組織の捕喰者   作:(◯|v|)<Howdy!)

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捕喰者のおしごと

ラスティネイルの朝は遅い。ほぼ昼に起き、まずはメールをチェックする。仕事を割り振る立場にあるジンやラムもラスティネイルが朝方に床に着く事は知っているが、だからと言って連絡が来ない訳ではない。最近の悩みは生活の昼夜が逆転しつつある事。確かに夜陰に紛れてヒトを喰らうが、別に夜行性ではない。だというのに夜にばかり仕事を振られるせいで、生活リズムが乱れて寝起きが悪くなってしまっていた。仕事の特性上仕方がないのだが。

 

案の定メールに着信が一件。メールを開き、割り振られた仕事を確認する。ラスティネイルに今日回された依頼は悉く暗殺。赫子を細く細く伸ばせば排水溝やダクトといった侵入不可な経路を通ってターゲットを抹殺可能であることと、“組織最凶の暴力装置”の名が裏社会で広く出回ったせいで組織に楯突く者達が激減したが故である。どうも任された殲滅任務をR-18Gに振り切らせ過ぎたらしく、歴戦のツワモノ共を軒並み嘔吐させたとかなんとか。特に食事後の残骸で。やりすぎどころかジンからはむしろ褒められたが、地味に神経を使う暗殺任務よりは気の赴くままにただ暴れるだけでいいので楽だったりする。

 

ともかく。

 

組織が用意した戸籍が記載された運転免許証を手に、少し遠出のドライブを敢行する。行く先々で不審死が多発するだろうが、それはそれ。職務に忠実であるが故に組織の闇に触れた犠牲者達には申し訳ないが、ラスティネイルも仕事なので諦めてもらう。

最初の標的は、幾多もの事件を調べ上げることで組織の存在に勘づき始めた正義感溢れる政治家。それだけならば組織も放置しただろうが、組織の存在を明らかにしようと奮起しているらしい。あらまあ、と別段感慨もなく呟く。

正直者と正義が馬鹿を見る世知辛い世の中に上辺だけ嘆息しつつ、ラスティネイルは車を走らせた。

 

 

 

 

 

人間であることを大前提にした警備に喰種が苦労するはずもなく、さくさくと依頼を済ませていく。地上が隈なく見張られているなら、屋根から屋根へと飛び移ればいい。屋内に警護が敷き詰められているなら、排気口から赫子だけ中に入れればいい。意図的に聴覚のみに全神経を集中させ、音で屋内の構造や人員の配置を読み取れば、後は赫子を伸ばして標的を殺すだけの簡単なお仕事である。

 

都合三人目の処分を終えたラスティネイルは、別段疲れてもいない身体をぐぐっと伸ばした。最近は殺し方にも注文をつけられ始めたのが辛い。何が辛いって、指定されたシチュエーションが訪れるまで待たなければならないのが辛い。ちょっと頭の中を空っぽにして無節操に暴れまわる位が、ラスティネイルの性に合っている。とは言え、ある程度地域を纏めてくれている辺りにジンやラムの精一杯の優しさを感じる。訂正。あの二人に向ける言葉が“優しさ”?致命的に似合わない。ラスティネイルの効率的な運用法を心得ていると述べた方がしっくりくる。

人目と監視カメラを避けて地面に降り立ち、踵を返して雑踏に紛れる。喰種の優秀な聴覚が雑音の中から微かな悲鳴を聞き分け、ラスティネイルは軽く喉を鳴らした。

 

任務完了。

 

 

 

 

 

 

夜である。

普段ならジンに連れられて暴れに行ったり、一人寂しく粛々と暗殺しに行ったりする時間帯だが、今日は少々特殊な日。任務内容は暗殺。ただし、極力無(・)残(・)にという注文付きで。

つまり、殺すついでに喰(・)っ(・)て(・)こ(・)い(・)という意味である。実に二週間ぶりの食事に、ラスティネイルのテンションも上がる。

 

不用心にも人気の少ない道を歩く標的を、赫子を用いて一瞬で拘束する。念の為に口も塞いだ上で壁に磔にするように持ち上げ、味見とばかりに腕にかぶりつく。暴れる力が一層強くなり、くぐもった声も大きくなる。頑張るねぇ、とへらりと笑い、哀願するような目を無視して逆の腕に噛み付く。ラスティネイルの口内を血の芳醇な香りが満たす。身体が歓びに打ち震えるのを感じながら、湧き上がる欲求に従って一口、また一口と進めていく。

 

────ぱき。

 

湿った枯れ木を焚き火に焼べたような、子気味のいい音が響く。苦悶の嗚咽を聴きながら、ラスティネイルは食事を続けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある日、日本のヨハネスブルグと名高い米花町において、数々の凶悪犯罪に慣れすら覚えつつある米花町民をすら震撼させる出来事が起きた。

被害者はとある有名な政治家。正義感が強いと評判で、麻薬や武器の密輸に対し政府に毅然とした対応を取らせるべく音頭をとっていた人物でもある。

その人物が遺体で発見された────それも、遺体の大部分が損壊した状態で。顔の半分近くが抉り取られ、身体も四肢は残っておらず、臓器は確かな医学的知識に基づいて遺体の側に丁寧に陳列されていたという。そして四肢の根元部分にあたる骨や肉には、噛み傷と思しき痕が残っていたとされ、胸部から腹部にかけての肉も明らかに足りなかったらしい。

 

どう考えても人の所業とは言い難いこの事件は食人鬼事件と呼称され、以降およそ数ヶ月に一度のペースで被害者を出すこととなる。

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