって小さく頭を下げてくる。おそらくは自分の後ろにいるであろうライもサーゼクスに頭を下げていることだろう。

「おはよう、サーゼクスちゃん」

 ライと会話しているときより、声音を三段階くらい低くしながらセラフォルーは挨拶を返した。

 別に、嫌いとかそういうわけではない。

 ただ、一時期やんちゃな時期に喧嘩を売りまくっていたので若干気まずいのだ。簡単にいうと、いまいち距離をつかみかねている。当のサーゼクスも常にニコニコとしているのも会話しづらいことに拍車をかけているので自分だけのせいではないとは思うのだが。

 うんうんと勝手に納得しながら、歩いているとふと気づく。すぐ近くにサーゼクスがいるのだ。具体的には肩がくっつきそうなくらい近く。

 前々から距離が近い男だと思っていたが、ここ数年はそれがやけに顕著なような気がする。というか近い。

 ライの前であるし、やめてほしい。

 ──あれ、何でライくんのこと考えたんだろ。

「サーゼクスちゃん、近くない?」

「なに、君とも仲良くしたいとそう思ってね」

 ふーんと言いながら、セラフォルーは二歩ほど横にずれる。こういう明るい性格の悪魔の距離の取り方はなかなか独特で自分には心底あわないなと思う。仲良くなりたいときは、だからこそ一定の距離を保つべきだと。

 そういうところもライは優れている。

「それで、今日はどんな理由で私たちを集めたの」

「雑談を……おっと、ちょっとした冗談だよ」

「それで?」

「あぁ……いや、まずはふたりと合流しようか」

 サーゼクスの視線は今日の集合場所であり、会議場所に向けられていた。

 

 すでに室内にはふたりの魔王が椅子に腰かけていた。

 アジュカ・ベルゼブブ。それにファルビウム・アスモデウス。

 どちらも男性であり、冥界屈指の実力者でもある。特にアジュカ、そしてサーゼクスは実力が飛びぬけている。セラフォルーが本気を出したところで手も足も出ないと思わせるほどに。

「セラ様、お二方とは初対面なので挨拶をしたいのですが、よろしいですか?」

 セラフォルーの思考を途中でさえぎるように、背後から声がかけられた。

 ──そうよ、ライくんがいるんだからお淑やかに、うん。

 一呼吸いれて、彼の理想の魔王の顔になる。

「アジュカ……さん、ファルビウム……さん。少しいいですか?」

「……さん?」

 今まで、普通に呼び捨てにしていたけれど、ライの前なので敬称をつけたのだがアジュカには不審に思われたかもしれない。

 こほんと一度咳払いをして、注意をセラフォルーに向けさせる。

「私の眷属を紹介します」

「初めまして、ベルゼブブ様、アスモデウス様。セラフォルー・レヴィアタン様の女王──ライと申します。お会いできて光栄でございます」

 セラフォルーの隣まで歩いて、ライはそう言った。のち、浅いけれど失礼にならない深さの礼をする。

 アジュカはほうと値踏みの視線を送る。

 彼に見られる。

 それの意味を知っているのかライは体に少し力が入ったように見える。

 数秒見た後、一言つぶやいた。

「おもしろいな」

 ライの表情は困惑へと変わった。それはセラフォルーも同じであった。いや、事情を知っているぶん、セラフォルーのほうが度合い的には大きかったのかもしれない。

 天才の例にもれず、アジュカという悪魔も変人である。物を作ることに自分のほとんどをつぎ込んでいるような悪魔で、それですら作り終わったものについてはどうなろうと知ったことかというような奴である。興味をもつのは他者が作ったおもしろい技術品、もしくはサーゼクスのことくらいであろうか。

 そんな彼がおもしろいとライを評価した。

 どういう受け取り方をすればいいのか、セラフォルーにはわからなかった。

 

