サーゼクス暗殺計画 作:キュウシュ
とてもビックリしている作者です。
業が深い(人妻もの)、今小説を読んでいただき本当にありがとうございます!
あれから一月が経ち、いよいよセラフォルーとの初対面の日になった。
ライはこの一月の間で魔法少女について勉強をした。魔法少女について興味を抱いている悪魔という理由でセラフォルーと会う予定なので、実はまったく知りませんでしたというわけにもいかない。ボロが出ないレベルまで知識を蓄えようとしたのだが、魔法少女に関する情報は思いの外少なかった。
──魔法少女とは、魔法などの不思議な力を使い事件を解決する少女である。
主にこのような事柄が書いてあるだけで、具体的にこういうものだ、という参考例を見つけることができなかった。
探し方が間違っているのかと思い、様々なアプローチで情報を集めようとした。魔法の事から始まり、魔女、はたまた魔法使いの組織……灰色の魔術師──メフィストという悪魔が理事をしている──についても調べたが魔法少女について先の事柄以上の事は分からなかった。
人間界の事かと考えてそちらも調べてみたが、そちらも手掛かりはなし。
どうして、グレイフィアとは関係のないところでこんなに悩まなくてはいけないのかとライは逆ギレしそうになった時期もあったが、胸に手を当て自らを落ち着かせ、怒りを外に出すことをしなかった。
怒りとは基本的に良くないものだとライは思っている。彼に出来るのは冷静に頭を使う事のみ。力もない地位もない、金もない。
自らにできる事はそれしかないと悟っているから、それを手放すわけにはいかない。
冷静になった頭で考えた結果、ライは魔法少女の事を調べるのを諦めた。
その代わり、セラフォルーについて情報を集める事にした。何が好きでどんな事柄を好むのか、出来る限り調べ尽くした。
どんな会話がきてもアドリブで回避できるように、趣味が合うとても良い悪魔と認識してもらうために、保険になってもらうために、グレイフィアの期待に応えるために。
ライはカフェテラスで優雅にコーヒーを飲みながら、セラフォルーを待っていた。これを計画したグレイフィアはメイドとしての仕事があるためこの場にはいない。
初めての接触だったので一緒にいてほしいという気持ちは少なからずあったが、逆にグレイフィアの前でナンパのような事をしなくていいということでもあったので文句は言わなかった。
心を落ち着かせるためにもう一口、コーヒーを飲もうとした時、ライはサーゼクスの側にいるときにも感じる、魔王の気配を察知した。
グレイフィアと比べると身長はやや低いように思える。だがそれでも彼女を弱そうだとは微塵も思えなかった。
「グレイフィアが言ってた子って君の事?」
「はい、初めまして。サーゼクス様の館の使用人をさせて頂いてもらっていますライと申します。セラフォルー様、この度はお会いできて光栄です」
「そんな堅苦しい喋り方しなくても大丈夫! 私のことはレヴ……あ、いや……」
セラフォルーは何かを言おうとして、口ごもり頰を赤らめた。
「……グレイフィアちゃんから聞いたけど、ライちゃんって魔法少女に詳しいってほんと?」
──いや、まったく。
寧ろ基礎情報しか持ち合わせていない。教えてもらいたいくらいだった。
「そうですね。平均以上には、と言ったところですかね」
だが、言葉の端々から魔法少女に詳しい悪魔であってほしいという感情が漏れ出ていたため、嘘をついた。
しかし、魔法少女の事を知っている悪魔は冥界全土含めても両手で数えられる程度といったところだろうか。平均が限りなくゼロに近いので、平均以上という言葉もあながち嘘ではない。
「ほ、ホント! 実は魔法少女の事について話せる友達っていなかったの! ライちゃんに会わせてくれたグレイフィアちゃんにはハグしたくなってきた。今日は存分に語り合おうね!」
「お手柔らかにお願いします」
「またまたー! それじゃ行こっか」
「行くとは?」
「私のお
「え?」
あって数分もしていないが、既にライは帰りたい気持ちでいっぱいだった。
◆
「おぉ、すごい数ありますね!」
オーバーリアクションなどではなく、本当にライは驚いていた。結局、本当にセラフォルーの家に連れて来られたライはセラフォルー案内のもと衣装部屋──という名前のコスプレ部屋──に来ていた。
「これ、全部自分で作ったんですよね?」
「うん! 気づいたらこんなにいっぱい出来ちゃった!」
せいぜい数着と予想していたのだが、実際は数十着という膨大な数のコスプレ服であった。
これを全て自作という事からもセラフォルーの魔法少女好きの深さがわかる。
ライは何気無い風を装って服を見ているが、内心では……。
──魔法少女ってこんな服着るの⁈
ライの思っていた魔法少女像がガラガラと崩れていた。
「ライちゃん見てみて! これが一番の自信作なんだ!」
セラフォルーが持ってきたのは、布地が少ないピンクの魔法少女服だった。自信作というだけあり、デザインもワッペンの位置も市販品にしか見えないレベルのものだった。