「さて、挨拶も済んだところで会議に移ろうか」

 やりとりを見守っていたサーゼクスが頃合いだと思ったのか、口をはさんできた。

 等間隔に配置された椅子にそれぞれの魔王が座り、その後ろに各女王が立つが──

「それとたまには魔王だけで話したいんだ」

 暗に女王は出ていけとサーゼクスは指示した。それにいち早く、応じたのが彼の女王であるグレイフィアだった。

 セラフォルーはライの方を振り返り、頷いた。ライは一瞬悩んだようなそぶりを見せたが、すぐに頷き返してくる。そして、ちゃんとしといてくださいよというような目線を送ってくる。

 それにセラフォルーは頬が緩みながら、送り返す。

 ──任せてよ☆

 けれど、それは通じなかったのかやや心配そうな表情でライはこの部屋を後にした。

 残るふたりの女王も部屋から退室し、この部屋には魔王しかいなくなった。

「それで、サーゼクス。今回の議題はなんだ?」

「その前に世間話でもしないか?」

 またかと思って、セラフォルーが口を開こうとする前に、アジュカが声を発した。

「どうでもいい……と普段なら言うところなのだがな。セラフォルー」

「……何」

「彼をどこで拾ってきた」

 彼が誰を意味しているのかはすぐにわかった。というか犬を拾うみたいな感覚で言わないでほしい。

「まぁ。ちょっとした伝手からね。あぁ、もとはサーゼクスちゃんのところにいたんだったわね」

「私の所有している屋敷で働いていたんだ」

 サーゼクスが補足してくる。アジュカは顎に手をあてて何かを考えているようだった。

「アジュカ、彼の何が君の興味を引いたのかな?」

「……わからない。いや、上辺の部分は俺には見えた。君のあれとかな」

 さすがにアジュカには見えてしまっていたか。セラフォルーの施したものは彼にはバレバレだったようで少し悔しい。

「だが、中が──」

 そこでアジュカは話すことをやめた。セラフォルーも知らない──ライ自身も知らないだろう──ことなので気になるのだが、彼はもう話すような雰囲気ではなくなっている。

 舌打ちのひとつでもしたくなる。

「ライといえば、この前のあれはすごかったね」

 代わりとばかりにサーゼクスが口を開いた。彼が言うあれとはおそらくあのことだろう。

 

 □

 

 ──これは、冥界全土が知っている話だ。

 セラフォルーはライを自らの女王に据えたのだが、しばらくの間はこのことはほんの数人しか知らない秘密にしていた。

 理由は簡単で、ライが納得していなかったからである。

 あのグレイフィア強襲事件──セラフォルー命名──の後、彼は表面上は落ち着いていたがかなりショックを受けていた。

 そして傷が癒え、一つの願いを彼は言った。

「──────」

 それをセラフォルーを受け入れた。

 

 初めての経験でこちらも痛かったけれど、なんとか上手くいった。

 

 それから三十年ほど経ち、セラフォルーは冥界全土に自らが女王を選んだことを報告した。偽りのないまますべて説明したのだが、それが全ての始まりだった。

 セラフォルーは比較的、魔王の中ではまともな部類と思われていた。いろいろ頭のおかしい紅いの、自分勝手な技術者、怠け者。

 このメンツであるので当然と言えば当然なのかもしれないが。

 そんなこともあり、他の駒はともかく女王の枠にはそれなりの地位の悪魔がつくと誰もが思っていた。魔王の眷属になれるというのは名誉なことであるのだが、他三人の魔王は個人的な事情で選んでしまっていた。

 ならば、他は仕方ないにしてもセラフォルーのところぐらいはちゃんとした家系の奴をいれるべきだろうというなんとなくの思惑があったからだ。

 しかし、そこには名も知られていない下級悪魔が枠を奪ってしまった。

 貴族階級の悪魔は猛反発した。

 そのほとんどは下級に栄誉ある魔王の眷属に慣れたことへの嫉妬であることは明白ではあったが、何はともあれその反発は半端ではなかった。

 セラフォルーは反対する悪魔の意見を長い間、無視し続けた。こういうのは時間が解決してくれるものだと思っていたからである。のだが、それとは逆に反抗は強まっていく。誰かが裏から糸を引いているのではないかと思うほど、ひどくなっていった。