「本当に凄いですね。これ、実際に着てみたりしたんですか?」
「ううん。私の周りに着てくれそうな人いなかったし……」
「?? セラフォルー様が着ればいいんじゃないですか?」
そう、ライが口に出すも、凄い勢いで首を横に振るセラフォルー。
「わ、私は作る担当だけ! 着るのは流石にキツイかなぁって」
「……そうですかね。セラフォルー様は可愛らしいですし、とてもお似合いになると思いますが」
セラフォルーは着たくないと言っているがライの目にはそうは見えなかった。魔法少女が好きでコスプレ服を作るまでのオタクなのだ。
着たくない訳がない。
だが、恥ずかしさや何やらのせいで着れないと思われる。
だからライは理由を作った。セラフォルーが気兼ねなく魔法少女になれる理由を。
「そ、そう?」
「はい! 魔法少女好きの自分が保証します!」
「なら、着てみよっかな」
セラフォルーは服を持って奥の部屋へと入っていった。
「今のところは順調だな……」
誰もいない部屋でライはひとりごちた。
セラフォルーと仲良くなるというのは概ね上手くいっている。グレイフィアのように話しかけるなオーラを出しているわけではないセラフォルーはライにとってかなり楽な標的だった。
というより、グレイフィアという無理難題に取り組む内にライのコミュニケーション能力はいつしか上昇していたのだ。
──出来ることなら定期的に会うレベルに達せられればベストだけど、それは流石に望みすぎ、か。
そんな事を考えていたらセラフォルーが帰ってきた。
まだ恥ずかしいのか、体を抱きしめながらライの方向に歩いてきていた。今の頰を赤らめているセラフォルーはとても魔王には見えず、ただの女の子の様に見える。
そして肝心の魔法少女服だが、スタイルが良いセラフォルーが着ると、なんとなくエロい感じが醸し出されていてライは生唾を飲んだ。
「ど、どうかな?」
「とてもお似合いです! これこそ魔法少女って感じがしますね」
「そ、そう!」
ライに褒められて悪い気はしないのか口を笑みの形に変えた。
「写真でも撮りますか? せっかくですしポーズもして」
こんな時のためにライは懐に用意していたカメラを取り出して、提案した。
「え、それは流石に恥ずかしかったり」
「でもこの機会を逃すと写真なんて撮れないんじゃないですか?」
「そ、そうかも。じゃ、じゃあお願いしちゃおっかな!」
ライのことば巧みな話術についつい乗せられたセラフォルーは撮影を行うことになった。
「良いですね! その表情! 出来ればもっと笑って」
「こ、こう?」
「ええ! 流石魔王様!」
セラフォルーを褒めて煽てている内にライもだんだんテンションが上がってきていた。普段の彼ではとても言わないだろう事を口走るくらいには。
「何か決め台詞か、何か無いですか? そしたらもっと良い物が撮れそうな気がするんですが?」
「そ、それじゃ一つ」
コホンと一つ咳払いをしてセラフォルーは覚悟を決めた。
「魔法少女マジカル☆レヴィアたん! 月に代わってお仕置きしちゃうぞ☆」
「良い! 今、冥界一輝いています! セラフォルー様!」
そんな調子で何時間も撮影会を行った。
◆
「今日は楽しかったよ☆」
「いえ、何だかすみません。最後の方は気安く話しかけたり、無茶な要求をしたりしてしまって」
冷静になったライは魔王という自分とはまさしく格が違う相手に馴れ馴れしい態度をとってしまった事を反省していた。
「ううん、私も楽しかった! 自分を曝け出すって気持ちの良い事だね☆」
だが、セラフォルーはそんな些細な事は気にもしていなかった。
「……あの、もう魔法少女になりきらなくてもいいんですよ?」
いちいち会話の終わりに決めポーズをとるセラフォルーにつっこまずにはいられなかった。
「……もう、自分を偽らない事にしたの。自分がやりたいのはこれなんだってみんなに知ってもらいたい☆ だから、普段から魔法少女になりきろうかなって」
シリアスなムードを作っていたがライには何を言っているのか意味が分からなかった。
「そうですか、凄いですね」
ライは優しい笑み──グレイフィアのために極めた、愛想笑いに見えない愛想笑い──をセラフォルーにするしかなかった。
──キュン!
その時のセラフォルーの胸の音を言い表すならこの様な感じだろうか。セラフォルーはライを見ているだけで、なぜか心がポカポカしてきていた。じんわり身体に広がっていく熱さ。
人はこれを──と呼ぶが、彼女はまだその言葉を知らなかった。
「あの、ライちゃ……ライくん。また会えないかな?」
「ええ、休日だったら付き合いますよ」
魔王との繋がりが欲しいライは即座に頷いた。
「それじゃ、また会いましょう。セラフォルー様」
「……セラって呼んで。セラフォルーだと長いでしょ?」
「では、セラ様と」
「うん☆」
ライはセラフォルーに背を向けて館へ歩き始めた。
セラフォルーはそんなライの背中を見えなくなるまでずっと見ていた。
グレイフィア百年→友達
セラフォルー一日→??