 当初はライへの文句が占めていたのが、時間が経つにつれセラフォルーへの不信の声が広まっていくようになった。これでもなお、セラフォルーは何かをしようとは思っていなかったのだが、ライの我慢の限界がやってきた。怒ることのない彼がとても冷たい目をしていたのを今でも覚えている。

 ライは反発している悪魔たちを集めて、ひとつの取り決めをした。

 ──決闘をしましょう。それに自分が負けることがあれば、女王の座から自ら降ります。

 爽やかな笑みさえ浮かべながら、彼は集まった悪魔たちにそう告げた。

 そんなことを言うとは露ほどにも思っていなかったセラフォルーは、屋敷に戻ったあとに激怒した。自分でも怖いなと思うほどに怒っていたような気がする。

 けれど、彼はいっさい謝らず、こう言った。

 ──セラ様が貶されるのだけは耐えることができませんでした。

 ──自分より大事なものができたのはこれが初めてなんです。

 ──それに、あなたの前では自分は負けませんよ。

 あーとかうーとか言いながらセラフォルーはぽかぽかとライを殴った。

 

 決闘は冥途全土で放映することになった。これは相手貴族の連中が提案したことで、ここの会場に来れなかった悪魔にも観てもいたかったとのこと。魂胆が丸見えで反吐が出そうであった。

 決闘に参戦する悪魔の総数は百は軽く超えていた。主に貴族やその眷属の強者。

 さすがに常識は備えていたらしく、大勢対一人で決闘を行うということにはならず、一対一を百回行うことになった。連続で。

 常識があると言ったのはどこの誰だったのだろう。

 下馬評は圧倒的に貴族側が有利、もしくは試合にならないとさえ言われていた。これを信じていなかったのはとある四人だけだった。

 

 手柄を得たいからなのか、侮っているのかは定かではないが、一戦目は誰もが志願して戦おうとした。ライはそれを黙って見守っていた。

 大分時間がかかった後に対戦相手は決まった。いかにもなめくさっているようなのが初戦でセラフォルーは少し安心した。先は長いのだ。体力の温存はできたに越したことはない。

 試合の開始の鐘がなる。

 相手は動かない。ライのことをなめているからこその行動だと思われる。たいして、彼はそれを見るやすぐに動く。

 二歩。日常の何気ない日の散歩のごとく歩いた。

 呑気なやつと思われてしまいかねない動きだった。

 そう思っていたら、ライは敵まで急接敵していた。なんてことはない、身体能力の賜物であるが、その速度差によって油断していると絶対目が追い付いていかない。

 驚いた敵がのけぞった隙に、再び加速して懐に入り込み、えぐりこむように拳を腹にいれた。おもしろいように飛んでいき、壁にぶつかって動かなくなる。

 セラフォルーこそが最もいかに成長したかがわかる悪魔だと自負している。三十年前と比べて、変わったのは大きく二つ。

 一つは身体能力。毎日、暇があればトレーニングをしていることの成果がようやく実を結び始めた。身体能力は今の状態でも上級悪魔のトップクラス──に勝てるレベル。最上級悪魔には一歩届かないといったところである。

 これだけ特訓を積んでこれだけしか強くなれないことに彼は自らのことを才能がないと嘆いていたが、セラフォルーからしたらまったくそうは思わない。

 所詮は下級悪魔。その認識は今の一撃とともに砕け散った。

 

 十戦やっていまだにライに攻撃を与えることはできていなかった。

 やっていることはそう難しいことではない。見て避けて、懐に潜り込んで殴る。ただ、それだけなのに、倒せない。

 いや、避けるにしても攻撃するにしてもライの動きはなめらかすぎる。いかにして自分の体を上手く動かすか、どうやったら攻撃にいちばん力が載るのか熟知しているかを的確につく技術が伴っている。

 ──違うかもなぁ。

 けれど、それを習得したのはそういうことのためではないような気がするセラフォルーだった。

 三十を超えて誰かが言った。

 ──そいつ魔力使えないんじゃないのか。

 ライは確かに一度も魔力を使っていなかった。そのことにある程度の信憑性を持った決闘者たちは試合開始とともに勢いよく後ろに跳び、距離をとりながら遠距離からライを攻撃し始める。

 さすがに魔力弾の弾幕を張られてしまうと攻撃を受けないというのは難しい。避ける隙間を作るために最低限の数弾き飛ばさなければいけないからだ。

 それによって、微少ながら体に負担をかけてしまう。ライはこれから先もまだまだ戦わなくてはいけないのでその程度の負担ですらしたくない場面。

 よって、魔力が使えるのなら魔力を使うタイミングというのは相手の予想通りであった。しかしライは魔力を使わなかった。

 

 使えなかった(、、、、、、)

 

 数度魔力弾をくらったところでライは平気な顔で立ち向かう。しかしそこに突破口を見出したのか、皆そろって同じような戦い方にシフトし始める。それも相まって、なかなかすぐには倒せなくなってきていた。

 五十を超えて疲労が出始めたのか、ライの息がやや乱れてくる。そして運悪く──もしかしたら作戦だったのかもしれないけれど──固有能力の上級悪魔が増えてくる。

 爆破。氷結。雷。岩石。炎。

 前半は上級悪魔の中でも低レベルの者たちだったのが一気にレベルが上がってくる。普段のライならなんなく倒せる相手だが、疲労もありすぐには倒せず試合が長引いてくる。

 

 残り人数はまだ五十以上。セラフォルーは自らの手をぎゅっと握りしめていた。

 ライは真正面から立ち向かった。何度被弾しようと足を止めることなく。

 七十を超えて、相手の本来戦う予定のなかった上級悪魔の中の強者が出始めた。

 このあたりから、接近戦の悪魔も出始める。インファイトに自信のあるものたちなのだろう。

 遠距離に対応していたことや、そもそも強者との戦闘経験のないライは苦しみ始める。

 しかし、見に徹することで時間を稼ぐことでなんとか凌ぐ。そして、ライには一度した動きを再現することができる頭と器用さがある。よって二度同じ攻撃は通じない。相手の攻撃をトレースすることにより時間と体力を使い、そして怪我を負うことによって勝ち進んでいく。

 

 セラフォルーは思わず口から悲鳴が出そうになった。

 怪力に優れた一族の悪魔による一撃がもろに体に入ったからだった。この戦いのなかで最も重い一撃が入ったことは明白であったが、ライは即座に反撃して相手を倒す。

 ──頑張れ! 

 セラフォルーはここでようやく気がつく。会場がライを応援していることに。決闘開始時は声援なんてものはなかった。

 しかし、今はどうだ。

 ほとんど全ての悪魔が彼を応援しているように見える。

 ──君のひたむきな行動がみんなを変えたんだ。

 彼らにならい、セラフォルーも声を出した。

 

 体に掠った魔力弾により、血を流し。直撃したものにより火傷を負う。剣に体を切り裂かれ、骨を折られる。

 けれど、それでもなお勇敢に立ち向かう。

 百を超えて、体からの出血が常に垂れ流され続けている状態に。けれど、彼は堂々と二本の足で立ち相手に向かい合った。

 走るたびに血が宙を舞った。決して綺麗なものではないはずの血液がこの時だけはどんな絵具より綺麗なものに見えた。

 宙を画用紙に絵を描く画家のように。

 

 最後に舞台上に立っていたのは、ライだった。

 会場からは歓声が沸く。

 セラフォルーは見守っていた場所から飛び降りて、ライに駆け寄った。満身創痍という言葉がまさに当てはまるほどにひどい状態だった。こうして立っているのが不思議なくらいに。

 すぐに医務室に連れて行こうとしたのだが、その前にライが片膝をついた。そしてセラフォルーの手の甲にそっと口づけをした。

 ──セラフォルー様、自分はあなたのことを終生お守りすることをここに誓います。

 ──えぇ。よろしくね、私の王子様(クイーン)

 




補足二回目。
少し前の話でセラフォルーさんがグレイフィアさんに魔法少女の服装をつくるために材料の売り場を訊くという場面がありましたが、セラフォルーさんは当てがなかったので、仕方なくグレイフィアさんにききにいきました。

セラフォルーさん視点だととてもいい話だな。
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